リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

[議論]上野千鶴子氏(上)「少子化とジェンダー格差は共通課題」

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[議論]上野千鶴子氏(上)「少子化とジェンダー格差は共通課題」

日本産科婦人科学会によると、体外受精で生まれた子供の数は2018年で過去最多の5万6979人でした。総出生数は91万8400人なので、全体の約6%を占めています。

上野氏:不妊治療の保険適用は少子化対策に多少の効果があるかもしれませんが、一方で、妊娠中絶件数は2018年で約16万件にも上っています。しかも年齢層で見ると、20代前半が特に多い。安倍首相が言った、卵子若い人たちです。

 不妊治療で生まれる子どもより、闇に葬られる子どもの数の方が多いのです。この子たちに生まれてもらうほうが少子化対策になります。

 彼女たちが産めない最大の理由が、経済的な問題です。

今の日本社会に、子育て支援が全くもって不十分なのは間違いないとしても、いろんな事情があって「産まない」選択をした女性たちの実態を無視した報道に怒りが止まらない。(上野さん自身ではなく、編集者が加えたのでは……との意見もあるようですが、このような報道がなされたこと自体は事実です。)

20代前半の女性に経済的支援さえすれば産めるだろうというのは、まさに現政権の発想と同じで金で子どもを買う発想。個々の女性の人生にも全く思いを馳せていない。

いったん産んでしまったら、子育てを押し付けられ、キャリアを諦め、貧困に陥るかもしれないし、まだ十分な関係性を結んでもいない男性と結婚するよう圧力がかかるかもしれない。深く知り合わないうちに結婚した結果、DVで苦しむはめになっている女性たちは大勢いる。結婚すればいい、子どもができればいい……だけではすまされないのだ。

欧米ではかつてショットガン婚(娘を妊娠させた男が父親から「どうしてくれるんだ?」と迫られて慌ててする結婚)が多かったが、今や避妊や中絶が普及して婚姻時に妊娠している例はほぼ皆無になった……と誇らしげに書いている話を先日読んで、「できちゃった婚」がこれほど増えた(ある種歓迎されている?)日本との大きなギャップを感じた。

女性が自分の人生を自分で選べる社会にしていきたい。

[議論]上野千鶴子氏(上)「少子化とジェンダー格差は共通課題」:日経ビジネス電子版