リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ネット販売中絶薬に関するニュース

バンコク週報というサイトに載っていたニュースです。この女性の死と中絶薬服用との関係は不明であり、これにより中絶薬=危険と見るのは速断でしょう。

エヴィデンスのある研究によれば、この薬による中絶のリスクは他の外科的中絶手術(世界では吸引手術が主)のリスクより低かったはずであり、日本で今も多く行われている全身麻酔による外科的手法よりはるかにリスクが低いはずです。この薬に反対する勢力の人々は、しばしば大量出血を言い立てますが、RU 486による出血量は通常の月経よりはるかに多いとされており(ある意味では当然ですよね)、普通の人(特に月経というものを知らない男性)だからこそびっくりするのかも……と思ったりもします。

【三面記事】 03/19Tell Friends
増加する中絶薬のネット販売、女子学生が死亡
容疑を否定しているアンクン容疑者
 3月13日、中部ナコンパトム県でクリニックを経営するアンクン容疑者(48)が中絶薬の違法販売容疑で身柄を拘束された。

 今月2日、北部チェンマイ県の職業高等専門学校に通う女子学生(20)が自室で中絶薬を使用した後、死亡したことから、警察では薬の入手経路を捜査していた。この女子学生は発見時、生殖器から大量の出血をしていた。

 その後、警察は、死亡した女子大生が使用した薬をネット販売しているウェブサイトを発見。同サイトではいろいろな種類の中絶薬を販売していたほか、使用方法も詳細に説明していた。そこで、警察は顧客を装って約3000バーツ分の薬を購入した。

 数日後、ナコンパトム県内の郵便局から小包が送られてきたことから、警察ではさらに別の注文をして、この郵便局に運ばれてくる小包をすべてチェック。その結果、警察が注文した中絶薬を運んできたアンクン容疑者の逮捕に成功した。しかし、同容疑者は、「頼まれて運んできただけ。何が入っているのか知らなかった」と容疑を否定している。

 保健省医薬品・食品委員会によれば、これまでに中絶薬をネット販売していたウェブサイトを10件以上閉鎖したというが、すぐに別のアドレスで立ち上げてしまうという。また、利用者は高校生、大学生など若者が大半とのことだ。

ただし、違法のネット販売業者が跋扈しているのは国境を越えた事実であり、だからこそれっきとした医療のなかでこの薬を安全に処方できるようにすべきだと考えます。それは必ずしもこの方法が「いいから」というのではなく、リスクを下げるためにはそうするのがベターだし、また、女性自身にきちんとインフォームド・チョイスする機会を与えることも重要だと思うからです。

危険だから取り締まるべき……という方向に走ることで、結果的に新たな形態の“ヤミ中絶”が広まる素地を作ってしまうようでは、ますます女性たちを危険に陥れることになるばかりだと思います。