リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

2.ゲメプロスト腟坐剤による子宮破裂,子宮頚管裂傷 - UMIN

忘備録

https://www.umin.ac.jp/fukusayou/adr142b.txt

2.ゲメプロスト腟坐剤による子宮破裂,子宮頚管裂傷
成分名             |該当商品名              
ゲメプロスト          |プレグランディン腟坐剤(小野薬品工業
薬効分類等           |プロスタグランジンE1誘導体 
効能効果            |妊娠中期における治療的流産

(1)症例の紹介

 ゲメプロスト腟坐剤は妊娠中期の治療的流産に使用されている薬剤である。

 妊娠中期における人工流産においては種々の処置(メトロイリーゼ,ジノプロスト卵膜外注入等)が行われており,子宮破裂,頚管裂傷,異常出血等が併発しやすいと言われている。

 ゲメプロスト腟坐剤の使用時においても,これらに対する注意が必要であり,その旨を「使用上の注意」に記載し注意を喚起してきた。

 承認から平成7年12月までの11年間で7例の子宮破裂,頚管裂傷の報告があり,平成7年12月に「使用上の注意」の改訂を行い,一般的注意の項に本剤使用時の諸注意,慎重投与の項に子宮破裂を起こしやすい患者について記載し,安全性の徹底を図ったところであるが,その後の調査でも2例の報告があることから平成8年12月に新たに「警告」の欄を設けるとともに緊急安全性情報を配布するよう関係企業に対して指導を行ったところである。報告された症例の一部を紹介する(表1)。



(2)安全対策

 妊娠中期における人工妊娠中絶にはもとより子宮破裂,頚管裂傷,異常出血等を併発するリスクのあることは知られているが,プレグランディン腟坐剤使用時においても発現することがあることに留意しなければならない。

 また,帝王切開,子宮切開の既往のある患者や多胎妊娠,多産婦の患者では特にリスクが高いことを念頭に置き,本剤投与の可否判断を含め,より慎重に対処しなければならない。本剤投与中は頻回に(少なくとも本剤挿入のたびに)子宮収縮の状態と子宮頚部の軟化度,頚管の開大度等を注意深く観察し,場合によってはラミナリア杆等を用いて頚管を開大させた後,本剤を投与するようにするべきで,開大不十分のまま本剤を漫然と投与することは避けなければならない。本剤には頚管開大作用もあることが認められてはいるが,症例によっては必ずしも十分ではない場合もあり,反応には個人差もあるので注意が必要である。

 なお,本剤の投与にあたっては万一のリスクに対処できるよう輸血,手術等救急処置のとれる準備を行っておくことと,また,強い下腹部痛等顕著な兆候がないにもかかわらず子宮破裂や頚管裂傷を来していた症例も報告されているので,子宮内容物排出後にも慎重に内診を行い,これらのないことを確認しておくことも重要である。

 以上のことから,今回新たに警告欄を設けるとともに緊急安全性情報を医療機関に対して配布するよう関係企業に対し指導を行った。



<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>

<ゲメプロスト
                警告
子宮破裂,子宮頚管裂傷が発現することがあるので,用法・用量,使用上の注意に特に留意すること。

*そのほか,「一般的注意」「相互作用」についても改訂を行った。


<参考文献>

1)佐々木純一他:日本産科婦人科学会雑誌,45(11):1341‐1344(1993)
2)吉木尚之他:日産婦東京会誌,42(3):390‐393(1993)


表1 症例の概要
No.1          参考文献1
患者 性          女
   年齢         44歳 
   使用理由       妊娠中期治療的流産

1日投与量・投与期間:3mg1日間、2mg1日間

副作用-経過及び処置
経産3回,経妊3回。妊娠17週。1日目,本剤3個(3時間毎)投与し,その後ミニメトロ30mL挿入。2日目ミニメトロ前日以来挿入のまま2個目(3時間毎)投与。その後,胎児,胎盤を娩出したがミニメトロ排出せず,出血多量。開腹により,外子宮口は閉鎖していた。内子宮口付近から子宮頚部後面に通じる破裂があり,子宮全摘術を施行した。経過は順調であった。
併用薬:セフポドキシムプロキセチル 

 
No.2          参考文献2
患者 性          女 
   年齢         41歳
   使用理由       妊娠中期治療的流産

1日投与量・投与期間:4mg1日間、3mg1日間、2mg1日間
副作用-経過及び処置
経産1回,経妊3回。子宮内胎児死亡(23週)で中絶施行。ラミナリアにて前処置後,1日目ラミナリア挿入したまま本剤4個(3時間毎)投与。子宮に圧痛出現。2日目ラミナリア挿入のまま3個(3時間毎)投与するが,娩出せず。3日目ラミナリア抜去し,2個(3時間毎)投与。その後,強度の子宮の圧痛出現し,貧血進行。開腹により右子宮頚部側壁に裂孔を認め,子宮全摘術を施行。経過は順調であった。
併用薬:アンピシリン,塩酸ペチジン・酒石酸レバロルファン,ジルチアゼム