リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

母体保護法による中絶で配偶者同意が不要な場合

婚姻関係が実質破綻している場合

日産婦医会発第 336 号
令和 3 年 3 月 16 日

都道府県産婦人科医会 会長 殿
母体保護法担当理事 殿

配偶者の同意に関する日本医師会の疑義解釈照会文とその回答

公益社団法人日本産婦人科医会
会長 木下 勝之
法制・倫理部会 担当副会長 平原 史樹
担当常務理事 志村研太郎

 
 日頃、母体保護法の適切な運用にご尽力いただき、衷心より厚く御礼申し上げます。

母体保護法上、人工妊娠中絶を行うにあたっては、原則として配偶者の同意を得ることが要件とされておりますが、同法第14条第2項において、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意のみで人工妊娠中絶を行えることが規定されております。
昨年12月に日本医師会主催で開催された令和2年度家族計画・母体保護法指導者講習会において、妊婦が配偶者からDV等を受けている場合等、婚姻関係が実質破綻しており、人工妊娠中絶について配偶者の同意を得ることが困難な場合の母体保護法上の取扱いについて明確化するよう意見がありました。
 その意見を受けて、日本医師会では、この件で、疑義解釈照会文を作成し、3 月 4 日に、厚生労働省へ照会し、厚生労働省からの回答を 3 月 10 日に受け取った旨を、3 月 12 日に都道府県医師会宛に周知しています。そこで、3 月 14 日の本会総会の席上で、この件に関する本会の見解を含めて、全国都道府県代議員の皆様にお伝えしました。
産婦人科医会会長と母体保護法担当理事の両先生には、「婚姻関係が実質破綻に関して、親等の親族、又は本人と配偶者の関係性を知る第三者にその確認を行うことが望ましい」等の本会としての留意事項も含めて、再度その内容をお伝え申しあげます。貴都道府県会員の皆様に周知をよろしくお願い致します。

(健Ⅱ546) 令和3年3月12日

都道府県医師会担当理事 殿


日本医師会常任理事渡 辺 弘 司
(公印省略)



母体保護法第14条における配偶者の同意について



 都道府県医師会におかれましては、母体保護法の適切な運用にご尽力いただき、衷心より厚く御礼申し上げます。
 母体保護法上、人工妊娠中絶を行うにあたっては、原則として配偶者の同意を得ることが要件とされておりますが、同法第14条第2項において、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意のみで人工妊娠中絶を行えることが規定されております。
 昨年12月に開催された令和2年度家族計画・母体保護法指導者講習会において、妊婦が配偶者からDV等を受けている場合等、婚姻関係が実質破綻しており、人工妊娠中絶について配偶者の同意を得ることが困難な場合の母体保護法上の取扱いについて明確化するよう意見があったことから、別添のとおり厚生労働省へ確認いたしましたのでご連絡申し上げます。
 つきましては、貴会におかれましても、本件についてご了知いただき、貴会会員への周知方ご高配賜りますようよろしくお願い申し上げます。

(健Ⅱ529) 令和3年3月4日

厚生労働省子ども家庭局母子保健課長 殿


公益社団法人日本医師会常任理事
渡 辺 弘 司
(公印省略)


母体保護法に係る疑義について(照会)


 母体保護法第14条第2項において、人工妊娠中絶を行う際の配偶者の同意について、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りることとされているが、妊婦が夫の DV 被害を受けているなど、婚姻関係が実質破綻しており、人工妊娠中絶について配偶者の同意を得ることが困難な場合は、同項の規定する本人の同意だけで足りる場合に該当すると解してよいか。
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子母発 0310 第1号令 和 3 年 3 月 1 0 日

公益社団法人 日本医師会 母子保健担当理事 殿


厚生労働省子ども家庭局母子保健課長
( 公 印 省 略 )


母体保護法に係る疑義について(回答)


 令和3年3月4日付けで貴会母子保健担当理事から照会の標記の件について は、貴見のとおりである。

母体保護法
(昭和二十三年法律第百五十六号)


(医師の認定による人工妊娠中絶)
第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
— 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。


強制性交等の被害者である場合

厚生労働省発子 1020 第1号
令 和 2 年 1 0 月 2 0 日


都道府県知事指定都市市長
各 殿
中核市市 長
特別区区 長


厚生労働事務次官
(公印省略 )


母体保護法の施行について」の一部改正について(通知)


 母体保護法(昭和 23 年法律第 156 号)については、「母体保護法の施行について」(平成8年9月 25 日厚生省発児第 122 号厚生事務次官通知)により、その実施に当たり留意すべき点をお示ししてきたところである。
 今般、別添1の疑義照会を受けたことを踏まえ、同法第 14 条第1項第2号の趣旨を明らかにするため、同通知の一部を別紙の通り改正することとしたので、各都道府県、指定都市、中核市及び特別区におかれては、本改正の内容を御了知いただくとともに、都道府県におかれては、貴管内の市町村(指定都市、中核市を除く。)に対して周知いただくようお願いする。


○別紙 新旧対照表
○別添1 母体保護法に係る疑義について(照会)
○別添2 母体保護法に係る疑義について(回答)
○別添3 改正後全文<<

日医受第 1700 号令和2年8月24日


厚生労働省子ども家庭局母子保健課長 殿


公益社団法人日本医師会常任理事
渡 辺 弘 司
(公印省略)


母体保護法に係る疑義について(照会)


 母体保護法第14条第1項第2号において、暴行若しくは脅迫によって妊娠したものについては、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができることとされているが、強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではないと解してよいか。

子母発 0828 第2号
令和2年8月 28 日


公益社団法人 日本医師会 母子保健担当理事 殿



厚生労働省子ども家庭局母子保健課長
( 公 印 省 略 )



母体保護法に係る疑義について(回答)


 令和2年8月 24 日付けで貴会母子保健担当理事から照会の標記の件については、貴見のとおりである。

(改正後全文)

厚生省発児第 122 号平成8年9月 25 日
(一部改正 令和2年 10 月 20 日)

都道府県知事政令 市 市 長
各 殿
中核市市 長
特別区区 長

厚生事務次官
(公印省略)



母体保護法の施行について


 優生保護法の一部を改正する法律が平成8年法律第 105 号をもって公布されたところであるが、母体保護法の実施に当たり、留意すべき点は以下のとおりであるので、遺漏のないよう配慮されたい。なお、本通知の実施に伴い、本職通知昭和 28 年6月 12 日厚生省発衛第150 号「優生保護法の施行について」は廃止する。

第1 不妊手術について
1 一般的事項
(1)法第2条の「生殖を不能にする手術の術式」は、規則第1条各号に掲げるものに限られるものであって、これ以外の方法、例えば、放射線照射によるもの等は、許されないこと。
(2)法第 28 条は、健康者が経済的理由とか、単なる産児制限のためとか、又出産によって容ぼうが衰えることを防ぐため等、この法律の目的以外に利用することを防ぐた
め、この法律で認められている理由及びその他正当の理由がない限り生殖を不能にす ることを目的として手術又はレントゲン照射を行うことを禁止したものであること。
従って、この法律の規定による場合又は医師が医療の目的のため正当業務又は緊急避難行為として行う場合以外にこれを行えば、法第 28 条違反として法第 34 条の罰則が適用されるものであること。

不妊手術
(1)未成年者に対しては、不妊手術を行うことはできないこと。
(2)法第3条第1項第1号の「母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの」とは、当該具体的状況において医学的常識経験からみて死亡の結果が予想される場合をいうもの であること。
(3)法第3条第3項の「配偶者が知れないとき」とは、民法上不在者として取り扱われる等配偶者の所在が知れないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上所在不明の場合も含むものであること。
(4)法第3条第3項の「その意思を表示することができないとき」とは、禁治産の宣告等意思能力のないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上その意思 を表示することができない場合も含むものであること。しかしながら遠隔地へ出稼しているときのように配偶者の所在が判明しており、何らかの方法でその意思を表示するこ とが可能である場合は、これに当たらないものであること。

第2 人工妊娠中絶について
1 一般的事項
 法第2条第2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満であること。
 なお、妊娠週数の判断は、指定医師の医学的判断に基づいて、客観的に行うものであること。
2 指定医師
 母体保護法指定医師でない者は、本法による人工妊娠中絶は行うことができないこと。 ただし、母体の生命が危険にひんする場合、例えば妊娠中の者が突然子宮出血を起したり、又は子癇の発作が起って種々の危険症状を呈し、急速に胎児を母体外に出す必要がある場合に、緊急避難行為として、人工妊娠中絶を行うことはもとより差し支えないこと。
3 人工妊娠中絶の対象
(1)法第 14 条第1項第1号の「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」とは、妊娠を継続し、又は分娩することがその者の世帯の生活に重大な経済的支障を及ぼし、その結果母体の健康が著しく害されるおそれのある場合をいうものであ ること。
 従って、現に生活保護法の適用を受けている者(生活扶助を受けている場合はもちろ ん、医療扶助だけを受けている場合を含む。以下同じ。)が妊娠した場合又は現に生活 保護法の適用は受けていないが、妊娠又は分娩によって生活が著しく困窮し、生活保護法の適用を受けるに至るような場合は、通常これに当たるものであること。
(2)法第 14 条第1項第2号の「暴行若しくは脅迫」とは、必ずしも有形的な暴力行為による場合だけをいうものではないこと。ただし、本号に該当しない者が、この規定により安易に人工妊娠中絶を行うことがないよう留意されたいこと。
 なお、本号と刑法の強制性交等罪の構成要件は、おおむねその範囲を同じくする。ただし、本号の場合は必ずしも姦淫者について強制性交等罪の成立することを必要とする ものではないから、責任無能力等の理由でその者が処罰されない場合でも本号が適用さ れる場合があること。
(3)法第 14 条第2項の「配偶者が知れないとき」及び「その意思を表示することができないとき」とは、前記第1の2の(3)及び(4)と同様に解されたいこと。


平成26年の種部恭子医師の疑義紹介に関するエッセー

2021/6/3(木)参議院厚労委員会 ★福島みずほ(社民)⇒田村憲久(厚労大臣)、渡辺由美子(政府参考人
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php https://mizuhoto.org/2644
福島みずほ君 ……
リプロダクティブヘルス・アンド・ライツの観点から、母体保護法の配偶者の同意要件は、未婚の場合には適用がないということでよろしいですね。
○政府参考人渡辺由美子君) 母体保護法上の配偶者の定義につきましては、届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含むとなっておりますので、先生のおっしゃる未婚ということは、こういう事実婚状態にもないということであれば、この配偶者には当たらないということになります。