リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「包括的性教育」の実施とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツを保障する包括的な法律の制定及び制度の創設を求める意見書

日本弁護士連合会のSRHRと包括的性教育を求める意見書

日本弁護士連合会:「包括的性教育」の実施とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツを保障する包括的な法律の制定及び制度の創設を求める意見書

2023年(令和5年)1月20日
日本弁護士連合会
第1 意見の趣旨
 当連合会は、性に関わる様々な人権問題を解決するために、国及び地方公共団体に対し以下を求める。
1 学校教育において、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に準拠した「包括的性教育」を実施すること。
2 セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツを保障する包括的な法律の制定及び制度の創設をすること。


第2 意見の理由
1 はじめに
 日本の学校教育における性教育は、国際的標準から極めて遅れている。性情報の氾濫や不正確な知識ゆえに予期せぬ妊娠・出産や乳児遺棄事件、性加害・被害等が多数発生しており、日本の学校教育における性教育を国際的標準にすることがその事態の改善にとって必要である。包括的性教育[1]によって青少年が自発的に性行為を遅らせたり、性行為に慎重になったりするといった状況改善効果があることは科学的に証明されている。しかし、国は、こうした現状に対する根本的対策をとっていない。一方で、公に性に関する事柄を語ることが
タブーとされてきたが、近年、性教育に関する社会的な関心が高まり、報道が増加し、各種団体の活動や調査も実施されている。包括的性教育とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ[2](以下「SRHR」という。)は相互補完的な関係にあり、日本においても早急に、人権保障の観点から、包括的性教育を実施するとともに、SRHRを保障する包括的な法律の制定及び財政的裏付けを伴う制度の創設が必要である。

[1] 身体や生殖の仕組みだけでなく、人間関係や性の多様性、ジェンダー平等、幸福など幅広いテーマを含む教育のこと。国連教育科学文化機関(UNESCO・ユネスコ)による定義や詳細は、第2の2(3)①「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」にて述べる。 2 性と生殖に関する健康と権利と訳されることが多い。詳細は、第2の3(1)「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツの定義」にて述べる。

2 包括的性教育を実施すべき理由
(1) 性教育の不足から生じる様々なリスクや被害
① 成人向け性情報の氾濫による誤った認識や価値観の植付け
 学校教育において性教育は極めて不十分な状況であるが、インターネット上では成人向けの性情報が氾濫しており、その中には無修正の違法動画や性暴力を内容としたものなども含まれている。そして、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器を利用することで、子どもたちもこうした性情報に容易にアクセスできる状況となっている。こうした性情報に触れることによって、子どもたちは性に関する誤った認識や価値観を植え付けられるリスクに晒されている[3]。

② 性被害・加害、デートDV
 近年、子どもたちが性被害に遭う機会は増加している。児童ポルノ事件の検挙件数は年々増加し、2012年は1596件であったものが2021年には2969件となっている。特にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をきっかけとする児童買春・児童ポルノ被害件数は、2012年度は424件であったのが2021年度は993件と約2.3倍となっている。強制性交等、略取誘拐、強制わいせつといった重大犯罪についても、SNSをきっかけとする事件が2012年は22件であったものが2021年には137件と6倍以上に増加している[4]。家庭内での性的虐待[5]や学校現場における教職員からの性被害[6]も後を絶たない。内閣府の調査[7]によれば、捜査機関に連絡や相談をする人が極めて少ないことを踏まえると、実際の被害件数はこれをはるかに上回るものと考えられる。
 また、児童養護施設内での子ども同士の性的暴力を対象とした調査(2018年)では、施設内で性的な問題の当事者となった子どもの人数が合計1280人に上ることが分かっている[8]。
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中絶のことも出てきます。そこだけ抜粋。

2 包括的性教育を実施すべき理由
(1) 性教育の不足から生じる様々なリスクや被害
① 成人向け性情報の氾濫による誤った認識や価値観の植付け
 学校教育において性教育は極めて不十分な状況であるが、インターネット上では成人向けの性情報が氾濫しており、その中には無修正の違法動画や性暴力を内容としたものなども含まれている。そして、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器を利用することで、子どもたちもこうした性情報に容易にアクセスできる状況となっている。こうした性情報に触れることによって、子どもたちは性に関する誤った認識や価値観を植え付けられるリスクに晒されている [3]。
② 性被害・加害、デートDV
 近年、子どもたちが性被害に遭う機会は増加している。児童ポルノ事件の検挙件数は年々増加し、2012年は1596件であったものが2021年には2969件となっている。特にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をきっかけとする児童買春・児童ポルノ被害件数は、2012年度は424件であったのが2021年度は993件と約2.3倍となっている。強制性交等、略取誘拐、強制わいせつといった重大犯罪についても、SNSをきっかけとする事件が2012年は22件であったものが2021年には137件と6倍以上に増加している[4]。家庭内での性的虐待[5]や学校現場における教職員からの性被害[6]も後を絶たない。内閣府の調査[7]によれば、捜査機関に連絡や相談をする人が極めて少ないことを踏まえると、実際の被害件数はこれをはるかに上回るものと考えられる。
 また、児童養護施設内での子ども同士の性的暴力を対象とした調査(2018年)では、施設内で性的な問題の当事者となった子どもの人数が合計1280人に上ることが分かっている [8]。
 交際相手からの暴力(デートDV)については女性の6人に1人、男性の12人に1人が経験しており、そのうち女性の3割強、男性の約4割がどこにも相談できずにいる [9]。
 成人向けの性情報をまねた少年事件が起きる 10一方、十分な性教育が行われていないことから、被害者自身が性被害であることを認識せず被害を受け続けたり、被害に遭ったと認識するまでに長期間を要したりして、消滅時効除斥期間によって被害回復が困難になることもある。さらには、芸能活動に関する勧誘や応募、契約をきっかけとして性的な行為を強要される「JKビジネス」11や「AV出演被害」12も近年社会問題となっている。
③ 予期せぬ妊娠と人工妊娠中絶
 調査によると、性交経験は、中学生では男子3.7%、女子4.5%、高校生では男子13.6%、女子19.3%、大学生では男子47.0%、女子36.7%となっている(2017年)13。一方、2020年度の人工妊娠中絶総数は約14万1430件であり、出生数の2割弱に相当する[14]。
 そのうち10代(20歳未満)が1万309件と約7%(うち15歳以下は411件、18歳以下の累計で5717件)、24歳以下は4万5743件と約32%となっている [15]。
④ 予期せぬ妊娠を背景とする乳児の遺棄事件
 2021年度の児童の心中事例を除く虐待死47例のうち31例が0歳児であり、0歳児のうち15例は出産から間もない0か月児である。原因としては47例中14例が予期しない妊娠・計画外の妊娠であった 16。
 また、近年の心中事例を除く児童の虐待死事例641例(ただし分析可能なものに限られている。)のうち、死亡時の齢が0日の事例は28.0%であり、このうち実母の年齢が15歳から19歳までの事例が29.4%であった。予期せぬ妊娠を背景として、誰にも相談できないままに遺棄に至った状況がうかがわれる [17]。