リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

男女共同参画ビジョン(1996年)

女性に対する暴力の撤廃

女性に対する暴力は、女性の人権及び基本的自由の享受を妨げ、侵害するものである。それは、個人の問題にとどまるものではなく、女性を男性に比べて従属的な地位に追い込む重大な社会的・構造的問題の一つである女性に対する暴力は単に身体的な危害にとどまる
ものではない。l993年(平成5年)に国連総会で採択された「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」(以下「女性に対する暴力撤廃宣言」という。)の第一条によれば、女性に対する暴力とは、性別に基づく暴力行為であって、女性に対して身体的、性的、若しくは心理的な危害又は苦痛となる行為、あるいはそうなるおそれのある行為であり、さらに、そのような行為の威嚇、強制もしくはいわれのない自由の剥奪をも含み、それらが公的生活で起こるか私的生活で起こるかを問わないとされている。女性に対する暴力の撤廃に向けて、まず、社会のすべての構成員がこのことを明確に認識する必要がある。

女性に対する暴力は、女性の生活に恐怖と不安を植えつけ、女性の活動を束縛し、自信を失わせ、平等の達成を阻み、開発・平和の障害となっている。とりわけ、少女への暴力の影響は深刻である。女性に対する暴力は、それを表沙汰にすることへの心理的抵抗や社会的圧力から潜在化する傾向があり、これまでその取組は必ずしも十分でなかった。しかし、近年、国際社会においては、女性に対する
暴力が強く意識されるようになり、昨年北京で開催された第4回世界女性会議においても、この問題は重要な課題の一つとして実効ある取組が要請されている。我が国においても、NGO等の取組によって、女性に対する暴力の実態が次第に明らかにされつつある。また、過去において女性の名誉と尊厳を深く傷つけたいわゆる従軍慰安婦問題への反省に立った、内外の女性に対する暴力の撤廃に向けた取組も必要となっている。

こうした現状を踏まえ、国内においては、強姦や強制わいせつなどの性犯罪、売買春はもとより、職場などでのセクシュアル・ハラスメント(*)、家庭内など私的領域における暴力についても、その撤廃に向けた早急な検討が必要になっている。その際、国内の外国人女性に対する暴力についても十分な配慮が払われるべきである。また、国際社会と手を携えて、女性に対する暴力を根絶するために力を尽くす必要がある。