日本産婦人科医会ホーム> 研修ノート> No.99 流産のすべて> 4. 妊娠12 週未満の人工妊娠中絶手術による合併症(日本産婦人科医会調 査結果より)
前ログに続いて、2017年の研修ノートから見ていく。搔爬法が併用法、吸引法に比べて遺残が多く、子宮穿孔率も高いことが示されている。
4. 妊娠12 週未満の人工妊娠中絶手術による合併症(日本産婦人科医会調 査結果より)
(1)妊娠12 週未満の人工妊娠中絶手術の合併症
○WHO は2012 年に「安全な中絶に関するガイドライン」を発表し,人工妊娠中絶手術としての掻爬法は安全性に問題があることを指摘した.日本産婦人科医会は同年,人工妊娠中絶手術の術式や合併症に関する全国調査を行った(表11).
○人工妊娠中絶手術の術式は,吸引+掻爬(併用)法が5 割,掻爬法が3 割,吸引法が2 割であった.
○合併症の総発生率,特に子宮内遺残の発生率は,吸引法と比較して吸引+掻爬法および掻爬法で,また,吸引+掻爬法と比較して掻爬法で有意に高かった(p< 0 . 01).また,掻爬法は他の2 法と比較して子宮穿孔の発生率が高かった(p< 0 . 05).よって,人工妊娠中絶をより安全に実施するには,吸引法の幅広い導入が求められる.
○術前の子宮頸管拡張器使用や術中の超音波ガイドは合併症の軽減に繋がっていなかった.(2)子宮穿孔に伴う腸管損傷
○子宮穿孔時の処置等について,医会への偶発事例報告(計63 例:2011~2015 年)から検討した(表12).
○子宮穿孔例の84 %に開腹あるいは腹腔鏡手術による子宮修復が行われていた.子宮穿孔例の56%に腸管損傷を認め,そのうち3 例(腸管損傷全体の5%)に人工肛門造設が行われていた.以上より,子宮穿孔時は腹腔内の観察をためらうべきではないと考えられる.