リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

昨日の午後,腰を痛めてしまって身動きが取れなくなり,近くの古ぼけた外科に駆け込んだところ「椎間板ヘルニアの恐れあり」と言われた。まさかと思いながらも,知人を頼って信頼できる整形外科を紹介してもらい,朝一番で駆けつけてレントゲンのみならずMRIまで撮ってきちんと調べてもらったところ,ヘルニアの可能性は消え,数日間おとなしくしていれば大丈夫だと言われた。とりあえず,一安心。

このところ,またしても無理をしていた……今回の一件は,限界を超えて身体を酷使しようとする精神に,身体が悲鳴を上げた結果かもしれない。

じつは今回の合宿で,わたしよりも20歳ほど上の女性に,「わたし,若年性更年期みたいなんです」と何の気なしに話したら,「どれくらい月経が止まっているの?」とすかさず問われた。月経がなくなると,身体のさまざまなホルモンが崩れるので老化が一気に進むというのだ。彼女が挙げた「老化現象」には,思い当たるふしがいくつもあった。このところ,身体のトラブルがあまりに続いている……まさに身を削ってるなという自覚がありながら,わたしは悲鳴をあげる身体を無視してがむしゃらに突っ走ってきた……。

月経が完全になくなったのが1年半以内ならまだ「取り戻せる」から,どうにかしたほうがいい,と真剣に勧められたとき,やばいな,と思った。最初に月経不順に気づいたのは2年以上前だったんじゃないか。その後,気づいたら月経が完全に止まっていたのは,1年半前だったか,2年前だったか……もはや,あやふや。わたしと2回りも違うとは全く思えない若々しいその女性の親身なアドバイスには,説得力があった。そこで昨日,久しぶりに産婦人科に行ってみようかな……と思った矢先のぎっくり腰(?)だったのだ。

今朝,行った病院でも,「腹筋,背筋を鍛えておけば,こうはならない」と言われた。そこで,無理に無理を重ねてきたこの1年半のことを振り返らずにはいられなくなった。

そもそもわたしの人生において,妊娠期間中ほど健康的だった時期はない。出産後も,赤ん坊がある程度育ち,人に預けられるようになったとたんに,わたしはジム通いを再開した……ようやく取り戻しつつあった身体ケアのリズムが,今度は引っ越しで中断された。金沢に来てからも,最初は懸命にヨガ教室やプール,ジムを探していたのだけど,「ジム通い」の習慣を取り戻す前に,博論を当初の予定より半年前に提出する事態に追い込まれてしまい,臨戦態勢に突入してしかたなく,心や身体のケアをすべて放棄した。机と画面に縛りつけられる毎日が続いた。友だちとお茶やランチに出かけることすらなくなった。長年の習慣になっていたネットでのおしゃべりすら……この春,ここを開くまで,ほとんど自分に禁じていた。

当初は半年だけの我慢のつもりだった……ところが,その後,さらに半年,さらにまた半年と重ねていって,結局は論文を出せていない今がある。

からだとこころ,そして社会的存在としてのわたし……そんな,リプロにとっての基本を,わたし自身が体現できていないのに,偉そうに論を説くなんて,嘘っぱちではないか。

そんな,当たり前のことを思った。

今週末まで「オフ」にしたので,いい機会だと読みかけの『ゲド戦記』を開いた。心・体・技がバランスよく成長して初めて一人前の魔法使いになれるといった話が出てきた。なるほど。

わたしはもともと(ディックなど,どちらかといえばハードな)SFが好きで,ル=グウィンは『闇の左手』(小尾芙佐訳)でうならされたものの,他の作品は読んでいなかった。だけど後に『夜の言葉』を読んで,一発でこの作家のファンになった。

夜の言葉―ファンタジー・SF論 (岩波現代文庫)

夜の言葉―ファンタジー・SF論 (岩波現代文庫)

それでも『ゲド』を読んでいなかったのは“戦記”という言葉を嫌悪してのことだった。今回,読み出したのは映画化の影響というより,映画化のためにル=グウィン自体に注目が集まったおかげだ。わたしはもともと映像人間ではないので,映画自体にはそれほどには興味がない。だけど,「ふぇみん」に掲載されていたル=グウィンの特別インタビューでこの作品に関心をもつに至った。

彼女のファンタジーは,警句だらけ。ひとつだけ例を挙げると……

過去を否定することは,未来も否定することだ。人は自分で自分の運命を決めるわけにはいかない。受け入れるか,拒否するかのどちらかだ。ナナカマドは根の張り方が浅いと,実を結ばないものさ。

ル=グウィン作(清水眞砂子訳)『さいはての島へ ゲド戦記III』(岩波書店)1976:53.

この秋,12号鉢に根を張ったオジギソウにたっぷり花が咲き,いくつか実を結んで種がついた。去年,5号鉢で育てていたオジギソウは,貧弱な花しか咲かず,種はできなかった……という身近な事実からも,思わず,そうだそうだとうなずいてしまう。

全6巻を読み終わる頃には,腰の痛みもだいぶ薄れていることだろう。来週あたりから,ジム通い再開に向けて動いてみようか。