リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

海外の長期継続ピルは91-dayが常識らしい

ヤーズフレックス情報追加

以前、下記のログでおすすめしたヤーズフレックスについて問題がありそうなことが見えてきた。
ヤーズフレックス配合剤

日本では最長120連続使用可と宣伝されているヤーズフレックス(Yaz flex)について英語で情報を探していたら、月経困難症治療薬(副効能として長期継続使用できる避妊薬の働きももつピル)の主流は120日ではなく91-dayのタイプだということが分かって来た。しかもヤーズフレックスは推薦されていない。たとえば、verywellhealth(アメリカ)のサイトでは次のように説明されている。

91-Day: These continuous birth control pills include the pill brands: Seasonale, Quasense, Seasonique, and LoSeasonique. Each pack contains 84 active/hormone pills—this equals 12 weeks of continuous birth control. The pack also has seven inactive pills (in Seasonale and Quasense, these are placebo pills. In Seasonique and LoSeasonique, these are low-dose estrogen pills). When you use a 91-day continuous-cycle pill pack, your period (or withdrawal bleed) usually occurs during Week 13. This means that you only have a period every three months (that's just four periods a year). Plus, the lower dose of estrogen in the last week of the pills help to make your period lighter and shorter, most women say that their period only lasts about 3 days.

ここに紹介されている4つの商品Seasonal、Quasense、Seasonique、LoSeasoniqueの成分は、いずれもLevonorgestrel(1.5mn、LoSeasoniqueのみ1.0mn)とEthinyl estradiol(0.03mg、LoSeasoniqueのみ0.01mg)である。ヤーズフレックスは、Drospirenone 3mgとEthinyl estradiol 0.02mg配合なので、アメリカで使われているものとはタイプが異なる。

(余談だがレボノルゲストレルは、いわゆるアフターピルとして知られている「ノルレボ」の成分でもある。ただしその場合は1.5mgと高容量だ。)

どうしてYaz-flexアメリカにないのだろうと思っていろいろ調べてみたところ、どうやらDrospirenone(ドロスピレノン)配合剤はLevenorgestrel(レボノルゲステロル)配合剤よりも「血栓」の可能性が高いため敬遠されているようだ。

となると、せっかくのこの薬も日本では使えない人たちが出てくるはずだし、(これもポイントの一つだが)長期連続可能な避妊ピルについて1種類のみしか認可されていない独占状態になっていることになる。流産/中絶処置用の手動吸引器についても、ウィメンズヘルスジャパンという会社の独占状態が続いている。それでは価格が下がるわけはない。(緊急避妊薬も長いことジェネリックが出てこなかったものだ。)

なおも調べていったところ、オーストラリアでは2020年1月1日以降Yaz-flexの流通を取りやめていた。Medicine Shortages Information Initiative | Therapeutic Goods Administration (TGA)

おそらく理由はこれだ。drugwatchというサイトに次のような記事を見つけた。

Yaz Lawsuits
Women who suffered side effects after taking Yaz and Yasmin have filed thousands of lawsuits against Bayer AG. More than 19,000 lawsuits have been resolved so far, according to court records. Lawsuits allege the pills caused blood clots, gallbladder problems, heart attacks and strokes. Federal multidistrict litigation closed in January 2019.

要は、製造会社バイエルに対して、副作用が出たとして2万件近くの「ヤーズ訴訟」が提起されたというのである。しかも2019年1月に、この薬が血栓や胆のうのトラブル、心臓発作、卒中などを引き起こしたとして決着がついているらしい。

[https://www.healthtranslations.vic.gov.au/bhcv2/bhcmed.nsf/ead67cc7ba5c3879ca257e4200114a2d/6261578af7d204f2ca257e4200118271/$FILE/CMI10506.pdf:title=
2014年のBayer社の説明]では血栓は「稀」となっており、胆のうに疾患がある場合は注意するよう書いてはあるが、これほど多くの被害があったのだから「稀」では済まないのではないか。

日本国内に同じ作用の薬は他に選択肢がない。唯一認可されている薬に多くの被害が出ていることが明らかになったのだ。すぐにも日本の女性たちに広く知らせて、利用者に注意喚起すべきではないのか。

先の文章によれば上記の訴訟が終わったのは2019年1月という。バイエル社の日本語サイトは同年5月に更新されている(Last Updated : 2019/05/29 PP-YZF-JP-0234-17-05)。確かによくよく見ると、注意書きのリーフレットなども作られているが、知らない人も多いのではないか。ヤーズフレックス配合錠 トップ | バイエルウィメンズヘルス|バイエル薬品

厚労省、こういう時こそ「危険情報」を出すべきではないのですか?
2014年の報告は見つかったが、マスコミ報道されたのだろうか?

バイエルはさらに、服用中の生活について|バイエルウィメンズヘルス|バイエル薬品という説明(言い逃れ?)までしていた。健康トラブルがあっても、女性の自己責任だと言いたいのか。

何にしても要注意だ。これからも継続して調べて、また報告する。

まったくこの国は女性の身体を何だと思っているのだ! 長期連続可能な避妊ピルそのものは女性にとっては朗報だ。ヤーズフレックスではない、他のタイプの長期継続可能なピルを認可してほしい!