リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

経口人工妊娠中絶薬ミフェプリストン国内第三相試験について

東大大須賀譲教授の報告と「今後の課題と展望」

日本産科婦人科学会雑誌Vol.73 No.12 pp.1735-9. 2021
第73回日本産科婦人科学会・学術講演会 医会・学会共同企画 生涯研修プログラム9
人工妊娠中絶に関する最近の話題


上記題目で発表されたもの。日本の試験の結論として、「妊娠63日以下の人工妊娠中絶を希望する日本人に対するLPI001(200mg)経口投与及びLPI002(800μg)口腔内投与の逐次併用の有効性及び安全性が示された。」としている。*LPI001=ミフェプリストン、LPI002=ミソプロストール

今後の課題と展望
 経口人工妊娠中絶薬ミフェプリストンが認可されるに際して重要な課題がある。

として、以下の3つを挙げている。(丸数字は引用者が付加。)

① 本薬剤の特殊性を考え、厳重な薬剤管理が必要。管理の方法については、中期中絶に用いるプレグランディンの使用が母体保護法指定医に限られ、かつ、保管、管理、施用などについて報告が義務付けられていることが参考になる。
②実際の運用を安全に行うための指針作りが必要。薬剤の服用を自宅で行うことを認めている国もあるが、それらの国は長年の経験を持つ国であり、わが国においては少なくとも薬剤の服用は医療機関で行う必要があると考える。服用の観察方法などに関しては今回のデータをもとにこれから取扱い指針などを作っていく必要がある。
③本薬剤は海外では長年の使用経験があり広く受け入れられている。薬剤による妊娠中絶が導入されることは、対象となる女性にとって外科的方法以外の選択肢が広がり、リプロダクティブ・ヘルス、ライツの観点からは望ましいことと考えられる。

では、プレグランディンがどのような扱いだったかというと、認可時の朝日新聞が次のように報じています。

(その前に事実確認。小野薬品工業から製造承認が申請されたのは昭和56年4月、中央薬事審議会は57年8月、承認が適当と答申した。……が、昭和59年5月まで承認が2年間も先送りされています。その裏についての説明が以下。)

安い薬代だけで中越がすんでは経営悪化を招きかねない。当初、産婦人科医の団体、日本語製保護医協会の一部に反対する声が出た。 さらに……生命尊重派の国会議員が「こんな薬が承認されれば、中絶を増やし、人命軽視の風潮を助長させる」などとクレームをつけ…… このため同省(厚生省)は「安易に使われてはならない」(代田久米雄・審査課長)と、二年がかりで厳しい規制内容をまとめ、ようやく承認に踏み切った。 帰省内表は①適応を、母体の病気、傷害などにより妊娠を続けることが困難な「妊娠中期の治療的流産」に限る②一般人が自由に入手できない「要指示薬」と、管理方法などが細かく定められる「劇薬」に指定、優生保護法指定医にしか使用を認めない③横流しを防ぎ指定医以外の手に薬が渡らないよう、メーカー、卸、医療機関が扱った数量、ロット番号、年月日を帳簿に残すなどの「管理・取扱い要領」を守らせる――が骨子。 違反すれば、行政指導で出荷停止を求めるという。不正使用者が刑法の堕胎罪にふれる可能性もあるが、どのようなケースが「治療的流産」であるかは、最終的には医師の判断に任される。審議会を通りながら二年近くも承認されなかったこと、ひとつの薬のために管理・取扱い要領が定められたことなど、異例ずくめといえる。

こんな異例を参照にして今回の経口中絶薬の管理方法が決められては困る!