世界におけるパンデミック下での中絶事情
コロナ・パニックが始まるやいなや、海外の産婦人科医たちはそれぞれに、女性のリプロダクティブヘルスを守るために、さまざまな情報発信を行った。
アメリカの産婦人科団体ACOGは、3月18日に「COVID-19アウトブレイクの最中の中絶へのアクセス」に関して、関連団体と共に合同宣言を出している。以下はその一部を試訳してみた。
中絶は総合的ヘルスケアの絶対に欠かせない一部である。中絶は時間が非常に重要なサービスであり、数週間の遅れや、場合によっては数日間の遅れだけでも、リスクが高まってしまったり、全くアクセスできなくなってしまったりする可能性もある。中絶を受けられない結果、個人の生命、健康、ウェルビーイングに甚大な影響を与えてしまうこともある。
イギリスのRCOGもコロナ禍のさなかに中絶を必要とする女性のために詳細な情報提要やQ&Aなどを作成し公開した。
https://www.rcog.org.uk/en/guidelines-research-services/guidelines/coronavirus-abortion/
https://www.rcog.org.uk/en/guidelines-research-services/guidelines/coronavirus-abortion/information-for-women/
さらにパニックが収束しつつある今、今回の騒ぎを振り返り、評価する記事も出ている。
内容をざっと要約してみる:コロナ禍が始まった当初、世界のSRHRに関わる機関やグループは、政府の対応を求めるために、中絶へのアクセスが絶たれると盛んに警鐘を鳴らした。各地からの報告によれば、全体的にはある程度対処できていたことが判明した。各国政府は以前よりもSRHの重要性を認識するようになっており、一部の地域を除いて、心配されていたほどのクリニックの閉鎖も見られなかった。ただし、中絶のタイミングが遅れたり、希望する方法でできなかったり、中期中絶が増加したり、望まない出産に至るはめになった女性たちもいる。
www.safeabortionwomensright.org
全体を見渡しての筆者の結論は次のとおり。
中絶に関する法律や慣行が最も厳しい国々を中心に、コロナ禍の中絶への影響について情報が聞こえてこない国も数多くある。また、私の知る限り、パンデミックが中絶後のケアに及ぼす影響についてはまだ情報がない。
結論として、いつかこの時代を振り返った時に、世界の公衆衛生と感染症予防について多くの人々がいかに理解していないかを明らかにした恐ろしいパンデミックの最中に、少なくとも相当数の国々では、子どもを持つかどうか、いつ産むかを決める権利の一環として、安全な中絶のための公衆衛生の必要性が認識されていたということが歴史に刻まれたと言えることを願っている。このパンデミックが終結した後、私たちがどのように進むかは、世界の公衆衛生を達成するという大きな文脈の中に置かれる必要があると信じている。その部分を占めている小さな、しかし欠かせない要素は女性の権利としての安全な中絶なのである。
それにしても、世界ではコロナ禍の最中に、中絶を受けようとする女性たちに情報発信したり、中絶を受けられなくなる女性の人数を推計したり、それに応じて対策を練ったり、統計を取ってその妥当性を確認したり、科学的にアプローチしようとしている人々がいるのだ。そんな人たちの爪の垢を煎じて厚労省の役人にのませてやりたい。