リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

緊急避妊薬や今回の中絶薬のことで、よく名前の挙がる「医会」について

知っておいてください いろいろ問題があるのです

正式名称は公益社団法人日本産婦人科医会で、公益社団法人日本産科婦人科学会とは別組織。医会は基本的に「母体保護法指定医師」の集団で、学会は他のすべての学問の学会と同じで「産科学」と「婦人科学」の学者集団です。


医会は優生保護法が作られた時に発足した日本母性保護医協会(通称、日母)の後継組織です。1948年に制定された優生保護法12条に基づく指定医師の団体として、その翌年に設立された日母は、以来、公的統計だけで約4000万件の中絶を独占的に手掛けてきました。


そもそもの優生保護法は、産婦人科医で国会議員だった谷口弥三郎氏が出した法案でした。戦後の混乱の中、「避妊と中絶」の両方を合法化しようとした社会党案をある意味で奪って、「指定医師の産婦人科医」にとって都合のよい(利益のある)法律にした……と言われても仕方がないようなことをしたのです。


戦後9年間、公的統計で100万件も超えた中絶を独占するという特権です。当時の中絶料金は、国家公務員の初任給と同じくらいとも言われています。今だったら学歴次第で違うとはいえ18~22万円です。現在の妊娠初期の中絶でも少し高めのところはそれくらいします。


今でも日本の中絶の過半数で使われている「搔爬という手技は、1906年にドイツから日本に入ってきました。キリスト教国であるドイツでは、この「秘儀」は、命の危険が差し迫った妊婦や、流産後の女性の後処置に使われていたのでしょう
それが、日本では唐突な戦後の「中絶合法化」で採用されたのです。


掻爬は、妊娠週数が早すぎると行えない「手術」です。先端が小さな器具で子宮内膜をぐるりと360度掻き出す搔爬は、妊娠組織が「小さすぎる」と「取り残す」のだそうです。これを知った時は衝撃でした。私自身が、妊娠5週で確定診断を受け、妊娠8週の終わりに搔爬による「手術」を医者に告げられたので。


当初、うぶだった私は、「予約が詰まっていて先延ばしされたのだろうか……」と思っていました。でも、辛かった。お腹の中で育っていく「胎児」をわざわざ大きくしてから中絶するのは、あまりにも凄惨なイメージがあり、「自分が殺すのだ」と思って、苦しみました。


でもそれが、「搔爬」という古い方法を取っていた日本だけの話であって、1980年代前半の私の「苦しみ」は、もし日本の産婦人科医が、海外のように1970年代のゴールド・スタンダードだった「吸引」をいち早く導入していたら、ありえなかったことだと知って…愕然とする一方、怒りが湧いてきました。


今もなお、妊娠にいち早く気づきながら、「手術」を先送りにされている女性たちがいると聞いています。

子どもが欲しくて不妊治療しているのに、流産後に、次の妊娠を危うくする「そうは」で処置されている女性たちがいると聞いています。

医師に嫌味やあてこすりを言われる女性がいるとも聞いています。


中絶薬の承認申請によって、日本の産婦人科医療を見直す時が来ています。日本の「刑法堕胎罪-母体保護法」も変える必要があります。

どちらも女性の「人権」を守っていないからです。

「人権保障」は一番弱い立場の人を守れる制度にしなければなりません。


もう二度と、公衆トイレで産み落とすしかなくなるところに追いやられる若い女性や、罪悪感に苛まれて人生が崩れていく女性たちを出してはいけません。彼女たちは、日本の女性差別的な法と、利権が渦巻く産婦人科医療制度の犠牲者です。中絶は少なくとも現代女性の権利です。


100年前の女性は16歳くらいでお嫁にいき、数人の子どもを産み、母乳育児が長かったので、生涯に50周期くらいしか月経が来なかったそうです。現代女性は、栄養が良くなったので、月経初来は早く、遅くまで月経があるし、子をせいぜい2人くらいで母乳育児期間も短いので、生涯に450周期も月経が来るとか。


つまり妊娠する可能性が9倍にもなっていて、しかも既婚者でない時に妊娠する可能性も高まっている……となると、必然的に産むわけにはいかない妊娠が、急増しているのです。


日本にはリプロも条約も根付いてきませんでした。。その間に、海外では「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」は女性の人権であり、その中でも反対派の攻撃のためになかなか国際文書に書き込めなかった「女性の中絶の権利」が2010年代に、はっきりと明記されるようになったのです!


これを受けて、海外では、アイルランド、アルゼンチン、メキシコ、ニュージーランド、韓国などで、次々と堕胎罪廃止や中絶合法化が行われています

日本に生まれた……ために、国際的に認められている「人権」を保障されないなんてことが、民主主義国家であってはなりません

声を上げていきましょう!