リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

フランスの中絶事情

Termination of Pregnancy and Abortion in France

上記タイトルの英語のページにフランスの中絶事情が詳しく書かれていたので忘備録。

・妊娠12週まで(up to 12 weeks after conceptionとあるのでLMPでは14週まで?――チェック要)は請求次第(オンリクエスト)の中絶が可能。
・滞在中の外国人でも可能。
・中絶を受けるまでに2回の診察が必要で、1週間の「熟考期間」が求められるが、急ぐ場合は2日間までに短縮できる。
・独身女性の場合はパートナーの許可は不要。
・未成年の場合、親の許可は不要だが、当日に誰か大人(18歳以上)が付き添う必要がある。
・15歳未満の者と性交した大人はレイプの罪に問われる。
・中絶薬は最終月経開始日から49日(7週)まで使える。ただし、診療所または病院で中絶薬を呑む場合には妊娠9週まで使える。
社会保障制度に登録されている人は中絶の費用を100%補てんされる。親の許可を得ていない未成年やCMU-CまたはAME(おそらく何らかの福祉給付金)を受けている人は、費用の前金を払う必要はない。それ以外の人はいったん前金を支払うことになるが、後日、補てんされる。
・健康保険にまったく入っていない人は妊娠期間と中絶を受ける場所によって次の費用を全額支払う必要がある:
 ・薬による中絶を診療所/病院で受ける場合は282.91ユーロ(約3万5000円強)
 ・薬による中絶を開業医、助産婦、家族計画センターで受ける場合は187.92~193.16ユーロ(約2万3000~2万4000円)
 ・外科的中絶 463.25~664.05ユーロ( 約5万8000~8万3000円―受ける場所と麻酔の有無で変動)
・配偶者や親の保険に入っている人が中絶について秘密にしておきたい場合には、配偶者や親に通知がいかないように差し止めることができる。
・緊急避妊薬は薬局や学校の看護師から処方箋なしで受け取ることもできるがその場合は社会保障からの補てんはない。処方箋をもらって受け取る場合には社会保障から費用が補てんされる。
・緊急避妊薬は未成年として申告すれば(証明しなくとも)無料でもらえる。

とりあえず以上です。典拠は以下。

www.angloinfo.com

海外の中絶費用/緊急避妊薬の価格

やっぱり高い! 日本の中絶/緊急避妊薬

海外の中絶費用を調べてみました。

イギリスは中絶薬で480ポンド(約7万円)、外科手術で680~1510ポンド(約10万円弱~22万円)だけど、97%の女性が健康保健(NHS)でカバーされます。出典はbpasで2019年4月10日からの新料金です。

フランスでは、2012年に妊娠14週までの中絶費用が全額保険適用となりました。その以前は最大450ユーロ(約56000円)も払わねばならなかったとあります。出典はFRANCE24です。

ドイツでは日本同様に中絶が原則禁止されていますが、強制カウンセリングと3日間の待期期間さえ経れば精神的な健康などを理由に外国人でも350~500ユーロ(約44000~56000円)で中絶を受けられるそうです。ドイツ人には国の保険がおりるようです。出典はBerlin Logsによる2019年3月6日の情報です。

一方、アメリカでは妊娠初期の薬による中絶は平均504ドル(約6万円)。レイプや母体の生命に危険がある場合などはメディケイド(健康保険)を使えるようです。これはGuttmacherによる情報です。ただし、アメリカではトランプ政権下で反中絶政策が採られており、フェミニストたちは相当に警戒を強めています。

日本では妊娠初期の中絶でも10万円以上かかることが多いし、保険はいっさいききません。

なお、緊急避妊薬は米英のオンラインショップで販売されています。アメリカのAmazon.comではPlan B One Stepが33ドル69セント(約3800円)、AfterPillが22ドル(約2500円)です。イギリスのOnline Doctor Superdrug.comでは、5日間=120時間以内に服用するEllaOneが35ポンド(5000円強)、日本で認可されているものと同様に72時間以内に服用するLevonelleが27ポンド(4000円弱)、ジェネリックだと13.49ポンド(2000円弱)で売られています。

日本では、ノルレボを処方してもらうと1万5000円ほどかかっていたのが、ようやくジェネリックが出て1万円を切るようになったところ。でも、海外と比べるとまだまだ高い。以前、書いたとおり、タイなら200円で買えるんです! 

まずは知ってください。そして、リプロ難民を脱しましょう!

避妊薬の服用法にバチカンへの「忖度」があった!?

Newsweek 2019年04月22日(月)17時00分

カシュミラ・ガンダー

経口避妊薬を飲む場合、3週間服用後に1週間は休薬──常識とされているこの服用法が、 実は宗教上避妊を認めないバチカンへの配慮だったことが明らかになった。


休薬中は生理に似た出血「消退出血」が起きるが、こうした出血や休薬は健康効果がないと、 英王立産婦人科医協会の「性と生殖のヘルスケア部会」が新指針を示した。休薬中の頭痛やけいれんに悩む女性には朗報だ。


ロンドン大学のジョン・ギルボー教授は、50年代に産婦人科医ジョン・ロックが休薬を提言したのは、「ローマ法王(教皇) が避妊薬を受け入れ、カトリック教徒が使えるようにするため」と、述べている。「ロックは休薬で生理周期を確保すれば 受け入れられる」と考えたようだが、結局は拒否された。


正しく服用すれば99%避妊できるが、利用者の9%は服用開始から1年以内に妊娠する。「休薬期間前後に服薬を忘れるため」と、産婦人科医のダイアナ・マンスールは説明する。新指針は休薬期間を4日ほどに減らすことを提言している。


[2019年2月 5日号掲載]

アルゼンチン:ミソプロストール普及で変わる中絶意識

"The Drug That’s Transforming Abortion in Argentina”

Written by Amy Booth on MEDIUM
Jun 25, 2018

アルゼンチンでは、合法/違法の中絶にミソプロストールの使用が広まることで、人々の中絶に対する意識も変わりつつあるそうです。ちなみに、アルゼンチンではレイプや母体の健康上の理由による中絶は合法的であるため、この記事では、ある医師は次のように指摘しています。

“In a country where there are cases of legal abortion, it is unacceptable that these pills do not exist and a suboptimal option is being used,” (試訳:中絶を合法的に行える場合もある国で、〔中絶用の〕薬が存在せず、最適ではないオプションが使われているのは許しがたい」

…日本にも、全く同じことが言えます。

medium.com


ついでに、アルゼンチンの中絶権運動に関する情報も貼り付けておきます。

www.academia.edu

7年ぶりに審判受ける堕胎罪…韓国国民は「廃止」に傾いた

韓国の堕胎罪違憲判決について、Hankyorehが比較的詳しく報じているようなのでご紹介しておきます。ただ、いくつかの記述はうのみにせず裏を取っておく必要があるかもしれません。念のため。
japan.hani.co.kr


関連情報
韓国の裁判所、中絶禁じた刑法は「違憲」 - BBCニュース
South Korea Rules Anti-Abortion Law Unconstitutional - The New York Times
South Korea abortion ban is unconstitutional, top court rules - Los Angeles Times

韓国の刑法堕胎罪に違憲判決

2019年4月11日、韓国で中絶を選ぶ女性の権利が守られました!

「妊娠した女性の選択権を侵害する違憲的制約」として現行法を棄却した模様です。なお、韓国もまた「堕胎罪」が死文化しており、現実とのギャップが問題になったそうですが、2012年から2017年までに80名の女性や医師たちが法廷に立ち、うち1名が実刑判決を受けたというのだから、日本よりもはるかに「刑法」として機能していたようです。

2020年末までに法改正するか、しなければ刑法堕胎罪が無効になるとのこと。
www.nytimes.com