リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

【詳しく】経口中絶薬 どんな薬?安全性と副作用は?費用は?

NHK 2021年12月23日 17時52分

www3.nhk.or.jp


 「経口中絶薬」の承認の申請をイギリスの製薬会社が行いました。承認されれば国内で初めてで、手術を伴わない選択肢ができることになります。

 海外ではすでに多くの国や地域で使用されているという「経口中絶薬」。いったい、どういう薬なのか調べました。



今回申請された「経口中絶薬」とは?
 イギリスの製薬会社「ラインファーマ」が開発した、「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」の2種類です。

 会社によると、この2種類の薬を順番に服用することで、妊娠の継続を止め、排出させる働きがあるとしています。


有効性は?
 「ラインファーマ」は薬の有効性と安全性を確かめるための治験を日本国内で行いました。

 対象は妊娠9週までの120人で、このうち93%にあたる112人が当初想定した24時間以内に薬だけで妊娠中絶を完了したということです。

 残る8人は、一部が体内に残り外科的な処置が必要になったり、時間内に排出されなかったりしたということです。


副作用は?安全性は?
 全体のおよそ60%にあたる71人が腹痛やおう吐などを訴えました。

 副作用と判断された45人のうち1人は発熱など重い症状があったということです。
治験に参加した東京大学大須賀穣教授は「一般的には非常に安全な薬とされ、副作用はほとんどないとされている。ただ、子宮を収縮させるので、下腹部痛や腹痛を感じることは多い。鎮痛剤を一緒に服用することで、痛みはある程度緩和される。また胎のう(胎児と胎盤になるもの)が排出されるので、一定の出血は必ずあるが、それ以上の出血が見られたケースも数は少ないがあった。出血があった場合は、貧血になったりや他の病気が要因となっていたりするので、医師に相談してほしい」としています。


誤飲、悪用防ぐために必要なことは?
 大須賀教授は「悪用されると犯罪につながりかねない薬なので、医師の管理のもとで使用されることが望ましい。薬剤一つ一つに番号をつけて流通を管理したうえで、医師の目の前で服用してもらうなどの方法がとられることになると思う」と話しています。


日本産婦人科医会会長の見解は?
 日本産婦人科医会の木下勝之会長は「医学の進歩による新しい方法であり、治験を行ったうえで安全だということならば、中絶薬の導入は仕方がないと思っている。しかし、薬で簡単に中絶できるという捉え方をされないか懸念している。薬を服用し、夜間に自宅で出血した場合に心配になる女性もいると思う。そうした場合にすぐに対応できる体制も必要だ」と話しています。

 また、日本産婦人科医会は、薬の処方は当面、入院が可能な医療機関で、中絶を行う資格のある医師だけが行うべきだとしています。


会長の見解で望ましい費用は?
 木下会長は「医師は薬を処方するだけでなく、排出されなかった場合の外科的手術など、その後の管理も行うので相応の管理料が必要だ」と述べて、薬の処方にかかる費用について10万円程度かかる手術と同等の料金設定が望ましいとする考えを示しました。


海外では平均約740円ほど(調達の参考価格)
 海外ではすでに多くの国と地域で使用されています。

 UNFPA国連人口基金によると、海外での経口中絶薬の平均価格(調達の際の参考価格)は日本円にしておよそ430円からおよそ1300円ほどだということです。

 WHOによると、海外での平均価格(調達の際の参考価格)はおよそ740円ほどだとしています。


海外ではどの程度普及?
 アメリカのNPO団体「Gynuity Health Projects」によりますと、今回、承認が申請された「ミフェプリストン」は、1988年にフランスなどで初めて承認されて以降、ことし10月までに、世界のおよそ80の国と地域で使用されているということです。

 また「ミソプロストール」は経口中絶薬としては日本以外の多くの国や地域で承認されているということです。


WHOが「必須医薬品」に指定
 WHO=世界保健機関は2005年に、妥当な価格で広く使用されるべき薬として、「必須医薬品」に指定しています。

 ちなみに「必須医薬品」には風疹やインフルエンザの予防接種に使われるワクチンなど540余りの品目が指定されています。


日本での人工妊娠中絶の方法は?
 現在、日本では▼子宮に器具を入れて胎児や胎盤を掻き出す「そうは法」か▼器具で吸い取る「吸引法」▼またはそのふたつを併用する方法がとられています。

 WHOは2012年に発表した安全な中絶に関するガイドラインの中で、「そうは法」は子宮内を傷つけるなどのリスクがあり行うべきでないとし安全な中絶として経口中絶薬か真空吸引法に切り替えるべきだとしています。


国内では薬の利用しやすさを求め署名活動も
 経口中絶薬を安価で利用しやすいようにしてほしいと、7つの市民団体が署名活動を行っていて、12月14日には4万人分余りの署名を厚生労働省に提出しています。

 署名では、経口中絶薬は安全で効果的だとしてWHO=世界保健機関が「必須医薬品」に指定していること、すでに多くの国と地域で使用されていることなどをあげています。

 署名を提出した市民団体の1つ、「Safe Abortion Japan Project」の代表で産婦人科医の遠見才希子医師は「国際的なガイドラインに基づいて運用管理が行われ、中絶薬による安全な中絶が早期に実現することを願っています」と話しています。


今後のスケジュールは?
 厚生労働省はこれから1年以内に有効性や安全性を審査する見通しで、承認されれば国内で初めての経口中絶薬となり手術を伴わない選択肢ができることになります。