リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

Global Abortion Policies Databaseより

国連のWHOとrcpが共同で運営しているデータベース

GAPD - The Global Abortion Policies Database - The Global Abortion Policies Database is designed to strengthen global efforts to eliminate unsafe abortion


世界を「地域」単位で検索できることに気が付いた。分類は、アフリカ、アジア、欧州、北米、オセアニア、南米の6地域で、これを全部指定すると登録されている全世界271カ国の状況が把握できるのだ。


さっそく、Mife-Miso承認国と、Misoのみ承認国を検索してみた。結果は以下の通り(数値は順に地域内の国家数、Mife-Miso承認国(%)、Miso単独承認国(%)

アフリカ 82カ国、22カ国(27%)、47カ国(57%)
アジア  62カ国、17カ国(27%)、39カ国(63%)
欧州   67カ国、47カ国(70%)、51カ国(76%)
北米    2カ国、 2カ国(100%)、1カ国*(50%)*カナダはデータ無し
オセアニア   19カ国、 5か国(26%)、 31カ国(68%)
南米   39カ国、5か国(13%)、 31カ国(79%)
計    271カ国、98カ国(36%)、182カ国(67%)


このDBで提示されている論文には、非常に問題のあるデータが出てくる。日本が中絶ケアに金銭的な補償(カバレッジ)が行われていることになっているのだ。


以下の論文の中にある。
[https://abortion-policies.srhr.org/documents/reference/Financial-Coverage-for-Abortion-Care.pdf:title=Global Abortion Policies Database: a Descriptive Analysis
of Financial Coverage for Abortion Care]


p.108の表を見て頂くと、日本は”Coverage for all individuals for all legal categories of abortion”(あらゆる合法的なカテゴリーの中絶についてすべての個人に対してカバーされている)と、"Coverage for complications related to abortion"(中絶に関する合併症がカバーされている)のところがチェックされている。後者は保険対応になる場合もありそうだけれども、前者はありえない。そこでこの論文の著者Antonellaと半年ほど長々とやり取りをした。その結果、日本政府から提供された「証拠」を元にしているということがわかった。ところが提出された「証拠」は全くもって中絶の保険適用に関する内容ではなかったのだ。
https://abortion-policies.srhr.org/documents/countries/09-Japan-Health-Insurance-and-Abortion.pdf#page=1


Antonellaとのやりとりについては以下のブログにある。
2021-04-27から1日間の記事一覧 - リプロな日記


このおかしな証拠は消された。でも、なおもまだデータベースの方では日本ではすべての中絶に保険が下りることになっているのだ。これについても再び問い合わせてみているところ。厚労省の方にも質問してみたい。