リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

このデータを日本産婦人科医会常務理事は「アメリカの中絶の合併症」としている!

Observational Study Obstet Gynecol. 2015 Jan;125(1):175-183. Ushma D Upadhyay, Sheila Desai, Vera Zlidar, Tracy A Weitz, Daniel Grossman, Patricia Anderson, Diana Taylor

Incidence of emergency department visits and complications after abortion

アブストを仮訳します。

概要
目的
 救急外来(ED)で診断・治療されたものを含む中絶合併症率を推定するために、レトロスペクティブな観察コホート研究を実施する。


方法
 カリフォルニア州の有料メディケイドプログラムに加入している女性の2009~2010年の中絶データと、中絶後6週間のその後のすべての医療データを用いて、ED受診の理由を分析し、中絶関連合併症率と調整相対リスクを推定した。合併症は、中絶後6週間以内にどの医療機関でも中絶に関連した診断や治療を受けたと定義した。主な合併症は、入院、手術、輸血を必要とするものと定義した。


結果
 50,273人の有料サービスMedi-Cal受給者のうち、合計54,911件の中絶が確認された。全中絶のうち、16件中1件(6.4%、n=3,531)が6週間以内にEDを受診したが、中絶関連の合併症でEDを受診したのは115件中1件(0.87%、n=478)であった。5,491件中約1件(0.03%、n=15)が、中絶当日に救急車でEDに搬送されたものだった。主要な合併症の発生率は0.23%(n=126、1/436)だった。そのうち、薬による中絶は0.31%(n=35)、第1期の吸引中絶では0.16%(n=57)、第2期以降の処置では0.41%(n=34)であった。EDと元の中絶施設を含むすべての治療源を含む中絶関連の合併症率は2.1%(n=1,156)であった: 薬による中絶では5.2%(n=588)、第1期の吸引中絶では1.3%(n=438)、第2期以降の処置では1.5%(n=130)だった。

結論
 中絶の合併症率は、ED受診を含み、フォローアップの喪失がない場合でも、以前に発表された率と同等である。


エビデンスのレベル:II

つまり、中絶全体の合併症率ではなく、カリフォルニアで「緊急外来」を訪れた人のあいだでの合併症率であり、しかも中絶に関わる件数は元々少なく、中絶当日に救急車で搬送されてきたのはたったの1人! これと比べて「日本の中絶の合併症は低い」としているのは、いくらなんでもエビデンスレベルが低すぎでは?

経口中絶薬と安全な中絶へのアクセス 日本産婦人科医会第174回記者懇談会