リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

水子・中絶・堕胎という用語の国会における初出

水子について

第26回国会 衆議院 地方行政委員会 第37号 昭和32年8月20日
北山愛郎/きたやまあいろう(日本社会党

国保の調査がどうなっておるか、これなども、私の方の県の調査を聞いてみますと、私の県は全県が全部国保に入っておる模範的な、モデル的な国保の普及した県とされておるのですが、やはり相当な水子がある、一億五千万ばかりの赤字があるようであります。ですから全国的に見れば相当な赤字になっておるのじゃないかと思うのですが、この調査集計というものは、すでに自治庁に提出になっておるはずだが、これはどうなっておるのか。

ここで使われている「水子」は、国民保健として機能していないもの(=赤字)の言い替えとして使われているようで、少なくとも「妊娠中絶」との連関はないと見ていいでしょう。

次に出てくるのは以下です。

第68回国会 参議院 予算委員会 第4号 昭和47年4月4日
自民党 玉置和郎

総理にお伺いをいたします。さきのこの委員会で、私もちょうどここで聞いておりましたが、総理は、本問題を単なる人口問題だとか、若年労働者の確保だとかという形でとらえることは、これは間違っておると、何としても政治の根本は、生命の尊重だと、こういう観点からとらえるべきだというお話がありまして、私たち深い感銘を受けたものであります。そうして、言うばっかりでなしに、みずから水子の供養の先頭にお立ちになりまして、秩父の山奥まで、御夫妻そろってお出かけになっておられます真剣な総理の、そうした生命尊重という態度に対して満腔の敬意を払っておりまするが、この問題について再度御見解を承っておきたいと思うのでありますが、よろしくお願い申し上げます。

これに対する佐藤栄作総理大臣の答弁

堕胎あるいは中絶という、まあ、いわゆるそういう不幸な方々を祭りたいという、水子供養をしたいという、そういう奇特な方がありまして、それがただいま御指摘になりましたように、秩父の奥に水子地蔵尊を建立すると、私のところにも相談に見えましたので、私も、生命は大事にすべきだと、また、こういうところに大事にする、しがいのある仕事だと、かように実は思って、わずかながら力をかしておると、こういうことであります。私は、いまの問題も、すべてをそこに結びつけることは、これも行き過ぎでございますけれども、どうも最近の諸悪の根源の一つに、ただいま言われるような点がある。これは何としても悪を除く、こういう意味で取り組むべき筋のものだ、かように私は思っておる次第でございます。

明らかに妊娠中絶の結果としての「水子供養」と関連した答弁をしている。

中絶について

初出は1947年の社会党議員による優生保護法案の中です。
第1回国会 参議院 厚生委員会 第22号 昭和22年10月10日 末尾PDF

第六部 優生保護法
第二十條
 医師は、左に掲げる理由のあるときは専門的技術の下に妊娠中絶を行うことができる。
一、妊婦又は胎児の父たる者につき、第三條*1並びに第十條*2による断種手術又は放射線照射を行うことができる理由があつて、母体の生命または健康に危険を及ぼし、あるいは子孫に悪い影響を與えて劣悪化するおそれあるとき。
二、妊婦が強姦その他不当な原因に基いて自己の自由な意志に反して受胎した場合であつて、生れ出る子が必然的に不幸な環境に置かれ、そのために劣悪化するおそれあると考えられるとき。

*1:任意断種に関する理由を述べた条項

*2:優生委員会の依頼による不同意断種に関する条項