リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

20年以上も前に「配偶者同意」は人権侵害と国会で指摘されていた!

何も変わっていないのか……この国は!

第146回国会 参議院 国民福祉委員会 第3号 平成11年11月25日

177 堂本暁子
(前略)
 次のことに移らせていただきますが、これまた局長に伺いますけれども、母体保護法について伺います。
 私は、先日バンコクで開かれました、北京で開かれた世界女性会議のフォローアップ会議に出席したんですが、そこで各国がいろいろ自分の国でやった成果を発表しました。厚生省が書いたんだと思いますが、日本のナショナルレポートでは、女性と健康のことについては、生涯を通じた女性の健康支援事業をするということだけが書かれているんです。
 しかし、一番の問題は優生保護法が九六年に改正された母体保護法で、「本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。」というふうに言われています。このとき、私たち女性議員は大変大きな運動を展開したんですが全然入れられませんで、昭和二十三年のままの条文が何ら変化していません。
 しかし、北京行動綱領によりますと、最終的には女性が自分の体、例えばもう離婚が決まっているのに妊娠しているというようなときには夫の同意なんて得られるはずがない。そういったときに、中絶ができるという最後の決断のときにこういうものがあるということは、非常に女性の基本的人権の侵害になると思います。
 今、性的な暴力も大変ふえてきました。そういった中で、望まない妊娠をした女性が相手に同意を得られるような状況ではありません。そういった中で、日本が女性に関して非常におくれているというのは本当におかしい。そういう点については、何ら日本政府からの報告には触れられていない。
 一方で、NGOの方の報告を読みますと「一九九六年の優生保護法母体保護法への改正は、」というふうに書かれていて、「夫またはパートナーの了解を得なければならないとした部分の修正が行われなかったのみならず、女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツに基づく生涯にわたる女性の健康に関する政策の法制化は実現していない。」と。これは、五年たっても日本国はこの世界女性会議で日本も合意したものを実行していないということです。
 きょう、もうぜひともきちっとお願いしておきたいのは、少なくとも日本が合意した文書に関しては、国内の法律もきちっと整合性を持たせる必要があるということ。
 それからもう一つ大事なことは、中絶を迫られることのもう一つの状況は、障害者への差別ということがあります。優生思想が社会一般に非常に根強くまだ日本には残っていますから、そういった問題が今起こりつつあるように思いますけれども、そういった場合にも、きちっとした女性の健康に関する基本的な政策のもとで、母体保護法に関しては、女性の人権が阻害されたままの状況でさらに女性の人権が阻害される、あるいは健康が阻害されるような改正をするようなことは決してしていただきたくないと思うので、そのことについてお答えいただきたい。

178 真野章(政府参考人
 先生御指摘の母体保護法によります人工妊娠中絶の議論につきましては、先生これはもうよく御存じのとおり国民の間で議論が大きく分かれていると、私どもはそういうふうに考えております。この部分につきまして、現在、国民の間で意見が分かれている中で、国民のコンセンサスが得られている状況ではないのではないかというふうに思っております。
 ただ、先生御案内のとおり、リプロダクティブヘルス・ライツの観点から、昨年から一年かけまして、生涯を通じた女性の健康施策に関する研究会というのを、児童家庭局で議論をしていただきました。その提言におきましても、望まない妊娠を防ぎ、子供を望んだときに妊娠できるようにするための提言がなされておりまして、その中で女性が主体的に避妊することを支援する必要性ということが指摘されておりまして、先日、低用量経口避妊薬ピルの使用ができるようになりました。そういうことで……
179 堂本暁子
 そのことは伺っていませんので、結構です。
 最後に一言。
 今のは全然違ったお答えです。すれ違いでしかありません。意見が分かれている分かれていない、厚生省はこれを恐らく三十年は言っていますよ。世界が進歩している中で、バンコクへ行ったときに、今、途上国の方がはるかにそういう意味では進んでいます。日本国はこういうことに関しては先進国なんてこれっぽっちも言えないですね、そういうふうにおっしゃるのであれば。
 途上国の方がどれだけ、エイズの問題にしろ、こういった女性の望まない妊娠が女性たちを苦しめているかということで、どんどん新しい政策をとっている。だから、私はとても恥ずかしいと思ったんです、日本がこういうことに関しておくれていることが。そして、十年一日のごとく、もう本当に何とかの一つ覚えで同じことをおっしゃる。これはおかしいです。少子化が進むのは、まさにそういうところにこそ原因がありますよ。本当にそういうところを、今のような答え方で言うのであればおかしい。
 そして、意見が分かれているということではなくて、これだけ女性への暴力がふえている中で、男性の同意が得られないことがあるのに、そういったときに中絶の最終的な選択ができないということを法律で決めているこの制度がおかしいということを申し上げているので、それ以上のことを聞いているわけじゃありません。
 ですから、もう時間が来たので私はやめますけれども、今度は局長にきちっともう一回またチャンスを見て伺いますけれども、今の御認識はまさに何回も何回ももう耳にたこができるほど私たち女性が聞いてきたのと同じせりふをお繰り返しになっただけでございます。そういったものはもう伺いたくありません。世界じゅうの女性たちが合意したことをなぜ日本国ができないのかということを伺っているので、そのことを改めて申し上げておきたいと思います。