第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第28号 昭和49年5月22日
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優生保護法改正に関する議論が行われたこの委員会で、金子みつ議員(日本社会党)は、その日の早朝「優生保護法の一部改正に絶対反対する、日本医師会長武見太郎」という電報を受取ったことを披露した。
社会党大原亨議員は、この委員会で日本の避妊手段が乏しいこと(「ピルの問題」にも言及)、中絶で「吸引式」が採用されていないこと、そうした問題について政府が把握していない(データを何ももっていない)ことなどを批判した。
大原議員の出生率に関する質問に答えて……。
お答え申し上げます。
出生率の問題につきましては、先生御承知のとおりに、たとえばいわゆる妊孕可能年齢の人口が、ある段階でベビーブームの結果ふえるということがありまして、正確に判断をいたします際には、先生御承知のように、純再生産率という数字を計算いたしまして判断をいたすわけでございます。その純再生産率の計算をいたしますと。大体昭和三十一年ごろからそれがいわゆる一を下回りまして、大体十年ほど一を割った状態にあったわけでございますが、昭和四十二年ごろ、丙午の年は除きまして、最近の数字を申しますと、大体一・〇一とか一・〇二というふうな数字を示しておりまして、純再生産率で判断いたします限りにおいては、やや出生率は上昇ぎみという傾向にございます。ただし、一・〇一とか一・〇二というふうな数字は非常に微細な動きでございまして、大局的な判断は、なお時をかさないと最終的には見出せないのじゃないか、かように考えております。
上田正夫(人口問題研究所長)
出生率の低下は、たとえば終戦直後の非常な混乱の時期には、むしろ経済的な理由といった、当時の食糧難であり、また失業難であった時代には、その経済的圧迫から、もうこれ以上子供を生んでは困るといったような事由が多かったのでございますけれども、最近は、高度経済成長以後におきましては、そういう生活に困窮の面もございますけれども、生活水準がある程度上がってまいりますと、より以上に生活水準を上げたいといった希望、それから現在子供の養育費、教育費が非常にかかっておりますから、子供を従来のように何人も生んでは非常に経済的に困るというような理由がむしろ優先しておりまして、それで出生率は下がってきておるわけですけれども、先ほど企画室長が申されました人口千人について十九という最近の出生率は、欧米諸国に比べても若干高いのですけれども、それは結局ベビーブーム時代に生まれた女子の方がちょうど結婚適齢期に入っておりますから、したがって、産む女性の数が多くなったということでございまして、先ほど企画室長が申されましたように、実質的な可能性としては、将来の人口がいまのままで進めばどうなるかということから申しますと、純再生産率というはかり方で一をちょっと上回るという程度で、先へ行きますと増加率はだんだん低下して横ばい状態になるという可能性を持つということでございます。