リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

今も「搔爬法」がメインのクリニック

「手術法によって差はない」「慣れた方が安全」

Oクリニックの例

初期中絶手術は「ソウハ法(掻爬法)」「吸引法」のいずれかの方法で手術が行われますが、どちらの方法が良いということはありません。手術方法の違いによって、後遺症や不妊になる確率などが変わることは、基本的にはないとされています。そのため、手術方法の違いによる後遺症などについて、過度にご心配する必要はないでしょう。それぞれの手術方法の主な違いは下記の通りです。

ソウハ法(掻爬法)/吸引法(EVA・MVA
手術時間 10~15分程度/10~15分程度
手術方法 トングのような鉗子であらかた子宮内容物を除去したのち、スプーン状の器具・鉗子で子宮内膜を掻き出す/ストロー状の細い管を子宮内に挿入し、子宮内容物と子宮内膜を掻き出しつつ吸引する
前日の術前処置 不要/不要
入院の要否 原則不要/原則不要
合併症の頻度・リスク 少ないですが、予期せぬ合併症が起こる可能性があります/少ないですが、予期せぬ合併症が起こる可能性があります
特徴 日本で従来から行われている中絶方法/世界産婦人科連合・WHO世界保健機構で推奨されている方法
メリット 経験を積んだ医師であれば、鉗子に子宮内の状態が繊細に伝わるため、きめ細やかな操作が可能。手術器具がシンプルなものなので、洗浄・消毒が容易/身体への負担が少ない
デメリット 子宮が変形していると、手術時間が長くなってしまうことがある。子宮内膜を傷つけるリスクを伴う。出血量が多くなる可能性がある/吸引鉗子で吸うだけなので、先端での細やかな感覚が得られず、内膜の遺残がおこりやすい。洗浄・滅菌作業に手間がかかる
痛み 麻酔下で行うため、手術中の痛みはありません 麻酔下で行うため、手術中の痛みはありません
中絶費用 税込99,000円〜(妊娠週数で変動)
※別途麻酔料等頂戴します。 税込99,000円〜(妊娠週数で変動)/※MVAは追加費用として別途¥44,000(税込)がかかります。※別途麻酔料等頂戴します。


Iクリニックの例

中絶手術において、ソウハ法がよいか、吸引法がよいかは、経験豊かな医師であれば手術による後遺症の発生に差は全く出ません。手術方法が二つある理由は出身大学で慣習的に決まります。

多くの大学病院で主として行われる手術法はソウハ法です。中絶手術自体、差がでるような難しい手術ではないので、手術方法による差を出すことは困難です。両方とも簡単な手術方法のため、その手術方法の違いで手術後に後遺症がでるとか、将来的に妊娠しにくくなる などのようなトラブルの原因や差がでることはあり得ません。もし、トラブルが発生するとしたら、器具の消毒が不完全な場合に生じることが多いです。


当院の方法


原則、ソウハ法です。なぜならば、多くの医師がその方法に慣れており、また手術件数が多いため消毒滅菌に制限のある吸引方法は手術数の多いクリニックには向かないためです。

手術方法にて後遺症・副作用の差はなく、むしろ清潔さに依存します。ソウハ法の器具はすべて手術のたびに洗浄・滅菌されますが、吸引法は一度長いチューブを通ってビンに回収されます。
その回収ビンとチューブとの接続部や器械に血液や組織の一部が残り付着する率が高いため(吸引器は毎回洗浄したり、滅菌しないので)不潔な状態がどうしても否定できません。
少しでも感染を起こす可能性のあることを避けるために吸引法は行っていません。