リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

国際連合「政策概要: 新型コロナウイルスの女性への影響」 (内閣府仮訳2020年4月9日版)

男女共同参画局に埋もれていた4月の「思春期の妊娠率の上昇」の予測

世界では避妊・安全な中絶はエッセンシャル・メディシンとして、多種多様な対策が次々と取られている。ところが、日本はDV相談を増設した以外、女性を守るためのコロナ対策を何もしていないとずっとじりじりしてきた。今日、ふと思いついて男女共同参画局のホームページを見てみたら、4月に国連から届いたさまざまな「対策マニュアル」が政府仮訳で置かれていた。そう、ただ「置かれていた」のだ。マスコミだって、この存在に気づいていないのではないだろうか。


単に訳してホームページに置いておくだけでは、全く意味がない! なぜ、具体的な政策提言に結びつけないのか。やっぱり「男女共同参画」ではダメなんじゃないか。「女性差別撤廃」の視線で見て行かなければ、非常時にますます女性たちは追いやられてしまうと、ますます危機感を強めた。

II. 健康への影響


疾病の大流行により、女性及び女児は治療や医療サービスを受けるのがより難しくなる可能性がある。民族性、社会経済的地位、障害、年齢、人種、地理的位置、性的指向、その他不可欠な医療サービス及び新型コロナウイルスに関する情報へのアクセスや意思決定に影響を与える要素による、複数の、または、交差する不平等によって状況は悪化する。


女性及び女児には独自の健康上のニーズがあるが、特に地方や社会から疎外されたコミュニティにおいては、質の高い医療サービス、必要不可欠な薬やワクチン、妊産婦向け及び性と生殖に関する医療、日常の及び突発的な医療費に適用される保険にアクセスできない可能性が高い。制限的な社会規範及び固定的性別役割も、女性が医療サービスにアクセスする能力を制限し得る。これら全ては、健康危機が広がる中で特に影響を及ぼす。


性別による職業の分離により、女性がリスクやウイルスにさらされているおそれがある。世界的に、医療労働者の 70%が女性であり、特に看護師、助産師、コミュニティヘルスワーカーといった最前線で働く医療労働者に女性が多い10。医療施設において清掃、洗濯、ケータリングといったサービスを提供する従業員も大半が女性であり、女性がウイルスにさらされる可能性を高めている。地域によっては、女性が個人用防護具や適切なサイズの装備にアクセスしにくくなっている。こうした数字にもかかわらず、女性の声は、新型コロナウイルスへの対応についての国やグローバルな意思決定に反映されていないことが多い。

「女性及び女児には独自の健康上のニーズがある」というのは、まさにリプロダクティブ・ヘルスのこと。そして、ここで具体的に指摘されていた懸念事項のひとつが「思春期の妊娠率の上昇」の恐れだった!

性と生殖に関する医療への影響。妊産婦向けの医療やジェンダーに基づく暴力に関連するサービスを含む性と生殖に関する医療の提供は、女性及び女児の健康、権利、ウェルビーイングの中心である。こうした医療の提供から関心がそれたり欠かせない資源が転用されたりすれば、妊産婦の死亡や罹病の増加、思春期の妊娠率の上昇、HIV性感染症といった結果を生じさせるおそれがある。

「こうした医療の提供から関心がそれたり欠かせない資源が転用されたりすれば」……まさにそれが起こっているのが日本ではないか。

コロナ禍の社会経済的影響から女性を守るための施策を行っている国は8ヵ国に1ヵ国のみだという。日本は間違いなく残り7ヵ国に入っているだろう。ジェンダー後進国ジャパン、どうする?

www.unwomen.org