リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ノルレボ錠0.75mg (一般名 レボノルゲストレル)審査結果報告書

2010年12月24日 薬事・食品衛生審議会薬事分科会議事録には、次のような発言が残されている。この日、承認を求めて大臣に答申することが決まったようだ。「生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否」という表現は、メフィーゴパックで使われているものと同じであるばかりか、他の新薬も全く同じ項目で審議されているらしいことが分かった。(例:
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000057266.pdf)

 次の議題に入ります。議第3、資料3「医薬品ノルレボ錠0.75mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」です。
 本品目は、適用等から見て慎重に審議する必要がある医薬品に係る事項ですので、「薬事分科会における確認事項」第3項に基づき、医薬品第一部会での審議結果を踏まえて薬事分科会にて審議を行うこととなっております。初めに部会での審議結果等を御報告いただいた後、当分科会で審議をいたしたいと思います。
 なお、本日は財団法人日本生命済生会付属日生病院病院長の寺川直樹先生に参考人として御出席いただいております。それでは、医薬品第一部会長代理の永井委員から御説明をお願いいたします。
○永井委員 議題3、資料3「ノルレボ錠0.75mg」(レボノルゲストレル)について概要を御説明いたします。また参考人として、ただ今御紹介のありました寺川先生においでいただいておりますので、事務局の説明の後にお話をお伺いする点を申し添えておきます。
 本剤は、有効成分として合成黄体ホルモンでありますレボノルゲストレル(以下、「LNG」)0.75mgを含有する薬剤であり、緊急避妊を効能・効果といたします。
 緊急避妊についてですが、WHOによると「緊急避妊とは、1.避妊なしの性行為後から数日以内、又は2.望まない妊娠を回避するための避妊方法の失敗時に、女性が実施可能な緊急的な避妊方法である。なお、実施される緊急避妊法は、日常的な避妊方法としては適していない」と定義されております。
 なお、本剤は、我が国において「緊急避妊」という新しい効能・効果の避妊薬でありますので、分科会の審議の参考とするためにパブリック・コメントの募集を実施しており、部会においても中間報告されております。本日、最終報告を審査の詳細と併せて事務局より説明をいたします。
 海外では1960年代より、ホルモン剤による緊急避妊法が利用されており、当初はエチニルエストラジオール(以下、「EE」)の「単独投与が用いられておりましたが、その後、EE及びdl-ノルゲストレル配合錠を用いた方法(Yuzpe法)の有効性が確認され、緊急避妊法として用いられるようになりました。1998年に報告されたWHOによる臨床試験において、Yuzpe法とLNG単独投与(0.75mgを12時間毎に2回投与)、その方法が比較され、LNG単独投与の有用性が示されております。さらに2002年に報告されたWHOによる臨床試験においてLNG0.75mgの2回投与と、LNG1.5mg単回投与との有効性及び安全性が同様であったということで、服薬コンプライアンスを考えると、WHOは緊急避妊法としてLNG1.5mgの単回投与を推奨していて、2010年4月時点で欧州、アジア、アフリカ等の海外48か国で承認され、一般用医薬品又は医療用医薬品として使用されております。
 我が国においても、妊娠を望まない場合には事前に十分な避妊措置が講じられることが前提ではありますが、やむを得ず十分な避妊措置が行えなかった際の緊急避妊を目的として、本剤が投与されることは有用な選択肢の一つになると考えられます。また、海外において本剤等のLNG錠が、緊急避妊を効能・効果としてWHOが実施した臨床試験成績に基づいて承認されているということで、国内にはYuzpe法が適応外使用とされていることを考慮しますと、緊急避妊薬である本剤を国内の臨床現場に供する意義はあると考えます。
 本剤については、去る11月26日の医薬品第一部会において審議した結果、承認して差し支えないという判断に至っております。
 以上、概要を御説明いたしましたが、事務局からもう少し詳しい説明をお願いいたします。
○望月分科会長 それでは、事務局から補足等の説明をお願いいたします。
○事務局 議題3、資料3「ノルレボ錠0.75mg」の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
 有効性に関しては、審査報告書の22ページを御覧ください。海外各国における承認の根拠となった、2002年に報告されたWHOによる臨床試験、「WHO2002試験」について説明させていただきます。本試験は薬剤投与前120時間以内に十分に避妊措置を講じない性交を1回経験した女性4136例を対象とした、無作為化二重盲検並行群間比較試験として実施されました。22ページの表を御覧ください。妊娠例数及び妊娠率は、LNG1.5mg単回投与で1356例中20例で1.47%、LNG0.75mg2回投与で1356例中24例で1.77%。妊娠阻止率は、LNG1.5mg単回投与で82%、LNG0.75mg2回投与で77%でありLNG1.5mg単回投与の有効性が示されました。
 次に審査報告書の24ページを御覧ください。国内第III相試験では、性交後72時間以内に緊急避妊を必要として来院した日本人女性を対象として、性交後72時間以内に、本剤0.75mg錠2錠を1回経口投与された結果、妊娠は63例中1例で認められ、妊娠阻止率は81%でした。国内第III試験は少数例の試験ですが、WHO2002試験と矛盾するような結果は得られていないことも考慮し、緊急避妊に対するLNG1.5mg単回投与の有効性は、日本人女性においても期待できるものと判断いたしました。
 安全性について、審査報告書の27ページを御覧ください。「1)臨床試験で認められた有害事象について」の2段落目です。国内第III相試験で頻度の高かった有害事象は、消退出血46.2%、鼻咽頭炎20%、不正子宮出血16.9%、頭痛16.9%、悪心13.8%、倦怠感9.2%、傾眠7.7%及び下腹部痛6.2%であり、重篤な有害事象は認められませんでした。日本人女性に対する本剤の投与経験は限られているものの、国内第III相試験での有害事象は、プロゲスチン投与時の副作用として知られているものが多く、発現の傾向もWHO2002試験と大きく異なるものではないことから、日本人女性においても、LNG1.5mg単回投与の安全性は許容可能であり、適正に使用されれば大きな問題はないと判断いたしました。
 用法・用量について、審査報告書の29ページの(5)用法・用量についての項を御覧ください。用量については、LNG1.5mgの有効性及び安全性が示されたことから本剤の用量を1.5mgとすることは妥当と判断いたしました。用法については審査報告書の30ページの表に記載しております。海外ではWHO2002試験において、性交後4~5日後と比較して、性交後1~3日後で妊娠率が低く、妊娠阻止率は高い成績が得られたことから、性交後72時間以内に単回投与するよう用法が設定されており、国内第III相試験においても、性交後72時間以内の女性に本剤が投与されたことから、本剤の用法・用量を「性交後72時間以内に、レボノルゲストレルとして1.5mgを1回経口投与する」とすることは妥当と判断いたしました。
 効能・効果について、審査報告書の29ページの(4)効能・効果についての項を御覧ください。申請時効能・効果は「性交後の避妊」とされていましたが、本剤は適切な避妊が講じられなかった性交の後に、避妊の目的で緊急的に用いられる薬剤であること、及び性交後の記載は性交後に避妊が可能であるとの安易な理解を与えるとの懸念があることを踏まえ、効能・効果は「緊急避妊」とすることが適切であると判断いたしました。さらに、適正使用の観点から、本剤の使用上の注意として、本剤は完全に妊娠を阻止するものではないこと、本剤は避妊措置に失敗した又は避妊措置を講じなかった性交後に緊急的に用いるものであり、計画的に妊娠を回避するものではないことを注意喚起する必要があると判断いたしました。
 なお、審査報告書の36ページの(6)製造販売後調査についての項に記載されておりますように、300症例を対象として、本剤処方時に服用者の背景(年齢、基礎疾患、既往歴、最終月経等)、それから性交日時、緊急避妊薬又は低用量経口避妊薬の服用歴、服用前の月経状況等の安全性に関する情報を収集するとともに、本剤服用後に服用日時、服用状況(服用錠数等)、避妊の有無と避妊方法、服用後の出血状況、有害事象の発現状況、妊娠検査結果等を調査する予定です。
 以上、機構の審査及び医薬品第一部会での審議の結果、本剤を「緊急避妊」の効能・効果で承認して差し支えないと判断し、薬事分科会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。
 なお、本剤は原体、製剤ともに劇薬に該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品には該当しないと判断しております。再審査期間は4年とすることが適当であると判断しております。
 引き続き、パブリック・コメント募集の結果について御説明させていただきます。資料3-2を御覧ください。本剤の承認に関しては社会的関心が高いと考えられたことから、医薬品第一部会で了承をいただき、11月10日~12月9日までの間パブリック・コメントを実施いたしましたので、提出された意見を取りまとめてお配りしております。また、当日配付資料26として、パブリック・コメントに対する対応案についてお配りしております。
 まず、パブリック・コメントの募集については資料3-2の別添1でお付けしております、意見募集の要項、別添2の品目概要、一部はマスキングしておりますが、分科会資料にあります審査報告書及び添付文書案、別添3の臨床試験の参考となる文献リスト、以上の資料を公表し、電子政府の総合窓口e-Govにおいて募集いたしました。寄せられた意見は578件で、医療関係者が160件で約28%、医療関係者以外が175件で約30%、職業の記載がなかったのは243件で42%でした。
 次のページを御覧ください。寄せられた意見において、「承認をするべき」との意見が463件で80%、「承認するべきでない」との意見が114件で約20%でした。「その他」の意見として「子宮筋腫の治療薬として必要」との意見が1件ありました。
 「承認すべきとの意見の主な理由」として、「性的被害を受けた女性を助けるために必要」「避妊に失敗した場合など、望まない妊娠を回避するために必要」「副作用が少ないとされる薬剤である。緊急避妊として承認された薬剤が必要」「人工妊娠中絶を回避するために必要」「既に世界各国で用いられており、日本においても必要」などの意見がありました。なお、理由の横の件数は、一つの意見に複数の理由が記載されている場合は、それぞれの理由について計上しております。
 一方「承認すべきでないとの意見の主な理由」としては、「女性にだけ性の責任を負わせ、女性の健康を害するおそれがある」「着床直後の受精卵を流す極早期の妊娠中絶作用がある」「環境ホルモンであり、次世代に影響が及ぶ」「子どもたちの安易な性を助長する」「緊急避妊薬は妊娠中絶の減少につながらない」「生命軽視に拍車がかかる」「道徳上認められない」などの意見がありました。
 「承認すべきでないとの意見の主な理由」について、対応案を当日配付資料26としてお配りしておりますので御覧ください。提出された御意見のうち、多かったものについて御説明させていただきます。
 「女性にだけ性の責任を負わせ、女性の健康を害するおそれがある」との御意見については、血栓症乳がんのリスクは、ホルモン製剤において認められるものですが、投与期間が長期になるほど、用量が高くなるほどそのリスクが高まることが知られております。
本剤については、単回投与であり、臨床試験においても血栓症乳がんについての報告はないことから、現時点で血栓症乳がんのリスクについて、特段の注意喚起は不要だと考えております。なお、承認後の安全性情報の収集を通して、当該リスクが懸念される場合は、必要な対応をしていきたいと考えております。
 「着床直後の受精卵を流す極早期の妊娠中絶作用がある」との御意見については、本剤の非臨床試験の結果から排卵抑制作用が認められており、緊急避妊の主な作用機序として排卵抑制作用が考えられる。受精卵の着床阻害作用については、既に承認されている低用量経口避妊薬においても、着床阻害作用があるものとして承認されておりますが、本剤については、その可能性を完全には否定できないものの、当該作用を示す明確なデータはありません。
 「環境ホルモンであり、次世代に影響が及ぶ」との御意見については、LNGを含有する経口避妊薬の年間の生産数量が約7100万錠(レボノルゲストレルとして6.5kg)であるのに対し、申請者が予定している本剤の生産数量は約□□錠で□kgとのことです。既に承認されているホルモン製剤の生産数量に比べ、本剤の使用量は少なく、環境への影響は大きくないと考えております。
 また、欧米など世界の多くの国で、当該レボノルゲストレルの緊急避妊薬が承認されており、現時点では、米国及び欧州で環境への影響を理由に、本剤の使用を禁止した事例はありません。世界の状況も注視し、今後新たな対応が必要となった場合には速やかに対応していきたいと考えております。
 「子どもたちの安易な性を助長する」との御意見については、本剤を適正使用した場合でも妊娠阻止率は約80%であり、避妊の効果は完全ではなく、コンドームの使用等の計画的な避妊法に代わるものではありません。本剤の適正な使用については、処方に当たり、医師から服用者に対して指導・助言が行われるとともに、製造販売業者が服用者向け情報提供資料を作成、配布し、注意喚起する予定としており、適正な使用が守られるよう情報提供に努めたいと考えております。
 「緊急避妊薬は妊娠中絶の減少にはつながらない。生命軽視に拍車がかかる。道徳上認められない」との御意見については、本剤が承認されたことにより、妊娠中絶の件数にどの程度の影響があるか不明ですけれども、現状においても、エストロゲンとプロゲスチンの配合剤が適応外で緊急避妊の目的で使用されている状況があります。今後、承認されたものが使用されることで、適正使用のための情報提供や安全性等の情報収集がより適切に行われるものと考えております。以上がパブリック・コメント募集の結果です。
 なお、事前に神山委員から、「性交後72時間であるかどうか、医師はどうやって判断するのか。虚偽の説明をして、常備薬のように集められるおそれを払拭できないのではないか。先日の子宮頸がんワクチンの説明において、15歳では既に性交経験があるので、接種開始を10歳にしたと説明された。未成年や若い女性が安易に短期間に何度も利用した場合の副作用は確認されているのか。承認に反対するパブリック・コメントにも一理あると思われる」との御意見をいただいております。
 性交後72時間であるかどうかは、医師は患者の申出により判断することになります。また、同一周期内で複数回投与を一律的に制限するべきとの情報もございませんが、本剤は通常の避妊に用いられる医薬品ではなく、あくまで緊急避妊の効能に対して用いられる医薬品であることから、本剤の適正な使用について処方に当たり、医師から服用者に対して指導・助言が行われるとともに、服用者向け情報提供資料を作成・配布して注意喚起するなど、適正使用のための情報提供が行われるよう対応を考えております。
 また、木津委員からは、「本製剤の病院あるいは薬局での管理について、きちんと規定を定めた方がよいと思うがいかがか」との御意見をいただいております。
 本剤は既に承認されている経口避妊薬と同様に、処方せん薬として管理することとしており、医療機関や薬局等で適切に管理していただきたいと考えております。
 説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○望月分科会長 それでは、参考人の寺川先生から補足等がありましたらお願いいたします。
○寺川参考人 御紹介いただきました、大阪市日本生命済生会付属日生病院長をしております寺川です。どうぞよろしくお願いいたします。医薬品第一部会の永井先生から適切な御紹介と、事務局から非常に詳細な御報告がありましたので私からはそう多くはありません。私は、必ずしも避妊薬なり避妊法の専門ではありませんが、2年前まで医学部の産科・婦人科教授をしておりましたので、産婦人科専門医として少し付け加えさせていただきます。
 1960年に米国FDAで避妊薬ピル、これはbirth control pillですがこれが認可されて以後、米国では性犯罪被害者に対して、そのbirth control pillとは違う、性交後避妊、Postcoital Pillが開発できないかということで、1960年代から性ホルモン剤による試行が始まりました。最初は、極めて大量の高用量の女性ホルモンのうちの卵胞ホルモン、エストロゲンだけを5日間にわたって服用する方法がとられたようです。その1錠中のホルモン含有量は、今現在使われております低用量ピルからすると何十倍の量で、非常に効果はあったそうですが、当初定められた5日間を続けて服用することは、多くの方が非常に難しかったようです。
 先ほど御紹介がありましたように、1970年代に、カナダのアルバート・ヤッペという方が、今度は黄体ホルモン剤、プロゲスチンを併用することでその大量のエストロゲン、卵胞ホルモン剤の含有量を減らすことができるということで、その有効性を報告しました。現在日本では当然ながら緊急避妊薬で認められたものはありませんが、それ以来、日本ではプラノバールという薬、これは認可された実際の適応症は、女性の機能性出血であるとか、月経異常の治療薬ですが、いわゆる中用量ピルが実際には処方できておりますので、それを緊急避妊薬として使われているのが現状です。
 ちなみに、性犯罪被害者に対する医療支援というのが、警察庁によって2006年から行われております。これは、各都道府県が協力しているのですが、不幸にして性犯罪被害に遭われた方が、各都道府県に訴えると、今申しましたプラノバールという中用量ピルを無料で提供することになっております。薬価は5000円程度のものです。
 先ほど事務局からも御報告がありました、ノルレボ錠という黄体ホルモン剤は、主たる作用機序は排卵の抑制ですが、もちろんこれは排卵の後にも服用されるケースがあります。排卵抑制と同時に、排卵を一時的に大量の黄体ホルモン剤を2錠服用することで遅らせる、遅延をする作用も、いわゆる緊急避妊に関与している可能性があります。
 それから、女性の月経周期、排卵周期では、排卵した後に黄体ホルモンが卵胞から分泌産生されて、子宮内膜では受精卵が下りてきて着床できる状況をつくるのですが、その着床を高濃度のノルレボ錠が阻害する可能性もあります。
 先ほど御紹介のあったパブリック・コメントの中で、「極めて早期の妊娠中絶薬」というような意見が出ておりました。医学的に生命の誕生をいつからにするかということに関しては、非常に難しいのですけれども、着床が起こって、それから受精卵の分割、胚の発生で、医学的には着床をもって生命の誕生としておりますので、パブリック・コメントでおっしゃっておられる、妊娠中絶薬には当たらないということが言えると思います。
 もしこれが認可された場合ですが、birth control pillは、女性が月経開始と同時に、毎日、連日ある一定量の低用量のホルモン剤を服用し、排卵を抑えることでほぼ100%の避妊効果を持っています。これは先ほどありましたように、WHOの成績ではかなり良いのですけれども、同時期に行われている英国の成績では、妊娠阻止率はそれほど高くありませんので、私どもから見ると、妊娠を阻止する「妊娠阻止率」は75~80%ぐらいの範囲ではないかと考えます。
 妊娠阻止率がどのように出るかということですが、生殖医学では、健康な男性と女性である御夫婦が通常の性生活を営みますと、女性の1月経排卵周期当たりの妊娠の成立が8%~10%と言われています。それに対して今回の1998年、2002年のWHOの成績等、あるいは少し成績が悪いですが、英国での成績を見てみますと、その妊娠率が今申しました正常周期の8~10%に対して2~2.5%に抑えられておりますので、そこから妊娠阻止率が75~80%と推定されるということです。
 大事なことは、あくまでも妊娠阻止率は100%ではありませんので、ユーザーがそれを勘違いし、これで妊娠が回避できると思うことが一番危険なことです。2割あるいは2割と少しの確率で妊娠継続は起こりますので、その後をいかに産婦人科医療機関できちんとフォローするかということが大事だろうと思います。以上です。
○望月分科会長 ありがとうございました。これまでの説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。
○神山委員 今の寺川先生の御説明に出ていましたように、性犯罪の被害者に対しては、現在無料で投与されている、その薬剤に代わるものとして認可するという点については大変結構だと思います。しかし、これはいろいろなところにも書かれておりますが、適正に使用されればという、その「適正使用が確保される見込み」がないのではないかと思っています。
 例えば、睡眠導入剤なども、眠れないと言えば貰えることから、たくさん貰って、それを犯罪に使用している例があるように、今のように性が乱れている時代に、これが性犯罪被害者だけではなくそのほかの人にも投与され得ることになった場合、300例を調査するといっても、これから販売されるのが何十万錠だとすると、大半のものは何も調査されないことになります。それは、お医者さんを騙して薬を貰おうという人に対して、医師が適切に指導するから大丈夫という話は全く成り立たないのではないかということです。濫用されないような、きちんとした手当てがなされない限り、大変恐ろしいという気がいたします。
 単回投与とは言っても、単回投与が全く保障されないような売り方になるのではないかということを大変危惧しておりますので、少なくとも先ほど御説明がありましたような、性犯罪被害者に対して投与されるようなものの代わりという形で、最初は認可されるべきではないかと思います。
○望月分科会長 ただ今の件に関して、事務局から答えをいただけますか。
○事務局 この製剤の使われる状況としては、性犯罪の被害者、それからコンドーム等の計画的な避妊であっても、コンドームの破れ等で失敗してしまうような状況も考えられます。そういう方に今回の薬剤を使っていただくのが本来の目的です。
 先生が御懸念の、それ以外の使われ方がされる可能性が非常にあるということなのですが、本剤を適正使用した場合でも妊娠阻止率は80%であるということもありますので、その辺は十分伝えて、過剰な避妊効果があると誤解されないようにしていきたいと思っております。
 1994年にカイロで開催された国際人口開発会議において、母体への危険性を伴う人工妊娠中絶は、家族計画の方法として奨励されるべきではないとの提言が採択されております。また、1995年に開催された国際家族計画専門家会議においても、望まない妊娠を回避するため、すべての女性が緊急避妊法を利用できる保障体制を推進するとの合同声明文も採択されております。そういう世界的な状況も踏まえて本剤についての承認をする意義があるのではないかと考えております。
○神山委員 それは見解の相違としか言いようがないです。もう1点は、このパブリック・コメントに対する対応案の1に「女性にだけ性の責任を負わせ、女性の健康を害するおそれがある」というコメントの対応案が、「女性の健康を害するおそれがある」ということに対する答えにはなっているのですけれども、「女性にだけ性の責任を負わせる」という主張に対する回答にはなっていないと思います。ピルについても、女性にだけ性の責任を負わせているという反対意見も非常に根強いのです。少なくとも女性にだけ性の責任を負わせることは間違いないので、そういう点については「確かにそうではあるけれど」だけでもいいですから、「女性にだけ性の責任を負わせる」ということは少なくとも認めるべきではないかと思います。
○事務局 今回の本剤の使用の目的としては、どうしても性犯罪被害とか、通常の計画的な避妊については、そういう御意見も考えられると思うのですが、あくまで緊急避妊のところでいうと、やはり緊急回避的なところの意味合いとして、「女性に責任を負わせる」というところがそのとおりかどうかという判断は少々難しいものと考えております。
○望月分科会長 いかがでしょうか。ほかに御意見はありますか。
○吉田委員 資料を拝見すると、動物実験では余り大きな問題はなさそうなのですけれども、もし妊娠が継続した場合、児への影響はあるものなのでしょうか、それとも何か想定しておかなければいけないということはないのでしょうか。量的には余り多くないので問題はないとは思うのですけれども。
○機構 妊娠初期の影響については、審査報告書の29ページに書かせていただいております。本剤を投与しても妊娠が回避できなかった場合に関してですが、本剤投与前に妊娠していないことを確認した上で投与されたとの前提であれば、本剤が投与される時期というのは、妊娠4週以前のごく初期であること。それと先ほど御指摘がありましたように、用法が単回投与であり、量的にもそれほど影響のない量であろうということを考慮すると、その後妊娠が継続されたとしても、本剤の胎児に及ぼす影響は大きいものではないのではないかと考えております。
○吉田委員 それはそのとおりなのですけれども、めったにないことなので何とも言いようがないのかもしれませんが、内分泌的環境への影響など、妊娠と女性ホルモンの関係等々から、懸念材料が全くないということなのかどうかということを、参考人の先生にお伺いしたいのですが。
○機構 申し訳ありません。PMDAから追加でお答えさせていただきます。単回投与だから安心であるというだけではなく、既に着床が成立していて、妊娠が成立した場合に、黄体ホルモンであれLNGを投与すると、排卵が起こった後は、人体から内因性のプロゲステロンが出ますので、逆に妊娠を保つ方向、妊娠をサポートする方向に働きます。妊娠サポーティブの方向に働くことはあっても、催奇形性などの児への影響は考えにくいと審査の段階では議論しております。
○望月分科会長 寺川先生から追加することはありますか。
○寺川参考人 今回のノルレボ錠、レボノルゲストレル1.5mgというのは、もちろん1回量としてはかなり高用量になります。少し医学的な歴史をお話いたしますと、例えば私が医師になったときには、妊娠に対して黄体ホルモン剤をもって、流産・早産予防に使っておりました。しかし、これは結果的にその根拠があったかどうかは分からないのですが、アメリカの方から、妊娠の流産・早産を起こす方に、長期間の黄体ホルモン剤を使用したところ、結果として生まれた児に大きな循環器系の奇形の発生が数例報告されました。そのときには黄体ホルモン療法は世界的にスタンダードな治療だったのですが、それが非常にインパクトのあるジャーナルに出まして、結局その検証はできませんでしたが、そのことで、世界的に妊娠の維持をするための黄体ホルモン療法は中止になり、日本でもそれをもって使わなくなりました。ただ幸いなことに、その代わりに現在使われているような、そういうホルモン剤ではない、子宮筋の収縮を抑制することで妊娠を維持するものがちょうどそのころから出てまいりましたので、薬剤としてはスイッチすることができました。
 私は専門医ではありませんが、非常に大きな報告でしたのでずっと見ておりましたがその後、そのレポートを認めているものは出ておりません。むしろ循環器の先生にお尋ねしたいのですが、多分それは一時的にそのとおりのそういう結果が出たのではないかと考えております。ご質問がありました件も、レボノルゲストレル1.5mgを服用し、2割の率で継続が起こっても問題はないであろうと考えます。実際には1999年に米国やヨーロッパで認可されていて、かなりの歴史使われていますが、そこから妊娠した場合の胎児、新生児への悪影響は今のところ報告されておりませんので、そう強く思わなくてもいいのかと私自身は思っております。以上です。
○望月分科会長 先ほどの神山委員の御指摘に対する答えというのは、緊急避妊剤ということを明確にして、それ以外の使用がないような形は工夫できないかということだったのですけれども、それについて機構の御意見はいかがでしょうか。
○機構 実際に適正な使用について、どのように情報提供していくか、一般の方に伝えていくかについては、申請者、それから関係者とも話をして、協議をして、検討していきたいと考えております。
○木津委員 事前に質問させていただいたのですが、今、病院の中で薬がなくなったり、いろいろな事故が起こっている現状の中で、やはり管理簿の対象にしてもいいのではないかと思ったので、そのような提案をさせていただきました。もちろん処方せんでなければ駄目だということは分かった上での質問になっています。御配慮いただければと思います。
○事務局 実際の状況等を調査して、もしそういう問題が出るようであれば、こういった対応も検討していきたいと考えております。
○望月分科会長 そうではなくて、問題が出ないように対応していただきたいということです。出たら対応では困るのです。
○事務局 はい、検討させていただきます。
○井部委員 これは医師ならどなたでも処方できるわけですね。そうすると、近くの開業医に行ってもらうことも、当然ながらできるということになるのでしょうか。
○事務局 本剤については72時間という時間的な制約がある中で、医療機関の制限というのは現状のところ考えておりません。
○望月分科会長 難しいけれども、やむを得ないということでしょうか。ほかにどなたかありますか。
○神山委員 私は何度も申し上げるように、適正管理、適正使用が非常に難しい薬だと思っています。その適正管理・適正使用を、医師や薬剤師だけに押し付けている薬剤ではないかと思うのです。例えば、72時間という制限があると言われても、嘘か本当かは御本人の言うことを信じるかどうかしかないわけです。そうではなくて、やはり制度的なものとして適正使用できるようなことをもっと考えないと、私は絶対に濫用される薬剤だと思います。
○望月分科会長 いかがでしょうか。お答えはありますか。
○寺川参考人 委員の方々の御心配はよく分かるのですが、世界の現状を申しますと、実際に多くの国では、一般用医薬品として薬局で販売されております。例えば、アメリカであれば、17歳以上の方は薬局でそのまま医師の処方せんなしに販売してます。しかし、そういったことがいいとは言っておりません。我が国で承認される場合には、当然医師の処方の下でなされるわけです。米国のみならず多くの外国で、いわゆる一般用医薬品として薬局で処方されても、それほど大きな問題となっているということは伝わってきておりません。日本では多分ほとんどのケースが産婦人科医になると思いますが、きちんと問診をした結果適正に処方されれば、薬局で手軽に手に入るものではありませんので、そこまでの御心配は必要ないのではないかと感じております。
○望月分科会長 いかがでしょうか。日本でいきなりそういう形では無理だと思うのですが、最初の段階で適正に管理し、適正に使用できる体制をつくるか、添付文書に書けばいいというわけではありませんが、少なくとも何らかの形で分かるようにしていただけないと、皆さん一致して承認というのはなかなか難しいのではないかという気がするのです。方向性について、事務局あるいは機構の方から、どなたか御発言はありますか。
○事務局 事務局です。ほかのプレグランディンの腟坐剤などで、納入医療機関等へ情報提供をした事例等がありますのでその辺も踏まえて、適正な管理についてしっかり検討していきたいと考えております。
○望月分科会長 いかがでしょうか。適正な管理をメーカーと一緒にきちんと考えて、その結果これを出すというお答えです。そのような前提で承認するという方向でよろしいでしょうか。ありがとうございます。いろいろと厳しい条件があって、実現するのは大変だとは思うのですけれども、本日の委員の先生の御意見というのは、現在の日本では妥当な意見だと思いますので、是非それに沿ってまとめていただきたいと思います。ほかには御意見がないようですので議決に入りたいと思います。
 部会の報告を踏まえ、当分科会としても本品目について、製造販売承認を可、再審査期間は4年、製剤は毒薬・劇薬に該当しない、生物由来製品及び特定生物由来製品の指定は不要とすることが適当であると認める旨、議決したいと思いますが、よろしいでしょうか。
 御異議なしと認めます。それでは薬事・食品衛生審議会規程第3条第1項の規定に基づき、当分科会の議決をもって審議会の議決とし、厚生労働大臣に答申することといたします。答申書の文案その他の取扱いについては、私に御一任いただいてよろしいでしょうか。
 では、そのようにさせていただきます。ありがとうございます。
 参考人の寺川先生、本日はお忙しいところ大変貴重な御意見をありがとうございました。


ノルレボ錠0.75mg 審査結果報告書
平成 22 年(2010年) 12 月 1 日 医薬食品局審査管理課


【薬食審医薬品第一部会】6品目の新薬など了承‐緊急避妊薬は分科会審議 (2010年11月30日 (火)薬事日報)

 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は11月26日、6品目の新薬や効能追加を審議し、承認を了承した。このうち、そーせいが申請した、性行後の服用で妊娠を回避する緊急避妊薬「ノルレボ錠」については、安易な使用を招くなどの社会的影響を考慮し、11月10日から今月9日まで募集しているパブリックコメントの意見を踏まえ、今月下旬に開催予定の薬事分科会で再度審議し、承認の可否を判断することとなった。

ん? 上記の記事は11月30日に出ているはずなのだけど、「今月」って何月?? 「来月」の間違い??


審議結果報告書
平成 22 年 12 月 1 日
医薬食品局審査管理課
[販 売 名] ノルレボ錠0.75mg
[一 般 名] レボノルゲストレル
[申 請 者] 株式会社そーせい
[申請年月日] 平成 21 年 9 月 30 日
[審 議 結 果]
 平成 22 年 11 月 26 日に開催された医薬品第一部会において、本品目を承認して差し支えないとされ、薬事・食品衛生審議会薬事分科会に上程することとされた。
 なお、本品目は生物由来製品及び特定生物由来製品に該当せず、再審査期間は4 年とし、原体及び製剤ともに毒薬又は劇薬に該当しないとされた。


平成23年3月25日 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会遵守事項資料
医薬食品局総務課 薬事審議会係作成

資料No.18

薬事分科会・部会手続きの見直しについて

 分科会審議の対象となる医療用医薬品(対外診断薬を除く。)及び医療機器のうち、社会的関心の極めて高いものについては、主要な資料の概要を公表し、広く一般の意見を求め、これを添えて分科会における審議の参考とする。

この時の分科会で、緊急避妊薬の審議が行われることになっていた。しかし、「企業の知的財産等が開示され、特定の者に不当な利益もしくは不利益を与えるおそれがあるため非公開とする」となっていて詳細不明。


【新製品】国内初の緊急避妊薬、5月中旬から販売開始(2011年03月02日 (水)薬事日報)


平成23年3月25日 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会遵守事項資料
医薬食品局総務課 薬事審議会係作成


資料No.18

薬事分科会・部会手続きの見直しについて

 分科会審議の対象となる医療用医薬品(対外診断薬を除く。)及び医療機器のうち、社会的関心の極めて高いものについては、主要な資料の概要を公表し、広く一般の意見を求め、これを添えて分科会における審議の参考とする。