最近,ハーヴァード大学ビジネススクールの教授が書いた"The Baby Business: how money, science and politics drive the commerce of conception"が話題になっている。mercator.netの紹介記事を抜粋する。
世界ではすでに100万人を超える赤ん坊が体外受精(IVF)で産まれている。デンマークでは4%近くがIVFベビー,アメリカでは1%以上だ。アメリカのIVFクリニックでは,50万を超える胚が生きたまま凍結されている。
ベイビー・ビジネスへようこそ。
27年前,不妊の夫婦が家族を得るためには養子に頼るしかなかった。だが1978年にイギリスのパトリック・ステプトーとロバート・エドワーズがペトリ皿で人間の肺を培養する手法と薬品の組合せを発見したことで,新たな産業が生まれた――赤ん坊製造業だ。今やこの産業は,アメリカだけでも年間30億ドルを超える域に達している。
http://www.mercatornet.com/index.php?option=com_content&task=view&id=255
確か日本でも,生殖補助技術(ART)による妊娠が1%には達しているはず。(今はもっとかな?)ただ,この記事の中で,この産業の発端を避妊ピルにおいていることについては,わたしは意見が異なる。人間が生殖を(かなりの精度で)コントロールできるようになったのは,現代的な中絶技術が開発され,広まった時だとわたしは考えている。
安全で確実な中絶方法が存在するようになったことは,人々の生殖に対する態度と性行動を劇的に変えたばかりか,「人々の個人的な欲望」によって,人口が左右されるという状況も生んだ。その影響力の強さは,19世紀末,外科的中絶方法が確立された頃から,個人による生殖コントロールの爆発的な広がりを食い止めようと,国家や宗教の側が次々と手を打ってきたことからも伺われる。
上記記事は,次のような一文に続く。
顧客にとって,それはとてもビジネスには思えない。いくら金がかかろうと,彼らが抱きしめているのは一束の喜び,夢そのもの,自分たちの「奇跡の赤ん坊」なのだ。業界が宣伝しようとしているのは,まさにそうしたイメージに他ならない。
ただ「規制」していればいいとは思わない。だけど,こうした産業を野放しにしておいてもいいとは思えない。そろそろ日本でも議論が必要なのではないか。
The Baby Business: How Money, Science, and Politics Drive the Commerce of Conception
- 作者: Debora L. Spar
- 出版社/メーカー: Harvard Business Review Press
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: ハードカバー
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