リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬の承認にあたって求めたいこと

忘備録

とりあえず思い付きですが書き止めておきます。

原則:中絶は必要不可欠な(エッセンシャルな)医療であり、医療はすべての人に提供されるべきである。

方針1. 「今、困っている女性」にとって、中絶薬がより使いやすいものになることを目指す。

方針2. 上記とは別に、本来あるべき姿や「理想像」も提示する。


重要な要望事項
(1)入院:当面は「治験に合わせる」ために必須だとされるのだとしても、必要最小限にとどめ、その費用はできる限り低く抑え、できるだけ早い段階でアクセスの「障壁」になる入院要件は撤廃していくこと。

(2)費用:自由診療なので、中絶薬を処方できる医師は、「良心的な料金設定」にすること。不必要な「追加料金」はできる限り避けること。

(3)社会的公正:未成年者や資金の乏しい人など、社会的に脆弱な立場の人々には、中絶薬の料金を公費負担をしていくこと。本来、人権として保障されるべきである「合法的で安全な中絶」への不必要な障壁を作らないこと。

(4)取扱い:中絶薬を従来の中絶手術よりもアクセスが悪いものにしてはならない。当面、最低限でも、現在、妊娠初期の中絶手術を行っている医療施設は、すべて中絶薬を処方できるようにすること。段階的に中絶薬を取り扱える職種を増やし、最終的には「当人」の取扱いを認めること。オンライン処方も可能とする一方で、当事者への十分な情報提供と24時間サポートを提供すること。

(5)稽留流産や妊娠9週以降のへの適応:できるだけ早い段階で、稽留流産や妊娠9週を超えた場合の中絶にも薬を使えるようにしていくこと。そのための次のステップを考えるために、厚労省や日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会は、当事者の意見を聞く機会を設け、実現のための方策を練ること。

(6)公費負担:中絶薬の使用に、何らかの公費負担を行う制度作りを検討していくこと。家族単位の「生活保護レベルかどうか」の判断ではなく、妊娠している個人が経済的に困難を抱えている場合には、社会的に支援すること。

(7)虚偽情報の削除:現在、「中絶薬」が危険であるという虚偽情報を流布している官民諸団体は、その情報を取り下げ、科学的エビデンスに基づく情報提供を行うように、政府が主導していくこと。

(8)医会への提言:中絶医療を独占している「母体保護法指定医師」に配布している『指定医師必携』の内容を刷新し、個々の指定医師が自らの「中絶」に対するネガティブな価値観に気づき、行動変容できるようにするためのVCATトレーニングなどを提供することで、女性の人権(特にリプロダクティブヘルス&ライツ)の真の守護者として、指定医師たちが自らを真摯に律する内容に刷新すること。

(9)長期的な展望:国連人権規約やWHOの『中絶ケアガイドライン』に則って、中絶を犯罪化して中絶医療の改善を阻んでいる刑法堕胎罪や母体保護法を廃止し、中絶を必要とする人々にとって、よりアクセスしやすいように、中絶薬を提供できる職種や資格を広げていくこと。

(10)意識改革:中絶薬の導入と同時に、人権教育や包括的性教育を導入することで、中絶のスティグマをなくし、中絶ケアが正当な医療行為の一環であるという認識を広めていくこと。