リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶の配偶者同意の義務化:それが存在する国の特徴と法の近代化の可能性

The European Journal of Contraception & Reproductive Health Care , Received 03 Oct 2024, Accepted 19 Nov 2024, Published online: 11 Dec 2024

配偶者同意があるということは前近代的に見えるらしい

Mandatory spousal authorisation for abortion: characteristics of countries in which it exists and the potential for modernisation of the law


たびたび日本について取り上げてくれるDr. Sam Rowlands(サム・ローランズ医師)による論考。


仮訳します。

要旨
目的
 配偶者同意(SA)が妊娠中絶に必要とされることは、身体の自己決定権と直接的に対立する。WHOのガイドラインでは、中絶は第三者の同意なしに要望に応じて可能であるべきとされている。本研究の目的は以下の通りである:
a) 配偶者同意を法的に要求する国を特定する
b) これらの国々に共通する特徴を記述する
c) そのような法律が中絶へのアクセスに与える影響を評価する
d) その法律の撤廃の可能性を検討する


方法
 グローバルな中絶法に関する既存のデータベースを調査し、配偶者同意を必要とする国を特定。その国々を特徴に基づいて分類。SAとリプロダクティブ・ライツの関係についての文献レビューを実施。

結果
 15カ国が配偶者同意を必要とする法律を持つことが確認された。これらのうち9カ国は自由度と民主主義のスコアが低い。一方、日本、韓国、台湾は高い自由度と民主主義スコアを持ち、宗教的支配がない国として目立つ。これらの国々では中絶法の即時のリベラリゼーションが可能性として挙げられる。


結論
 12カ国は、近い将来に中絶法を近代化するための政府または社会的条件が整っていないと考えられる。一方、日本、韓国、台湾は、女性の権利擁護キャンペーンや市民社会からの圧力を通じて、法改正を実現する有望な候補である。


詳細
背景
 配偶者同意を求める中絶制限は、イスラム教の影響がある国々を含む家父長的な社会と関連している。チュニジアは1973年に中絶法を自由化し、配偶者同意の必要性を撤廃した先駆的な国である。1990年代以降、エジプト、ギニアビサウイラクマラウイモルディブニカラグアなど6カ国がSA法を撤廃している。


方法と資料
 2024年版「世界中絶法」および2018年版「WHO世界中絶政策データベース」を使用し、SAとリプロダクティブ・ライツの関係に関する文献レビューを実施。配偶者通知要件は対象外とした。


考察
 日本、韓国、台湾は自由で民主的な現代社会であり、中絶法の即時改正が可能であると考えられる。これらの国々では市民からの法改正の要求があるが、実現していない。特に日本では、DVなど特定の条件下で例外が認められるものの、配偶者の同意が依然として必要とされている。


一般的な示唆
 SA法の撤廃は、これら3カ国で約4000万人の妊娠可能年齢の女性に恩恵をもたらす可能性がある。