リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

WHO: Emergency Contraception--a Guide for Service Delivery

1998年のWHO緊急避妊ガイドライン

日本の今の議論はこのレベルにも達していないのでは? 周回遅れにもほどがあります。

Emergency Contraception--a Guide for Service Delivery

プランB(レボノルゲステロル)は1999年にアメリカのFDAで承認され、性交後72時間(3日間)まで有効だとされた。この薬に対して、2001年後女性運動は「OTC化」を求める運動を始める。この経緯は以下のサイトの説明が分かりやすい。
The History of Emergency Contraception

1999年7月28日:FDA(米国食品医薬品局)は、プランBを米国で利用可能な初のプロゲスチンのみの緊急避妊法として承認した。
2001年2月14日:リプロダクティブ・ライツ・センターが、70以上の医療・公衆衛生団体を代表して、プランBの市販化を求める市民請願書をFDAに提出する。
2003年4月21日:バー・ラボラトリーズ(当時のプランBのメーカー)が、プランBを処方箋薬から非処方箋薬に変更する申請書をFDAに提出。
2003年12月:申請書と40以上の研究データが、リプロダクティブ・ヘルス・ドラッグ委員会とノンプリスクリプション・ドラッグ委員会の2つのFDA諮問委員会で検討され、全員一致でプランBの安全性と有効性が認められた。FDA委員会は23対4でプランBの店頭販売を推奨することを決議する。また、ジョン・ジェンキンスFDA新薬室長をはじめとするFDAの専門スタッフも、この勧告に賛成した。

ところが話はここでは終わらない。2003年にジョージ・ブッシュ政権が誕生し、緊急避妊薬に圧力をかけ始めたからである。2000年代のアメリカの緊急避妊薬の店頭販売を巡る争いについては次のサイトの説明が簡潔で分かりやすい。
The History of Emergency Contraception - Nurx

緊急避妊薬に処方箋が必要だという議論は、2000年代に入ってから話題になった。多くのリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)の活動家は、プランBへのアクセスを改善するために、市販されるよう求めた。プランBは無防備なセックスから72時間以内に服用しなければならないため、処方箋が必要なことは女性にとって特に困難だった。プランBは無防備なセックスから72時間以内に服用しなければならず、できるだけ早く服用することが最も効果的なのである。
 2006年8月、FDAはプランBの店頭販売を承認したが、対象は18歳以上に限定した。2013年6月になって、FDAはプランBを年齢制限なしで店頭販売することを承認した。

以上はアメリカの話で、以下によれば、イギリスでは2001年から限定なしに店頭販売されていたようである。History of the Morning After Pill | LloydsPharmacy Online Doctor UK

前述のNURAのサイトによると、その後、登場したElla oneは今もアメリカでは処方薬のようである。

2010年8月、新しい緊急避妊薬「Ella」がFDAに承認された。このピルはulipristal acetate(酢酸ウリプリスタル)という薬を使用して、排卵を防止または遅らせることができる。避妊をしていないセックスの5日後まで服用でき、指示通りに服用すればプロゲスチンのみのピルよりも効果的である。ただし、現在も処方箋のみでの販売となっている。

しかし、ヨーロッパでは話が違う。この性交後120時間(5日間)有効なElla Oneは、イギリスでは2009年に発売され、2015年以降は処方箋が不要になった。
Five-day emergency pill available across UK without prescription - BBC News

これは欧州薬品局が2014年にエラワンを店頭販売薬にすると決定したことに基づいており、EC圏内の国々では、これ以降、店頭販売が可能になったようである。
www.ema.europa.eu