リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

リプロダクティブ・ライツと人口転換

日本は20か国中1番「子どものいない女性」が多い!

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FIGURE 32 Completed cohort fertility and the number of children ever born among women born in 1974 in selected low-fertility countries and territories

団塊ジュニアの最後の年1974年生まれだからかもしれません。就職氷河期、景気低迷の悪影響をもろに受け、未婚率が非常に高い世代です。この図を見ると、3割に子どもがなく、2割が1人っ子となっています。第3次ベビーブームが起きなかったのは、就職氷河期世代への支援がなかったためだと言われていますが、女性差別に対応しなかったのも大きいと思う。

この世代が大学を出たのは1996年。1994年のカイロ会議で提唱されたリプロダクティブ・ライツの保障を地道に行っていたら、状況は違っていたかもしれないのですが……。

リプロダクティブ・ライツの保障とは、個人に産む産まないの選択を与えるだけではなく、その選択を実現できるような手段も与えます。情報と手段があるなかで、個々人が今の自分にとって適切な選択をすることにより、結果的に適切な出生数に(多くの場合、女性1人につき子供2人で、社会にとっても望ましい人口置換水準に)収れんさせていくという考え方なのです。

職がなくて不安定ならまずはそこを支える。経済力がネックになっているなら支援する、働きやすいように両立支援を徹底し、安心して仕事と家庭のバランスのよい生活を実現できるように制度変革する……といったことを何もせずに、ただ「産んでくれ」あるいは「産まない女が悪い」では子どもが増えるわけはないですよね。

他の国は1990年代から対策をしてきました。

THE POWER OF CHOICE--REPRODUCTIVE RIGHTS AND THE DEMOGRAPHIC TRANSITION

この報告書の結論は以下に尽きる。
「各国の課題はさまざまですが、少子化対策には少なくとも1つの共通点があります。それは、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)へのアクセスです。」

そしてリプロダクティブ・ライツを保障していくためには、女性たちの生涯にわたる健康を支援し、女性が自らのリプロダクションをコントロールしていけるようにエンパワーしていく必要がある。

日本政府はその重要性を全く見落してきたのである。
All countries need to strengthen health systems, reproductive rights, UNFPA report says