リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

死体遺棄罪容疑で逮捕されたグエットさんの不起訴を求める署名

2月25日まで署名を集めています

死体遺棄罪容疑で逮捕されたグエットさんの不起訴を求める署名
【事実関係】
 2024年 2 月 2 日ベトナム人技能実習生のグエットさんが赤ちゃんを死産しました。「妊娠がわかったら、帰国しなければならない」と言われていたため、誰にも相談できずに一人で知人の家で出産したものです。

 グエットさんは午前10時すぎの出産後、一旦気を失ったのち目を覚まし、赤ちゃんを入れるものを探したが見つからず、スーパーの袋に入れトイレの入口前のごみ箱に入れましたが、ごみ箱にはふたをしない状態だったとのことです。

 夕方、この部屋に住む知人が帰宅し、出血が続く彼女の状態を見て、近くの病院へ連れて行き、そこから救急車で別の病院に搬送されました。この病院から警察に通報がなされ、その後、入院中に警察により事情聴取がされ、死産4日後の2月6日に死体遺棄容疑で逮捕されました。現在は博多警察署に勾留されています。

【私たちの考え】
 グエットさんの孤立出産(死産)の背景には、「妊娠がわかったら、帰国しなければならない」と言われていたことがあります。このようなことがあったため周りの誰とも相談できないまま出産したものです。また出産後大量の出血で気を失ったりして、身体的にも精神的も過酷な状態の中で適切な対応ができなかったものです。従って赤ちゃんの遺体をビニールの袋に入れ、死産した部屋のごみ箱に置いたこと、死産から8時間ほど部屋に置いていたことをもって「死体遺棄」として起訴することはあってはなりません。

 孤立死産し、部屋の中に遺体を置いていた日本人女性のケースでは、死体遺棄容疑で逮捕後不起訴になったケースがいくつかあります。また 2020年11月の熊本県でのベトナム人技能実習生リンさんの双子の赤ちゃんの死産のケースでも死体遺棄罪で逮捕され、第一審、第二審では執行猶予つきの有罪判決でしたが、2023年3月最高裁判所では無罪の判決となりました。

 これらのことを踏まえ、
 福岡地方検察庁検察官に対し、グエットさんについては不起訴とし、早期に釈放することを求めます。

(この署名の集約期限は2月25日です。)

呼びかけ団体
★アジアに生きる会・ふくおか 
 (署名集約先)福岡市中央区六本松2-3-6 SKビル9F 女性協同法律事務所気付) 電話 090-7450-9805 井上
★コムスタカ-外国人と共に生きる会
 熊本市中央区水前寺3-2-14-302
須藤眞一郎行政書士事務所気付)

★外国人技能実習生権利ネット・北九州
 北九州市小倉北区真鶴1-7-7 ユニオン北九州気付

~グエットさん支援のための寄付のお願い~
 グエットさんの支援のため、弁護士費用や釈放後の生活費等が必要となります。
 そのための支援金の寄付を募ります。ご賛同いただける方は下記の口座への送金をお願いします。
 郵便振替 外国人技能実習生権利ネット・北九州 01750-8-84519

参考資料:http://www.kumustaka.org/TITP/2024.2_2_TITP.pdf

参考資料(1) 以下はいずれも日本人のケースですが、
死体遺棄容疑で逮捕されるも、死体遺棄罪では起訴されなかった事例
1,2020 年 12 月 7 日に東京大井署により、日本人女性が自室内で孤立死産した子の遺体を黒いビニール袋に入れて、部屋の中においていたとして死体遺棄の容疑で逮捕されるも、慈恵病院が逮捕 3 日後に抗議の記者会見を開き、東京地検は不起訴とした
2,2021 年 9 月 26 日 自宅で死産した子の遺体を自宅の冷蔵庫内に遺棄したとして、死体遺棄の疑いで香川県内在住の夫婦が香川県警に逮捕されましたが、弁護士の抗議、マスコミ報道
などで、高松地検は不起訴としました。
3 空き地に母親の遺体を埋めたとして死体遺棄容疑で熊本県警により、2023 年 11 月 17日に逮捕された男性に対して、熊本地検は、死後、母親の年金を生きているように装って不正受給したとして、詐欺と有印私文書偽造の罪で男性を 2023 年 12 月 27 日付で起訴しましたが、死体遺棄容疑では不起訴としました。


参考資料(2)最高裁で無罪となったベトナム人技能実習生リンさんの死体遺棄事件の概要
 2018 年 8 月、ベトナム人技能実習生リンさんは 150 万円の借金をして、熊本県内のミカン農家に技能実習生として来日しました。来日後 1 年半ほど、リンさんは休日もなしに借金を返すために働き続けます。そして、交際しているパートナーとの間に妊娠していることに気が付きます、しかし、「妊娠が監理団体や雇用主に知られたら、帰国させられる」という恐れから、誰にも相談できず、2020 年 11 月 15 日、一人で住んでいた民家の居室で双子の赤ちゃんを死産しました。出産の痛みと死産のショックの中で、二人の子どもの遺体をタオルで包み、名前を付け、弔いの言葉を添えて、箱に入れセロテープで封をして近くにある棚の上に安置して一晩を一緒に過ごしました。そして、翌日監理団体職員らに病院へ連れていかれ、医師に妊娠-出産の事実を認め、医師が警察へ通報します。リンさんは、死体遺棄容疑で、2020 年 11 月 19 日に熊本県警に逮捕され、マスコミにより全国報道されます。同年 12 月 10 日熊本検察庁が、死体遺棄罪で起訴しました。
 2021 年 7 月 20 日、熊本地裁は、「死産をまわりに隠したまま、私的に埋葬するための準備であり、正常な埋葬のための準備でないから、国民の一般的な宗教感情を害することは明らかである」として、「懲役 8 月、執行猶予 3 年」の有罪判決を言い渡しました。また、控訴審である福岡高裁は、2022 年 1 月 19 日に、控訴審での最大の争点であった死体から離去していない死体遺棄罪の放置(不作為)には、一定の時間的経過が必要という主張を採用し、原審判決を破棄しました。しかし、起訴状や訴因に明示されず、1 審判決でも争点にな
っていなかった「隠匿」による死体遺棄罪の成立を認め、リンさんが二重の段ボールに入れて 13 ヶ所の粘着テープで封をしたことと妊娠と死産したことを隠し続けた前後の発言を根拠に、有罪としました。しかし、2023 年 3 月 24 日、最高裁判所はリンさんの行為は「他者が死体を発見することが困難な状況を作出した」けれども「習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められない」ので「遺棄」には当たらないとして逆転勝訴判決を裁判官 4 名の全員一致で言い渡しました。