リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

懲役3年ノ刑ニ処ス!?受胎調節実地指導員のみなさんへ

受胎調節実地指導員による避妊薬販売に関して


1955年の通達

優生保護法の一部を改正する法律の施行について
(昭和三〇年九月一日)(発衛第三〇一号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

 優生保護法の一部を改正する法律(昭和三○年法律第一二七号)は、昭和三○年八月五日公布施行されたが、この法律は、受胎調節の急速かつ確実な普及をはかるため、昭和三五年七月三一日までを限り、優生保護法第一五条の規定により受胎調節の実地指導を行う者(以下「実地指導員」という。)に、その実地指導を受ける者に対する避妊薬の販売を認めることとしたものである。

 即ち、受胎調節の普及については、昭和二六年一○月の閣議了解以来逐次その推進がはかられつつあり、更に昭和二七年五月には、受胎調節の実行につき、その確実な効果達成を期するため、法の改正によつて実地指導員の制度が設けられたものである。しかして受胎調節の完全な実施のためには、実地指導の徹底と相俟つて、器具薬品が手軽に入手できるようにすることが必要と考えられるのであるが特に避妊薬の入手については現在なお多くの不便があり、ために受胎調節の実行が伴わず、実地指導員の活動の意欲も漸次阻害される傾向にあつた。この間の隘路を打開し、受胎調節を急速かつ確実に進展させるため、ここに特に臨時に実地指導員に避妊薬の販売を認めることとしたのである。ただし、実地指導員としては、薬事法の医薬品販売業の登録なくして医薬品の販売ができることとなるので、第三九条第二項各号に掲げるものの違反があつた場合には、実地指導員の指定を取り消す旨の強い監督規定が設けられた次第である。
 したがつて、これが実施にあたつては、かかる違反が生じないよう注意しつつ実地指導の普及徹底に努めるべきであるが、特に、臨時的特例たる趣旨にかんがみ、この間に受胎調節の徹底を期するとともに、避妊薬の入手が円滑確実に行われるよう諸般の態勢を確立する点につき、格段の努力を願いたく、命に依り通知する。
 なお、法の実施にあたつては、特に左記の点に留意されたい。

一 実地指導員は、別添の昭和三○年九月厚生省告示第二八五号に掲げられている避妊薬を、当該指導員の実地指導を受ける者に対してのみ販売することができるのであつて、口頭指導、集団指導のみを行つて実地指導を行わない場合等は、販売はできないこと。ただし、「実地指導を受ける者」というのは、「現に実地指導を受けている者」という意味より広く、この点に関しては、実地指導は長い期間にわたつて受胎調節が実行されるということによつて始めて意味があるものであるから、指導を受けた者に継続して、必要な器具薬品を提供する必要があること、受胎調節の実行者がわざわざ買いに行かなくても実地指導員が引き続き届けてくれることが受胎調節の普及のため必要があるということで、法の改正が行われた点を考慮して、よろしく指導されたいこと。

二 販売指定医薬品は、すべて薬事法第三三条の規定により検定を受けるべき医薬品であるので、販売する医薬品は検定合格品に限られることを特に注意するよう指導されたいこと。

三 薬事法第六章の監督に関する規定は、実地指導員の販売業に関しては、そのまま適用されるものではないが、一般的に薬事の面よりする監督は必要であるので、必要がある場合は、実地指導員に報告を求め、又はその同意を得て立入検査を行う等により指導監督を行われたいこと。


助産雑誌 59巻10号 (2005年10月)pp.938-939
発行日 2005年10月1日
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100300

懲役3年ノ刑ニ処ス!?受胎調節実地指導員のみなさんへ
八神 敦雄 (厚生労働省雇用均等・児童家庭局)

平成17年7月に母体保護法が改正されました。この改正により,受胎調節実地指導員が受胎調節のために必要な医薬品を,今後5年間引き続き販売できることとなりました。

 ……といわれてもピンとこないあなたは,法改正が実現していなかったら,もしかすると懲役3年の刑を受けていたかもしれない。母体保護法は,受胎調節実地指導員に対し,特別に医薬品の販売を認めてきた。今や販売できる医薬品はネオ・サンプーンループ錠しか実在しないが,それにしたって,なんといっても薬事法第24条に基づく医薬品販売業の許可を得ずに医薬品を売ることができるのは,日本全国見渡してもほかならぬ「受胎調節実地指導員」しかいないのである。許可を得ていないほかの人がネオ・サンプーンループ錠を販売したら,3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されてしまうのに,受胎調節実地指導員だけは罪にならない。受胎調節実地指導員の資格とはそれくらい重たいものなのである。


2005年の雑誌の記述
助産雑誌 59巻10号 (2005年10月)pp.938-939
発行日 2005年10月1日 DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100300


懲役3年ノ刑ニ処ス!?受胎調節実地指導員のみなさんへ八神 敦雄 (厚生労働省雇用均等・児童家庭局)

平成17年7月に母体保護法が改正されました。この改正により,受胎調節実地指導員が受胎調節のために必要な医薬品を,今後5年間引き続き販売できることとなりました。

 ……といわれてもピンとこないあなたは,法改正が実現していなかったら,もしかすると懲役3年の刑を受けていたかもしれない。母体保護法は,受胎調節実地指導員に対し,特別に医薬品の販売を認めてきた。今や販売できる医薬品はネオ・サンプーンループ錠しか実在しないが,それにしたって,なんといっても薬事法第24条に基づく医薬品販売業の許可を得ずに医薬品を売ることができるのは,日本全国見渡してもほかならぬ「受胎調節実地指導員」しかいないのである。許可を得ていないほかの人がネオ・サンプーンループ錠を販売したら,3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されてしまうのに,受胎調節実地指導員だけは罪にならない。受胎調節実地指導員の資格とはそれくらい重たいものなのである。


【第703号】 平成24年10月1日発行(2012年) | 一般社団法人 日本家族計画協会
機関紙 第703号 平成24年10月1日(2012年) 

エーザイ(株)の企業サイトに、2011年3月、避妊用膣薬「ネオサンプーン・ループ錠」の製造を終了した旨の社告を発見し驚かされた。これでわが国にあった殺精子剤はすべて消えたことになる。
▼筆者が本会に入植したのが1988年。その後、99年に本会が発売していたゼリー型殺精子剤の発売が中止された。理由は、これが体内で退社されると紀るフェノールという「環境ホルモン」になると、ある環境団体から「発売中止の要請と要望書」が届けられたことにあった。本会としては、「世界保健機関やっく際火z考計画連盟なども推奨する避妊法の一つとして位置付けられている」と抵抗したが、如何なる団体からも発売中止への異論が起こらなかった。
▼フィルム型殺精子剤「マイルーラ」もゼリーと同成分のものであり2001年に製造が中止になっている。医学専門家として臨床試験にかかわった女性用コンドームは00年に「マイフェミィ」というー商品名で発売されたが、その後「フェミドーム」と名称が変更されたものの普及とはほど遠く11年6月に発売が中止されている。
▼この間、低用量ピル、銅付加子宮内避妊具、応対ホルモン放出型子宮内避妊システム、緊急避妊薬、低用量ピルの後発医薬品など、新しい避妊法も発売されている。しかし、日本では一つの避妊法が誕生すると一つが消えるという世界にも稀有な歴史が刻まれている。
▼筆者としては、安全性と有効性が認められているのであれば、避妊法の選択肢は多岐にわたることが大事だと考えている。というのは、人によってはピルをのめない、子宮内避妊具が使えないことがあるからだ。一度失ったものを取り返すことは、新しく作ること以上に難しいのだ。□(KK)