リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ミフェプリストン-ミソプロストールと手術による人工妊娠中絶の比較による短期的な副作用

株式会社Kids Public産婦人科オンライン代表・重見大介医師

2月26日にm3.comに寄稿していた「経口中絶薬、重篤な有害事象の発生リスクとは」の元論文を確認 
"Adverse Outcomes"は必ずしも「有害事象」とする必要はなく、副作用と訳すこともできる言葉。


Short-Term Adverse Outcomes After Mifepristone-Misoprostol Versus Procedural Induced Abortion : A Population-Based Propensity-Weighted Study

PubMedの記述を仮訳します。

背景:
  第1期の薬による人工妊娠中絶(IA)と手続きによるIAを比較した先行研究は、選択バイアスがかかりやすく、重篤な有害事象(SAE)の評価には力不足で、適応による交絡を考慮していない。2017年から、カナダ・オンタリオ州全域の外来薬局で、ミフェプリストン-ミソプロストールが無償で調剤された。


目的:
  ミフェプリストン-ミソプロストールによる早期IA後の副作用の短期リスクを、手術によるIA後と比較すること。


デザイン:
人口に基づくコホート研究。


設定:
カナダ、オンタリオ州


患者:
第1期のIAを受けたすべての女性。


方法:
  外来患者としてミフェプリストン-ミソプロストールを処方された女性39 856人と、病院以外の外来診療所で妊娠14週またはそれ以前に手術によるIAを受けた女性65 176人が比較された(比較1)。ミフェプリストン-ミソプロストールを処方された女性39 856人と、推定妊娠9週以下で外来病院ベースの手術によるIAを受けた女性8861人が比較された(比較2)。主要複合アウトカムは、IA後42日以内の重篤な母体罹患、末端臓器障害、集中治療室入院、死亡を含むあらゆるSAEとした。副次的な広範なアウトカムは、SAE、出血、妊娠の産物の保持、感染、輸血のいずれかであった。安定化した治療逆確率加重により、曝露群間の交絡を説明した。


結果:
IA時の平均年齢は約29歳(SD、7)、33%が未産婦であった。6%が農村部に居住し、25%が低所得者層に居住していた。比較1では、ミフェプリストン-ミソプロストールIA後133人(1000人あたり3.3人)、手術によるIA後114人(1000人あたり1.8人)にSAEが発生した(相対リスク[RR]、1.87[95%CI、1.44~2.43];絶対リスク差[ARD]、1.5/1000[CI、0.9~2.2])。有害事象の発生率は、1000人あたり28.9人対12.4人(RR, 2.33 [CI, 2.11 to 2.57]; ARD, 16.5 per 1000 [CI, 14.5 to 18.4] )であった。比較2では、SAEは女性133人(1000人あたり3.4人)および27人(1000人あたり3.3人)にそれぞれ発生した(RR、1.04 [CI, 0.61 to 1.78] )。あらゆる有害事象の発生率は、1000人あたり31.2人対24.9人であった(RR, 1.25 [CI, 1.04 to 1.51] )。


限界:
ミフェプリストン-ミソプロストールを処方された女性が薬を服用しなかった可能性があり、IA時の正確な妊娠週数が必ずしも判明していなかった。


結論:
まれではあるが、短期的な有害事象は、手術によるIAよりもミフェプリストン-ミソプロストールIA後の方が、特に重篤でない有害転帰について起こりやすい。

調査を行ったのはCanadian Institute of Health Research
Welcome to the Canadian Institutes of Health Research - CIHR