中絶に関する意識の変化が見える
「第9章 母体保護」には以下の統計表があります。
1 不妊手術件数,年齢階級・性・事由別
2 不妊手術件数,性・事由・都道府県別
3 不妊手術件数,年齢階級・都道府県・性別
4 人工妊娠中絶件数,年齢階級・妊娠週数・事由別
5 人工妊娠中絶件数,事由・都道府県別
6 人工妊娠中絶件数,年齢階級・都道府県別
7 人工妊娠中絶実施率(女子人口千対),年齢階級・都道府県別
8 人工妊娠中絶件数,妊娠週数・都道府県別
このうち8の統計表に着目すると、1年間の中絶件数は126,734件で、そのうち妊娠満12週未満の投薬件数は1,440件なので、投薬による中絶は約1%。投薬による中絶のうち妊娠7週以前(8週未満)は77%を占めている。中絶の総件数のうち、妊娠11週まで(12週未満)の初期中絶は119,087件で94%を占めている。妊娠12週以降の中期中絶が減らないのは、不妊治療で妊娠した後、染色体異常による先天性疾患が判明して中期中絶を求める人が一定数いるためだと考えられる。
なお昨年に比べて中絶数も中絶率も微増した。この増加は20代の前後半と20歳未満に顕著である。
このことは、「第9回男女の生活と意識に関する調査」の結果に示されている中絶に関する意識の変化を反映している可能性がある。
この調査の結果では、「最初の人工妊娠中絶を受ける時の気持ち(女性)」では、「人生おいて必要な選択である」が29.6%で前回調査に比べて 12.5 ポイントも増加した。「胎児に対して申し訳ない気持ち」という回答は前回の58.6%から 50.0%へと相変わらず最も多いながらも8.6ポイント減少しており、「自分を責める気持ち」も 9.7 ポイント減少して 7.4%、「相手に対する怒り」は前回の2.9%から 3.7%へと0.8ポイント増加した。
つまり、総じて「女性の権利意識」が高まり、中絶を否定的に見る態度が弱まっていると考えられるのだ。
もしかして、これは日本における中絶方法の改善が遅れている事実を広め、緊急避妊薬の薬局販売を求め、中絶薬のアクセス改善を求めてきた運動によって、女性たちのニーズやエンタイトルメント意識が向上してきた結果ではないだろうか。今後もリプロの権利について声を挙げていきたい。