リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「堕胎罪」「保護法益」で国会議事DBを検索

該当会議録:10件 / 該当箇所:62

第13回国会 参議院 厚生委員会 第10号 昭和27年2月28日
031 谷口弥三郎
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○谷口弥三郎君 最近堕胎の罪というのに対して多いのは、もう現在要らないじやないかというようなかたもたくさんいられるようでございますし、私どもの同僚の山下先生もよくこの堕胎の罪の問題をお話を頂いたりしておるのですが、法務府の刑事局などにおきましては、これに対してどういう只今お考えを持つておられるでしようか。或いはだんだん最近変つて来たような情勢でございまするから、そういうことについて一つ……。
032 神谷尚男
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○説明員(神谷尚男君) 先ずお尋ねの第一点につきましてお答え申上げたいと思います。只今お手許にお配りいたしました表が昭和六年以来の検察庁における堕胎罪に関する受理、処理の人員の比較表でございます。これを御覧になりますと、おわかりになりますように、起訴の数が戦前におきましては、少くとも百以上を数えておりまして、昭和九年、十月、十一年頃は三百、二百という数を数えておつたのであります。ところが戦後になりますと、昭和二十一年以後は殊に昭和二十一年、二十二年は三十四、三十一という数でございましたし、二十三年以後も八十乃至六十といつた数でありまして、起訴されております者の数は著るしく減つたということができるかと思います。なおこの表にはございませんが、更に遡りまして申上げますと、明治の末から大正にかけましては、大体一年に六百人ぐらいの起訴者を見ておつたようでございます。従いましてまあ大体大ざつぱに申上げますと、累年堕胎罪によつて起訴される者の数が減つて参つておるということはできるかと思われるのであります。一方不起訴者の数がこれに伴いまして殖えております。不起訴の数につきまして、古いものにつきましてちよつと至急統計を調べることができませんでしたので、最近の昭和二十三年、二十四年、二十五年というものにつきまして、罪種別にやや細かく統計を調べて参つたのでございますが、起訴者に比べまして起訴猶予ということで処分を受けておる者の数が非常に殖えて参つておるということが言えるかと思います。更にこの職業別というお尋ねでございましたが、これは職業別まではちよつと統計がはつきりいたしておりませんので、罪種別によりまして、職業を推定するという程度でお許し願いたいと思うのでありますが、この罪種、堕胎の態様のうちの堕胎、刑法二百十二條に該当するものがこれがいわゆる堕胎を受ける婦女のものでございます。これが例えば昭和二十三年で申しますならば、七十三人起訴されておるということになるわけであります。それから業務上墜胎と申しますのが、医師とか助産婦、こういつた職業にある者の堕胎の罪でございまして、これによつて起訴された考が昭和二十三年には七人、それから昭和二十四年には九人、昭和二十五年には十八人ということになつております。更にその業務上堕胎によりまする致死傷の罪が昭和二十三年には一人、二十四年には一人、昭和二十五年には四人という数を示しておるのでありまして、まあこれによつて大体御推察願えるかと思うのであります。
 次に堕胎罪に関して法務府のほうとしてどういうふうに考えておるかという点についてお答えを申上げます。御承知のように堕胎罪というものによつて保護されております法益につきましては、学説上はいろいろ論議がございますが、要するに一つは胎児に対して国家が保護を與えるという点にあろうかと思います。即ちまだ人間としましての権利というものは持つに至つておりませんが、人として生まるべき期待権とでも申しますか、そういうものにつきましてやはり国としては保護をする、両親その他が勝手にこれを処分するということにつきましてはやはり国としては面白くないものと考えて、胎児の権利、というと少し語弊があるかも知れませんが、胎児に対して保護を與えるという面が非常に強く出ておるのではないかと思うのであります。この裏付としましては、キリスト教的な精神乃至はそれに伴いまするヒユーマニズムの観念があるのかと存ずるのでありますが、それが第一に考えらるべきものだと思うのであります。その次にはやはり堕胎行為をすることによつて母体が危険にさらされることから保護する母体の保護ということもありましようし、更には国として、例えば人口が少いという場合には国が人口の増加を図るといつたような面も考えられるのであります。又更に社会の道徳風教の維持といつた面からもこの保護法益が考えられるということを唱える人もございます。併し今日の場合におきましては、国が人口増加を図るといつたようなことは先ず問題にならないのでありまして、やはり第一に考えられるのは胎児の権利の保護、或いは人工妊娠中絶によります、その手術によります母体の危険ということを守るということにあろうかと思うのであります。併しそればかり強く申しまして、そればかりを強く唱えるということはこれはできないのでありまして、一面やはり子を生むということによりまして母体は非常に危險にさらされる、生命或いは健康に非常に有害であるといつたような場合、或いは子供を生みますことによりまして非常に母性の、経済上の逼迫ということによりまして非常に危險を伴うといつたような面、或いはそれによりまして母性が非常に名誉を失墜するといつたようなことを考え合せますと、やはり両面からものを考えなければならんかと思うのであります。従いまして法務府といたしましては、堕胎ということは今日の段階ではまた全面的に廃止するといつたことにはまだ賛成しがたいのでありますが、これにつきまして或る程度の違法阻却の面を考えて行くということにつきましては全然異存がないのであります。まあそういつた面で優生保護法の戦後立法されましたということにつきましては、実質的には刑法の改正ということになるのかと存ずるのでありますが、そういつた面で堕胎罪の緩和ということが行われますということにつきましては、異存はないということを申上げておきたいと考えております。
033 山下義信
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○山下義信君 堕胎罪の問題は優生保護法当初第一回にやりますときに、その当時の木内刑事局長ですか、見えまして、そしていろいろ我々と質疑応答した結果、今政府委員のお答えになりましたように、刑事政策としてこういう時代風潮の流れに従つて刑事政策として成るべく堕胎罪は罰しない、又検挙しないという方針をとることにして、そういう方針にして部内にそれを一つ適宜指示するということであつた。それから去年の冬の補正予算予算委員会で、私は大橋法務総裁にそのことも言い、又堕胎罪の廃止については考慮してもらうように言いまして、総裁は考慮しましよう。堕胎罪の廃止は考慮しましよう。つまり刑法の改正も一つ検討してみようというような答弁を頂いておつた。その後しばしば、しばしばといつても一二回検察当局にも部内に一つ堕胎罪の検挙については十分考えるようにその政策をとつて頂くように申して、速記に残つている面もある。それで例えば昭和二十六年の表を見ませんからわかりませんが、我々がそういうことを言い出して、昭和二十四年頃から見ても受理人員というものが減つてない。それで今この資料を見て起訴、不起訴の区別から見ると、起訴しないということになつている。これは当然の話です。合法的な堕胎を一方に許しておいて、貧困者が止むを得ずして妊娠中絶の費用とか、そんなことに費用の払えない階級に多いこの種の犯罪を、これを起訴するなんてことが非常識なことは言うまでもないことですから、不起訴が多くなるのは当り前で、結構でございますが、一方受理人員というものが漸次増加しておるということは、これは御注意を願わなければならない。只今おつしやつたその方針がいろいろ末端の警察関係などに徹底してない証拠です。で、これは私が釈迦に説法で申上げるまでもなく、この種の事件は警察でこれが事件化せられたということが非常に当該本人に苦痛を與えることは言うまでもないことであります。起訴不起訴なんてことは問題じやない。これが警察に呼ばれて調べられて、いうまでもなく有名な嬰児殺しの名作を見ても分るようにですね、ですから警察などは知らん顔をしておるべき性質のものです。これを事件として受理しているということの件数が殖えているのは、これは只今検察当局からのその御方針が末端に徹底してない証拠です。どうか一つ今後ともこの種の事件の取扱方につきましては、越訴不越訴については只今の御説明で十分御留意下されておるようでありますが、その一歩手前のこれらを事件化しないように、末端に適当な御配慮を願いたいと存じますが、その点如何でございましようか。
034 神谷尚男
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○説明員(神谷尚男君) この受理人員が増加しているのはおかしいじやないかというお尋ねでございます。最近におきまして警察が積極的に堕胎罪について検挙するといつたような風潮は先ずないものと私は考えております。ただいろいろなトラブルから、堕胎につきまして告訴とか告発とかいうような事態がまだ相当あるようでございます。告訴、告発がありますと、刑事訴訟法の規定によりまして、一応事件としてこれはとり上げて行かなければなりませんので、そういつた副作用的な面から現われるものがあります。或いは又堕胎によつて、この告訴告発の中にはいろいろな種類のものがありますが、或いはそれによつて非常に障害を受けたとか、死亡したとか、いうようなことから告訴、告発が問題になることもありまして、積極的に堕胎罪について検挙の手を伸べるということは、現在の警察の方針としましてもないものと考えております。なおその点につきましては、今後もこういう行き過ぎなことのないように取計いたいと思いますが、このそういつた事情を一つお汲み取り下さるように願いたいと思います。

第98回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 昭和58年3月23日
074 渡部通子
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渡部通子君 私は、いま大変論議を呼んでおります優生保護法の問題につきまして、これは婦人の人権と福祉行政に重要なかかわりのある問題でございますので、いろいろ議論が言われておりますけれども、改めて大臣の基本的なお考え、それを順次お尋ねをしておきたいと思います。
 人工妊娠中絶適用条項の中の「経済的理由」、これを削除する改正案の今国会提出、これについては、断念したとかあるいは流動的だとか取りざたをされておりますけれども、どのような扱いになりましたですか。
075 林義郎
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国務大臣林義郎君) 渡部先生の御質問にお答え申し上げます。
 一部新聞で断念したとかというようなことが報道されておりますが、私はそういったことを申し上げたことは一つもございません。この人工妊娠中絶制度につきましては、私は、優生保護法の十四条の経済的条項を削るとかなんとかということだけで済む、こういうふうに考えているなどということも申したことは全然ありませんし、また、そういったことでやろうということを考えたこともございません。私は、いままで国会で御答弁申
し上げておりますのは、広く国民のコンセンサスが得られるような形のものでなければならないから、そういった形で検討を進めておりますということをしばしば当委員会、また、そのほかの委員会でも申し上げておるところでございます。いままで、当委員会におきましても、また、その他の委員会におきましてもいろいろな御意見が出てまいりましたから、そういったものを踏まえましてさらに慎重に検討を続けてまりたい、こういうことでございます。
 お断りしておきますけれども、政府といたしましては、国会が一月に再開されましたときに、国会提出予定法案調というのを参議院の議運の方にも御提出してお話しを申し上げております。そして、その中には提出予定法案と、そのほか検討すべき法案というのがございまして、当省関係といたしましては、優生保護法母子保健法の二つの法案が検討すべきものと、こういうことに出しておりますから、私の方は政府が出した形のままでお願いをいまやっている、こういうことでございます。
076 渡部通子
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渡部通子君 お答えよくわかっております。コンセンサスが得られれば、得られる方向でと、こういうお話で、きわめて政治的な御発言だと思うんですけれども、国民のコンセンサスというのは、いまのところ得られそうもないんですね、なかなか。反対団体というものがこれだけ多数ございまして、今国会にはおよそ無理ではないか、その見通しも大臣ございませんですか。まだ出す方向で検討をなさるということですか。
077 林義郎
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国務大臣林義郎君) 先生そうおっしゃって、あえてお言葉を返すようでございますが、私もこまめに、優生保護法を改正すべきであるという方々の御意見も聞いておりますし、それから反対だという方々の御意見も聞いているんです。時間が許せば、いろんなところでお話を聞くということにしております。
 一つには、生まれ出るところの子供というのは、やっぱり大切なものである。人類ですから、生まれ出る子供を道具のごとく捨て去るなどということはだれも考えておられないではないか。しかし、やっぱり人工妊娠中絶をしなければならないことが出てくるのは、いろんな要因があって出てくるわけですから、その点についてはやっぱりお話を十分聞いていろいろとやらなければならない問題ではないかということは私は方々でお話しを申し上げております。それからもう一つは、やはりこの問題において、国会の中でたとえば強行採決をしたりなんかしてやるような話ではないでしょう、この問題は。やはり広く国民の大多数の方々に御信頼をいただけるような形のものにしていくということが、また、そういったものでなければ私はなかなか出せないのではないか、こう考えているということを申し上げますと、これはいずれの方の方からも、それは林さんの言うとおりであると、こういうふうな話まではなっておるわけです。
 ですから、それじゃその法案をどうするかなどということになりますと、それから先は幾つもまだ問題がありますから、たくさんのハードルを越えていかなければならない。しかし、これはいまの基本的な考え方において一致しているならば、法律は男を女に変える以外は何でもやれるということですから、私はそういったことからすればできないというような話ではないと、こう考えているところであります。
078 渡部通子
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渡部通子君 大変歯切れの悪いお話しで、少し簡潔にお願いしたいと思います、何しろ時間を気にしておりますものですから。大臣が時間を食って答弁をしていらっしゃるというところにこの問題の本質があるような気がいたします。
 この経済的理由の削除、これは六十八国会、七十一国会に提出されて婦人団体や医師会と多くの反対に遭って未了になった。これは御存じのとおりです。今回も同じことを繰り返しているわけですね。仮に今国会で法案上程が見送られたとしても、生命尊重国会議員連盟などが結成されておりまして、必ずや選挙が終わったらまたぞろ出てくるのではないか。これはもう十分考えられることで、なぜこれほどまでにして経済的理由を削除しなければならないのか、その考え方の根拠をひとつお示しください。
079 林義郎
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国務大臣林義郎君) 簡単にお答え申し上げます。
 私から生命尊重議員連盟の方々のお話を申し上げるのは僣越だと存じますからお答え申し上げませんが、一般的に、先ほど申しましたように、人間というものは、新憲法の精神にも基づいて、やっぱりその生命は尊重されなければならないという基本的な考え方があるというところに私は立脚しているものではないかと、こういうふうに思っております。
080 渡部通子
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渡部通子君 当然の話でありまして、そんなことはお答えをいただくまでもないんです。いま、生命尊重派のことは言えないということでございますが、大体経済的理由が乱用されている、生命軽視の風潮につながっているというようなことが、胎児の生命を尊重しろというようなことが反対理由の主なことだと思うんです。それはあたりまえのことでございますが、みだりに中絶が行われているから、だからこれを禁止しろ、これは乱暴なやり方でございまして、それならば、時間がかかってもそうならないような予防とか教育とか、そっちに力点を置いて、じわじわと国民を啓発していくという方向に政治のかじをとっていただくのが大臣です。それをすぐ法律で縛ろうと、この短絡的な物の考え方というのは非常に危険だと思うんですね。それだけ私は本質的な問題としてお願いをしておきたい。推進派の意見も強いとおっしゃるけれども、大体、生命尊重、胎児の命を大事にしましょうと言って、それに反対などと言う人はいないんです。それはもう同じであります。だから、そういう形で署名運動などやられれば、それは皆賛成するに決まっている。しかし、その次の段階というものを聞かされずに賛成をしたというのが私の知っている人たちでも、特に男性の中には多いわけですね。だから、そういった状況もよく賢察をしていただかなければならないと思うんです。
 それでは逆に聞きますが、経済的理由を削除することによって弊害はどう生ずると認識をしていらっしゃいますか。
081 林義郎
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国務大臣林義郎君) いま先生のお話しのこと、私も全く同感なんです、それは。これがあるから、広過ぎるから、すぐに削ってしまえなどというふうな短絡的な議論ではないから、私は、先ほど申しましたバリアがたくさんあります、いろんなことを考えていかなければならないし、それでコンセンサスを求めていく必要があるだろうと、こういうふうに私も考えております。
 それから、いまの条項を削って人工妊娠中絶というものを非合法化してしまえば相当に問題が出てくるということは、これは社会風潮からすれば容易に察することができるところでありまして、それを法をもって処断をするか、おっしゃる教育その他社会制度でもって改めていくかというのは、政治家が考えるべき大問題だろうと私は思っております。
082 渡部通子
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渡部通子君 弊害が出てくるだろうということは容易に察しがつくということでございますから、時間がありませんのでそれを細かくお聞きすることは省きますけれども、少なくとも、やみ中絶がふえるとかあるいは未婚の母が増加するとか、いまの状況では、そういったことで母親の子殺しとかあるいは堕胎罪にひっかかる女性がふえるとか、こういう社会問題を当然大臣も御存じで、いま、容易に察しがつくと、こうおっしゃったと私は受けとめます。本当は時間があれば伺いたいのです、一つ一つね。ですから、これほど大臣も容易に察しがつくというような状況でありながら、なおかっこの経済条項を削除するという法改正をいまのところ放棄なさらない、これは私は不思議でならないのですよ。どうしてもうしばらく待つと、少なくも大臣御在任の間はやらないと、こういう御回答がいただけないかということが不思議であります。
 それで、改正推進論の基盤は、宗教哲学に根差す生命尊重論、これにあるようでございます。これはもう自由であります。当然のことです。ですが、これはあくまで精神運動にとどめるべきでございまして、その理念をこうした理論に基づいて個人の基本的人権を規制するような法改正の手段に持ち込む、こういうことは行うべきではないという意見がございますが、大臣はいかがお考えですか。
083 林義郎
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国務大臣林義郎君) 宗教的な規範とか社会的な規範とか民族的な規範とかいろいろあります。私は法律規範というものを、それと必ずしも宗教的規範があるから法律的規範をつくらなくちゃならないとは考えておりません。おりませんが、これは多分に重合する部分もあると思うのです。ですからその辺をやっぱり考えていかなければならない。先ほど先生にお話し申し上げましたように、いろんなことを考えてこれはやらなければならないから、したがって私は単に十四条の改正で済むとも考えていないんです。いろんなことを考えてやらなければならないし、また、どういうふうな形でやるかというのも総合的な施策を考えた上でこういうふうな形で持っていったらどうだろうかなということを考えていかなくちゃいけませんから、そのいろんなことの積み上げの中で、最後に法律規範としてはこうしましょう、道徳規範としてはこうしましょう、宗教規範としてはこうしましょうということの区分けをしていくことが私は一つの作業としては必要なことではないか、こう思っているのです。
084 渡部通子
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渡部通子君 まあ大臣の慎重にやるという一面、これには私は大いに期待をさせていただこうと思っているわけでございますが、午前中も議論になりましたけれども、いまほど命とか生きるとか死ぬとかという問題が大事に問われている時期はないと思うわけですね。先ほど審議会をおつくりになるということでございましたので、あえて重ねてお尋ねはいたしませんけれども、この生命の問題に関する審議会はひとつ幅広くいろんな立場の方を入れていただいて慎重にお進めいただくことを重ねて私からもお願いをしておく次第なんです。
 それで、胎児の生命を大事にする、これは当然ですけれども、胎児の命をいつから生命とみなすか、これ一つとっても大事なことだと思うのですね。だから、キリスト教あたりが言うように、受精したときその卵をすでに生命とみなすというような議論があれば、体外受精に失敗すればこれは堕胎罪ですよ。ここまで議論は広げて考えなきゃならないときに、経済条項だけ削除するなんていう乱暴な話はないんです。だから私は推進派というものの気持ちがわからないのですけれどもね。もう少し慎重にやってもらわなきゃならない。
 そこで伺いますけれども、どうしても、子供は大事だけれども、胎児の命もわかるけれども、母親の生命と子供の命と二者択一を迫られたとき、判断は命というものに対してどうなさるのか。産む、産まないの決定は一体だれが決めるとお考えでございますか。
085 三浦大助
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○政府委員(三浦大助君) 人工妊娠中絶制度と申しますのは、胎児の生命も尊重しながら母性の生命の健康を保護するためのいろんな条件を決めておるわけでございまして、たとえば先生御指摘の経済条項の削除ということがいま議論になっておるわけでございますが、これは言ってみれば中絶を狭めようというわけでございまして、そのあり方について、先生の御指摘のあり方についていまいろいろ議論があるわけでございまして、先ほど大臣から御答弁ございましたように、国民的なコンセンサスが得られるような方向で考えていきたいと、こういうわけでございます。
086 渡部通子
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渡部通子君 これはお答えになっていないんですわ。それはもう子供は本当に大事だけれども、避妊に失敗したとか欲せざる妊娠をしてしまったとか、そうやって産みたくない、産めないという場合に、選択を、命という問題に対してどうお考えになりますか。そのときの決定はだれがするんでしょうかと聞いております。
087 林義郎
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国務大臣林義郎君) 一般的に申しますと、いまの体系のもとでは私はお医者さんだろうと思うんです。もちろんそれは母親の命というものを十分考えなくちゃいけませんし、それから、もしも出産することによりまして母親が生命に危険があるということになれば、やっぱり母親の命を尊重するということは医師としては当然に私は考えることではないかと思いますが、それはいろんなケースがあるだろうと思いますね。恐らくいろんなケースがあるだろうと思います。しかし、そこでどうするかということはやっぱり医師の判断ではないか、こういうふうに考えております。
088 渡部通子
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渡部通子君 その母親と子供の命を選択を迫られたときのあれは、やっぱり生命のキャリアから見ても、重みという点では母親をとらざるを得ない、それはおっしゃるとおりだと私も考えます。
 それから、産む、産まないということを最終的に決定するのは医師の選択だと、医師の決定だと、いまこう言われました。私は、それも一面。それから、もちろん両親の気持ち、両親の話し合い、医師との話し合い、しかもその医師は倫理観をきちっと持った人でなければ困る、これが自然だと思うんですね。それを法律で決めてよろしいものでしょうか。
089 林義郎
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国務大臣林義郎君) 前段の方は私も先生と同じに感じたんですね。だからそこは、本来それは倫理規範であって法律規範でないということなのか、やっぱりそこは法律で何かはっきりしておいた方がいいか、宣言的な規定で書いておくかというような話があるんだろうと思いますね。だからそこをどうするかというのも一つの問題なんです、いま私たちの方で考えておりますのは。
090 渡部通子
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渡部通子君 いまの改正という声は経済条項を削るということでしょう。そうなりますと、いま私が申し上げたもうぎりぎりの選択を迫られた避妊も、いまはこの経済条項でおろさしてもらっているんです、実を言うと。喜んでおろしている女性なんかもう一人もおりません、こんな嫌な話はね。泣く泣くおろす場合にその条項に頼らざるを得ないという、この条項は十分御承知だと思うんですよ。その判断のときに、それでも産まねばならないという規制を、国なり法律がやっていいとお考えでございますか。
091 林義郎
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国務大臣林義郎君) 私は、さっきから申し上げていますように、十四条を改正して、それだけでもって足りるなどということは一つも考えていないので、いま先生からお話しがありましたような問題を、果たして法律的な規範としてやるのがよろしいのか、倫理的な規範としてやるのがよろしいのか、そういったことも含めていま考えていると、こういうことでございまして、お話の趣旨は私も非常によくわかるんです。
 それからまた、いま先生の言われた、母親をとるか、子供をとるかというような、どっちをとるかというような境目になったときにどうしますかという問題は、きわめて深刻な話であるけれども、やっぱりそこはこの問題を解決するときに避けて通れない問題であるということも十分に存じているつもりでございます。
092 渡部通子
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渡部通子君 それでは、国連の人権宣言、それから国際婦人年の世界会議における決定、こういったものを重々踏まえた上で、ひとつ世界の常識に外れないように、産む、産まないの決定を法がしてはならないと私は思います。それを女の権利だなどと肩ひじ張って言うつもりは全くないんです。これはもう本当に倫理観を持った医者と、泣く泣く両親と——その場合、男も加わってもらわなければ困るのですよ、責任者なんですからね。そこでよく話し合って人間的に判断を下すべき問題。そこに国が介入をしたり法律で縛ってはならないということは国連でも決定しているし、国際婦人年でも決めた問題なんだと、それをよく厚生大臣も事務当局も御了解をしておいていただきたい。これは重ねてお願いをする次第なんです。
 それで、その子供を安心して産み育てる社会的整備をやるという、こっちをむしろ急いで、大きな声を出して進めてもらわなければなりません。
それで、生命尊重の立場に立つならばこの弊害除去、こちらにむしろ力点を置いていただきたい。
 それで、その避妊法ですね、わが国では、まだ避妊法すら確立されていないわけですね。だから私はよく言うのですけれども、水道の蛇口をひねりっ放しにしておいて経済条項を削るというのは、ホースの先を詰めるだけの話だ、どこかでパンクすると、こう申し上げているのですけれども、ピルはまだ解禁していないんですね。しかし産婦人科の医者に行くと幾らでももらえるわけですよ。だから厚生省は黙って見逃しているという状況にあるわけですね。そんな暗いやり方ではなくして、むしろピルにおける安全性と副作用の危険性、あるならあるで情報を提供したらいかがか。たばこと併用しちゃいかぬとか、あるいはどのくらいの期間なら飲んでもいいとか、そんなようなことがきっと医学的にもあるんだろうと思うのですね、世界でこれだけ行われている以上は。産婦人科医が渡すのを厚生省も黙認をしていらっしゃるわけですからね。そういった意味で、むしろ避妊法をどう確立するかという方に力点を置き、ピル等についても情報をきちっと流していただきたい、こう思いますが、いかがですか。
093 林義郎
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国務大臣林義郎君) 望ましくない子供が産まれ出てくるということはやっぱり家族計画上も問題もありますし、私は、御指摘のようなことも考えながらいまの問題はやっていくことが必要だろうと思うのです。やっぱり子供は祝福されて出てこなければならないものだろうと思いますね。それで、そのためにはやっぱりいろいろな家族計画であるとか、いまお話しのようなことを、またそのほかのいろいろな方式もあるのでしょう、私も詳しいことは知りませんけれども、いろいろあるのでしょうから、そういったものをやっぱりいろいろ総合的に考えていくことが私は必要なことではないだろうか、こう思っているのです。
094 渡部通子
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渡部通子君 そこで、堕胎罪について私も一言伺っておきたいのですが、いまどきのお方は堕胎罪などというものがあることすらみんな知らないという状況のこれは刑法でございますが、法務省に、堕胎罪というのは簡単にどんな法律なのか。簡単で結構です。
095 土屋眞一
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○説明員(土屋眞一君) 堕胎罪の定義を申しますと、御案内のとおり、自然の分娩時に先立ちまして人為的に胎児を体外に排出することを言うのでございまして、胎児の生命、身体、それに妊婦の生命、身体を保護法益とする犯罪でございます。
096 渡部通子
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渡部通子君 中絶は犯罪と位置づけているわけですね。
097 土屋眞一
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○説明員(土屋眞一君) 優生保護法によります人工妊娠中絶につきましては、刑法三十五条のいわゆる法令による行為ということになりまして、したがって、それによる行為は違法性が阻却されますので刑法に言う犯罪には当たらないということになるわけでございます。
098 渡部通子
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渡部通子君 優生保護法でなくて、堕胎罪それ自体は犯罪と、中絶を見ているわけですか。
099 土屋眞一
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○説明員(土屋眞一君) 優生保護法によるそういう適法な人工妊娠中絶以外の人工妊娠中絶は、当然刑法における堕胎罪に該当するわけでございます。
100 渡部通子
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渡部通子君 そこで厚生大臣に御見解を承りたいのですが、やはり経済条項をなくすことによって堕胎罪がふえる、これはもう当然考えられることでございますが、そうすると、この堕胎罪の存在自体を厚生大臣はどうお考えになるか。
 あるいは優生保護思想というものをどう見ていらっしゃるか。
 それから、堕胎罪それ自体の中身ですが、これは堕胎をした女性と手術者だけが罰せられるという中身、これは不平等な立法ではないかという、この三点を伺います。
101 林義郎
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国務大臣林義郎君) 堕胎罪をどう見るかというお話ですが、これは法務省の方の御所管ですから、私からどうだこうだという話は差し控えたいと思うんです。ただ先生、戦後に姦通罪というのがなくなりましたね。だから、この堕胎罪というものは日本の法律としてちゃんといまある法律ですから、私はその法律はやっぱり守らなければならないものだろうと思いますし、これをどうするのかというのは、諸外国の事例も考え、また、社会的な状況も考えて、この問題はどうするかということを考えなければならない。現実にある刑法法規でありますから、これはやっぱり刑法法規として尊重しなければならないだろうと思うんです。
 それから優生保護法でございますが、産まれ出てくる子供が、非常に困る子供が出てくるであろうということを考えて優生保護と、こういうふうなことが優生保護法の本旨だろうと思うんです。遺伝の関係その他のことがありましてどうも好ましくないというようなことが法律にも書いてありますから、そういったことをやるのが大体私は優生保護の基本的な考え方ではないだろうかなと、こう思うわけでございます。
 女性に対する差別ではないかと、こういうふうな話ですが、この辺はさっき先生がおっしゃいました世界人権宣言、国連の婦人年のときに設けられました権利宣言などを見ましても、私はやっぱりいろいろ考えていかなければならない問題があると思いますが、いまこの規定があるからといってすぐに女性差別であるというところまでは断定するのはどうか、まだまだいろいろと議論をしていかなければならない点があるように考えております。
102 渡部通子
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渡部通子君 私の質問とちょっとすれ違っている点があるんですけれども、大変危険なこともおっしゃったんですよ、厚生大臣。というのは、そうすると優生保護というものはやっぱり余り障害のある子は産まない方がいいという、こういうこともおっしゃった。
 私が伺いたかったのは、堕胎罪というものが犯罪として中絶を見ていることですね。優生保護法というのはむしろ適用除外法ですから、ですからこれは経済条項をなくしてしまうと、中絶した女はみんな犯罪者になるんですよ。(「そうじゃないよ」と呼ぶ者あり)そうなんですよ、法律がそうなっているんだから。——そういうことになったら、堕胎罪というものにひっかかる女性が犯罪者となる、これが一体厚生大臣として認められるかどうかという、どうお考えをお持ちかということ。
 それから、この犯罪に問われる人が、中絶を受けた女と中絶をした医者なり手術者なり、この二者が犯罪者になるわけです。懲役になるわけですよ。これは不平等な立法ではありませんかと伺っているんです。その見解を聞きたかったんです。
103 林義郎
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国務大臣林義郎君) 刑法典につきまして、刑法の堕胎罪で、たしか医師が「承諾ヲ得テ」という話がありますね、これは医師は男性の医師でも女性の医師でもいいんですから私は関係ないと思いますが、堕胎をしたときに、その中絶をするところの原因をつくった男性も女性と同時に罰せられなければならないではないかという御議論かとも思うんですが、それはやっぱり一つの御議論ですが、さあそこがいまの法律では女性だけ罰せられるようになっておるわけですね、これは。だからそこは——けれども本来的にそういうものじゃないかなという考え方もあるでしょうし、私もちょっとその辺、法律論を詰めたこともありませんが、もしなんでしたら法務省の方からでも御答弁いただいたらいいと思います。それは、子供は確かに二人でつくるものだから両方だという話はそれはあるかもしれぬが、それじゃわかるのかねというような話もあるでしょうしね。その辺はなかなか私もちょっと答弁いたしかねますが。
104 目黒今朝次郎
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○委員長(目黒今朝次郎君) では、質問者の要望にこたえて、法務省の土屋参事官いまの件。
105 土屋眞一
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○説明員(土屋眞一君) 刑法の犯罪の中には、堕胎罪であったり、あるいは強姦罪もそうでございますけれども、保護法益を考えていろいろな立法がなされているわけでございます。
 御案内のとおり、先ほど申しましたように、堕胎罪についても胎児の生命身体あるいは妊婦の生命身体を保護法益にする、したがって、そういう保護の面からこれに対する違法な侵害について、
刑法上犯罪としておるわけでございます。したがって、それには相当の立法理由があると思います。
 一方、刑法の基本原理といたしまして、いわゆる責任主義と言います、これは道義的あるいは倫理的な法律以外の責任というものではなくて、法律上の責任主義という大原則があるわけでございます。したがいまして、ある犯罪該当行為について故意過失がある、そういう責任がある人に対して処罰がなされるわけでございます。
 それで、堕胎罪のそういう犯罪のもともとの性質上、犯罪の主体が妊婦になったり、あるいは医師等になったり、あるいはそれ以外の人になったりするわけでございますが、男性の場合も当然共同正犯ということで、お互いに共謀してなす場合、あるいは教唆する場合、あるいは幇助する場合に責任が認められる以上、当然その処罰の対象になってくる、これが刑法上のたてまえになっておるわけでございます。
106 渡部通子
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渡部通子君 ところが、現実はそうはなっていないわけですね、法律自体は。だから不平等だとは思いませんかと私がお尋ねをしているゆえんなんです。
 それで、大臣余りこの問題についてお答えもございませんので、時間がなくて残念ですが、この辺でやめておきますけれども、私が言いたいことは、経済条項を削除したならば、やむなく中絶した場合にも刑法の犯罪者になるという、懲役にいかなきゃならないという、こんな昔並みの暗い話がいまに復活することになるぞと、こう申し上げたいわけです。この辺を論究もしないで、単に一宗教団体の主張か何か知りませんけれども、法規範の中に持ち込んだら危険がむしろ拡大するのではないですか、社会的混乱が大きくなりますよと、その辺を重々承知していただきたいということを申し上げておきたかったわけです。(「一宗教団体じゃないよ、これは。取り消しなさい」と呼ぶ者あり、その多発言する者あり)根本はそうです。根本はさようでございます。
 そこで私は、大臣もおっしゃったように、社会的条件の整備の方に、産みやすい条件をつくることの方に政治のかじ取りをしなきゃならないという、これは大臣もそう合意をしてくだすったことでございますから、私ども長年主張をしてまいりました母子保健法、これを抜本改正をしようということは私どももずっと提案をしてまいりました。こういった産み育てる社会的条件の整備のためには大事な法律になると思うんですけれども、これについては答申が出ていますのに、改正がなかなか提案されない。やっと検討事項に上ってきたかと思うと、この優生保護法とセットであると、こういう提出の仕方をなすったのですけれども、そうではなく、もう少し単独に母子保健法というものを社会的整備の立場から早急に提案をなさるべきだと思いますが、いかがですか。
107 林義郎
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国務大臣林義郎君) 堕胎罪にみんななっちゃって、追い込んだら大変だということは私も十分承知しておりますし、むしろそういったことを踏まえて私は社会的な、国民的なコンセンサスが得られるようなものをつくっていく努力をしなければならないということをたびたび申し上げているわけでありまして、私自身も十四条だけの改正で事足れりとするのは少し短絡的な議論に過ぎるのではないかという感じを持っているわけです。
 それから母子保健法でございますが、先ほど、政府提出予定法案の中で母子保健法の改正を検討と、こういうふうに申しましたのは、いまのような話は優生保護法の中に入るんじゃなくて、むしろ母子保健法の中のジャンルに入るものではないだろうか、両方を改正してやっていかなければならない点がまた出てくるのではないだろうかということで一応検討ということにしたわけでありまして、母子保健対策はもう母子保健対策として十分に私はやっていかなければならない。先生も前から母子保健に大変御熱心でありますし、先生の党でいろいろとやっておられることも承知をしておりますし、私は、その方はその方として、これは進めていかなければならないものだろうと、こういうふうに考えております。
108 渡部通子
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渡部通子君 そこで、ILOの百二号条約、これは分娩給付に自己負担を認めてはいないという条約でございますが、いまは百三号条約に改正されていますので、やはり国際水準にまで社会保障の水準を高めるためにもこの批准を急ぐべきだと思います。産め産めと言っておいて、それで分娩費の方の条約はなかなか批准しないというのでは矛盾があると思うんですけれども、この百三号条約の批准を急いでほしいと思いますが、いかがですか。
109 吉村仁
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○政府委員(吉村仁君) 百三号条約の批准に関しましては、百三号条約において対象者の範囲がすべての被用者たる女子、これを全部含むことになっておりまして、私ども、被用者保険の方ならばこれは批准できる可能性があるわけでありますが、国民健康保険も含めまして全体的に考える、こういうことになりますと、やはり対象範囲が全部をカバーしないという点が一つ。それからもう一つは、百二号条約の場合と同じように母性給付の場合には本人負担があってはならないと、こういうことになっておりまして、本人負担をすべてゼロにすべしという条件というものがなかなか達成できないということでございまして、現在のところ保険の範囲におきましてILOの百二号条約あるいは百三号条約についての批准というものはむずかしいというのが現状でございます。
110 渡部通子
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渡部通子君 もう一点伺っておきます。
 児童手当です。児童手当もやはり社会的整備の中に入ると思いますけれども、御承知のように、大幅に後退をいたして存立すらも心もとないという状況にきているようでございます。行革特例期間終了後、すなわち五十九年度には直ちに制度の発展的抜本改革、これが必要だと思いますが、いかがですか。
111 正木馨
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○政府委員(正木馨君) 児童手当につきましては、先生いま御指摘ございましたように、行革関連特例法が適用になっておりまして、行革関連特例法の第十二条に、この特例期間が終了するまでに基本的な見直しをするようにという規定がございます。その期限までにということで、現在中央児童福祉審議会におきまして今後の児童手当のあり方についてせっかく御審議をいただいているというところでございます。
112 渡部通子
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渡部通子君 時間が参りましたのでこの辺で打ち切らざるを得ないのですけれども、大変短時間に大事なことを伺って、私も議論不足で大変残念でございますが、このわずかな議論の中でもおわかりだと思うんですけれども、大臣、最初から仰せのように、大変これは慎重に扱っていただかなければならない問題です。私は、推進派の方がおっしゃるように、一部生命の軽視の風潮があるとか、あるいは堕胎天国だと言われているとか、そういったことを認めないわけではありませんので、一緒にそういった風潮に対しては是正するように今後の教育やあるいは社会生活の上で努力をしなければならないことは重々承知をしております。しかしながら、短絡的にいま法律をいじるべきではないということも、短い議論でもおわかりいただけたと思いますので、重ねてひとつ、社会混乱の起さないように、これ以上婦人の母体に負担がかからないように、こういったことを配慮していただきますようにお願いをいたしまして終わります。

★第102回国会 衆議院 法務委員会 第16号 昭和60年4月17日
強制堕胎の事例 「堕胎罪の保護法益」の話ではないがメモしておく
被害者は女性障がい者で出産を強く希望、胎児は親の同意なく解剖された。

第118回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 平成2年4月24日
196 乾晴美
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○乾晴美君 あらゆる女性に対する差別の撤廃に関する条約というのがございますけれども、その中でも男女平等下に立った教育というか、そういう中でも性教育を今後一層強めていただきたいというようにお願いいたします。
 次に、法務省の方にお尋ねしてみたいと思います。この答申の中では、個々の事例における時期の判定は医師によってされるものとしています。こういうことなんですけれども、刑法の堕胎罪は中絶した女性と医師に適用されているようになっておるわけです。中絶を犯罪とするこの堕胎罪は廃止すべきである、してほしいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
197 東條伸一郎
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○説明員(東條伸一郎君) 人工妊娠中絶それ自体は刑法に書いてあることではございませんで、刑法で言いますと堕胎罪ということでございますが、堕胎罪というのは御承知のとおり、胎児がどのように発育しているかその程度を問わず、要するに自然の分娩期に先立って母体外に人工的に胎児を出すことを堕胎というふうに申しておりまして、それを先生今御指摘のように刑法では原則として処罰するという体系をとっているわけでございます。堕胎罪の保護法益は第一にはやはり胎児の生命あるいは身体の安全、これから人間になっていくものの命を守るという観点から堕胎罪という法律ができているわけでございまして、それを直ちに廃止せよということは胎児の生命尊重の見地からいろいろと議論のあるところだろうと思います。
 私どもとしてはかねてから一方では女性の自己決定権といいますか、産む産まないは女性の自由であるというような見地からのいろいろな御議論もあることも承知しておりまして、堕胎罪についてどのように今後立法政策を定めていくかということは私どもの一つの課題でございますが、刑法の全面改正の過程の中でもそれぞれの委員会で非常に真剣な議論がなされたところでございまして、一応答申をいただいている改正草案の中には、なお堕胎罪は存置すべきであるという御答申をいただいておりますが、いずれにいたしましても、問題は刑法全面改正の過程の中で慎重に考えていかなければならないと思っております。現段階で直ちに廃止するというようなことを申し上げる時期ではないと思います。
198 乾晴美
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○乾晴美君 こういった中期の中絶の時期が狭められるということは、堕胎罪というものの適用の拡大にもつながっていくんではないか。先ほども申しましたように、こういった堕胎罪があるということで、やみ中絶だとか自殺だとかまた嬰児殺しというようなことにもつながっていくんではないかと心配いたしますし、第一妊娠というのは男と女で成立するものだと思うわけです。それを女性と医者だけに罪がかぶさっていくということが非常に、もっといい法律というか、いい方法はないものであるかというように考えた次第でございます。ありがとうございました。

第132回国会 参議院 法務委員会 第9号 平成7年4月27日
136 三石久江
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○三石久江君 わかりました。
 次に、刑法は明治四十年にできた法律であって、時代に合わなくなっている部分も少なくありません。現代用語化によって全条文を書きかえるのであるならば、中身についても手を入れた方がよかったのではないかという気がいたします。全面的に見直すことは議論も多く時間もかかることになるのでしょうが、せっかくの改正の機会でもあるので、尊属殺といん唖者以外の問題についてももう少し内容の改正に踏み込んでもよかったのではないでしょうか、そう思います。
 そこで私は、二百十二条の堕胎罪について質問をしたいと思います。
 昭和二十三年に優生保護法ができ、翌二十四年に経済的理由が追加されたことによって、現在では合法的で広範囲な妊娠中絶が認められております。平成五年には三十八万六千八百七件の人工妊娠中絶が行われ、そのうちの三十八万六千四百四十四件、九九・九%がいわゆる経済的理由のものです。人工妊娠中絶に関する社会的倫理観も変化しており、母体の保護、生命保護が重視されるようになってまいりました。その結果、刑法の堕胎罪は有名無実化していると言われています。
 先日、岩村参考人からも、日弁連が自己堕胎罪、同意堕胎罪、業務上堕胎罪は削除すべきだと主張されているように伺いました。また、昭和四十九年に法制審議会が答申した改正刑法草案でも、医師などが堕胎した場合に刑を加重する業務上堕胎罪が削除されているとのことです。
 この際、「女子が」などと女性を標的にするような堕胎罪は削除すべきだと考えますが、いかがなものでしょうか。
137 則定衛
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○政府委員(則定衛君) この堕胎罪の存廃の問題につきましては、法制審議会におきます刑法の改正草案の審議の際にも議論されたわけでございまして、そのときも既に積極、消極両論があったわけでございます。
 ただ、胎児もまた生命を持つものとして保護する必要があるということ、その軽視はひいては人命軽視につながるというおそれがあるのではないか。それからまた、堕胎に関します処罰規定の廃止によりまして性道徳が一層乱れるおそれはありやしないかというようなこと。それから、御指摘のように、確かに堕胎罪の検挙件数自体が少ない状況にありましても、一般予防的な見地から処罰規定を置く意義があるのではないか。さらにはまた、国民意識としても一般的に堕胎を是認するには至っていないのではないか。当時そういう議論がございました。
 それから、その後、諸外国におきまして堕胎の規制が緩和されるようになっておりますのは、妊娠中絶に対しまして御指摘のような日本とは比較にならないほどの厳しい態度をとっている、それを修正しようという動きが底流にあるように承知しているわけでございまして、私ども知る範囲では、堕胎罪を全廃した立法例はどうもないようでございます。
 そういうようなことでございまして、現時点におきましても大きく事情が変わったとは私ども考えておりませんので、堕胎罪を廃止すべきではないというのが、当面、私ども法務当局としての考え方なのでございます。
138 三石久江
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○三石久江君 端的に言って、女子のみが堕胎罪というのは私はいただけないんですね。堕胎罪は「女子」と書いてありますので、なぜ堕胎罪が女子のみなのかというふうに思ってしまうわけもあります。
 そこで、堕胎罪の検挙もほとんどないのが現状だと聞いておりますが、年間とのぐらいありますか。
139 則定衛
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○政府委員(則定衛君) 平成元年から五年まで検察庁で受理しました事件の中で調べてみますと、業務上堕胎罪が一件、同意堕胎致死罪が一件あります。そのうち、業務上堕胎罪については不起訴処分、同意堕胎致死罪については起訴、公判請求ということになっております。隔年にそれぞれ一件ずつ程度、こういう状況でございます。
140 三石久江
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○三石久江君 大変に少ないようですね。名目だけの処罰規定を残しておくということは、法律を完全に守るという遵法精神を害することになるのではないでしょうか。法律学辞典にも、「今日、堕胎罪は事実上死文化している。」と書かれてあります。積極的に検挙されない堕胎罪を殺人罪や傷害罪、放火などと並べて刑法の中に置くのはおかしいのではないでしょうか。いかがでしょうか。重ねて申し上げます。
141 則定衛
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○政府委員(則定衛君) 御意見はよくわかるわけでございますけれども、私どもといたしましては先ほどお答えさせていただきましたような考えでございまして、当面、これを全面的に廃止するのはいかがなものかということでございます。
142 三石久江
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○三石久江君 先ほど言いました、女子のみにというのはいかがですか。
143 則定衛
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○政府委員(則定衛君) これはいわば生理的に、堕胎罪、いわゆる自己堕胎罪、これは女子について規定されておりますのは、これは端的に申しまして男子については妊娠するということがないということでございまして、ただ男子におきましても、女子に対して堕胎の処置をしたときには、これが同意があれば同意堕胎罪になりますし、同意がなければ不同意堕胎罪により、それぞれ、処罰されるわけでございます。ただ、女子がみずから堕胎の処置をされることに関与すれば自己堕胎罪としてその共犯の処分もなされるわけでございまして、必ずしも処罰の対象は女子に限らないということで、その点はいわば男女それぞれ処罰対象になっておるということでございます。
144 三石久江
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○三石久江君 次に、重ねて重ねてですけれども、我が国において堕胎を犯罪として禁止した最初の法律は明治十三年に制定された旧刑法です。これはキリスト教思想に基づいたフランス刑法に倣っただめですが、そればかりでなく当時の日本の政府の富国強兵政策と一致したためでもあるとも言われております。日中戦争が始まった途端、私どもの母親たちは医学的な知識もなく、命がけでの避妊行為などなどで悩みに悩んだ末の結果堕胎罪を犯した女性に対して非常に求刑を重くした検察官もいたそうです。戦争に人的資源が重要であるからとの理由だったようですが、女性に対してこんな使われ方をした堕胎罪を現代に残しておくのは時代錯誤だと思います。表現が現代用語になっても中身が明治時代のままでは大変困ります。
 堕胎が刑罰に値するほどの罪悪かどうか。社会一般でこれほど意識が変わった現代では、刑法の中でも改正か削除を考えなければならない問題だとまだまだ私は思っているわけです。改正に向けて、削除に向けての検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。重ねてお願いいたします。
145 則定衛
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○政府委員(則定衛君) 刑罰法令といいますのは、社会の実態の変遷あるいは国民の価値観の変化といったものと大きく離れるようでは適切でないと思うわけでございまして、現時点での堕胎罪についての私ども法務当局の考え方は今申したようなことでございますけれども、今後いろんな御意見あるいは価値観の変化あるいはいわば社会経済情勢の変革等々を見定めながら、今御指摘の問題についても検討していくことになろうかというふうに思っております。
146 三石久江
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○三石久江君 一たんつくった法律を削除することの難しさを本当に改めて感じました。

第150回国会 参議院 共生社会に関する調査会 第3号 平成12年11月15日
009 大森礼子
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○大森礼子君 公明党の大森礼子です。
 ちょっと三分で終わるかわからぬですが、問題提起を一つさせていただきたい。
 民主党の羽田委員、それから共産党の林委員の方から自己決定権に基づいて堕胎罪が存在しているということ、これは女性にだけ責任を負わせるので堕胎罪は廃止すべきであると、こういう御意見がありました。この考え方自体があることはわかっておりますが、ただこの問題を論ずるときにどうしてもクリアしなくてはいけない論点があると思います。
 これは、この堕胎罪という場合に、おっしゃる方が自己堕胎罪のみを考えておられるのか、それとも不同意堕胎罪も含めて刑法二十九章の「堕胎の罪」、これをすべてなくすということを考えておられるのか、この点も知りたいところです。といいますのは、堕胎罪が認められているというのは、保護法益として自己堕胎罪の場合には胎児の生命というものが保護法益となっています。
 先ほど羽田委員は中絶ビデオを見せるべきであると。それで、中絶の恐ろしさを知って、これは殺人ではないかという印象を持ったと。この殺人という印象を持ったその対象は多分胎児だと思います。刑法上、胎児は人ではないとされておりますので、胎児の生命については堕胎のところで保護法益としてこういう罪が認められているわけなんですね。それから、自己堕胎罪、行為をだれかが手伝ったならばやっぱり共犯関係、同意堕胎罪となるわけです。ですから、男性が関与した場合には、理屈的には刑法上も処罰されると私は思っているんですね。
 ですから、この論点をするときに考えられることは、堕胎罪全部を削除するのか、もしこの考えに立つならば、刑法上、胎児の命、生命というものを保護法益として認めないという、これを確定しなくてはいけないと思います。そうした場合に、それ以外の不同意堕胎罪というもの、この不同意堕胎罪の場合の保護法益は胎児の生命及びその妊婦の、女性の生命、身体ですから、その中から胎児の生命というものが保護法益から除かれるとなると、例えばこの不同意堕胎のような行為は刑法上の傷害罪で扱うことができる。これは法体系上、傷害罪で扱ってもおかしくないと思います。いずれにせよ、胎児の生命を刑法上の保護法益として認めないのかどうか、これに決着をつける必要があると思います。
 それから、もし自己堕胎罪のみ削除をするのだとするのであれば、つまり不同意堕胎罪等はそのまま刑法上の犯罪として残すのだとするのであるならば、不同意堕胎罪の場合には女性の嘱託とか同意がなくてする場合には胎児の命、生命が刑法上の保護法益になることを認め、そして自己堕胎罪、女性がするときには胎児の命を保護法益として認めないとするならば、胎児の命については母親、妊婦に処分権があるんだということを宣言することになりますね。
 だから、これがここで言う女性の自己決定権だというのであればそれでいいのですが、そういう非常にドラスチックな問題になると思うんですが、ただ、ここの論点に決着をつけないと次へ進まないのではないかなと思うんです。
 それで、私個人としては一概に、堕胎罪を廃止すべきという、これは反対するものではありません。というのは、実際、自己堕胎罪という刑法上のあれはありますけれども、余り検挙例がないと思いますし、これからもないだろうと思うんですね。そういった意味でなくてもいいのかなと思うのですけれども、ただ、いずれにしても保護法益の関係で胎児の生命、これをやっぱり論じないと次のステップへ行かないのではないかと思います。
 ちょっと時間がオーバーして申しわけないのですけれども、少し実りある議論にするためには、この点についてもしお考えがあれば羽田委員の方から聞きたいし、また林委員、今いらっしゃいませんけれども、少し御意見を伺うと、これについても積極的に進むべき方向へ進めることができるのではないかなと思い、ちょっと時間オーバーしましたけれども、意見を言わせていただきました。
010 羽田雄一郎
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羽田雄一郎君 私は、堕胎罪についてはなくてもいいんじゃないかという感覚的なもので、この間の説明で初めて聞いたぐらいなことだったものですから、一番初めに驚いたというところなんですね。ですから、そこまで深く追求はしておりません。
 先ほどのビデオの話ですけれども、高校のときに見せられたビデオというのは、妊娠がわかった時点で中絶をする場合、掃除機みたいなものを突っ込んでそれで吸引するというような、三カ月程度ですとそういうふうな形でやられて、それをアップにすると血の海の中にばらばら死体のような形で、もう既に指もあって目もあってという本当に子供の形をしているわけですよね。そういう形で、血の海の中にばらばら死体のような形で映像が映されていたと。
 また、八カ月とかそのぐらいたったときには帝王切開しなければならないような、青いポリバケツの中に何体も胎児が山積みのようにされている映像なんですね。ですから、そういうのを見たときに、本当にひどい状況であるなと。
 ですから、今は情報化社会でとにかくいろいろな映像が流れている中で、それぐらいのものは高校生であれば見せても理解はできるし、きちんと考えることができるんじゃないかなという意味で、高校生と私が限定したのは、中学じゃちょっと早いだろうと。高校生であればこれを理解して、私も高校生のときに見て、仲間で話し合いなどを持ちながら考えさせられたことがありまして、ショックは受けましたけれども、きちんと把握し、考えることができる年齢ではないかなと思いまして、今回、発表の機会で発言をさせていただきました。
011 水島裕
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水島裕君 私も多少新参者なので、今自己決定権というのが問題になっていますけれども、これは人工流産についてのみ言っているんですか、それともほかのことも、健康も含めてか、一般的な全体のことも含めてなんでしょうか。これは会長にお聞きしてよろしいですか、いろいろなことを含めていいんですね。
012 石井道子
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○会長(石井道子君) いいです。全体でよろしいです。
013 水島裕
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水島裕君 そうしますと、今の人工流産に関しましては皆さんのいろんな言っていることでいいと思いますけれども、ほかの健康に対しての自己決定権も関係します。それから、社会一般についてもあるんですけれども、私は、この場合非常に大切なのは、やっぱり自己で正確な決定をするためにはちゃんとした知識とちゃんとした判断力を持っているということが一番大切で、その場合、私もこういうところでこういう問題について言うと何かすぐ失言しそうな気がいたしますけれども。
 よくインタビューでも欧米、日本人、あるいはこの間、香港の例なんかもちょっと聞いてみますと、どうしても日本の女性は、これは一般的な、平均の問題ですけれども、どうしても知識と判断力において、少なくとも聞いている範囲では外国からかなり劣るようなところがあるので、やはり私は、ぜひ女性は頑張ってちゃんとした知識も得て、ちゃんとした判断力も得て、それで自己決定権と言っていただかないと、自分で決定したことがかえってよそで決定したことよりか結果としてまずいことにもなるというので、その辺をぜひ強調しておきたい。
 ついでに少し総論的なことを言わせていただきますと、私は、もちろん女性の権利があるというのは当然ですけれども、それが余り意味のない男女平等とか、それから行き過ぎたりなんかするとかえって女性にとってマイナスになる。時々お聞きすると、何でも女性が決めるものであるというようなことにすると、もうかえってマイナスになるんじゃないかと思います。
 ですから、私は、特に男性ですけれども、人間がちゃんとした哲学を持って、女性は社会としては種族保存のために直接的に非常な労力と時間を割くわけです、男性ももちろん間接的には関係しますけれども。それから、家庭とすれば大切な子供をつくってくれるわけですから、尊敬の念とかそういうところを非常に持って、ほかのことではちょっと何かマイナスがあったって差し引きゼロぐらいのつもりでいると、そういう哲学を持つのが一番大切じゃないかなと思います。
 これは後で申し上げた方がいいのかもしれませんけれども、この法整備、権利ということでも、機会はもう絶対均等じゃなくちゃいけないけれども、といって、やっていくうちに女性の方が実力がなくて進級しなかったり偉くならないというのは、これはもうやむを得ないことでありますけれども、そのときにもし同じ能力があったら、女性に一〇%とか二〇%、この間もちょっと申しましたけれども、給料は高くしたって早く偉くさせたって私はいいと思うので、そういうふうに、余りぎすぎすというよりかは、女性に感謝して、それだけ何かの形でプラスを与える、与えると言うとまた問題かもしれませんけれども、そういうことを申し上げたいと思います。
014 三重野栄子
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○三重野栄子君 質問ですけれども、このテーマ、女性の自立のための環境整備で生涯の健康の問題ですから、その場合の健康というのは、元気な方々というのか、あるいは健康といっても身体に障害をお持ちの方だとか、同性愛とかあるいは高齢者とかあるわけですけれども、そういうのを全部含んでとすると、後の政府に対する問題等々もございますね、法令の問題等々も含めてこれは議論されていくというふうに考えてよろしいんですか。
015 石井道子
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○会長(石井道子君) はい、よろしいと思います。
016 小宮山洋子
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小宮山洋子君 先ほどせっかく生産的に議論を進めるためにということで大森委員がおっしゃったことについて、ちょっと私の考えていることを申し上げたいというふうに思います。
 これは女性の自己決定ということで問題提起をされたわけですけれども、私はやはり、羽田委員も驚いたような堕胎罪というのは廃止すべきだというふうに思っています。
 それで、先ほどもおっしゃった不同意堕胎罪については傷害罪で対応すればいいのではないかということを含めて、すべて堕胎罪というのは廃止をして、母体保護法を見直すことで新しいリプロを守る法律をつくるべきではないかというふうに思っています。
 先ほど大森委員の方から、今堕胎罪があってもそれで処罰される人はそんなにいないんだから問題は余りないのではないかといったニュアンスに私はとったんですけれども、これは母体保護法の中の経済的な理由というところでやっている人が多い。だから、こちらの母体保護法も改正しようという動きが一部にあるやにも聞いていますので、これはここでそこが担保されているのであって、母体保護法の要件を変えてしまえば、これは明らかに罪になるわけですよね。
 それで、刑法の「堕胎の罪」、第二百十二条というところに、「妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。」と。以前のヒアリングのときにも出ていたように、女性の方にだけ罪を与えるということは、これは違うのではないかということで、ずっとヒアリングの中にもありましたように、女性差別撤廃条約とか北京会議の行動綱領とかカイロでの合意とか、あるいはさきのニューヨークでの女性会議でも成果文書の中に、女性に対する懲罰措置を含んでいる法律の見直しということがきちんと言われていて、日本もそれに合意をしているわけですから、これはやはりそういう方向で検討をしていくべきなのではないかというふうに思っています。
 その中に、もちろん自己決定をするためには、情報があり判断能力がなければいけない。決して私、女性だけが劣っているとは思いませんで、健康に関しては男性の方がもっと知識などはないのではないかというふうに、お言葉を返すようですけれども、思っております。
 それはちょっとさておき、そうした情報提供体制とか教育ということも含んだようなリプロの法律をつくっていくということが必要なのではないか。これは文部省だけに任せておいても、性教育についてそういうことが盛り込まれるというのは望み薄だと思いますので、ここでやはり女性の自己決定を守るというか、リプロの観点でもって、そういうどうしようもないときには自己決定によって中絶ができるという中絶の法律に加えて、情報提供体制、相談体制、あるいは教育なども含めた法律にしていくのがいいのではないかと思っています。
 長くなって済みません、一言。
 先ほど羽田委員が言われて話題になっていますビデオのことなんですけれども、これはやはり避妊の必要性とかそういう意味で見るのはいいんですが、それだけすごく中絶が怖いことだ、恐ろしいことだという印象だけを強くすると、それはやむを得ない場合の中絶の自己決定という面に対してマイナスに働くおそれも私はあるのではないかと思います。アメリカなどでも、プロライフ、胎児の命を守る派と、プロチョイス、女性の選択を守るというので共和党民主党で分かれているようなケースもありますけれども、どちらかというと、アメリカでつくられたそれはプロライフ系のビデオというのが結構多いというふうにも聞いています。その場合、どういう観点で、どの程度のものを見せて、そのことによって本当に自己決定を助けるという教材でなければならないのではないかと、幾つか申し上げましたけれども、そんなことを思っております。
017 八田ひろ子
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○八田ひろ子君 私も今の意見に賛成でありまして、堕胎罪の問題は、一八八〇年に制定をされて、一九〇七年に一部修正をされていますけれども、人工妊娠中絶に関しては、女性とそれから医師などの施術者が処罰される規定があるということで国際的にも問題になっているというふうに伺っております。また、今経済的な理由で実際に罪にならないのではないかというのが一般に言われておりますけれども、先ほどお話があったように、やはり妊娠中絶に対する、何というのですか、犯罪である、悪いことであるという学校教育ではない教育が実際にはありますし、それが妊娠中絶の機会を失わせて、望まぬ出産ということにもなっているやにも聞いております。
 ですから、教育とか啓蒙、そういったものとあわせながら、男女平等が本当に実現できる、先ほどはポジティブアクションのことをおっしゃって、ポジティブアクションは本当に必要だと思いますけれども、真に男女平等という、そういった人権問題としてとらえるという教育や啓蒙の上に立ってこういった刑法そのものを変えることが今必要ではないか、そんなふうに思っております。
018 大森礼子
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○大森礼子君 さっきの小宮山委員のお話で、要するに堕胎罪は全部削除という立場がわかりました。それで、私さっき検挙は余りないんじゃないかと言ったのも数値に基づいて言っていることではありません。
 それから、感覚というのは、私、羽田委員おっしゃるとおり大事だと思うんですね。昔の産めよふやせよの時代であるならば、堕胎するとは何事かとか、お前の自由にはならないというのはわかるんですが、今非常に数もふえているということで、これを処罰しようという社会感情といいますか、これは低下しているんではないかと。こういった意味で、そういう観点から見直すということは少しも構わないんではないかと思いました。
 それで、二百十二条、女性にだけ罪を与えるということですが、ちょっとこれにつけ加えますと、刑法の場合にはその人の行為を処罰するわけでありまして、多分、これはもし男性が一緒に相談した場合でしたら、刑法の六十五条一項、総論の部分がありまして、身分なき者といえどもなお共犯とする、ちょっと条文を明確に思い出せませんが、多分理屈としては、男性が一緒に相談したような場合は、これは共犯関係になるのだろうと思います。
 いずれにしても、この問題を積極的に議論して結論を出すためには、さっき言いましたように胎児の生命の保護法益、これは譲歩させるんだということをこちらも言っていかないと先へ進まないのかなと思いますので、私はこの問題についてそういった議論を前提にして考えていきたいと思います。
 以上です。
019 堂本暁子
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堂本暁子君 自己決定権のことで、先ほど水島先生が日本の女性の知識は劣っているように感じるとおっしゃいました。そういう面もあるのかもしれませんが、では問題はなぜ劣っているのかということだと思います。
 私がるるこの前のときから問題にしていることは、やはりきちっとした正確な知識を教えるシステムがないということだろうというふうに思うんです。とかく文部省の性教育というような形で言われていますけれども、リプロに関して申しますと、あらゆる政策をリプロの視点からきちっと見直すということがなされないと、正確な情報が入らない。今、性に関しての情報は本当にはんらんしていますので、大変間違った乱暴な情報が子供たち、それから女性たちにも伝わってきているというその現状自体が問題じゃないかというふうに思います。
 中絶をしたいと思う女性はだれ一人いないということは、これはもう言う必要のないことなんですが、なぜ中絶が多いのかというと、やはり望まない妊娠をしてしまう。なぜ望まない妊娠をするのかといえば、やはり今、先生がおっしゃったように十分な正しい知識が男女ともにないというふうに思います。
 ですから、私はビデオというのはある意味では危険だというふうに思います。きちっとした知識を幼いときから、人間の両性の尊厳という形で心と体の両方をお互いに敬い、大事にし、健康にし合っていかなければいけないというその土台があった上でなお、現実には女性がもし中絶をするとこんなにつらい思いをするのだということで見せられればいいのですが、それをセンチメンタルに映像のショッキングな部分だけを感じ取るということでは不十分だろうと思います。
 その意味では、北欧に限らずですが、大変進んだ教育のシステムが欧米にはあるのですけれども、日本ではそういったリプロの精神なり思想なり、それから政策なりに基づいた教育のシステムがまだつくられていない。それをきちっとつくること。学校であれ地域であれそれから家庭であれ、そういう教育をきちっとなしていくことが一番先決で、そのことによって正しい知識を得ることで中絶は可能な限り減らさなければいけないのだと。
 だから、日本の女性の知識が劣っているようだということは、私は日本の大人、特に私たちこういう立法府にいるような人間の責任というのは非常に大きいのではないかというふうに思いますので、今一番肝心なことは、やはり総合的な政策としてリプロを、厚生行政はもちろんですが、あらゆる日本の制度の中に、あるいは教育の中に取り込んでいく、そういったことで包括的にアプローチすることが大事ではないかというふうに思っております。
 以上です。
020 水島裕
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水島裕君 ちょっと誤解があるといけませんので。
 もちろん私が申し上げているのはすべて平均論でございまして、ここにいらっしゃる女性は知識も判断力もきっと大変すぐれていらっしゃるんじゃないかと思います。
 それから、一般論としましても、私も大学の教員をやっておりましたけれども、学校を卒業するまではとても知識があるんですね。それから、特に知識が必要な仕事を持ったりする方は持っているので、そうじゃない方にそういう傾向がある。そういう人たちは、ワイドショーなんかに出てくることはよく知っていても、本当に世の中で問題になっていることとか、最低限知らなくちゃいけないサイエンスのこととか、そういうことは外国人と比べて、これはあくまでも平均ですから、本当に知らない。
 それから、先ほど小宮山さんの方から、男性も知らないじゃないかと。私は、男性が一番知らないのは女性の健康に関してのことだと思うのです。ですから、私は女性の健康支援のための啓蒙、教育というのは必ず男性にもやっていただきたいということを強調しておきたいと思います。
021 堂本暁子
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堂本暁子君 一言だけ。
 先生、私は、別に一般的な知識ということではなくて、あくまでも妊娠、出産に関しての知識。それが男性と女性に行き渡っていないのは、大人の方のそういう制度をつくっていないことに相当責任もあるというふうに思っています。ですから、先生が男性にとおっしゃってくださると大変心強いです。ありがとうございました。
022 水島裕
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水島裕君 ぜひそうしないと、私も含め、皆さん。
023 渡辺孝男
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渡辺孝男君 自己決定権というのは非常に難しいので、先ほどおっしゃいましたけれども、どれくらい自分が決定能力があるのか。
 堕胎といいますか、中絶する場合には法律で認めます、罪はないんですと言っても、これはいろんなジェンダーとか文化もあるんですが、やはり精神的に非常に罪の意識を持ってしまうという方もおられるんではないか。そういう場合に、それをアシストしてあげられるカウンセリング体制というのはどうしても必要なのではないか。本当に気丈な方でも妊娠等々になりますと非常に精神的に不安定になるということで、そういう周りから支える体制というのは大事だというふうに思います。
 そしてまた、自分が自分の意志で決定しているように思っても、潜在意識として、いろんなことをほかから教えられて、それがあたかも自分の意志であるというふうに思い込んでしまうという人も中にはいると思うので、そういう意味で本当に周りから支えていく、また罪の意識等を解いてあげられるような、そういうカウンセリング体制というのがやはりどうしても必要なのではないかというふうに思っております。
 以上でございます。
024 三重野栄子
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○三重野栄子君 今まで堂本議員もおっしゃいました総合的政策というのを、中身はいろいろあると思いますから、年代の問題をずっと細かくして、そして総合的にあらゆるところで勉強できるような方法をとっていかないと、今まだ日本は随分おくれていると思うんですね、これらの問題について。
 ですから、テレビもあるし雑誌もあるしいろんなものがあるけれども、それをオーバーするぐらいのいろんな手段でもって、教育期間を五年なり十年なり、どれかわかりませんけれども、非常に集中して、ある一定やった後、少し延びてもいいんじゃないかと思ったりするんですけれども、そういう方策が必要じゃないか。
 それで、幼児がそれを見る場合にはこういうもの、小学生が見るときはこういうもの、やっぱり年代によって違うと思います。それから、親が教える場合はこうというような、いろんなことを考えた総合政策をとることが必要だろうと思います。
025 石井道子
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○会長(石井道子君) それでは、次に行かせていただきますが、次の項目は、女性の健康支援のための啓蒙、教育、研修等についてでございまして、御意見のある方は挙手をお願いいたします。
026 岡崎トミ子
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岡崎トミ子君 先週の共生社会調査会で質問をさせていただきましたが、男女共同参画基本計画を策定するために審議会の報告があって、その中で人権ということが大変大事であるということについて報告書が出されているわけなんですね。
 権利ということを大切にしなければいけないというふうに出されておりますのに、二十八ページにありますリプロダクティブヘルス・ライツのところの考え方において、「ライツの概念については、種々の議論があるため、世論の動向を踏まえた検討が必要である。」ということで、生涯の女性の健康支援というところに厚生省もとどめており、教育の現場においても、文部省も大体そういうところにとどめていると。それらが出されましたのはこの審議会の報告が出される前でしたので、これからは変わっていかなければならないという視点でこの間は質問をしたつもりでございました。
 そして、前段の、教育がどんな進め方であるかを見ましたときに、暴力行為や自殺、売買春と並列的にこの人工妊娠中絶があったということで大変驚いて、文部政務次官は、私が発言した方向で検討していきたいというような、そういうお答えをいただいたわけなんです。
 それらを考えながら、これまで厚生省が取り組んできて、今これは新しい内容の視点として、資料を持ってきたんですけれども、結局、各省庁が総合的に横断的に計画的な、生涯を通じた女性の健康施策の推進体制をつくらなければいけないということで書かれているわけなんです。
 そうした中に、広く情報提供を行って全国民にリプロダクティブヘルス・ライツの意識の浸透を図っていくんだということで、知識の普及のことについても触れているんです。そういう状況の中にあって、文部省も厚生省もこれはきちんとしたものをまずは思春期の子供たちに対してやらなければいけないというふうに思って、この思春期に対することについては世界共通の課題というふうになっております。
 実は、ことしの八月、文部省と厚生省は連携をして思春期ハンドブックというものをつくろうとして、中学二年生を対象に六十万冊をやろうと大蔵省に出しましたけれども、残念ながら却下されました。ですから、私はこの省庁の中で、これは厚生省、文部省、労働省警察庁総理府等の関係省庁というふうになっておりますけれども、そのときにきちんと大蔵省にこのことをわかってもらわないと、どれだけ重要性を説いて言っても、残念ながら縦割りで、そのところで結果としてはこれが通らなかったんだなと。これが出された後ですから、これからは変わっていってもらわなければいけないというふうに思っているんです。
 焦点の当て方、先ほど思春期についてというふうに申し上げました。厚生省は生涯の女性の健康と権利ということでとらえておりますけれども、やはり性の行動が若年化しておりますし、そこが一番活発化しているという点におきましては、相談所は若い人にまずはターゲットを絞ってみるということをこの間提案申し上げました。
 そのことは物すごく大事だというふうに思うんですね。若い人たち向けの相談所をつくって、その人たちがきちんとした情報を得ることができるということが、親になったときに適切に子供たちにもそのことを教育できるという仕組みをつくっていくこと、女性センターや女性支援センターは当然のことでありますけれども、それらが男女共同参画支援センターというような形で、男性と女性表裏一体となってこれは大事なことになってきますので、そういう形に変わっていく相談所をこれからぜひつくっていっていただきたいと思いますし、若い人に焦点を当てたそういう相談ということを繰り返しやっていただきたい。
 実は、厚生省はどこでどういうふうにしているかを伺ったときに、母子保健課が担当になっておりまして、ここで確かに間もなくリプロダクティブヘルス・ライツについての研修会をするんです。だけれども、とてもかたいんですよね。きちんとした履歴書を出さなければいけませんし、研修会への推薦というものを保健婦さんそのものがもらわないとこれを受けられないんですよ。
 ですから、幅広い国民に対するというときに、もちろん専門家にきちんとわかってもらうことは大事なんですけれども、もっと幅広くいろんなところで講演会を行うというところも同時にぜひ行っていただきたい。そういうことによって健康支援のための啓蒙、教育、研修ということを充実させていっていただきたいなというふうに思います。
027 林紀子
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○林紀子君 今のお話に関連をいたしますので先にさせていただきます。
 私も今の世の中を見ていますと、コンビニなんかでそれはもう小学生でもすぐ手にとるような、目を背けたくなるような雑誌や何かが売られているということでは、性の間違った情報というのは本当に小さなときから洪水のようにあふれて、それを受け取るような状況になっているんじゃないかと思うんですね。だから、そういう意味では今お話がありました社会的な教育も、それから学校の教育というのも本当に小学生のときから必要だなというふうに思うんです。
 この前の文部省への質問も大変興味深く聞かせていただいたんですが、私たちがまだ子供のころというのは、保健体育で体の問題とかというのを教えてもらっても、体育の先生がちょっと、余暇にと言ってはいけないんですけれども、実技じゃなくてたまに授業でやるというような状況だったけれども、文部省はそれではいけないということで、いろいろな科目でやるけれども、このごろは養護の先生に来てもらって、そこで授業ができるように改正をされた、おととしからでしょうか、ということなんですね。それは非常にいいことだと思うんです。
 性の問題ということについて非常に基本的な、一般的な心の問題、体の問題、男女の本当に人間としてお互いを尊重してという、そういうところから大きく網をかけて教えることが必要なんだけれども、今のお話のように個別の相談というのもぜひやっていかないと、個々に悩んでいる子供たちというのがいるというんですね。そういう子供たちにも養護の先生が対応できるようになっているわけなんです。
 そう考えますと、性の問題とそれから心の問題、いじめの問題いろいろあるかもしれませんが、養護の先生の数が絶対的に足らないんじゃないかと思うんです。今まではたしか中学校でも三十クラス以上の学校じゃないと養護の先生がいなかったと思うんです。それがようやく改正されて、今度はそれ以下の学校でもつけることができるし、大きい学校には複数でつくということになったんですが、今みたいな、授業もして個別の話にも加わって、しかも不登校寸前の子供で保健室登校というのもあるというような話も聞きますので、きちんと整備をしていくという意味では、もうちょっとそういうところを担当する学校の中での体制というのもぜひ整えていく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。
028 本田良一
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○本田良一君 私も教育のところで、実は私、先ほど林先生がおっしゃった性のはんらんといいますか、県議会のころ、私は厚生常任委員長をやっておりまして、有害図書の出版とかそういうものを、これは有害図書だとか認定する、そういうことをやってきました。そのときに私が言ったのは、いろんな屋外広告あるいは週刊誌、ビデオ、こういう本当に性をあおるような、欲望をますますあおるような、そういうのがはんらんをしているときに、私たちが中学、高校、そういうときからすれば数千倍とはんらんしている。
 それにしても、今の中学生、高校生、非常に性の年齢は低学年になったといいますけれども、私たちが中学、高校のとき、今ほどはんらんをしていたら性の欲望に我々はどう対応していったかなと考えると、恐ろしくなるほど今の人は強いと。そういう自己の性の欲望にみずから太刀打って、抑えて行動しているということでは、我々の時代よりもっと強くなったなと、こういうことを感じました。
 今回、この共生社会調査会に入って非常に勉強になりました。この自己決定権、これはもうもちろん私どもも男性として認めます。そして、そうあるべきだと思いました。
 ただ、学校教育の中でやっぱり教育が重要だと。それと一つは家庭ですね。学校教育の中で基本的に避妊とかそういうことを教える前にもう一つ重要なことは、大和なでしこ的な女性になれとか男性になれとか、そういうことではないけれども、性行為というものがどういうものかということをしっかり私は位置づけて教えていくべきじゃないかと。
 それは、性行為は愛が基本だと、その愛の延長には出産というものがあるんですよと。ここを踏まえた上で、本当に愛する人があらわれてこの人の子供を産みたいと思ったときに、みだらな性行為をやっていたときの過去を振り返って後悔をするということを私は一番基本に教えていくべきではないかなと。
 大宅映子さんが、少子化社会のときに産めよふやせよという教育などはもうもってのほかだ、女性は本当に愛する人の子供であればどんな環境であっても産みたいんだと、これをしっかりと踏まえて教育をすべきだということを言っておられました。私もそのことに同感でして、私は娘、これは家庭となりましょうか、学校では性教育をもちろんやるけれども、家庭でも特に男親が子供たちに、今さっき言ったように、本当に愛する人の子供を産むときに後悔はしないようにちゃんと身を守っておけよと、これを私は言いましたね。ところが、これがきき過ぎてまだ独身を通しておりますが、結婚の適齢期に来ながらも、だからちょっと心配でございます。
 そういうふうで、私は教育に、性ということの愛を基本にした教育をきちんと位置づけていただきたい、これを申し上げておきます。
029 南野知惠子
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○南野知惠子君 支援の問題に入っておりますが、その前の自己決定権のことについてもちょっと触れてみたいと思うんですが、私は看護婦であり助産婦であるという観点から、中絶その他のものについてもどっぷりつかってきた。悲しみもいっぱい見てまいりましたし、また診察台に乗って即手術に取りかかろうとその準備をしているときにいろいろ会話することがありまして、診察台からおりて、この子を産みますとおっしゃってくださった方もいるくらいに私たちはどっぷりつかっていたわけでございます。
 特にその中で、中絶が合法であるということの観点から考えていくというところに一つのいやし的なものがあるのではないか。例えば、宗教でその教えに忠実な方の場合には、やはり自分はその教理に従うというふうな形の決定をする方もありますし、それを我々他者がいいとか悪いとかと言うことはできないのであって、それはその人を尊重するというような形で展開してまいりました。そういうような意味では、決定に至らすまでにいろいろな問題をはらんでいるだろうと。それはその人の人生そのものを見ていくような感じになってきているというふうに思っております。
 それから、今お話が出ました教育、研修ということにつきましては、一番必要なのは愛であると。これはもう当然であろうかと思っておりますけれども、どこで教育するのかということにつきまして、羽田先生が中絶のビデオもごらんになったというんですが、山のように死体があったというのはこれは否定していただきたい。我々はそういう現場にいて、そんな山のような死体が中絶のところであったということはちょっと悲し過ぎます。また、そういう現状はないのではないかなと。それは適切に処理されていくし、ドクターもつらいんですね、そしてそれを援助する我々もつらいわけですので、そういう意味では必ず慰霊の気持ちを持って、我々、心が休まるようにお寺にお参りしたりしているわけでございます。
 さらに、これは話をさかのぼれば、解剖に体を提供してくださった方、また実験に使われた動物に対しても、我々は慰霊の念を持って臨床では処しているということもお考えいただきたいなと思っております。
 それから教育の場面では、家庭教育をだれがするのといったときに、今学校教育の中で対象とする子供たちはいいんですけれども、それを超えた部分のPTAの人たち、これを私は対象とすべきであるということで、現場にいたときにはお話の場面を持たせていただいておりますけれども、子供たちには生命の誕生というところを中心にお話をしてまいりました。そして、その中で中絶という問題にも触れますけれども、それはもう少し年齢の行った人たちにその話はすべきではないかな、そのようなことを思いました。
 それから、今、林先生がおっしゃっていた養護教諭の話でございますけれども、養護教諭は、三十クラス以上には複数ということの確約をとったのが平成十二年度の予算でありまして、十三年度に向けては、八百人以上子供がいる学校は複数化しようという文部省の計画が今ございます。これはもちろん皆様方の御賛同を得て予算が通らなければそうならないわけですが、私としてはもっと学生の数を減らしてほしい、減らして複数化してほしいということをお願いしております。
 その養護教諭の資質でありますけれども、ただカウンセリングができる方に来てもらったのでは、これは性教育というのはできません。そういう意味で、看護の背景のある、そして養護の資格を持った者が二人のうちの一人には必ず入っていてほしいということを願いながら、今御要望させていただいている事項ではございます。
 学校で体育の先生とか生物の先生が性教育をされていた過去の出来事としていただいてもいいんですけれども、あるとき子供が、自分の友達には妹ができた、自分も妹が欲しい、弟が欲しい、だから、おうちに帰ってきてお父さん、お母さんに向かって交尾してよという言葉がぽんと出る、その感覚でしかとれない性教育というのは本当に乏しいなというふうに思っております。
 性教育についての逸話はいっぱいございますけれども、養護教諭のお話が出ましたので、そういう意味で、そのことも含めながら御報告させていただこうかなと思っております。
030 堂本暁子
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堂本暁子君 岡崎トミ子さんがとても大事な指摘をなさってくださったと思いました。というのは、「男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方」というのが九月二十六日に出されているのですが、それのリプロダクティブヘルスのところの一番最後に、今、岡崎さんが指摘された「リプロダクティブ・ヘルス/ライツのうちのライツの概念については、種々の議論があるため、世論の動向を踏まえた検討が必要である。」と。私ちょっと気がつきませんで、今改めてまたこれを出して見たらそのとおりに書いてあるのですけれども、これはとても大事な部分だと思っております。
 と申しますのは、ライツについてはということは、これは中絶についてはというのと同義語にここでは解釈されているのではないかと思うんです。プロライフとプロライツの議論、そういうものがあるので、「世論の動向を踏まえ」ということで避けている。しかし、本当の意味のライツというのは、そういった単に中絶の是とか非とかいうことよりももっと深いことでございまして、今、南野先生がおっしゃった、女性は最後の最後まで恐らく自己決定できない、妊娠した場合、本当に一度は中絶しようと思っても最後にやはり産む決心をするというような、だれしもが迷うんだろうと思います。
 またビデオの話になりますけれども、私も南野先生と同じで、どうしても、胎児がいっぱいのような映像というのは、どういう意図でだれがつくったのかと思わざるを得ません。
 と申しますのは、私も実はテレビの仕事をしておりましたから、アボーションという映画を少しだけ手伝って、それは、カナダの女性のディレクターと女性のカメラマン、録音もすべて女性のチームが世界じゅうを歩いて中絶という映画をつくっていたんですね。それが日本に来たときにその手伝いをし、それからそれの日本語版を私は演出してつくり上げたんですけれども、そこにはただのワンカットも胎児などは出てこない。
 なぜならば、その必要がないわけなんです。本当に中絶の悲惨、自己決定の苦しさ、そして中絶をしてはならないのだと。ならないという意味は、中絶をいかに避妊という形で避けるかとか、それから正しい性のあり方によって中絶をしなくて済むための啓蒙の映画なんですね。ですから、そのためには胎児を出す必要など全くない。
 そこでは、特に中南米で堕胎罪がある国の人たちが中絶をしたために刑務所につながれている絵なども出てくるんですけれども、一番最後のカットというのは、二百五十ドルの中絶をするための費用がなかったがゆえに、自分で自己中絶をして亡くなったお母さんのお棺をお墓に運ぶ、そして、その女性の命が二百五十ドルの命であるというのがラストカットなんですが、それがすべてを物語っていたと思います。いかに安い命であるか、妊娠ということによって一人の女性が命を落とすということの危険、あるいはそのことの人権と申しますか、そういったことを表現した映画です。
 やはりこのライツというのは、別にプロライフ、プロチョイスのそういった中絶賛成、反対ということの宗教的あるいは倫理的な対立の問題以上に、一人の女性が妊娠した場合に、その女性自身がみずからの命も落とさなければならないような局面が、日本であろうと、世界じゅういかに多いか。
 今、数字は覚えていませんが、たしか五十万件とかそういった大変大勢の女性たちがまだ世界で妊娠のために命を落としています。それも、わずか二百五十ドルというお金がないがゆえに命を落としている女性たちがいるということを考えたときに、日本は一見豊かなようですけれども、やはりこういった女性の健康と、そして本当の意味の、深い意味の女性の権利ということが国の中できちっと浸透し、政策化されるなり行政がシステム化されていないがゆえに、日本でも大勢の女性たちがそのために泣いているというのが現実だというふうに私は思っています。
 世界に目を向ければもっとそれが強いわけでございまして、ライツを単に「世論の動向を踏まえ」ということでわきに置くということは私は大変間違っているというふうに思うので、岡崎さんがおっしゃってくださったことから今のようなことを改めて、またビデオの話があったものですから、私は、中絶の映画、一時間物なので羽田さんにぜひ見ていただきたいと思いますけれども。
 胎児など一つも必要ない。アイルランドで、やっぱり中絶が禁止されている国で、妊娠してしまった女の子が公衆電話のところで、イギリスへ行って中絶をするということで大きな涙をぽろぽろ流しているアップの絵があるんですが、そういったところこそが本当に、いかに中絶というか妊娠すること、そして自己決定の難しさ、すべて表現していたと思いますので、そういう見方をぜひしていただきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。
031 羽田雄一郎
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羽田雄一郎君 皆さんからビデオのことで再三いろんなお話がありました。実際に私が見たものですから、例ということでお話をしたわけですけれども。
 私が見たのは、青いポリバケツの中に実際に何体かを入れていく映像というのがあったんですね。これは日本のものではないです。ただ、きちんと日本語で解説もついていましたし、説明がしてあったので、その後に、中絶をすることが悪いことだというふうに思った人間は実際にはいないです。
 我々の学校の全員が見ましたけれども、実際に中絶が悪いものだというふうに感じて性行為に関して拒絶反応を示したとか、そういう例は一切なくて、どちらかというと避妊についてしっかりと考えるようなきっかけにはなっていったビデオであったことだけはきちんと御報告をさせていただきたいということと、こういうビデオを見せる、センセーショナルなものでなくてももちろん私はいいと思いますし、日本には日本の形での避妊に対するビデオなどをつくった方がいいとは思います。
 そして、僕はこれを高校生でと言ったのは、私は今農林水産委員会におりまして、文部省と厚生省と農林水産省、この三省が一緒になって農業体験学習をしながら命の大切さとか物の大切さを教えていかなくちゃいけないんじゃないかというようなことも進めておりますし、そういう中で命の大切さなんかを小学生では教えていきながら、また中学生では避妊についてとか、ピルとかコンドームとか、フィーメールのコンドーム等、そういうものがきちんとあるんだよということ、また妊娠や中絶が心身に及ぼす影響についての勉強をしないと、中学生の帰国子女の方なんかで日本の学校に入って、保健室に行ってピルをくださいと言われてびっくりする養護教員の方がいるんですね。実際に私の弟のクラスでも、ピルをくださいと言った女性の生徒がいたということで、中学生の中ではそういうことをきちんと教えていかなくちゃいけないんじゃないか、国際的な水準に合わせていかなくちゃいけないんじゃないかと。
 そういう中で、高校に入っては先ほど言いましたような、どういうことが起きていくのか、また感染症の問題等きちんと教えていかなくちゃいけないという例で、私はビデオを見た経験の中で避妊というものをきちんと考えられたということで御報告をさせていただきました。
032 岡崎トミ子
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岡崎トミ子君 このリプロダクティブヘルス・ライツの中の重要な考え方の一つに、芦野参考人セクシュアリティーの多様性ということも一つの目標に入っているのだというふうにおっしゃいまして、正しい異性観という形だけで物を考えるのではない、モラルだけではないと。結局、対等な人間関係をどういうふうにつくっていくのかというときに、性の認識をどのようにするのかということで昨年八月二十六日に世界性科学学会で性の権利宣言というのを出していて、当然これが性の健康と権利という意味で大事な視点だということで出されているんですね。
 その中で記されておりますのは、セクシュアルライツというのは、いわゆる人間が持っている生まれながらの自由、尊厳、平等に基づく普遍的な人権だというふうに位置づけております。そして、セクシュアルライツが認知されて、尊重されて、実践される環境を生み出していかなければいけない。この中に、自分が生涯何人子供を持つか持たないかも含めて、どのぐらいの間隔で産むか決定する権利とか、そういうことについて、もちろん生殖に関する自由である、責任ある選択への権利ということで記されており、それから先週、私はジェンダー性的志向という問題でも性的平等への権利があるという点で触れましたけれども、これもやはり宗教とか身体的あるいは情緒的な障害にかかわらず、いかなる差別からも解放されることについて述べております。
 ここでまた大事なのは、先ほど本田さんが愛ということをおっしゃって、その延長線上に出産があるんだというふうに考えなければいけないとおっしゃったんですけれども、そのことはとても大事だと思うんですが、もっと私は性というのは幅広くとらえて子供たちに教えていかなければいけないんじゃないかなというふうに思っているんですね。
 ここでもやはり、性の自由な性的関係の権利ということで、結婚するかしないかということ、離婚するということ、あるいは他の責任ある性的関係を結ぶという可能性をも意味しているということについて触れておりますし、また性的な表現の権利というところで、さまざまな自分自身のスピリチュアルとか、心理的な、知的な、身体的な、そういう性の喜びというのは一体どういうものであるかということについても含めて考えていこうということで性の権利宣言というのがされておりますので、私は幅広くそうした教育をしていくことが大事ではないかなというふうに思っています。
033 渡辺孝男
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渡辺孝男君 性の問題、それから健康、自分の病気の問題等、身近な人に相談できる人とできない人というのはいろいろあると思うんです。だから、学校で性教育をする、あるいは家庭でする。そういう中で、本当にコミュニケーションがよければ、信頼する人がいれば相談できると思うんですが、そういう方がない場合というのも当然あると思うんですね。養護教員の方に皆さんが相談するわけではないと思うんです。そういう意味では、最初のスクリーニングといいますか、一般的なことを聞ける、相談するというのは匿名の電話相談とか、そういうシステムというのが一番大事なのではないかなと思います。
 そういう中で、これは心配しなきゃならない問題なのか、これは余り心配しなくてもいい問題なのかというのはある程度振り分けられて、その次により専門的なお話を聞くようなシステムができている、さらにもっとごく専門的なことになると、そういう何段階かの教育システムというものがないと余り機能しないんじゃないかなというふうに思っています。
 そういう意味で、いじめとかほかの問題も電話相談等々のシステムが大分民間の中でもできていますし、政府としても、そういう民間の相談、一人だけの答えで決めるということもいけないと思うので、何種類かのそういう情報提供をするようなものがあれば、こっちを聞いて、ああ僕とちょっと合わないから今度は違う方で聞いてみようと、その中で本当の意味で自分の望む回答が得られる、よい意味での質のよい情報が得られる、そういうものをつくっていくことが大事なのかなと思うんです。
 私も学校の現場を離れているからわからないんですが、本当に養護教員の方に皆さんが相談できる体制というのが望ましいんですけれども、身近ですとその秘密の保持等々でやはり大変心配されてなかなか相談しないという方もいるんじゃないか、そのように思いまして、何種類かの、多層の階のこういう相談システムをつくることが大事なのではないか、そのように思います。
034 石井道子
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○会長(石井道子君) 時間の関係もございますので、次のテーマに移らせていただきます。
 次は、女性の健康支援のための政府の取り組み及び働く女性の健康支援策についてでございます。
 御意見のある方は挙手をお願いいたします。
035 八田ひろ子
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○八田ひろ子君 女性の健康支援のための政府の取り組みでは予算配分の問題と、それから、働く女性の健康支援策では長時間労働や深夜労働、また出産手当の問題でちょっと意見を申し上げたいと思います。
 この前私は労働省に対して、生涯の女性の健康支援というテーマでやっているんですけれども、実際に出産に直接かかわる前後しか施策の説明がありませんでして、それは堂本さんもおっしゃったとおりなんですね。
 どうしてこうなるのかというのを考えたんですが、予算配分でも労働省の予算がそういうふうに使われているということもありますけれども、この前は質問しませんでしたが、厚生省でもそうで、母子手帳とか子供を中心とした予算配分、これが生涯を通じた女性の健康支援というところに入っているわけで、やっぱり北京行動綱領とか今度の成果文書が十分に我が国の予算配分の中で反映されていないんじゃないかなというふうに思うんです。厚生省の女性関係というと、高齢者の骨密度検査に予算が配分された程度とか、これではやっぱり生涯にわたる女性の健康支援というのに政府が本腰を入れて取り組んでいるというふうにはなかなか見られないのではないかなというふうに思います。
 それから、働く女性の健康の問題でも、この前私は業者婦人の問題を質問したんですけれども、林議員が指摘をしましたように、ILOの母性保護条約を早期に批准して、産前産後休暇の長期化と所得保障の引き上げというのがどの分野の女性にとっても必要ではないか。
 先ほど、愛する男性のためにはどんな条件でも出産ができるというお話もありましたが、精神的には確かにそうなんですけれども、実際にはそうでないのがこの業者婦人の実態調査の中で明らかになっておりまして、私、きょうこれを持ってきたんですけれども、これを見ますと、労働基準法では産前産後の休暇が義務づけられていますが、産後でいっても五十日も休めない業者の方というのは半分以上なんですね。それで、二十代では二十日未満で働き出さなければいけないというのが二四・七%もある。妊娠、出産の時期の健康だけの問題ではなく、これが一生涯の健康にかかわってきますので、とりわけ産前産後の休みを保障する手だてとしての所得保障、出産手当などの経済的支援がどうしても必要ではないかというふうに私は思いました。
 それから、深夜とか長時間労働の問題ですが、これは最近の愛知県の調査なんですけれども、女性の深夜労働が一七%の企業で行われて、従業員数が千人以上のところでは三六%が夜の十時から午前五時まで女性が働いている企業だということで、男性と比べても非常に高いのではないかと。これは県が調べた調査なんですけれども。
 こういった問題で、私は、母性の保護を前提にした男女平等を貫いて働く女性の母性と健康を守るというのが本当に大事で、そういった意味でも、女子差別撤廃条約の第四条では「母性を保護することを目的とする特別措置をとることは、差別と解してはならない。」というふうに明記をしてあるんですが、日本のこの女子保護規定撤廃というのがどうだったのかというのが大変大きな問題だと思います。
 それからもう一つ、働く女性の長時間労働が問題になっておりますが、短時間労働と言われているパート労働者も、実はダブルジョブ、トリプルジョブという形で実際には長時間労働となって、これは深夜にもわたる時間も含めますので、健康問題を含めてきちんとした調査を行い、それが働く女性の健康支援策に反映されるということが非常に大事ではないかなと、こんなふうに思っております。
036 小宮山洋子
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小宮山洋子君 今の八田委員の意見と大体同じなのですけれども、厚生省の取り組みなどを見ましても、相変わらずまだ母子保健、母子と、子と一緒の母の部分だけは守られているけれども、あとはどちらかというと不妊治療とかそういうところにしかいかなくて、先ほどから話のあるような性教育からずっとトータルに更年期まで含めた、全体を見通した政策ということにはなっていないということがあると思いますので、今度省庁再編もあって新たな考え方でいろいろ取り組むときに、先ほどからお話にあるように、いろいろな政策の中にこのリプロの視点が正しい方向で入っていくということがぜひ必要なのではないかと思っています。
 それから、先ほどからILOの話も出ていますけれども、その女子保護規定を緩和する、撤廃してやるときにも母性の部分は守るということがちゃんとあるわけですよね。そのあたりのことも含めて、ILOの条約を批准したから守るというのでもないのが日本の政府の困ったところではありますが、とりあえず批准をすべきものはきちんと国際的なレベルで批准をしてもらって、あとはそれを批准しっ放しではなくて実行していくようにやっていく必要が、今全体の女性の半分が働いているわけですし、二十一世紀には七割以上が働く、先進国並みに、M字形ではなくてなるべく馬の背形、食パン形、働きたいと思う人は働きながらちゃんと子供を持てる、そういう状況をつくっていくということが必要なんじゃないかというふうに思っております。
 それから、先ほど性教育のところで発言のチャンスがなかったので一言だけ触れさせていただきたいんですが、日本の場合は、最初がエイズにかからないようにというような、どうしても何々しないようにという性教育で入ってしまったのが、どうも人間教育としての性教育にならないことにつながっているんじゃないかという感じがしています。
 養護教諭の方の中にはすごく先進的に取り組んでいるグループとかがありまして、私が以前に話を聞いたのは福岡のグループなんですが、そのときでもう十五年ぐらい取り組んで、いろいろな学年による方法論をきれいに持っていますので、そういった先進的な例をなるべく取り上げて全国に紹介するというようなことも含めて、人間教育としての性教育が行き渡るようにしてほしいと。ちょっとそちらも加えて。
037 水島裕
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水島裕君 自民党は二人だけになっちゃいましたので、少し頑張って発言しないとと思います。
 法整備にしましても、その一つ前の政府の取り組みにしましても、女性が生まれてから死ぬまでとかそういうことがよく出てくると思うんですけれども、私は性生活と妊娠、出産とせいぜい子育て、その辺に限って重点的にするのがいいんじゃないかと思います。
 というのは、大体女性の方が約十歳ぐらい長生きですし、男の方が早く死んで、もう少し健康の支援をしてもらいたいと、年寄りなんかはそうだと思いますし、特にこれは精神的なことが関係するんでしょうけれども、ちょっと前の統計ですと、男性は配偶者がいなくなると大体二年ぐらいで死んでしまう。女性はずうずうしい。そういうのと関係なしにいつまでも生きているということもありますので、上の方は男性の健康支援ということを考えていただいた方がむしろいいので、女性の健康支援は大変大切ですけれども、若い方を中心にいろいろしたらいいんじゃないかなと思います。
038 堂本暁子
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堂本暁子君 もうそれにはとても反論があります。
039 水島裕
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水島裕君 そうですか。じゃちょっと聞かせてください。
040 堂本暁子
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堂本暁子君 申し上げてしまいましたけれども、やっぱり更年期は昔は……
041 水島裕
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水島裕君 だから、骨粗鬆症とかもちろん女性に特有なのはいろいろありますけれども、それはもう逆に男性に特有なのもあるわけですので、その辺からいくと女性の方が少なくとも長生きですし……
042 堂本暁子
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堂本暁子君 人生五十年のときにはそんなに骨粗鬆症も問題にならなかったと思うんですね。ですけれども、女性が長生き、それから三十年間健康寿命が延びておりますでしょう。ですからこそ、妊娠、出産という機能を持った女性が、骨粗鬆症だけではないですね、関節炎とかリューマチとかいろいろそういった病気もたくさんありますし、それ以外に子宮がん、乳がんとか、いろいろなもので女性固有のものがいっぱいあります。
 残念なことに、日本ではそういうものについての研究すらないんですね。更年期障害についての研究すらない。ですから、さっき申し上げたように、がんとの誤診なんというのは考えられないんですけれども、実際は更年期障害だった方ががんと診断されていたというようなことも起こってくるわけです。
 ここに私、きょうたまたま持ってきたんですが、大阪のウィメンズセンター大阪、「女のからだ一一〇番」というのがございまして、去年は七百件ぐらいの相談があった。ことしもこれから十一月にそういう電話相談をなさいますけれども、結局そういった若者だけではなくて、この相談で一番多いのは三十代、四十代の方たちなんですね。それから、高齢者もあります。そういった方たちが今相談をするところがない。
 もっと言えば、これは国民福祉委員会でも問題にしたいと思っておりますが、そういったカウンセリングについて保険が適用されていないというようなことで、結論だけ言わせていただくと、私は母子保健課ではなくて、あくまでも女性健康課とか女性保健課というのを厚生行政の中にぜひ位置づけていただきたいと思いますし、法律としては、女性の健康基本法のような、生まれてから死ぬまでのリプロの視点からの法律、それは大変大事だろうと思います。
 前回も申し上げましたけれども、そういったことがきちんとなされていないからこの国はどんどん少子化が進んでしまう。それは、女性が本当に産みやすい環境が整備されていないということと同じだと思います。ですから、保育所とかそういった物理的な環境よりも、むしろ精神的な環境とか、それからカウンセリングとか、そういったような女性の性の問題についてのまさにセクシュアルヘルス、セクシュアルライツと言うことができますけれども、そういった性の側の問題としていかにポジティブに健康に生きるかということの総合的な政策が非常に遅れているのが日本ということが言えると思うんですね。そこのところを十分に整備しない限り、やはり日本ではなかなか女性がそういった意味で真の幸福、真の人権というのを持つことができない。それと同時に、社会全体としても、男女が住むこの社会自体もなかなかそういった性の面では健康ではない。
 今、性情報のはんらんとおっしゃいましたけれども、はんらんだけではなくて性暴力とかセクシュアルハラスメントなんかが大変ふえてきているのも、そういった本当の意味でのリプロダクティブヘルス・ライツといった政策が社会全般に、男に対しても女に対しても広がっていない、浸透していないからだというふうに私はリプロの立場から思っていますので、とても生涯のある一時期なのではなくて、女性が生まれてから死ぬまでの健康というふうに、特に水島先生はドクターでいらっしゃいますから、日本のすべてのドクターにそのことをぜひ理解していただきたいなというのが本当のところです。行政の方にもぜひ理解していただきたい、男の政治家にも理解していただきたいというふうに思っております。
 ありがとうございました。
043 八田ひろ子
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○八田ひろ子君 私も今のお話を聞いて、堂本先生と全く同じ意見で、無論反論というのではなく、ぜひ御理解をいただきたいなということで発言をしたいと思います。
 きょうの討議は女性の自立のための環境整備に関する件ということで、リプロダクティブヘルス・ライツを議題とされているわけでありますけれども、先日も私は、労働のステージの問題で、母性を持つがゆえに女性特有のいろいろな病気があって、それを職場の健診の中では全く重視されていないので、職場の健診の中に入れるべきではないかというふうに提案をしたんですが、労働省は業務との関連性がないからなかなかできないという言い方をされたわけですけれども、私はこれは全く認識が間違っているというふうに今でも思っております。実際に業務に支障を来していますし、それでは女性はそういった病気は自費で検診をして、病気が重くなって仕事につけなくなるということをみすみすほかっておくのか。
 今の健診そのものが、特に男性の中年以降の皆さんを中心とした生活習慣病、そういうところが相当重視されているものですから、そういった問題を取り上げました。
 男性も女性も一緒に幸せになるような社会をつくっていこうということで私どもこの調査会で論議をしているわけなんですけれども、女性は思春期以降、それ以前もそうですけれども、死ぬまで女性であるわけですね。それは、母性によるいろいろな障害、先ほど更年期障害のことを言われましたけれども、産めなくなってもそういう障害はまた来るわけなんです。だから、産む時期だけ大事にしましょうというのでは一緒に幸せになるという観点からは全く違うんではないかなというふうに思いますし、今先進諸国だけでなく、世界的にもこの問題を論議されているというのは、そういう考え方をとりわけ男性にも持っていただいて、世の中の社会のすべてのところを、ジェンダーのバイアスを避けながらよいものに変えていく。それが、女性を大事にするだけでなくて男性も大事にされる、そういった世の中づくりではないかなと私は思うものですから、ぜひ御理解をしていただきたいなと思います。
044 水島裕
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水島裕君 私は臨床家でもありますので、大概妥協して、よくわかりましたと、そう言いたいんですけれども、先ほどから、育児も含めて、私はもう十分出産、妊娠その他でもって女性に敬意を払うべきだということは申しておりますけれども、医学的に言いますと、リプロダクションの能力がなくなった後は、男性も女性も大体同じになるんです。早く死ぬようにうまくできている。免役機能も落ちて早くがんになったりなんかするように、そういうふうになっていて、大体同じみたいになってきてしまうんです。そのなり方がちょっと女性の方が遅いので、恐らく女性の方が長生きするんだと思います。
 ですから、余り人生の後半のことについて、もちろん細かいことは違いますし、それから女性だということで差別したり、そういうことはもちろんいけないんですけれども、事健康に関して、ある時期から上で女性の方をちゃんと面倒を見ろ見ろというのはやはり医学的にもおかしいので、余りそういうことを強くおっしゃると、ほかのところもということになるので、その辺、きょう、もう時間もなくなりますので、また次回にでもゆっくりと。
045 南野知惠子
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○南野知惠子君 健康支援のための問題でございますけれども、ぜひこれ、私、皆さん方に御理解いただきたいんですが、骨粗鬆症などの検査については、これはドックなどでもオプションでしていますよね。それが項目の中に入らないのかなと思うことがありますし、健康保険の適用ということにもしてもらいたいなと思っております。
 これは妊産婦健診もそのような健康保険の適用ということも考えられるのではないか。また、妊産婦健診が今二回だけがフリーでありますので、これは地方財政の問題ですけれども、もう少し回数をふやしていけないのかな。
 それから、病院などで保健指導をしますけれども、病院は医療、治療であればお金が取れます。けれども、保健指導の部分を幾らあれしてもお金にならない。その部分がもう少しあるならば、簡単に人工透析というような形にいって医療費を上げるようなことがなくなるのではないか。そのような保健指導にもう少し目を向けてほしい。と同時に、思春期の相談というものもその中に入れてもらえないだろうか。
 そういう意味では、運動に関して、食に関して、心と体の健康、そういうものの保健指導が大きな目玉になってくるんじゃないかなと、そんなふうに思いますので、お願いしたいなと思います。
046 石井道子
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○会長(石井道子君) それでは、最後のテーマになりますけれども、女性の健康支援のための法整備について、御意見がございましたら挙手をお願いいたします。
047 渡辺孝男
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渡辺孝男君 先ほどから女性のいろんな健康問題等、あるいは産む、産まない等に関してカウンセリングが非常に大事だというようなお話もございまして、私は、そういうカウンセリング等々を専門にやれるように心理士といいますか、僕らの場合、臨床にかかわってきたわけですが、そういう臨床心理士の国家資格化を進めて、そういう専門家の方を養成することが大事ではないかというふうに一つは考えます。
 あともう一つ、これは直には絡まないんですが、女性の精神的な健康という意味では関係してくるんですが、最近、親子鑑定というものが民間でもやられるようになってまいりまして、やはり生まれる子供さんの身分をきちんと保障するということと同時に、親子鑑定もある程度当事者の了解を得る、そういう規定というものが必要になってくるんじゃないか。今はいろいろな意味で、内緒で調べられたとかというようなこともあるようですので、そういう意味でのガイドライン等をつくっていくことが大事なのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
048 小宮山洋子
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小宮山洋子君 法整備については、一番最初の自己決定のところで堕胎罪などを話したことがそのことに当たるのだと思います。
 それで、きょうはちょうど時間にもなるようでございますし、以前、一年目にDVのことをずっとやって、それで法整備のため、今超党派のプロジェクトでやっておりますので、このことも三年の周期が来年で終わりますので、せっかく芽出しをしているのですから、何らかの形で今後検討していくということで、今ここからまた堕胎罪どうのこうのとやり出しますとどんどん時間が延びますので、また次回にしていただければいいのではないかと思います。
049 本田良一
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○本田良一君 これは政府委員がおられたときに言えばよかったんだけれども、さっきエイズの話もありましたが、私たちが外国に行くときに、ボランティアの方だと思いますが、空港でエイズの予防関係のパンフレットを配られるんですね。あるときたまたま外人がおりまして、この外人がどうするかなと思って後ろで並びながら私見ていたけれども、外国に行けばエイズになりますよというパンフレットのようなんですね。だものだから外人は受け取らなかった。私も受け取らなかった。だから、非常に国際感情を逆なでするようなエイズに対するそういう空港でのボランティア活動、これはちょっと疑問を投げかけておきます。
050 石井道子
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○会長(石井道子君) それでは、御意見も尽きないようでございますが、予定の時間を少しオーバーしてしまいました。本日の意見交換はこの程度とさせていただきたいと存じます。
 委員各位におかれましては、大変貴重な御意見をいただきましてまことにありがとうございました。本日の御意見も含めまして、これまでの調査の論点を整理し、各理事さんとも御相談をいたしまして今後対応してまいりたいと存じます。
 最後に、南野委員から発言を求められております。それは、九月十八日から二十二日にかけて行われたジュネーブのWHOの会議、専門家協議会に行っていらしたそうでございまして、テーマは安全な中絶ということでございまして、簡単に御説明をいたしたいということでございますので、よろしくお願いいたします。
051 南野知惠子
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○南野知惠子君 ありがとうございました。頭の方はもう会長がおっしゃっていただきましたので。
 大体三十カ国の代表が集まりました。団体も九団体、IPPFなどもその中でございまして、人口問題だとか中絶に関する現状というような問題で講演またはグループワークなどがございました。
 この前の森参考人が話していたと思うんですが、吸引による中絶。普通の掻爬と言われているのは子宮をせん孔したりするようなこともあるので、それよりももっともっと優しい、体に優しいというような意味での吸引における中絶をどのようにしようかということで、一応各国の意見が出されて、その取り組み、人材育成、そういった問題も出されておりました。
 これは十二週以内というようなところに一つの限定があるわけですが、その中で、地球上には毎年推定二億一千万件の妊娠が見られている、そのうち五〇%近くは無計画または望まない妊娠であり、そのうち二二%は中絶に至っていると。多くの女性は生涯において少なくとも一度は中絶を経験するほどの数であるということで、男性の大多数がその必要な原因となっているようだと。安全な中絶のためのサービス提供は中絶件数を高めてはいない、安全な中絶への障害こそが死亡率、罹病率を高めているというふうな話があり、人権や法と政策など、地方、国レベルでの取り組み方や、またWHOは、安全な中絶サービスの維持に必要な設備とか医薬品に関しての規定問題を克服する上で支援する役割を演ずべきであるというWHOの見方も示されていました。
 それから、もう一つはエイズ感染についての問題でございますけれども、この前、ナフィス・サディックという事務局長が日本に来られました。これは七月のことでございますが、東京で開催されたシンポジウム「二十一世紀の人口と女性」に、女性の生命は危険にさらされているというようなメッセージが寄せられました。その中での事務局長の言葉ですが、毎分一人の女性が妊娠の結果死亡しており、女性はHIVやほかの性感染症に感染する危険性がより大きいということで、これは国際的な問題でございますが、アフリカではHIVに感染している女性は男性より二百万人多いというようなものが報告されました。
 それを受けてであろうかと思いますけれども、感染症対策沖縄国際会議という、このたびの沖縄の会議の日程がもう既に組まれており、十二月七日、十二月八日は沖縄でそういう国際会議が持たれるようになっております。ちなみに十二月七日はHIVエイズについてのセッションがあり、感染症という形では、結核マラリア、小児期の疾病という三つのアイテムが持たれており、十二月八日には健康への包括的アプローチというものが国際会議場のテーブルにのるということでございますので、御報告かたがた会の経過を報告させていただきます。

第156回国会 衆議院 青少年問題に関する特別委員会 第4号 平成15年5月7日