リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

小野薬品工業のプレグランディン

1984年7月製造販売認可8月発売開始

国会での議論

第101回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 昭和59年6月26日
村上正邦

この薬剤を使えばより楽に中絶することができるという考えが広まって、中絶に対する最後の歯どめとも言える、中絶手術を受けるときのあの恐怖心、そして女としての、女性としての恥じらい、こういった心理的な抵抗感覚が完全に麻痺してしまう。厚生大臣、果たせるかな、いろいろ最近の週刊誌を見ますと、「人工流産剤認可で女性がもっと翔び始める」とか、それから「薬を入れるだけで妊娠中絶」とか、それからまた「手術よりも安くて安全で簡単」とか、こういう報道が最近なされて、この薬剤は夢の薬だとか福音だとか言われておるわけであります。また、驚くなかれ投資家までが、この薬剤は多量に売れてもうかる、そうした商品だということで、この承認のうわさが流れた途端に製造元の小野薬品の株価は史上最高値の一万三千八百二十円を記録しております。胎内で安らかに成長している胎児を無残にも窒息さして中絶する薬が夢の薬として成長商品などと言われるとは、何とも私は恐ろしいことではないか、私には福音ではなくして悪魔のささやきが聞こえると申し上げておきたいと思います。

第101回国会 参議院 社会労働委員会 第14号 昭和59年7月17日
和田静夫議員の質問に答えて

政府委員(正木馨)(59年6月27日東京新聞に名古屋大医学部助教授が中期でも生きていることがあるとのインタビュー記事を受けて)WHOでの24週未満の中絶と言うのを……生存不可能な時期に(している)
和田「メーカー側は、どうも輸出に期待しているようです……日本への逆輸入を含めて残念ながら考えざるを得ない……注意深く考えなきゃならない。そういう意味で問題が多いというふうに思うんですね。覚せい剤などと同様に、密輸ルートがつくられる可能性など…も…想定しながら行かなきゃならぬ性質のもの」
政府委員「この人工流産剤のプレグランディンは、医薬品としては有効性、安全性の面で有用殿高い薬であるということで承認をされた……この薬は素人が使いました場合には非常に危険を伴う薬……そこで、中央薬事審議会でも慎重な審議のもとに――実はもう一年半以上前に薬としての有用性が認められるということで投信が出たわけでございますが、やはり使用面にわたっていやしくも問題が生じてはならないということで、これについての管理・取扱い用量というものを策定いたしまして、そしてこれは優生保護医に限って使わせる、それから妊娠中期の治療的流産である、それから創業に指定をする、それからメーカー、卸、指定医の関係におきまして十分厳重なチェックをして、横流れがないようにということでチェックをいたしわけでございます……ただし心配は、個人使用と言う形で持ってくるということになるとここがまた非常な心配……個人が素人療法で扱った場合には大変心配なことになるんだということを十分周知徹底をしなければならない。と同時に、輸入監視の面におきましても、薬事監視員等を活用いたしまして強力な行政指導を行って……妙な輸入のされ方のないように…厳重に…目を光らせていきたい…。

医会報(日母医報)目次 昭和56年~昭和59年(1981~1984年)より
「プレグランディン」の記事抜粋

1982年9月号(第34巻第9号No. 390)
820903;プレグランディン膣坐剤(ONO802)の販売をめぐって ー本剤の特殊性についてー

10月号(第34巻第10号No. 391)
821002;「第3回理事会」開催 ー優保法問題、プレグランディン膣坐剤の取り扱いを協議ー(S57.9.18)
821003;中期中絶薬プレグランディン膣座薬発売へ
〝特殊薬剤〟として厳重な取り扱い決定
ー指定医のみに提供、試供品の類は一切なし、新聞大々的に報道ー

11月号(第34巻第11号No. 392)
821104;日母見解 「プレグランディン」の使用要領決まる
中期中絶用膣座剤 ーメーカーとの間に合意書を交換ー
プレグランディン膣坐剤使用要領
合意書

12月号(第34巻第12号No. 393)
821203;昭和57年度「第2回支部長会」開催 ー優保法問題・プレグランディン問題を中心に連絡協議ー(S57.11.14 全共連ビル)


1983年11月号(第35巻第11号No. 404)
831105;プレグランディン使用指針決まる ー厚生省と日母の間で合意ー

1984年7月号(第36巻第7号No. 412)
840701;「プレグランディン膣坐剤」製造認可される ー厳重な薬剤管理、指定医のみ使用可ー
&nbsnbsp; 本剤の適応は「妊娠中期の治療的流産」
840702;膣坐剤取扱いの〝公式見解〟 ゲメプロストを含有する膣坐剤(プレグランディン)の管理・取扱い要領(S59.5.30)※衛発第371号 厚生省公衆衛生局長、薬発第376号 厚生省薬務局長
840704;プレグランディンの保険薬としての取扱いについて

8月号(第36巻第8号No. 413)
840801;日母主催、「水子慰霊祭」行われる 各県支部・母親代表も参列(S59.6.30 増上寺
840802;プレグランディン8月1日発売
840804;病院用プレグランディン報告書記入及び運用要領
840810;【学術】 プレグランディンの基礎と臨床の実際※東京大学産婦人科講師_木下勝之

12月号(第36巻第12号No. 417)
841202;提出期限は明年1月15日 プレグランディン膣坐剤の施用報告書 所定の様式で都道府県日母支部
841203;今日の焦点 プレグランディン膣坐剤にはなぜ数多くの制約があるのかー大学や大病院の会員にー※常務理事_五味淵政人
841203;厚生省主催「優生保護法指定医師研修会」開催 風疹、プレグランディン中心に(S59.11.18 全共連ビル)