リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

自由か権利か?:ルクセンブルク憲法に明記される「中絶の自由」

RTL TODAY Update: 06.10.2025 14:44

RTL Today - Freedom or right?: Abortion freedom to be enshrined in Luxembourg's constitution

仮訳します。

 ここ数週間、ルクセンブルク議会では憲法において中絶を「権利」と記すべきか、それとも「自由」とすべきかをめぐり議論が交わされてきた。

 金曜日、制度問題を扱う議会委員会がこの論点を決着させ、大多数の議員が「自由」という表現に賛成票を投じた。

 憲法学者リュック・ホイシュリングの説明によれば、この用語は医師の良心の自由をより強く保障するものだ。つまり、この枠組みでは女性には中絶を求める自由がある一方、医師にはそれを行わない自由も残される。

 代替民主改革党(ADR)のフレッド・ケウプ議員だけがこの変更に反対票を投じた。彼はこう述べた。
「結局は生命がいつ始まるのかという同じ問いです。ある人はこう考え、別の人は違う見方をする。しかし、生命の権利に反すると信じる人々の意見を尊重することは重要だと思います。この問題がもたらす一種の高揚感の中でも、異論を忘れず、彼らの意見に敬意を払うべきです。それは良いことだと思います。」

 今回の決定により「中絶の自由」は憲法に明記されることになる。妊娠の自主的な中断(VTP)は市民的自由を定める第2章に組み込まれる。この改正が発効するには、まだ代議院での3分の2以上の賛成が必要だが、採決時には十分な支持を得られる見込みだ。

 この憲法改正は、左派(déi Lénk)のマルク・バウム議員が提出した提案に端を発している。次の段階として、憲法改正案は国務院へ送られ、今後数週間以内に同院の意見が示される見通しだ。

母体保護法に基づく人工妊娠中絶の指定医師の指定等に関する調査

こども家庭庁 ホーム>政策>母子保健・不妊症・不育症など>母体保護法に基づく人工妊娠中絶の指定医師の指定等に関する調査

www.cfa.go.jp

母体保護法に基づく人工妊娠中絶の指定医師の指定等に関する調査
調査事項
新規申請者数
新規指定医師数
母体保護法指定医師数
医療機関・施設総数
フィーゴパックが使用可能な医療機関・施設総数
調査結果
令和5年4月1日から令和6年3月31日
令和5年度分指定医師数等調査(Excel/21KB)
問い合わせ先
こども家庭庁 成育局 母子保健課
〒100-6090 東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビルディング
電話番号03-6862-0505

主な調査結果をまとめてみました:

全国の状況(令和6年3月31日現在)

  • 新規申請者数:930人
  • 新規指定医師数:928人
  • フィーゴパック(経口中絶薬)使用可能施設数:888か所


ポイント

  • 新規指定率が高い
  • 930名の申請に対し、928名が新規に指定されており、ほぼ全員が認可されている。


指定医師数の分布

  • 全国で1万4千人以上の指定医師が存在。地域ごとの偏在はあるものの、指定の更新は安定的に行われている。


フィーゴパックの普及状況

  • 医療機関の約12%(888/7602)で使用可能。普及はまだ限定的だが、導入が進んでいる。


 要約すると、令和5年度には930人が新規に申請し、そのうち928人が新たに指定医師として認定された。全国で指定医師は14,556人いるが、中絶を行える医療機関・施設の総数は7,602か所、メフィーゴパック(経口中絶薬)使用可能施設数は888か所にすぎず、まだ1割強程度にとどまる。

石破茂首相の「戦後80年所感」全文

日本経済新聞 2025年10月10日 18:09 (2025年10月10日 20:45更新)

石破茂首相の「戦後80年所感」全文 - 日本経済新聞

石破茂首相の戦後80年所感全文は次の通り。


戦後80年に寄せて

(はじめに)

 先の大戦終結から、80年がたちました。

 この80年間、わが国は一貫して、平和国家として歩み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてまいりました。今日のわが国の平和と繁栄は、戦没者をはじめとする皆さまの尊い命と苦難の歴史の上に築かれたものです。

 私は、3月の硫黄島訪問、4月のフィリピン・カリラヤの比島戦没者の碑訪問、6月の沖縄全戦没者追悼式出席およびひめゆり平和祈念資料館訪問、8月の広島、長崎における原爆死没者・犠牲者慰霊式出席、終戦記念日の全国戦没者追悼式出席を通じて、先の大戦の反省と教訓を、改めて深く胸に刻むことを誓いました。

 これまで戦後50年、60年、70年の節目に内閣総理大臣談話が発出されており、歴史認識に関する歴代内閣の立場については、私もこれを引き継いでいます。

 過去3度の談話においては、なぜあの戦争を避けることができなかったのかという点にはあまり触れられておりません。戦後70年談話においても、日本は「外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった」という一節がありますが、それ以上の詳細は論じられておりません。

 国内の政治システムは、なぜ歯止めたりえなかったのか。

 第1次世界大戦を経て、世界が総力戦の時代に入っていた中にあって、開戦前に内閣が設置した「総力戦研究所」や陸軍省が設置したいわゆる「秋丸機関」等の予測によれば、敗戦は必然でした。多くの識者も戦争遂行の困難さを感じていました。

 政府および軍部の首脳陣もそれを認識しながら、どうして戦争を回避するという決断ができないまま、無謀な戦争に突き進み、国内外の多くの無辜(むこ)の命を犠牲とする結果となってしまったのか。米内光政元首相の「ジリ貧を避けようとしてドカ貧にならぬよう注意願いたい」との指摘もあった中、なぜ、大きな路線の見直しができなかったのか。

 戦後80年の節目に、国民の皆さまと共に考えたいと思います。


大日本帝国憲法の問題点)

 まず、当時の制度上の問題が挙げられます。戦前の日本には、政治と軍事を適切に統合する仕組みがありませんでした。

 大日本帝国憲法の下では、軍隊を指揮する権限である統帥権は独立したものとされ、政治と軍事の関係において、常に政治すなわち文民が優位でなくてはならないという「文民統制」の原則が、制度上存在しなかったのです。

 内閣総理大臣の権限も限られたものでした。帝国憲法下では、内閣総理大臣を含む各国務大臣は対等な関係とされ、内閣総理大臣は首班とされつつも、内閣を統率するための指揮命令権限は制度上与えられていませんでした。

 それでも、日露戦争の頃までは、元老が、外交、軍事、財政を統合する役割を果たしていました。武士として軍事に従事した経歴を持つ元老たちは、軍事をよく理解した上で、これをコントロールすることができました。丸山真男の言葉を借りれば、「元老・重臣など超憲法的存在の媒介」が、国家意思の一元化において重要な役割を果たしていました。

 元老が次第に世を去り、そうした非公式の仕組みが衰えた後には、大正デモクラシーの下、政党が政治と軍事の統合を試みました。

 第1次世界大戦によって世界に大きな変動が起こる中、日本は国際協調の主要な担い手の一つとなり、国際連盟では常任理事国となりました。1920年代の政府の政策は、幣原外交に表れたように、帝国主義的膨張は抑制されていました。

 1920年代には、世論は軍に対して厳しく、政党は大規模な軍縮を主張していました。軍人は肩身の狭い思いをし、これに対する反発が、昭和期の軍部の台頭の背景の一つであったとされています。

 従来、統帥権は作戦指揮に関わる軍令に限られ、予算や体制整備に関わる軍政については、内閣の一員たる国務大臣の輔弼(ほひつ)事項として解釈運用されていました。文民統制の不在という制度上の問題を、元老、次に政党が、いわば運用によってカバーしていたものと考えます。


(政府の問題)

 しかし、次第に統帥権の意味が拡大解釈され、統帥権の独立が、軍の政策全般や予算に対する政府および議会の関与・統制を排除するための手段として、軍部によって利用されるようになっていきました。

 政党内閣の時代、政党の間で、政権獲得のためにスキャンダル暴露合戦が行われ、政党は国民の信頼を失っていきました。1930年には、野党・立憲政友会は立憲民政党内閣を揺さぶるため、海軍の一部と手を組み、ロンドン海軍軍縮条約の批准を巡って、統帥権干犯であると主張し、政府を激しく攻撃しました。政府は、ロンドン海軍軍縮条約をかろうじて批准するに至りました。

 しかし、1935年、憲法学者貴族院議員の美濃部達吉天皇機関説について、立憲政友会が政府攻撃の材料としてこれを非難し、軍部も巻き込む政治問題に発展しました。ときの岡田啓介内閣は、学説上の問題は、「学者に委ねるよりほか仕方がない」として本問題から政治的に距離を置こうとしましたが、最終的には軍部の要求に屈して、従来通説的な立場とされていた天皇機関説を否定する国体明徴声明を2度にわたって発出し、美濃部の著作は発禁処分となりました。

 このようにして、政府は軍部に対する統制を失っていきます。


(議会の問題)

 本来は軍に対する統制を果たすべき議会も、その機能を失っていきます。

 その最たる例が、斎藤隆夫衆議院議員の除名問題でした。斎藤議員は1940年2月2日の衆議院本会議において、戦争の泥沼化を批判し、戦争の目的について政府を厳しく追及しました。いわゆる反軍演説です。陸軍は、演説は陸軍を侮辱するものだとこれに激しく反発し、斎藤議員の辞職を要求、これに多くの議員は同調し、賛成296票、反対7票の圧倒的多数で斎藤議員は除名されました。これは議会の中で議員としての役割を果たそうとした稀有(けう)な例でしたが、当時の議事録は今もその3分の2が削除されたままとなっています。

 議会による軍への統制機能として極めて重要な予算審議においても、当時の議会は軍に対するチェック機能を果たしていたとは全く言い難い状況でした。1937年以降、臨時軍事費特別会計が設置され、1942年から45年にかけては、軍事費のほぼ全てが特別会計に計上されました。その特別会計の審議に当たって予算書に内訳は示されず、衆議院貴族院とも基本的に秘密会で審議が行われ、審議時間も極めて短く、およそ審議という名に値するものではありませんでした。

 戦況が悪化し、財政が逼迫する中にあっても、陸軍と海軍は組織の利益とメンツをかけ、予算獲得を巡り激しく争いました。

 加えて、大正後期から昭和初期にかけて、15年間に現役首相3人を含む多くの政治家が国粋主義者青年将校らによって暗殺されていることを忘れてはなりません。暗殺されたのはいずれも国際協調を重視し、政治によって軍を統制しようとした政治家たちでした。

 五・一五事件二・二六事件を含むこれらの事件が、その後、議会や政府関係者を含む文民が軍の政策や予算について自由に議論し行動する環境を大きく阻害したことは言うまでもありません。


(メディアの問題)

 もう一つ、軽視してはならないのはメディアの問題です。

 1920年代、メディアは日本の対外膨張に批判的であり、ジャーナリスト時代の石橋湛山は、植民地を放棄すべきとの論陣を張りました。しかし、満州事変が起こった頃から、メディアの論調は、積極的な戦争支持に変わりました。戦争報道が「売れた」からであり、新聞各紙は大きく発行部数を伸ばしました。

 1929年の米国の大恐慌を契機として、欧米の経済は大きく傷つき、国内経済保護を理由に高関税政策をとったため、日本の輸出は大きな打撃を受けました。

 深刻な不況を背景の一つとして、ナショナリズムが高揚し、ドイツではナチスが、イタリアではファシスト党が台頭しました。主要国の中でソ連のみが発展しているように見え、思想界においても、自由主義、民主主義、資本主義の時代は終わった、米英の時代は終わったとする論調が広がり、全体主義国家社会主義を受け入れる土壌が形成されていきました。

 こうした状況において、関東軍の一部が満州事変を起こし、わずか1年半ほどで日本本土の数倍の土地を占領しました。新聞はこれを大々的に報道し、多くの国民はこれに幻惑され、ナショナリズムはさらに高まりました。

 日本外交について、吉野作造満州事変における軍部の動きを批判し、清沢洌松岡洋右による国際連盟からの脱退を厳しく批判するなど、一部鋭い批判もありましたが、その後、1937年秋ごろから、言論統制の強化により政策への批判は封じられ、戦争を積極的に支持する論調のみが国民に伝えられるようになりました。


(情報収集・分析の問題)

 当時、政府をはじめとするわが国が、国際情勢を正しく認識できていたかも問い直す必要があります。例えば、ドイツとの間でソ連を対象とする軍事同盟を交渉している中にあって、1939年8月、独ソ不可侵条約が締結され、時の平沼騏一郎内閣は「欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じた」として総辞職します。国際情勢、軍事情勢について、十分な情報を収集できていたのか、得られた情報を正しく分析できていたのか、適切に共有できていたのかという問題がありました。


(今日への教訓)

 戦後の日本において、文民統制は、制度としては整備されています。日本国憲法上、内閣総理大臣その他の国務大臣文民でなければならないと定められています。また、自衛隊は、自衛隊法上、内閣総理大臣の指揮の下に置かれています。

 内閣総理大臣が内閣の首長であること、内閣は国会に対して連帯して責任を負うことが日本国憲法に明記され、内閣の統一性が制度上確保されました。

 さらに、国家安全保障会議が設置され、外交と安全保障の総合調整が強化されています。情報収集・分析に係る政府の体制も改善されています。これらは時代に応じて、さらなる進展が求められます。

 政治と軍事を適切に統合する仕組みがなく、統帥権の独立の名の下に軍部が独走したという過去の苦い経験を踏まえて、制度的な手当ては行われました。他方、これらはあくまで制度であり、適切に運用することがなければ、その意味を成しません。

 政治の側は自衛隊を使いこなす能力と見識を十分に有する必要があります。現在の文民統制の制度を正しく理解し、適切に運用していく不断の努力が必要です。無責任なポピュリズムに屈しない、大勢に流されない政治家としての矜持(きょうじ)と責任感を持たなければなりません。

 自衛隊には、わが国を取り巻く国際軍事情勢や装備、部隊の運用について、専門家集団としての立場から政治に対し、積極的に説明し、意見を述べることが求められます。

 政治には、組織の縦割りを乗り越え、統合する責務があります。組織が割拠、対立し、日本の国益を見失うようなことがあってはなりません。陸軍と海軍とが互いの組織の論理を最優先として対立し、それぞれの内部においてすら、軍令と軍政とが連携を欠き、国家としての意思を一元化できないままに、国全体が戦争に導かれていった歴史を教訓としなければなりません。

 政治は常に国民全体の利益と福祉を考え、長期的な視点に立った合理的判断を心がけねばなりません。責任の所在が明確ではなく、状況が行き詰まる場合には、成功の可能性が低く、高リスクであっても、勇ましい声、大胆な解決策が受け入れられがちです。海軍の永野修身軍令部総長は、開戦を手術に例え、「相当の心配はありますが、この大病を癒やすには、大決心をもって、国難排除に決意するほかありません」、「戦わざれば亡国と政府は判断されたが、戦うもまた亡国につながるやもしれぬ。しかし、戦わずして国亡びた場合は魂まで失った真の亡国である」と述べ、東条英機陸軍大臣も、近衛文麿首相に対し、「人間、たまには清水の舞台から目をつぶって飛び降りることも必要だ」と迫ったとされています。このように、冷静で合理的な判断よりも精神的・情緒的な判断が重視されてしまうことにより、国の進むべき針路を誤った歴史を繰り返してはなりません。

 政府が誤った判断をせぬよう、歯止めの役割を果たすのが議会とメディアです。

 国会には、憲法によって与えられた権能を行使することを通じて、政府の活動を適切にチェックする役割を果たすことが求められます。政治は一時的な世論に迎合し、人気取り政策に動いて国益を損なうような党利党略と己の保身に走っては決してなりません。

 使命感を持ったジャーナリズムを含む健全な言論空間が必要です。先の大戦でも、メディアが世論をあおり、国民を無謀な戦争に誘導する結果となりました。過度な商業主義に陥ってはならず、偏狭なナショナリズム、差別や排外主義を許してはなりません。

 安倍元首相が尊い命を落とされた事件を含め、暴力による政治の蹂躙(じゅうりん)、自由な言論を脅かす差別的言辞は決して容認できません。

 これら全ての基盤となるのは、歴史に学ぶ姿勢です。過去を直視する勇気と誠実さ、他者の主張にも謙虚に耳を傾ける寛容さを持った本来のリベラリズム、健全で強靱(きょうじん)な民主主義が何よりも大切です。

 ウィンストン・チャーチルが喝破したとおり、民主主義は決して完璧な政治形態ではありません。民主主義はコストと時間を必要とし、時に過ちを犯すものです。

 だからこそ、われわれは常に歴史の前に謙虚であるべきであり、教訓を深く胸に刻まなければなりません。

 自衛と抑止において実力組織を保持することは極めて重要です。私は抑止論を否定する立場には立ち得ません。現下の安全保障環境の下、それが責任ある安全保障政策を遂行する上での現実です。

 同時に、その国において比類ない力を有する実力組織が民主的統制を超えて暴走することがあれば、民主主義は一瞬にして崩壊し得る脆弱なものです。一方、文民たる政治家が判断を誤り、戦争に突き進んでいくことがないわけでもありません。文民統制、適切な政軍関係の必要性と重要性はいくら強調してもし過ぎることはありません。政府、議会、実力組織、メディア全てがこれを常に認識しなければならないのです。

 斎藤隆夫議員は反軍演説において、世界の歴史は戦争の歴史である、正義が勝つのではなく強者が弱者を征服するのが戦争であると論じ、これを無視して聖戦の美名に隠れて国家百年の大計を誤ることがあってはならないとして、リアリズムに基づく政策の重要性を主張し、衆議院から除名されました。

 翌年の衆議院防空法委員会において、陸軍省は、空襲の際に市民が避難することは、戦争継続意思の破綻になると述べ、これを否定しました。

 どちらも遠い過去の出来事ではありますが、議会の責務の放棄、精神主義の横行や人命・人権軽視の恐ろしさを伝えて余りあるものがあります。歴史に正面から向き合うことなくして、明るい未来は開けません。歴史に学ぶ重要性は、わが国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれている今こそ、再認識されなければなりません。

 戦争の記憶を持っている人々の数が年々少なくなり、記憶の風化が危ぶまれている今だからこそ、若い世代も含め、国民一人一人が先の大戦や平和のありようについて能動的に考え、将来に生かしていくことで、平和国家としての礎が一層強化されていくものと信じます。

 私は、国民の皆さまと共に、先の大戦のさまざまな教訓を踏まえ、二度とあのような惨禍を繰り返すことのないよう、あたう限りの努力をしてまいります。〔共同〕

The Real Firtility Crisis: The pursuit ofreproductive agencyin a changing world

UNFPA 2025 世界人口白書が明らかにしたこと

以下は今年の白書のハイライトの訳です。

 国連人口基金UNFPA)が発表した『2025年世界人口の現状』報告書(タイトルは「真の少子化危機」)は、ほとんどの人がすでに子どもを持ちたいと考えており、多くの人が持てる子ども数よりも多くの子どもを望んでいることを明らかにしている。

 これらの調査結果は、世界が直面している本当の危機は人口不足ではないことを明らかにしている: 生殖代理権の危機なのである。合計特殊出生率にかかわらず、調査対象となったすべての国で、人間が下すことのできる最も重大な生殖に関する決定、すなわち、子どもを産むかどうか、いつ、誰と産むか、が損なわれており、場合によっては完全に否定されているのである。

 このパンフレットは、報告書からの重要なハイライトをお届けするもので、望む家庭を築くことができない膨大な数の人々の個々の現実に、大いに必要な光を当てている。

 以下は、標題の今年のUNFPA報告書(白書)から、Japanが登場する箇所の訳。

安定した、権利に基づく条件と政策を通じた信頼の構築政策が強制的なものであろうとなかろうと、出生率をオン・オフできる蛇口のように扱うことには現実的なリスクがある。現在、出生率の向上を目指している国の多くは、過去40年以内に出生率の低下を目指した経験がある。


 中国、日本、韓国、タイ、トルコはいずれも1986年に、当時の出生率を「高すぎる」として、政策的介入によって国の出生率を引き下げる意向を報告した。しかし、2015年までには、5カ国すべてが出生率を高めるための政策に切り替えている(UN DESA, n.d.)。現在では、5カ国とも合計特殊出生率が女性1人当たり2人を下回っている(UN DESA, 2024)。

 政府が出生率を直接コントロールする方法の一つは、生殖医療サービスに関する政策である。たとえば韓国では、中絶は国民健康保険の適用外だが、一部の地方自治体は、精管切除術や卵管結紮術の逆転手術に対して金銭的インセンティブを提供している(Ables and Yoon, 2024)。一方で、中絶を犯罪化したり、厳しい規制を課したりして、安全かつ迅速な生殖医療へのアクセスを大きく妨げている国もある(CRR, n.d.)。また、自発的な不妊手術へのアクセスに障壁を設ける国もある。たとえば日本では、女性が任意で不妊手術を受けようとすると、配偶者の同意、すでに子どもがいること、妊娠が健康リスクを伴うことの証明など、厳しい条件が課されており、独身で子どものいない女性にとっては事実上ほとんど不可能である(Rich and Notoya, 2024)。

……
 最後に、教育制度における高い費用や過度な負担も、出生に関する志向に影響を与える場合がある。韓国では、極めて競争的な学校制度が、就労開始の遅れ、青年期における精神的健康や生活満足度の低下、機会の不平等、そして出生率の低下と関連しているとされる(OECD, 2025)。高負担の教育と出生率の関連は他国でも指摘されている。たとえば中国や日本では、教育費の高さが家族規模に関する意思決定において重要な要因であると個人が述べている(Ogawaほか, 2009)。

……
 法的制限も、国境を越えた生殖補助医療によって得られた親子関係の公式な承認を妨げることがある。具体例として、同性カップルに生まれた子どもの出生証明書から非生物学的親を削除する措置や、たとえ合法とされる国で行われた場合でも代理出産を犯罪化する措置などが挙げられる(イタリア政府, 2024; Kilbride, 2023)。また、親になる権利を否定する他の法的措置も存在する。たとえば、ジェンダー承認医療を受ける人々に対する強制的な不妊手術である。この慣行は、拷問およびその他の残虐、非人道的または品位を傷つける取り扱いに関する特別報告者によって非難され(国連総会, 2013)、2017年には欧州人権裁判所の判決によって禁止された(ECHR, 2017)。2023年にはフィンランドと日本がこうした要件を廃止した(ロイター, 2023; 山口, 2023)。

……
…日本では、既婚カップルの出生率はおおよそ二人の子どもにとどまり、婚外子の出生はまれである(Raymoほか, 2021)。一方、他の地域では単身化が進んでいる。欧州連合においては、子どもを持たない単身世帯の数が2013年から2023年の間に21%増加した(Eurostat, 2024)。また一部の地域では、あらゆる年齢層において性行為の減少が確認されている(Jingほか, 2023; Willingham, 2022)。これに対し、多くの人々は女性が結婚やパートナーシップを「回避している」と非難し(Rich, 2019)、また別の人々は若者を「巣立ちの失敗」と責めている(Fry, 2023)。しかし、現実はより複雑であり、非難に値しないものである可能性が高い。ジェンダー役割の変化が世界的に結婚のあり方に影響を与えており、伝統的な家族形態への抵抗が単身化や家族形成の遅延に寄与している一方で(Miettinenほか, 2015; Raymoほか, 2015)、男女ともに自ら進んで非パートナー状態を選んでいると報告する人は少数である。日本の調査では、ほとんどの成人が結婚する強い動機も独身を続ける強い動機もなく漂っていると感じていることが示されている。また、結婚を望んでいるが「ただ実現していない」と答える人も多い。結婚を明確に拒否する人は少数派にとどまる(Raymoほか, 2021)

FIGOナイロビ会議が示す、日本の女性医療に必要な変革

FIGO、ICM、WHOの合同会議からのメッセージ

FIGO's October news: our latest publications and activities

以下要約・解説します。

「競争」から「協働」へ

 先日、ナイロビで開催されたFIGO(国際産婦人科連合)、ICM(国際助産師連盟)、WHOの合同会議から、重要なメッセージが発信されました。

 FIGO会長アン・キハラ教授の言葉が印象的です。

「競争的で階層的なリーダーシップでは前進できない。女性を中心に据えた協働的リーダーシップが必要」


日本の現状を振り返る

 日本の産科医療においても、産婦人科医と助産師の関係は必ずしも対等な協働関係とは言えない現実があります。職種間の階層性、縦割りの組織文化、そして何より「女性を中心に」という視点の欠如が、質の高いケアの提供を妨げているのではないでしょうか。


具体的な課題

 この会議では以下の重要なテーマが議論されました:

  • 包括的中絶ケア家族計画の統合的アプローチ
  • 専門職間の障壁を取り除く実践的方法
  • 教育カリキュラムの改革


 日本では、中絶ケアや避妊に関する包括的な情報提供とケアが十分とは言えません。医療者間の協働不足が、女性の選択肢を狭めている可能性があります。


今、必要なこと

1. 対等なパートナーシップ: 産婦人科医、助産師、看護師が対等な立場で協働する
2. 女性中心のケア: 専門職の都合ではなく、女性のニーズを最優先に
3. 教育改革: 学生時代から専門職間協働を学ぶ機会を


行動を起こす時

 FIGOとICMは2026年初頭に共同声明を発表予定です。国際的な潮流は明確に「協働」へと向かっています。

 日本の女性医療も、この変革の波に乗り遅れるわけにはいきません。それぞれの立場から、できることを始めましょう。

女性のために、そして女性とともに。

    • -

 この会議の参加者たちは「活力を得た」「鼓舞された」「エンパワーされた」と語っています。日本でも、そんな協働の文化を育てていきたいものです。

思春期女子の心の健康悪化「深刻」 若者の自殺、女子が男子を上回る

朝日新聞 桜井林太郎2025年9月30日 18時00分

思春期女子の心の健康悪化「深刻」 若者の自殺、女子が男子を上回る:朝日新聞

 思春期の女子のメンタルヘルスが悪化し、男子との差が拡大している。日本では昨年、20歳未満の女子の自殺者が初めて男子を上回っており、国立精神・神経医療研究センターや東京都医学総合研究所、東京大学などの研究チームは「深刻な状況だ」と警告している。

 論文が科学誌ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビアに30日、掲載された。

 研究チームは厚生労働省の統計データを整理した。2024年の20歳未満の女子の自殺者数は430人で、男子(370人)を初めて上回った。10年前は男子373人、女子165人で、男子が横ばい傾向なのに対し、女子はここ5年に急増している。

 厚労省警察庁の資料によれば、近年増加傾向にある小中高生の自殺も、男女別ではとりわけ女子の自殺が増えている。昨年は女子が初めて男子を上回った。

 研究チームによると、思春期の、特に女子でメンタルヘルスの問題が深刻化している傾向は世界的にも共通で、男女間の格差が広がっている。43カ国を調べた国際調査では、男女平等度の高い国で格差が拡大しているという。


当事者の声を聞き、解決策を
 これまでの研究から、背景には、女子が昔ながらのジェンダー規範に沿って期待されるだけでなく、学業や社会で成功することも同時に求められるプレッシャーを受けているほか、SNSなどインターネット利用の悪影響、対面だけでなくネットを介した性的搾取、過剰なやせ願望、思春期の早期化などの様々な要因が複合的に関与している可能性があると指摘している。

 同センターの成田瑞(ずい)・精神機能研究室長は「自殺のデータから日本でも世界の潮流と同じように、とりわけ思春期女子のメンタルヘルスの悪化が裏付けられた。この深刻な現状を社会全体が認識するとともに、当事者の声を聞き、体験に根ざした解決策を急ぐ必要がある」と話している。

「生半可な気持ちではない」性別変更の外観要件、違憲判断が5件確認

朝日新聞 上保晃平 米田優人 二階堂友紀2025年10月1日 5時00分

「生半可な気持ちではない」性別変更の外観要件、違憲判断が5件確認:朝日新聞

 戸籍上の性別を変更する際、性器の外観も変えるよう求める性同一性障害特例法の「外観要件」の違憲性が争われた家事審判の決定で、全国で少なくとも5件の違憲判断が出ていた。最高裁が取材に明らかにした。

 特例法は、出生時に決められた性別と性自認が異なるトランスジェンダーの人たちが、戸籍など法的性別を変更する際の要件を定める。最高裁は2023年10月、精巣や卵巣の切除を求める「生殖不能要件」を違憲で無効と判断した。外観要件についての憲法判断は示さなかった。


全国の違憲判断5件、2件は札幌家裁
 これを受け最高裁は24年1月から、全国の家裁や高裁を対象に、性別変更に関する家事審判の状況を調査。今年9月までに、外観要件を違憲・無効とする5件の決定を確認した。1件は昨年出されていた。最高裁の判断ではないので、他の裁判所を縛る法的拘束力はなく、法律の規定は無効にならない。

 このうち少なくとも2件は、札幌家裁の同じ裁判体(佐野義孝裁判長)が9月19日に出していた。申立人と弁護団が30日、札幌市で記者会見して明らかにした。

 札幌家裁では、トランスの男性による家事審判で、外観要件を違憲とし、これを満たさないまま性別変更を認める決定が出たことが判明していた。トランスの女性の審判でも同じ判断が示された。


法的にも「ありのまま生きること、認められた」
 決定によると、申立人は男性として育てられたが、幼少時から性別に違和感があった。現在は職場や日常生活で女性として生活し、周囲にも女性として認識されている。体つきなど、性的な特徴を変えるホルモン投与を受けたこともあるが、ひどい脱力感や全身の震えなどの副作用が出て中止した。24年3月、医療的な措置を受けないまま、戸籍上の性別を女性に変更するよう申し立てた。

 外観要件を満たすためには、手術やホルモン投与を受け、性器の形を変えることが必要だ。このような「医療要件」について、札幌家裁は「身体の侵襲を受けない自由」を保障する憲法13条に違反すると判示した。

 申立人はすでに性自認に沿った社会生活を送っており、今回の決定により法的な性別が生活実態と一致する。

 性別変更が認められたトランスの女性は会見で「働いて生活するだけで精いっぱいで、手術やホルモン投与を受けてこなかった。(法的にも)ありのまま生きることが認められ、自分は間違っていなかったのかなと思えた」と話した。

 代理人の須田布美子弁護士は「法改正につながり、外観要件がなくなることが最も望ましい。現時点では、全国の裁判所に同様の違憲判断が広がることを願っている」と語った。

【初報】性別変更の外観要件は「違憲」 性同一性障害特例法めぐり札幌家裁


公衆浴場の利用、法的性別で左右されず
 「今回の決定は戸籍上の性別変更に関するもの。裁判所が風呂の使い方について判断を示したものではない」。この日の会見で、須田弁護士は強調した。

 札幌家裁の決定後、「男性の身体的特徴を持つ人が、女性用の公衆浴場に入れるようになる」といった趣旨の言説が、SNSを中心に広がっているためだ。

 外観要件を満たさずに戸籍上の性別変更が認められれば、法的性別と一般的な性器の形が必ずしも一致しない状況が生じる。だが、厚生労働省は公衆浴場の男女について「身体的特徴」で分けるよう通知している。法的性別によって入れる浴場が左右されるわけではない。


当事者団体「恣意的に広げるのは差別的行為」
 トランスジェンダーの当事者団体「Tネット」(野宮亜紀さんら共同代表)も9月23日の声明で、公衆浴場の利用は身体的特徴に基づいており、「戸籍が女だから女性浴場に入れるわけではない」と厚労省通知に即した理解を求めた。

 そのうえで、SNSで広がる言説は「事実誤認」だと指摘。トランスの人たちが「戸籍を変更して女性浴場に入って来ようとしているという歪(ゆが)んだイメージ」を与えるとし、こうした言説を恣意(しい)的に広げることは「差別的行為と言わざるを得ない」と訴えた。


「あなたの言動で傷ついているのも同じ人間」
 外観要件は、公衆浴場などで性器が人目に触れると「混乱が生じる可能性がある」として設けられた。これに対し札幌家裁の決定は、多くの当事者は公衆浴場の利用を控えるなどしており、混乱が生じることは極めてまれ▽法的性別が変わっても、変更後の性別で公衆浴場などを利用できるとは限らず、問題には浴場などの利用ルールで対応できる――とし、外観要件によって混乱を避ける必要性は「相当低い」と結論づけた。

 性別変更が認められたトランスの男性は、この日の会見でこう訴えた。「生半可な気持ちで、性別を変えようとしているわけではありません。あなたの何げない言動で傷ついている人も、あなたと同じ人間です」

つながることで、私たちは強くなれる!

Xの連続ポストをここで一挙公開!

社会問題の根幹を正すため、私たちは「個人の人権」の保障を求める声を挙げ続けていく必要があります。
昨夜、2025年9月28日国際セーフアボーションデーに自由参加のオンライントークを開いたことで、新たな出会いを得て、数年ぶりの人とも再会し、自分が確信をもって歩んできた道のりを振返りました。


私は世の中のあからさまは「不正」がなくなることを心から願っています。その一つが、たまたま自分が経験した「中絶問題」です。日本の中絶ケアと制度は世界に照らして悪らつで、いまだに中絶の権利や中絶薬へのアクセスが保障されず、女性たちの人生が守られていないことに強い憤りを感じています。


一方、わたしはガザの現状についても心を寄せており、人々の惨状に手を差し伸べるために少しでも何かできないかと、毎日、ガザで暮らす人々の尊い声が消されないように、和訳して発信しています。せめてもの思いです。


能登地震津波、豪雨のあとの「復旧」がまったく進んでなく、「復興」どころではない状態が今も続き、政府の対応がさっぱり進んでいないという事実にも、心を痛めています。権力者たちと大手メディアが、こうした弱い立場にある人々を見捨てていることはもっと多くの日本の人々に知られるべきです。


ガザの筆舌しがたい惨状、復旧されることすらなく放置された奥能登の困難、希望をもって日本を訪れた外国人労働者や生きづらさを抱えているLGBTQ+、困窮家庭や子供たち、障がいをもつ人々への差別、女性のリプロの問題も、すべて根本的には「人権」意識が広まっていないことに根差しています。


憲法から「人権条項」を消すなどという暴挙を次期政権は狙ってくるかもしれません。そんなことは絶対にあってはならない。各々に主要テーマは違っていても、志を同じくする人たち、これからもつながっていきましょう。

リプロダクティブ・ジャスティス: 交差性から読み解く性と生殖・再生産の歴史 単行本 – 2025/9/17

日本語で読めるようになりました! ありがとう❣

リプロダクティブ・ジャスティス: 交差性から読み解く性と生殖・再生産の歴史

ロレッタ・ロス (著), リッキー・ソリンジャー (著), 申 琪榮 (監修, 翻訳), 高橋 麻美 (監修, 翻訳)


 すべての女性の尊厳と安全を守るために――さまざまな不正義が交差する現代社会にあらがう。

 生殖と家族形成を取り巻く構造的抑圧から生まれたこの社会運動は、いかにして不平等を可視化し是正することができるのか。人種、階級、ジェンダー、国籍、障害、セクシュアリティが絡みあう現代社会の重要概念、その第一人者による待望の解説書。


監訳:申琪榮/高橋麻美
翻訳:林美子/新山惟乃/大室恵美/花岡奈央/ミーシャ・ケード

原著:Loretta J. Ross and Rickie Solinger, Reproductive Justice: An Introduction, University of California Press 2017.


◎目次
第1章 リプロダクティブ・ジャスティスの歴史
第2章 二一世紀のリプロダクティブ・ジャスティ
第3章 生殖能力を管理する
第4章 リプロダクティブ・ジャスティスと子育てする権利
おわりに――リプロダクティブ・ジャスティスの実践から

9月28日は国際セーフアボーションデー!

RHRリテラシー研究所、今年もやります! 観てください! 参加してください!


2025年9月27日(土)22:00 配信開始
産む自由/産まない自由、その現在地と未来 国際セーフアボーションデー2025記念トーク
産む自由/産まない自由、その現在地と未来 国際セーフアボーションデー2025記念トーク - YouTube



20250928(日) 21:00 国際セーフアボーションデー オンラインフリートークルーム@RHRリテラシー研究所
世界中で安全な中絶について語られるこの日、日本でも中絶についておしゃべりしましょう!
https://20250928safeabortion.peatix.com/:国際セーフアボーションデー オンラインフリートークルーム

27日に開催された第3回「SRHR for ALL!スタンディングアクション」にもオンライン参加しました!