新たな地平に向けて
来年刊行予定の共著書で、アイルランドの中絶問題に関する二つの章を担当しました。書く過程で、国連と中絶、中絶薬をめぐる国際的な変化について、自分自身も新たな発見がありました。
一つ目の章は、国連における中絶の権利の確立に関する話です。中絶に関連して「国連内の人権規範はいかに形成され、機能してきたのか」に踏み込みました。
中絶がどのようにして「各国の国内問題」から「国際人権の問題」へと位置づけられてきたのかを、国連の人権メカニズムを中心に整理しています。
このブログに散発的に書いてきた内容を改めて調査し直した結果であり、自分でも思ってもみなかったような重要な国連の進化に気づくことができました。
条約機関の一般的意見や個人通報、調査手続きといった法的拘束力を持たない仕組みが、実際にはどのように各国に圧力をかけ、政策転換を促してきたのかを、アイルランドおよび北アイルランドの事例を通じて検討します。
国連は強制力を持たない一方で、中絶制限を人権侵害として可視化し、国内改革を後押ししてきました。その影響力と限界の両方を明らかにする章です。
もう一つの章は「中絶薬が変えた統治」というタイトルで、中絶薬に関しては技術と実践が先行するという逆転現象が起こっていることを論じました。
この章では、中絶をめぐる変化が、権利の承認や法改正だけによって進んできたわけではないことを明らかにします。
中絶薬の登場と普及、遠隔中絶や自己管理型中絶の広がりは、国家が中絶を管理・統制してきた前提そのものを揺るがしてきました。
WHOのガイドラインやパンデミック期の政策対応は、こうした実践を国家や国際機関が事後的に追認していく過程として位置づけられます。
この執筆のおかげで、自分自身、国連と中絶、中絶薬が果たしてきた役割について、新境地が開かれました。来年の出版をお楽しみに。