リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶の配偶者同意問題を巡る厚労省の態度について

2021年9月14日付の質問項目に対して

私の関わる国際セーフ・アボーション・デーJapanプロジェクトで、中絶の配偶者同意について厚労省に質問しました。先日、ようやく回答が返ってきたのですが、がっかりさせられるような内容でした。


女性の命や人生について夫が決定権を握っているのは不平等ではないか、北京宣言との整合性や女性差別撤廃委員会からの是正勧告、人権としてのリプロに照らした観点等幅広い質問に対して返ってきたのは…

「胎児の生命尊重や女性の自己決定権に関する様々な御意見が国民の間で存在しており、また、個々人の倫理観、道徳観とも深く関係する難しい問題であると認識している」として、「母体保護法の規定の在り方については国民各層における議論が深まることが重要であると考えている」とのこと。


さらに厚労省としては、「関係省庁や関係学会と連携して……適切な運用に努めてまいりたい」とおっしゃるのですが、世界より何十年も遅れている性教育・避妊・妊娠・中絶等々のリプロの対応を振り返れば、省庁や学会だけには全く任せていられないので、国民の側で大いに議論を深めて行きましょう!


母体保護法の規定が直接的に影響するのは妊娠する当事者です。法的には不要な同意書を医師に求められたあげく、中絶ができなくなって孤立出産に追いやられた女性たちが法に触れ、逮捕されてしまった事件がいくつも起きています。彼女たちは日本の社会と制度の被害者であり、法と医療の見直しが必須では?


そもそも、人権規約にも書き込まれた「安全な中絶への権利」に対して、「倫理観」「道徳観」を持ち出してにべもなく否定するのは、当事者の健康を軽視する姿勢であり、中絶に対するスティグマを増強する結果にもなってしまうばかりではないでしょうか。厚労省の反省を求めたいと思います。