リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ポーランドの人工妊娠中絶改革、連立政治と選挙公約の衝突で行き詰まる

12/08/2024 - Zuzanna Stawiska

Poland's Abortion Reform Stalls As Coalition Politics Clash With Campaign Promises - Health Policy Watch

仮訳します

 新左翼のアンナ・マリア・ジュコフスカ首相は、ポーランドの制限的な妊娠中絶法の自由化に関する採決の延期を議会が決定した直後に、女性ストライキのシンボルが描かれたTシャツを掲げている。 2023年10月の選挙での勝利を受けて、ポーランドドナルド・トゥスク新首相が妊娠中絶の権利に関する再出発を約束してから約1年が経過したが、選挙公約と分裂したポーランドにおける連立政治の現実とが衝突し、改革への取り組みは停滞している。

 ポーランドは、エルサルバドルニカラグア、米国と並んで、過去30年間に中絶の権利を制限した世界4カ国のうちのひとつである。2020年、ポーランド憲法裁判所は、右派政党「法と正義」(PiS)によって任命された裁判官で固められ、1993年にすでに厳しかった中絶法をさらに強化した。

 同裁判所は、合法的中絶の約90%を占めていた胎児異常による中絶さえも禁止した。現在の法律では、レイプや近親相姦、妊娠が母体の生命や健康を脅かす場合にのみ中絶が認められている。2020年の判決以降、少なくとも6人の女性が中絶を拒否されて死亡している。

 この判決は全国的な抗議を呼び起こし、全国で数百万人の女性を動員した。そして、トゥスクに政権をもたらした2023年の選挙では、投票権を持つ女性の74%が投票し、2019年の61.5%から上昇した。出口調査では、中絶政策が重要な動機として示された。

 トゥスクは女性の権利運動に乗じて、中絶法を自由化するという公約を選挙戦の中心に据え、その結果、中道派の市民綱領党が新左翼党や中道派の第三の道党(後者はポーランド2050と農村部を基盤とするポーランド人民党(PSL)の連立)との連立で政権を獲得した。それでも、勝利以来、改革公約の実現への期待は怒りと不満に変わっている。

最初の大きな立法テストは失敗に終わる
 最初の大きな立法テストとして、7月12日、中絶を求める女性への支援を非犯罪化する法案が、トゥスク自身の政党である市民綱領の議員が棄権したほか、第三の道や特にPSLが反対票を投じたこともあり、議会下院(Sejm)で僅差で否決され、連立政権は敗北に直面した。