リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

海外ではロックダウン中の家庭で殺害される女性が増加

フランス、イギリス、トルコetc...DV被害

COVID-19そのものによる死亡者は女性より男性の方が多いと言われている。しかし、コロナ禍で家の中に閉じ込められてしまったことで、当初から懸念されていた通り、女性に対する暴力が増えており、その結果、死亡する女性も増えていることが各国で報じられている。

フランスではロックダウンが始まってから最初の11日間にDVの報告件数が30%増え、パリでは36%増だった。フランスはヨーロッパの中で最もDVの発生率が高く、18歳から75歳まで毎年推定21万9000人の女性が現在またはかつてのパートナーからの身体的または性的な暴力被害に遭っているが、届け出るのはわずか2割だ。政府統計によれば、3日に1人の割合で女性が殺されている。
Domestic violence cases jump 30% during lockdown in France
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2020年4月15日のThe Guardianの記事によれば、女性のDV被害問題に注目しているイギリスのグループによれば、3月23日から4月12日までの3週間に家庭内暴力で16人の女性と3人の子どもが殺害された。平時でも1週間に2人の女性が殺されているが、今は1週間に5人のペースだと、アクティビストたちは警鐘を鳴らしていた。
Domestic abuse killings 'more than double' amid Covid-19 lockdown

6月15日のトルコの警察の発表によれば、1月1日から5月20日までのあいだに88,491件の家庭内暴力があり、81人の女性が殺害されたという。ところが、この暴力事件の報告件数は通常より少ないとのことで、夫が常に一緒にいるため訴え出ることのできない女性が増えている可能性がある。トルコでは被害女性を匿うシェルターは不足しており、父親や兄弟から暴力を受けた少女は「結婚していないから保護できない」と言われたという。
Violence against women in Turkey during COVID-19
(日本でも全く同様のことが起きている。配偶者もしくは同居パートナーからの暴力でないと、DV法による保護命令などの措置は使えない。18歳未満なら児童虐待として保護できるが、18歳を越えてしまうと、父親からその庇護下にある娘に対する家庭内暴力を取り締まる手段がない。)

日本語で読めるganasというサイトの4月28日の記事も見つけた。上に書いたイギリスとフランスの情報も別の情報源から引いている。
新型コロナは世界中でDVを急増させる、「フランスは30%増えた」と国連が警鐘

WHOは「暴力は必然的でなく予防可能なもの」としている。
The rise and rise of interpersonal violence – an unintended impact of the COVID-19 response on families
この記事には、イギリスのDVチャリティ団体への通話、メール、ウェブサイト訪問が順に97%, 185% 、581%増えたことも報告されている。イギリス人は何でもデータ化するのが早いなと、感心させられる。

日本政府が設置した「DV相談プラス」に関してついて、内閣府男女共同参画局「共同参画」2020年6月号で次のように報告している。

4月20日の開設から5月19日までの1か月間(30日間)の実績は、次の通りです。

電 話 2,487件(1日平均約85件)
メール 1,048件(1日平均約35件)
SNS 864件(1日平均約30件)

 全国の配偶者暴力相談支援センターでは、本年4月の相談件数は、13,223件となっており、これは、昨年4月の10,295件から、約3割の増加となっています

日経新聞によると「政府はドメスティックバイオレンス(DV)対策を拡充する。8月末までの予定だった相談窓口の開設期間を2020年度末まで延長し、相談員は4人から8人に増やす。」とのことなので、これだけの数の電話に対応するのは、相当に大変だったことだろう。

ちなみに、日本の今年1~6月までの殺人件数は、被害者男女共に前年同時期に比べて減っていた(第7表 重要犯罪及び詐欺 被害者の年齢・性別 認知件数)が、強制性交等の検挙人員は536人で10.1%増えていた(第6表 重要犯罪・重要窃盗犯 都道府県別 認知・検挙件数・検挙人員 対前年比較)。(eStatで警察庁『令和2年1~6月犯罪統計』を検索。)