リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「母体」の健康しか保護されない?

日本において人工妊娠中絶を合法化している法律が「母体保護法」と呼ばれているのに象徴されるとおり、日本女性のリプロダクティヴ・ヘルスは「母体」としてのみ保護されているのか……と思わされることはしばしばあるけれど、ここでもまたかと思う例を見つけた。

厚生労働省の「女性健康支援センター事業の概要」というページに、全国の女性健康支援センター一覧がある。この一覧に並んでいる47施設のうち、実に3分の1にあたる12施設が、「子ども政策課」「児童家庭課」「子育て支援総室」など、「子ども関連」の部局の中に設置されているのである。そもそも上記医ページ自体が、厚生労働省のサイトの「子ども・子育て>母子保健関係」に分類されている。

こうした分類のなかで、「子ども」に直接的には結び付かない避妊や中絶にまつわる女性の健康を果たして守ることができるのだろうかと、非常に気になるところだ。

言うまでもなく女性は常に「母体」であるわけでもないし、たとえ出産経験のある女性でも、人生においては「母体」ではない状態を生きている時間のほうがはるかに長い。リプロダクティヴ・ヘルスは「生むための健康」ではない。女性たちがその生殖機能を理由に差別的に扱われてきたことを人権問題とする見方を土台に、性と生殖にまつわる健康を保障していこうという考え方であり、だからこそ「妊娠・育児中の母の健康」に限定して考えてはならないのだ。