今もネットに掲載されている平成16年10月25日付の「厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課」の「報道発表資料」は,あちこちで引用されているのですが,実は正しくない情報が多々含まれており,日本人に「中絶薬は危険」だという誤解を広める大元になっています。また,過去の資料であるはずなのに,どうも後付でページが更改されているようなので,本日時点での内容をここにコピペしておきます。
追々,この資料の間違いを指摘していきますが,ひとつ明らかな問題は,この情報が少なくとも2004年時点での医療水準に基づいていることです。海外では妊娠中絶の技術は日々進歩しているというのに,日本の厚生労働省は単に無知なのか,あるいはその事実をあえて無視しているように思われます。
たとえば,ミフェプリストンを使って初期の妊娠中絶を行えるのは妊娠49日以内だというのは,当時の医学的エヴィデンスに基づいています。2003年にWHOが発行した“Safe Abortion”では確かに「初期中絶については49日目まで」とされています。しかし,2012年に発行された“Safe Abortion 2nd edition”ではこの制限は全廃されています。
また,この時のWHOのミフェプリストンの取り上げ方は,決して「危険な薬だから取扱い注意」というものではなく,むしろ「安全」な方法として取り上げています。逆に,日本で一般的だった「掻爬」(英語ではD&C)の方こそ,危険だから安全な方法(吸引または中絶薬)を使用できない場合にのみ使うようにと,2003年の“Safe Abortion”に明記されています。さらに2012年では「掻爬は廃れた方法(obsolete)なので,もし今も使っているなら吸引か中絶薬に移行すべき」と警告されるようになりました。
それなのに,今も掻爬が日本の中絶で最も多く使われている手段だということは,2011年10月12日のログをはじめ何度もこのブログで取り上げていますので,ご参照ください。
さらに,中期中絶に関してはすでに2003年の初版の“Safe Abortion”の時からミフェプリストンの有効性が支持されていました。2003年の時点でWHOがこの薬の使用を推奨していなかったのは,妊娠49日を超え,妊娠12週に至らない5週間だけでした。ところが,厚生労働省の文章からはこの事実が全く読み取れません。
他にもいろいろありますが,時間のある時に少しずつ解説していくことにします。それにしても,もはやあれから10年にもなるのか・・・と,日本の進歩の遅さに愕然とさせられます。
2004年10月
<報道発表資料トピックス
平成16年10月25日
厚生労働省医薬食品局
監視指導・麻薬対策課
光岡(内線2763)
森田(内線2762)
個人輸入される経口妊娠中絶薬(いわゆる経口中絶薬)について
国内では承認されていない経口妊娠中絶薬は、ときに手術が必要となる出血を起こすことが知られており、欧米でも医師の処方と経過観察が必要とされる医薬品であるため、安易に個人輸入され、使用されることによる健康被害が懸念されます。
そのため、医療機関を受診しないで個人で使用することの危険性を厚生労働省のホームページや報道機関を通じて呼びかけるとともに、個人で輸入して安易に使用されないよう、以下の措置を行うこととしましたので、お知らせします。1 厚生労働省のホームページの掲載による注意喚起等
1) 経口妊娠中絶薬を医療機関を受診せずに安易に服用することは危険ですので避けていただくよう、厚生労働省のホームページにQ&Aを掲載して、広く呼びかけることとしました。
2) 健康被害の実態を把握して、注意喚起の対応を進めるために、(社)日本医師会等の関係団体あてに協力を依頼しました。(参考)2 個人輸入代行業者に対する監視指導の強化
個人輸入代行と称している場合でも、不特定多数の者に希望を募る広告を行う等、その形態によっては、薬事法違反に該当するおそれがあるため、あらためて
1) 各都道府県に対し、個人輸入代行業者のインターネット上の広告等について、監視指導の徹底を依頼
2) インターネットで広告を行っている個人輸入代行業者やプロバイダに対して警告メールの送付
を行い監視指導の強化を図りました。3 個人輸入に対する制限
経口妊娠中絶薬については、これまでは少量であれば厚生労働省での手続きが無くても個人で輸入できていた取扱いを改め、原則として、医師の処方に基づくことが地方厚生局で確認できた場合に限って輸入が可能となるよう、個人輸入を制限することとしました。
(参考)個人輸入を制限し、注意を喚起する経口妊娠中絶薬の商品名等
一般名: ミフェプリストン(Mifepristone)
販売名:
(EU) ミフェジン(Mifegyne)
(米国) ミフェプレックス(Mifeprex)
(中国) 息隠(米非司酉同片)
(台湾) 保諾(Apano)(平成20年5月追加)
開発時の名称である「RU486」とも呼ばれています。経口妊娠中絶薬「RU486」又は「ミフェプリストン錠」に関するQ&A
Q1. 経口妊娠中絶薬といわれている「RU486」あるいは「ミフェプリストン(mifepri- stone)」とはどのような医薬品ですか。日本では認められていますか。
A1. 「RU486」又は「ミフェプリストン錠」は妊娠が継続するために必要なプロゲステロンと呼ばれるホルモンの作用を止める妊娠中絶薬です。
我が国では未承認の医薬品であり、譲渡・販売等は薬事法で禁止されています。
有効成分の「ミフェプリストン」は、子宮収縮作用のある他の医薬品と一緒に使用した時、妊娠後(最後の月経が始まった日から)49日以内であれば妊娠を終了することができるものとして欧米では認可され、医師が使用して経過を観察することが必要とされています。Q2. 「ミフェプリストン」は欧米ではどのように規制されていますか。個人で輸入してもいいのですか。
A2. 欧米では、医師のみが処方できる医薬品とされています。腟からの出血や重大な感染症等の可能性が知られており、医師による投与後の経過観察や、緊急時には医療機関を受診できることが必要とされています。欧米でも医師の処方せんなしで薬局で購入することはできません。また、インターネットを通じて販売されることは認められていません。
また、本剤は、卵管妊娠(子宮外妊娠)には効果がなく、それに気付かずに適切な処置がなされなければ卵管破裂の危険があることから、米国では医療機関に対する注意喚起がなされています。
このようなことから、インターネット上の個人輸入代行会社を通して本剤を入手し、個人で使用することは危険なので、やめてください。Q3. 外国で「ミフェプリストンを服用してはいけない」とされているのは、どの様な場合ですか。
A3. 最後の月経が始まった日から49日を超えた場合は、この医薬品の適応の対象となっていません。また、次の方は服用してはいけないこととされています。
・ 卵管妊娠(子宮外妊娠)
・ 子宮内避妊具(IUD)使用者
・ 副腎に障害のある方
・ ステロイド薬物治療を受けている方
・ 異常出血のある方、抗凝血剤を使用している方
・ ミフェプリストン、ミソプロストールあるいは同様の薬に対してアレルギー反応を持っている方Q4. 「ミフェプリストン」によって起こる可能性のある副作用や健康被害は何ですか。
A4. 外国の添付文書によれば、ミフェプリストンを服用すると、腟からの出血を引き起こす可能性があります。時には、腟からの出血が非常に重くなることがあり、場合によっては外科的な処置により止血する必要があります。
また、2004年11月に、米国では添付文書の警告欄に、敗血症等の重大な細菌感染症や子宮外妊娠患者への投与による卵管破裂が追加されました。
他の副作用としては、下痢、吐き気、頭痛、めまい、腰背痛等が知られています。
(参考)個人輸入を制限し、注意を喚起する経口妊娠中絶薬の商品名等
一般名: ミフェプリストン(Mifepristone)
販売名:
(EU) ミフェジン(Mifegyne)
(米国) ミフェプレックス(Mifeprex)
(中国) 息隠(米非司酉同片)
(台湾) 保諾(Apano)(平成20年5月追加)
開発時の名称である「RU486」とも呼ばれています。
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