リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ミフェプリストンとミソプロストールの服用方法

複数の方法が提案されています……が

改めて調べなおしてみました。2012年の時点では細かく服用方法が指定されていましたが、徐々に簡略化されていったことがわかります。


WHO『安全な中絶 第2版』2012年

薬剤による中絶の場合に推奨される方法
 薬剤による中絶の場合に推奨される方法は、まずミフェプリストンを投与し、その後にミソプロストールを投与する方法です。


▶妊娠 9 週(63 日)までの妊娠の場合
 薬剤による中絶において推奨される方法は、ミフェプリストンを投与した 1 日〜 2 日後に、ミソプロストールを投与する方法です。(薬剤の投与量及び投与経路については、以下の記載をご覧ください)
(推奨の強さ:強 ランダム化比較試験に基づくエビデンスの質:「中等」)


ミフェプリストン投与後にミソプロストールを投与する場合の投与量及び投与経路
 ミフェプリストンは常に経口投与しなければなりません。推奨投与量は200mgです。
 ミソプロストールは、ミフェプリストン摂取の 1日~ 2 日(24 時間~ 48 時間)後に投与することが推奨されます。
・経膣投与、口腔投与または舌下投与の場合、推奨されるミソプロストールの投与量は 800 μ g です。
・経口投与の場合、推奨されるミソプロストールの投与量は 400 μ g です。
・妊娠 7 週(49 日)までは、ミソプロストールは経膣投与、口腔投与、舌下投与または経口投与のいずれの経路でも投与できます。妊娠 7 週より後は、ミソプロストールは経口投与すべきではありません。
・妊娠 9 週(63 日)までは、ミソプロストールは経膣投与、口腔投与または舌下投与の経路で投与できます。
174 ページ、付録 5、推奨事項 2 を参照。

付録5
安全な中絶:医療保健システムのための技術と政策の手引き(第 2 版)作成のための専門会議からの推奨事項
推奨事項2:妊娠 9 週(63 日)までの薬剤による中絶
推奨事項 2.1
 薬剤による中絶において推奨される方法は、まずミフェプリストンを投与し、その後にミソプロストールを投与する方法です。
(推奨の強さ:強)
備考
・ランダム化比較試験は、ミソプロストールのみの使用と比較すると、組み合わせで用いられる処方(ミフェプリストンを投与した後にミソプロストールを投与する方法)の方が効果がすぐれていることを示しています。
・ランダム化比較試験に基づくエビデンスの質は「中等」です。


推奨事項 2.2
 ミフェプリストンは常に経口投与しなければなりません。推奨投与量は200mg です。
(推奨の強さ:強)
備考
・ランダム化比較試験によると、ミフェプリストン 200mg の摂取は、ミフェプリストン 600mg の摂取と同等の効果があります。
・ランダム化比較試験に基づくエビデンスの質は、「中等」です。


推奨事項 2.3
 経膣投与、口腔投与または舌下投与の場合、ミソプロストールの推奨投与量は800μgです。経口投与の場合、ミソプロストールの推奨投与量は400μgです。
(推奨の強さ:強)
備考
・ミソプロストールの効果は、妊娠期間、投与経路、投与頻度・回数によって異なると言えます。ミソプロストールの投与量を減らしても匹敵する効果がある臨床状況があるとしたら、それはどのような状況かを決定するための研究が現在進行中です。
・ランダム化比較試験に基づくエビデンスの質は「中等」です。


推奨事項 2.4
 ミフェプリストン及びその後に投与するミソプロストールの推奨投与量及び投与方法は以下の通りです。
 ミフェプリストンは常に経口投与すべきです。推奨される投与量は 200mg です。
 ミフェプリストンを摂取して 1 日〜 2 日(24 時間〜 48 時間)後にミソプロストールを投与することが推奨されます。
・経膣投与、口腔投与または舌下投与の場合、推奨されるミソプロストールの投与量は 800 μ g です。
・経口投与の場合、推奨されるミソプロストールの投与量は 400 μ g です。
・妊娠 7 週(49 日)までは、ミソプロストールは経膣、口腔、舌下、または経口のいずれかの経路で投与できます。妊娠7週より後は、ミソプロストールは経口投与すべきではありません。
・妊娠 9 週(63 日)までは、ミソプロストールは経膣投与、口腔投与、舌下投与のいずれかの経路で投与できます。
(推奨の強さ:強)
備考
・ミソプロストールの経膣投与は、他の投与経路と比べて効果が高く、副作用の割合が低いことから、経膣投与が推奨されます。ただし、経膣投与でない方法を望む女性もいます。
・ランダム化比較試験に基づくエビデンスの質は「中等」です。


推奨事項 2.5
 ミフェプリストン摂取の、1 日〜 2 日(24 時間〜 48 時間)後に、ミソプロストールを投与することが推奨されます。
(推奨の強さ:強)
備考
・ランダム化比較試験に基づくエビデンスの質は「中等」です。


推奨事項3:妊娠 9 〜 12 週(63 〜 84 日)における薬剤による中絶
 薬剤による中絶の場合に推奨される方法は、ミフェプリストン 200mg を経口投与し、その 36 〜 48 時間後に、ミソプロストール 800 μ g を経膣投与する方法です。その後ひきつづいて、ミソプロストール 400 μ g を 3 時間おきに受胎生成物が排出されるまでさらに 4 回まで経膣投与または舌下投与しなければなりません。
(推奨の強さ:弱)
備考
・妊娠 9 〜 12 週の薬剤による中絶の処方については、研究が進行中です。この推奨事項は、進行中の研究が完了すると影響を受ける見込みです。
・ランダム化比較試験 1 件及び観察研究 1 件に基づくエビデンスの質は「低い」です。


推奨事項4:ミフェプリストンを利用できない場所での、妊娠 12 週(84 日)までの薬剤による中絶
 ミフェプリストンを使用できない場所での、薬剤による中絶で推奨される方法は、ミソプロストール 800 μ g を経膣投与、または舌下投与することです。短くとも 3 時間は間隔を空けて、ただし、12 時間以上間隔を空けることなく、ミソプロストール 800 μ g を 3 回まで繰り返し投与できます。
(推奨の強さ:強)
備考
・ミソプロストールの舌下投与は、経膣投与よりも副作用が高いとされています。また、未経産の女性の場合、繰り返し投与される間隔が 3 時間より長い場合、舌下投与は効果がより低いとされています。
・ランダム化比較試験1件に基づくエビデンスの質は「高い」です。
ミフェプリストンにミソプロストールを併用する方法は、ミソプロストールのみを用いる方法よりも効果が高く、副作用がより少ないとされています。メトトレキサートにミソプロストールを併用する方法は、いくつかの地域で用いられていますが、WHO は使用しないことを推奨している方法です。この方法はミフェプリストンにミソプロストールを併用する方法よりも効果は低いですが、ミソプロストールのみを用いる方法よりも効果が高いです。


推奨事項5:妊娠 12 〜 14 週(84 〜 98 日)を超えた妊娠の中絶方法
 頸管拡張及び子宮内容物排出術(D&E)及び薬剤による中絶(ミフェプリストン及びミソプロストール、並びにミソプロストールのみ)はいずれも、妊娠 12〜 14 週を超えた妊娠中絶の方法として推奨されます。医療施設は、少なくともいずれかを提供しなければならず、医療従事者の経験及び訓練の利用可能性にもよりますが、可能であれば両方の方法を提供することが望ましいです。
(推奨の強さ:強)
備考
・治験においてランダムに、外科的中絶か薬剤による中絶かに振り分けられることを女性が望まないため、この問いへのエビデンスは限定されています。
・ランダム化比較試験に基づくエビデンスの質は「低い」です。
・女性に上記 2 つの方法のいずれかに対して禁忌がある場合、中絶方法についての女性の選択が制約されるか、または適用できないことがあります。


推奨事項6:妊娠 12 週(84 日)より後の薬剤による中絶
 薬剤による中絶の場合に推奨される方法は、ミフェプリストン 200mg を経口投与した 36 〜 48 時間後に、ミソプロストールを繰り返し投与する方法です。
(推奨の強さ:強)

  • 妊娠 12 〜 24 週の場合には、ミフェプリストンを経口投与した後の初回のミソプロストールの投与量は、800 μ g の経膣投与、または 400 μ g の経口投与のいずれかと言えます。その後ひきつづいて投与するミソプロストールの投与量は 400 μ g でなければならず、3 時間おきにさらに 4 回まで、経膣投与または舌下投与しなければなりません。
  • 妊娠 24 週を超えた場合、子宮がプロスタグランジンに対する感受性が強くなるため、ミソプロストールの投与量を減らすべきですが、臨床研究が乏しいため、推奨される具体的な投与量は不明です。

(推奨の強さ:強)
 ミフェプリストンを使用できない場所で、薬剤による中絶で推奨される方法は、ミソプロストール 400 μ g を経膣投与または舌下投与し、3 時間ごとに 5回まで繰り返し投与することです。
(推奨の強さ:強)
備考
ミフェプリストンとミソプロストールの投与の間隔が 36 時間未満の場合、受胎生成物の排出までにかかる時間がより長くなり、かつ、不完全な中絶(不全流産)の割合がより高くなります。
・乳酸エタクリジンを使用した場合、受胎生成物の排出にかかる時間はミソプロストールのみを用いる処方をした場合とほぼ同様です。乳酸エタクリジンの使用の安全性または効果を、ミフェプリストンとミソプロストールの併用処方の使用の場合とを比較する調査はなされていません。
・子宮瘢痕のある女性が、妊娠第二期の薬剤による中絶の際に、子宮破裂する危険性は非常に低いです(0.28%)。
・未経産の女性がミソプロストールのみを用いる場合、舌下投与よりも経膣投与の方が効果はより高いです。
・ランダム化比較試験に基づくエビデンスの質は「低い」 〜 「中等」です。


Clinical Practice Handbook of Safe Abortion(2014年)

9週(63日)までの場合:
ミフェプリストン200mg 経口 単回服用
ミソプロストール800 µg 経腟、口腔または舌下 単回服用
 もしくは
7週(49日)を超えていない場合:
ミフェプリストン服用後24~48時間にミソプロストール400 µg 経口 単回服用

9~12週(63~84日)の場合:
ミフェプリストン服用後36~48時間にミソプロストール初回800 µgを経腟で、続いて400 µgを経腟または舌下で3時間ごとに5回まで服用


ミソプロストール単独の場合:
9週(63日)まで、および9~12週(63~84日)について
ミソプロストール800 µgを経腟または舌下で3~12時間毎に3回まで服用


12週(84日)以上の場合:
ミフェプリストン服用後36~48時間後にミソプロストール初回800 µgを経腟で、続いて400 µgを経腟、舌下または経口で3時間毎に5回まで
  あるいは
ミソプロストール400 µgを経腟または舌下で3時間毎に5回まで


24週を超えた妊娠については、子宮のプロスタグランジン製剤に対する感度が高まるためミソプロストールの使用量を減らすが、臨床試験に基づいた具体的な投与量の推奨はできていない。


Medical Management of Abortion(2018年)

表1 内科的中絶(流産)のまとめ
1A 不全流産(13週未満)ミソプロストール単独 経口で600μgまたは舌下で400μg
1B 不全流産(13週以上)ミソプロストール単独 口腔、経腟、舌下で400μgを3時間毎に
2 子宮内胎児死亡 ミフェプリストン経口200mgを1回、1~2時間後にミソプロストールを経腟または舌下で400μgを4~6時間毎に
          あるいは舌下(より望ましい)または経腟で400μgを4~6時間毎に
3A 中絶(12週未満) ミフェプリストン経口200mgを1回、1~2時間後にミソプロストールを口腔、経腟または舌下で800μg
          あるいは口腔、経腟または舌下で800μg
3B 中絶(12週以上) ミフェプリストン経口200mgを1回、1~2時間後にミソプロストールを口腔、経腟または舌下で400μgを3時間毎に
          あるいはミソプロストールを口腔、経腟または舌下で400μgを3時間毎に




表2 本ガイドラインと過去のガイダンスとの顕著な相違点
ミフェプリストンとミソプロストールの投与のタイミング
ガイドライン(2018):時間ではなく日数で示す
従来のガイドライン(2012):妊娠9週目以降の人工妊娠中絶については、時間単位(例:36~48時間)で表示していた

ミソプロストールの容量
ガイドライン(2018):ミソプロストールの容量を指示する必要はない
従来のガイドライン(2012):従来は妊娠9週目以降の人工妊娠中絶のために追加のミソプロストール投与量を変えていた(最初は800μg、追加は400μg)

ミソプロストールの最大投与回数
ガイドライン(2018):このガイドラインではミソプロストール投与回数を指定しない
従来のガイドライン(2012):従来のガイドラインでは最大投与回数を5回と指定していた