Joicpf 知るジョイセフの活動とSRHRを知る 2022.10.12
著者:勝部 まゆみさん
ジョイセフ事務局長(2015年~、2017年から業務執行理事を兼任) ベトナム、ニカラグア、 ガーナ、タンザニアなどでリプロダクティブ・ヘルスプロジェクトに携わってきた
SDGsとMDGsの違いなど、勉強になります。一部抜粋させていただきます。
セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツへの道のり ③
今回は、国際社会が人類共通の目標として掲げた持続可能な開発目標(SDGs)におけるSRHRと、SDGsの前身となったミレニアム開発目標(MDGs)について詳しく見ていきます。(3)ミレニアム開発目標(MDGs: 2001 ~2015)と持続可能な開発目標(SDGs: 2016 ~2030)
2000年に国連で採択されたミレニアム開発目標(MDGs)は当初、保守派による政治的バックラッシュを受けて、女性の健康を決定づけるRHRに関して言及することなく、妊産婦の健康の改善という内容に意図的に限定したことが厳しく批判されました。その後、妊産婦の健康を保証するためには、リプロダクティブ・ヘルス・サービスの普遍的アクセスが必要であるとして、多くの研究者、NGO、関連団体の強い働きかけがなされました。その結果、2005年に「2015年までにリプロダクティブ・ヘルス(RH)に対する普遍的アクセスを実現する」というターゲットが加えられましたが、この目標に対する指標が正式に確定したのは、2007年のことでした[23]。MDGsの最終評価では妊産婦死亡やRHサービスへのアクセスについては、国・地域間で格差が大きく、未達成のアジェンダとしてSDGsに引き継がれました[24]。2016年から2030年までの国際的合意である持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)は、ICPD(1994年にカイロで開催された国際人口開発会議)の行動計画と北京会議の行動綱領を踏襲して策定されています。SRHR分野の達成すべき目標とターゲットが、SDG3(健康)とSDG5(ジェンダーの平等)に明確に言及され、ジェンダーの平等、女性のエンパワーメントとともに、SDGsの達成に不可欠な要素として位置付けられました。
2019年11月に国連人口基金(UNFPA)、 ケニア政府、デンマーク政府が共催し、170カ国の政府機関、市民社会、ユース団体、企業などから約 8300人が参加したICPD+25 ナイロビサミットでは、25年の進展と未だに残るSRHRの課題が確認されました。特に深刻な課題が3つ挙げられています。1)2億2000万人の女性が、必要とする家族計画サービス(避妊手段)を手にいれることができないこと、2)適切なケアがあれば予防可能であるにも関わらず、妊娠、出産、安全でない人工妊娠中絶によって、1日に800人の女性が命を失っていること、3)ジェンダーに基づく暴力、児童婚や女性性器切除(FGM)などの健康や命を損なう有害な慣習が続いていることです。
さらに、女性、女児、若者はじめ、多様な人々を取り巻くSRHR、ジェンダー、エンパワーメント、イノベーションなどが幅広く議論され、若い世代はじめ、当事者が政策の決定プロセスに加わる重要性が危機感をもって議論され、各国の政府、国連・国際機関、市民社会が、人権としてのSRHRの推進に、強い決意とコミットメントを表明しました[25]。
その後、国際社会は新型コロナウイルス感染症という未曾有の世界的パンデミックを経験し、その中で女性と女児のSRHRも、後述するように、危機的状況を迎えることになります。(後略)
[23] Lucia Berro Pizzarossa, “Here to Stay: The Evolution of Sexual and Reproductive Health and Rights in International Human Rights law”, Department of Transboundary Legal Studies, University of Groningen, 9712EA Groningen, The Netherlands, p10.
[24] UN Department of Public Information、国連ミレニアム開発目標報告2015、https://www.unic.or.jp/files/14975_2.pdf
[25] ジョイセフもICPD+25に参加し、本会議場でNGOとしてのコミットメント発表の機会を得た。https://www.joicfp.or.jp/jpn/2019/12/24/44987/