リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶を報道するジャーナリストが知っておくべきこと

Resources for Journalists - International Campaign for Women's Right to Safe Abortion (SAWR)

ピルを使って妊娠中絶を語る方法 ジャーナリストのための情報

 メッセージングとメディアの役割 メディアがしばしば「中絶薬」と呼ぶものについて、正確な情報を伝えることが重要です。
 女性が自分の権利を知り、選択肢を認識するためにも重要です。ジャーナリストや報道機関は、中絶薬の使用をセンセーショナルに扱うことが多く、特に女性が自宅で使用できる場合には、危険なもののように思わせ、誤った情報に基づく誤解を助長しています。しかし、ピルによる中絶は、月経過多や流産と非常に似ています。
 このファクトシートは、ジャーナリストにピルの使用に関する事実を知ってもらうことを目的としています。出版物によくある間違いを要約し、世界保健機関(WHO)のガイドラインやその他の信頼できる医学的、証拠に基づく情報源からの正しい情報を提供しています。


ジャーナリストやメディアの方々には、この情報を共有し、ピルによる中絶に関する正確な記事を掲載していただきたいと思います。

"ピルによる中絶 "について話そう
 メディアはしばしば "中絶薬 "について話しています。これは、ミフェプリストンとミソプロストールという2種類の薬の俗称で、中絶を引き起こすために使われます。
 私たちは、ジャーナリストが「複数のピル(pills)による中絶」という言葉を使い始めることをお勧めしています。これにより、1種類のピルではなく、2種類のピルが関係していることが明確になります。
これにより、1種類のピルではなく、2種類のピルが関係していることが明確になります。WHOが使用している正式名称は "medical abortion pills "で、この方法を外科手術や吸引法と区別しています。さらにややこしいことに、アメリカでは「medication abortion」(薬物中絶)と言いますが、正式な名称は「medical abortion」(内科的中絶)です。


 ミフェプリストンは、妊娠が発育するために必要なプロゲステロンというホルモンが体内で作られるのを止め、子宮頸部を柔らかくし、中絶を促進します。ミフェプリストンは現在68カ国*1で承認されていますが(1)、薬局では手に入りません。高い成功率を得るためには、24~48時間後にミソプロストールと併用する必要があります。
 ミフェプリストンがまだ多くの国で入手できなくても、女性たちはミソプロストールを単独で使用することができますし、しばしば使用されています。


 ミソプロストールは子宮の収縮を引き起こし、それによって妊娠が排出されます。収縮は、しばしば重い月経のような出血を伴う強いけいれんとして経験されます。ミソプロストールは、ほぼすべての国の薬局で、異なるブランド名と異なる適応症で入手可能です*2



用法・用量とレジメン

 投与量(薬の量)とレジメン(どの薬を、どのくらいの量で、どのくらいの頻度で使用するか)は、妊娠期間によって異なります。妊娠12週までは、ミフェプリストン(200mg)を1錠服用し、その24~48時間後にミソプロストール(1回800mcg-200mcg×4錠)を1回以上服用します。12週間まではミソプロストールの単独使用でも十分中絶を行えます(800mcgを3時間ごとに、必要に応じて3回以上)。
 しかし、2種類のピルを一緒に使うにしても、ミソプロストールを単独で使うにしても、ピルは正規のもの(偽物ではない)でなければなりませんし、ピルの数や服用のタイミングも守らなければなりません。
正しく使用すれば、中絶は非常に安全で、ほとんどの場合完了します。妊娠12週以降になると、用量やレジメンが変わるので、女性はどのような方法であっても、臨床的なサポートを受けて中絶を行うことをお勧めします。
 時にうまくいかないこともあるので、医療のバックアップを受けることは非常に重要です。医療支援が必要となる理由は2つあります。中絶が不完全であるか、非常に大量の出血があるかです。どちらも緊急の治療が必要です。


錠剤による中絶はすべてを変えます

 世界中で、女性たちは薬局から、ウェブサイトから、薬の販売者から、さらには闇市場から中絶薬を入手し、自分で中絶を行っています。中絶が法的に制限されている状況でも、女性は善意の薬と正確な情報があれば、安全に薬を入手し、自分で投与することができます。中絶薬を自己管理するということは、女性が医師に高い料金を支払う余裕がないときに、安全でない方法を選択する必要がなくなるということでもあります。
 さらに、中絶が広く合法的に行われている国では、自分で使用するために中絶薬が購入されています。これは、女性が自分の家のプライバシーが守られた状態で中絶をしたいと思うからです。


更なる情報
 中絶が法的に制限されている国では、安全な中絶情報ホットラインやその他のサポートグループが増えてきています。
 これらのサービスでは、WHOのガイドラインを用いて、自宅で安全に中絶薬を使用する方法について女性に情報を提供しています。(3, 4)
 キャンペーンのウェブサイトに掲載されているすべての安全な中絶情報ホットラインは、望まない妊娠、中絶、中絶後のケアについて、無料で安全かつ信頼できる情報を提供しており、その多くは避妊や緊急避妊についての情報も提供しています。ホットラインのボランティアは、信頼できる情報源からの正確な情報を自信を持って提供できるように訓練されています。ホットラインのボランティアは、信頼できる情報源から正確な情報を自信を持って提供できるように訓練されています。また、助けが必要な場合、どのように助けを求めればよいかを女性にアドバイスすることもできます。


中絶に関する記事を書きたいジャーナリストのためのガイドライン

  • International Campaign for Women’s Right to Safe Abortion & International Planned Parenthood Federation (IPPF), “How to report on abortion” in English / Spanish
  • Pratigya, Asia Safe Abortion Partnership (ASAP) and Global Health Strategies (GHS), TALKING ABOUT ABORTION: A guide for journalists and advocates
  • Bhekisisa Mail & Guardian Centre for Health Journalism, Abortion in South Africa: A reporting guide for journalists

中絶に関する誤った信念 薬による中絶 - そして事実

 ジャーナリストは時に錠剤を用いた中絶について誤った報道をしてしまい、間違いに気づかないことがあります。ここに最も一般的な事例を示します。

神話:「中絶薬は危険である」


真実:すべての薬は、薬の安全性を取り扱う国のおよび/または国際的な規制機関で承認を受けています。ミフェプリストンとミソプロストールはどちらもWHOの必須医薬品モデルリストに登録されており、すなわち最も高い規範に照らして安全性と有効性が認められており、すべての国で使えるようにすべき薬です。これまで何十年もかけて数多くの世界各地の医学専門家が関与してWHOやその他の研究機関で厳格な臨床試験が行われてきた結果、ミフェプリストンおよび/またはミソプロストールを中絶のために用いることは非常に安全であることが判明しています――ただしこれらの錠剤が正規のものであること、指示に従って服用されること、必要な時にはいつでも医療施設のバックアップを得られるようにしておくことが条件です。正規の錠剤が使われない場合、正しい投与量または投与計画に従って使われない場合には、合併症が生じることがあります。


神話:「中絶薬は効き目が悪い」


真実:女性たちにこのようなことを言う医師は大勢いますが、それは医師たちが得ている情報が限られているのに投薬を行っているためか、もしくは外科的中絶を行うことでより収入を増やそうとしているためかのいずれかです。正しく服用する限り中絶薬は非常に有効性が高いというのが真実です。ミフェプリストンとミソプロストールを組み合わせて用いる場合、最大で99%の有効性が確認されており、ほどなく刊行される予定のWHOの新ガイドラインによれば、ミソプロストールを追加投与することでさらに有効性を高めることも可能です。ミソプロストールの単独使用の場合、妊娠12週までは3時間ごとに800mcgの容量をくり返し投与することで92~98%の成功率だとされています。この方法で4回または5回を超えて投与する必要があることはごく稀です。


神話:「薬を用いた中絶は非常に痛い」


真実:中絶は痛いものです。これはすべての中絶において正常なことです。妊娠初期の外科的中絶では女性たちは局所麻酔か鎮痛薬を与えられます。鎮痛薬は内科的中絶(薬を内服する中絶)でも推奨されており、イブプロフェンが最も効果があるといわれています。痛みの強さは妊娠期間や、その女性が過去に妊娠経験があるかどうか、あとは運の良し悪しで一人一人変わってきます。ほとんどの人にとって薬を用いた中絶は強い月経痛を伴う重い月経のようなものとして経験されます。


神話:「中絶薬は気持の落ち込みやうつの原因になる」


真実:中絶に反対する人々のプロパガンダとしてすべての中絶についてこのような主張が行われていますが、真実はこれとは真逆です。望まない妊娠をしている女性たちがよく言うのは、中絶が終わって大きな解放感を覚えたということで、それは自分自身の人生に対するコントロール感を取り戻したためなのです。中絶後に動揺する女性もいますが、それは多くの場合、中絶を必要とすることになった人間関係の問題のためおよび/または中絶が非合法的なものであったためです。中絶は常にトラウマを伴うわけではありません。中絶が必ずしも簡単なものでないのは、人生が常に簡単なものではないためです。女性たちは必要なことをしたのであり、それに対処していけます。


神話:「中絶薬をインターネットで売っている業者はどれも悪質だ」


真実:何百種類もの他の薬品と同様に、中絶薬を販売しているオンライン「薬局」は数多く存在しています。その中には正規の薬を販売している業者もありますが、多くはそうではありません。なかには偽物の薬や、使用期限の切れた薬を金儲けのために売っているところもあります。そのため、私たちは常に女性たちに対して、正規の薬を取り扱っていることが分かっているウェブサイトしか使わないように助言しています。


神話:「薬を用いた中絶さえあれば中絶を提供している医療機関はもう必要ない」


真実:内科的中絶を行う薬があるからといって、国家や医療機関が女性たちに安全な中絶を提供する義務から解放されるわけではありません。中絶は自由かつ合法的にアクセスしやすくすることで非常に安全なものになります。しかし、(かつては今日よりもかなり厳しく規制されていた)避妊薬と同様に薬を用いた中絶を過剰に医療化してはなりません。むしろ、中絶ケアはプライマリーケアやコミュニティベースのヘルスケアの場面で看護師や助産師によって提供できるものであり、あるいはネパールで行われてきたように、訓練を受けた薬剤師でも提供できるものなのです。それ以上に、薬の提供者の目の前で、あるいはクリニックの中で女性たちに薬をのませる必要は全くありません。正しい情報を与えられれば、女性たちは自宅で自分の都合のよいタイミングでピルを自己投与し、必要がある時にケアを求めることができます。ただし、すべての人が内科的中絶を希望するわけではないため、真空吸引や外科的中絶(D&E)も提供できるようにしておくべきです。


神話:「外科的中絶は内科的中絶より安全性が高い」


真実:どちらの手法も非常に安全であり、選択肢を与えられればたいていの女性は自分の好きな方を選びます。避妊と同様に選択できることは非常に大切です。しかし、国によっては吸引または外科的中絶を提供するための訓練がほとんどあるいは全く行われていないところもあり、女性たちには内服薬による中絶しか得られないこともあります。それでも、安全ではない方法しかなかった頃に比べれば大きな進歩であり、実際、女性たちはこの薬を「最も待ち望んでいた薬」だと表現しています。


神話:「簡単に手に入るようになると女性や少女たちは避妊代わりに中絶薬を使い始める」


真実:そんな証拠はどこにもありません。そんなことを言うのは中絶に反対するための卑劣な手段に過ぎません。事実、ほとんどの女性は30年間以上も妊娠が可能ですが、今では一生のうちに数人しか子供を産みません。意図しない妊娠は起こります。私たちは、長期間にわたって避妊を用いる女性たちを賞賛しています。一度や二度の中絶をしても何も悪いことはありません。避妊手段を提供することは重要ですが、避妊が失敗することもあり、使いそこねる人もおり、自分の意思に反して無防備なセックスを強いられる女性もいるという現実を決して忘れてはなりません。

中絶薬の使用について正確に記述した記事の例


International
BBC, 6 June 2018: 100 women: The modern face of the ‘DIY abortion’

Latin America and the Caribbean
• MS Magazine Blog, 3 August 2017: Abortion escorts in Ecuador are breaking the silence
• Al Jazeera, 12 July 2019: The informal networks resisting Honduras’ abortion ban

North America
PBS, 23 April 2019: Medical abortions have changed abortion access. And they’re available on the internet

Africa
• Devex, 5 July 2017: Opinion: Tedros can draw on Ethiopia’s lessons on abortion

Asia
• Times of India, 24 April 2013: State driving abortion pills out of market
• Rappler, 1 June 2016: Illegal, but they’re everywhere: How women help other women get abortions

Pacific
• 9news, 19 September 2018: Act to get increased access to abortion Europe
• The Irish Times, 13 April 2019: A tale of two abortions in Ireland: One legal, one
criminal
Harper’s Bazaar, 4 November 2019: How to make abortion great again
https://www.safeabortionwomensright.org/wp-content/uploads/2020/09/Guidelines_V9_final_PDF_RGBforweb.pdf

 ここでは、問題のある記事の例と、その問題点を紹介します。
南アフリカのTimes Live
ケープタウンファストフード店が「カウンターの下でR1,000の中絶薬を販売」。

  • 言葉遣いが不適切で、一貫性がありません。
  • ミソプロストールとは何かを説明していません。
  • 安全な業者から薬を手に入れるか、安全でない業者から手に入れるかの区別をしていません。
  • 南アフリカの中絶法や中絶政策の背景を説明していません。
  • 挙げられている例が悪い行為であることを明確にしていません。

正確な情報が重要...
 中絶薬は過去50年間で最も重要な医学的進歩の1つであり、私たちは、女性たちが必要とするかもしれない時に、その存在を知らせるために最善を尽くしています。
 1990年代初頭以降、安全でない中絶による死亡者数は大幅に減少しています(13)。増加している国での漸進的な法改正が理由の一つですが、もう一つの理由は、訓練を受けていない/安全でない業者に相談する代わりに、中絶薬を使用する女性が増えていることです。例えばブラジルでは、ミソプロストールを女性が自己流で使用するようになった1989年には、危険な中絶による死亡者数が減少し始めています(14)。
私たちの目標は、WHOが推奨しているように、すべての国で、法律で認められた一次医療提供者や薬局従事者が薬を提供できるようにすることです(15)。カナダでは現在、薬剤師による調剤と看護師による処方が認められています(16)。
 中絶薬が簡単に手に入るスカンジナビアでは、中絶は以前よりずっと早く行われています。なぜでしょうか?それは、女性の行く手を阻むものが少なくなったため、生理が来なかったり、妊娠に気づいたりしたらすぐに薬を使うことができるようになったからです。
 キャンペーンに関するお問い合わせは、press@safeabortionwomensright.org

REFERENCES
1 Gynuity Health Projects. Mifepristone approvals 2017. https://gynuity.org/assets/resources/biblio_ref_
lst_mife.pdf


2 Gynuity Health Projects. Misoprostol approved 2017. https://gynuity.org/assets/resources/
mapmiso__en.pdf


3 International Campaign for Women’s Right to Safe Abortion. Safe Abortion Information Hotlines:
part of the long history of sharing sexual and reproductive health information and giving support. 24
Feb 2017. http://www.safeabortionwomensright.org/safe-abortion-information-hotlines-part-of-the-longhistory-of-sharing-sexual-and-reproductive-health-information-and-giving-support/


4 Howard A. Latin America’s Safe Abortion Hotlines: Women Take Reproductive Rights Into Their Own
Hands. Upside Down World. 9 March 2015. http://upsidedownworld.org/archives/chile/latin-americassafe-abortion-hotlines-women-take-reproductive-rights-into-their-own-hands/


5 World Health Organization. WHO Model List of Essential Medicines. 2019. https://www.who.int/
medicines/publications/essentialmedicines/en/


6 Personal communication, 6 Dec 2019.


7 Morris JL, Winikoff B, Dabash R, Weeks A, Faundes A, Gemzell-Danielsson K, Kapp N, Castleman L,
Kim C, Ho PC, Visser GHA. FIGO’s updated recommendations for misoprostol used alone in gynecology
and obstetrics. International Journal of Gynecology & Obstetrics. 2017; 138:363-66. https://obgyn.
onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/ijgo.12181


8 Planned Parenthood Federation of America. What happens during an in-clinic abortion? 2019. https://
www.plannedparenthood.org/learn/abortion/in-clinic-abortion-procedures/what-happens-during-an-inclinic-abortion


9 International Campaign for Women’s Right to Safe Abortion. Safe abortion: Getting help. 2018.
http://www.safeabortionwomensright.org/safe-abortion-3/get-help/


10 Jelinska K. Putting abortion pills into women’s hands: realizing the full potential of medical
abortion. Contraception. 2018; 97(2):86-89. https://www.contraceptionjournal.org/article/S0010-
7824(17)30372-4/fulltext


11 Tamang A, Puri M, Masud S, Karki D, Khadka D, Singh M, Sharma P, Gajurel S. Medical abortion
can be provided safely and effectively by pharmacy workers trained within a harm reduction framework:
Nepal. Contraception. 2018. 97(2):137-43. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/
S0010782417304365


12 Berer M, Hoggart L. Medical abortion pills have the potential to change everything about
abortion. Contraception. 2018; 97(2):79-81. https://www.contraceptionjournal.org/article/S0010-
7824(17)30532-2/abstract


13 Singh S, Remez L, Sedgh G, Kowk L, Onda T. Abortion Worldwide 2017: Uneven Progress and
Unequal Access. New York, Guttmacher Institute; 2018.


14 Faúndes A, Santos LC, Carvalho M, Gras C. Post-abortion complications after interruption of
pregnancy with misoprostol. Advances in Contraception. 1996. Mar;12(1):1-9. https://www.ncbi.nlm.
nih.gov/pubmed/8739511


15 World Health Organization. Medical Management of Abortion. Geneva, 2018. https://apps.who.int/
iris/bitstream/handle/10665/278968/9789241550406-eng.pdf?ua=1


16 International Campaign for Women’s Right to Safe Abortion. Canada removes access barriers to
abortion with mifepristone + misoprostol. 30 Apr 2019. http://www.safeabortionwomensright.org/
canada-removes-access-barriers-to-abortion-with-mifepristone-misoprostol/

*1:2021年11月現在82ヶ国

*2:ミソプロストールは、他の産科・婦人科領域でも使用されていることに留意する必要があります。詳細については、国際婦人科・産科連合(FIGO)の2017年に更新された勧告(endnote 6)を参照してください。