リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

経口中絶薬承認申請へ

毎日新聞2021年4月21日朝刊

焦点:経口中絶薬、承認申請へ 治験最終段階、93%の確率 英製薬、年内にも日本で | 毎日新聞

有料記事なので冒頭だけ―

 人工妊娠中絶ができる経口中絶薬について、英国の製薬会社ラインファーマが、年内にも日本で薬事承認を申請する見通しとなった。認められれば中絶薬として国内初となるが、欧米では20年も前から本格的に使われている。一方、薬価や中絶の実施方法など運用面で課題もある。【中川聡子】

93・3%の確率で中絶が可能に
 「副作用がほとんどなく極めて安全。医師による外科処置なしに、女性が主体的に中絶をおこなえるようになる」。中絶薬の治験に参加する東京大の大須賀穣教授(産婦人科学)はこう期待する。

 日本での中絶はこれまで、都道府県医師会が指定する母体保護法指定医の外科手術によって行われてきた。妊娠12週未満の初期中絶では、子宮内の内容物(胎児、胎盤など)を金属製の器具でかき出す「そうは法」と、ストロー状の器具で吸い出す「吸引法」が併用されている。厚生労働省によると、中絶手術は2019年度で15万6430件実施されたという。

 薬による中絶は、…


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以下、記事から情報をまとめておきます。


WHOの対応

(20)12年に発表したガイドライン(『安全な中絶 第2版のこと』引用者注)で、日本で一般的な「そうは法」は子宮内を傷つけるなどのリスクがあり、安全性に課題があると指摘。吸引法か中絶薬を推奨し、中絶薬を妥当な価格で提供されるべき「必須医薬品」に指定した。中絶する女性のうち、英国とフランスでは半数、北欧では7~8割が中絶薬を選ぶという。

厚労省の対応

(20)04年、海外製の中絶薬で健康被害が生じたとして、個人輸入を制限する医薬品に指定した。
10年11月には個人輸入した薬を自宅で服用し中絶したとして、東京都内の20代女性が警視庁に堕胎容疑で書類送検された。しかし、インターネットでの販売は後を絶たず、13年3月にも国民センターが「安易な個人輸入や使用は危険」と注意喚起する事態に。

日本産婦人科医会の動き

ニーズの高まりを受け、同年(2013年)9月に中絶薬に対する考え方をまとめた。承認のために国が検討を始めることに同意し、母体保護法指定医師だけが使えるなど要件も含めて検討するよう国に対して要望している。

関係者の意見をまとめておきます。


治験に参加する東京大の大須賀穰教授(産婦人科学)

「副作用がほとんどなく極めて安全。医師による外科処置なしに、女性が主体的に中絶を行えるようになる」
日本の認可が遅れた背景について、「一般にあまり知られていない薬で医師も積極的に導入しようとしなかった。『中絶が増える』という保守層の懸念も強かったのではないか」
「病院経営の観点から薬による中絶も手術と同等の価格設定となる可能性がある。利用しやすい価格にするには公的補助を検討する必要がある」


婦人科医で日本家族計画協会の北村邦夫会長

「新薬導入には莫大な資金や時間、利害関係者との調整が必要だ。製薬会社には宗教的な理由や採算面での不安などもあったと考えられる」
「母体の安全管理に加え、薬の作用や出血への対応など、当事者への教育や心理的なケアも欠かせない。薬剤投与のルール作りを議論する必要がある」


田村憲久厚労相の答弁

中絶を医療保険に組み込む可能性について「母体の命、健康に影響があるとなれば保険適用となるが、一般の中絶は保険の主旨からすると当てはまらないのでは」と答弁、否定的な見解を示した。

NPO法人ピルコンの染矢明日香理事長
「中絶手術は高額で、痛みや術後の不安を強く感じる人もいる。女性の負担が大きく、社会の偏見も根強い。中絶薬という選択肢が増えることは歓迎するが、当事者にとってアクセスしやすい価格設定やケアのあり方を検討してほしい」


塚原久美によると、

英国やフランス、ニュージーランドなど約30カ国では、中絶薬は保険適用や公的補助を受け実質無料で処方されているという。オーストラリアや英国、フランスなどではオンラインで処方を受けられる。国際産科婦人科連合は3月、「(オンラインによる)遠隔医療を使った薬による中絶サービスは安全で安価、有効であることが確認された。各国は、全ての女性がプライバシーを守られたうえで、安全に中絶できる手段を確保すべきだ」とする声明を発表している。
 世界では安価で安全な中絶手段が得られないのは人権侵害ともみなされるという。「女性が受ける医療サービスで、多額の自己負担が必要な日本の状況は女性差別的だ。日本でも諸外国同様の対応を取るべきだ」