リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

赤旗日曜版

ブログで紹介してくれている方がいました!

blog.goo.ne.jp

見出しは次の通り:
飲む中絶薬 承認持ち越し
必要な人に提供できる体制を
中絶問題研究家の塚原久美さんに聞く


以下、最終校正時の原稿を紹介します。

女性は産む機能を持つがゆえに、性別役割分業を押し付けられ、社会進出を阻まれ、差別されてきました。産むか産まないか、いつどんな間隔で産むか。それを女性自身が決める権利は、性差別の撤廃に欠かせません。
 1960年代から世界中で起きた女性解放運動で掲げられた主張の根幹は、まさに「避妊・中絶の権利」でした。各国は女性の自己決定を罰する堕胎罪を廃止し、女性の権利として避妊ピルや中絶を合法化してゆきました。
米国では避妊ピルが未婚女性に解禁された70年頃から(それまでは既婚女性のみ)、男性が占めていた医学部や法学部に進学する女性が激増しました。人生設計が可能になり、習得に時間のかかる専門職を目指せるようになったのです。力をつけた女性たちが性差別にさらに声をあげる好循環が生まれました。
しかし、日本では「生殖をコントロールする技術は女性のもの」という権利意識が育たず、堕胎罪が残っています。
背景の一つに、48年に成立した優生保護法(後の母体保護法)で中絶が実質合法化されたことがあります。同法の目的の一つは人口爆発の抑制で、「経済的理由」があれば国の許可を得て中絶できるというものです。女性の権利とは無縁です。中絶が一定可能になったために、堕胎罪廃止の動きが起こりませんでした。人々は、中絶を罪悪視する社会の価値観を内面化し続けたのです。
 日本が多用する掻爬(そうは)も、その残酷さゆえに中絶へのスティグマ(恥)やタブー視につながっています。厚生労働省は4月、安全な吸引法による中絶の周知を医師らに依頼しました。
海外で主流の経口中絶薬と吸引法は、WHOが助産師や看護師にも処置を認める安全で確実なものです。全身麻酔が基本の掻爬に比べ、女性が主体的に関われます。海外では女性をエンパワーする(力を引き出す)方向で、中絶技術を改善してきました。
 ▽妊娠や中絶を自己決定する権利▽適切な医療や情報を得る権利―の二つがそろって「リプロダクティブヘルス&ライツ」(リプロ、性と生殖に関する健康と権利)といいます。日本はあまりにひどいリプロ後進国です。
 リプロが初めて国際文書に明記されたのは、94年のカイロ会議(国際人口開発会議)でした。上からの人口政策を転換し、個人の権利を徹底的に保障することで出生数を適正化しようとした節目の年です。各国は、避妊・中絶医療の保障や社会福祉の充実で、人口爆発少子化に対応しています。95年の北京会議(国際女性会議)でもリプロの重要性が確認され、世界中の女性たちがこの概念を共有しました。
 ここ数年で、国際人権規約にも「女性と少女に安全な中絶を保障すべき」と明記されました。リプロの進展を阻んできた、女性の人権より「胎児の人権」を主張する勢力との激論を経ての成果です。国連は議論の中で「国際人権法で認められている人権は、生まれた人に与えられる」と明確に指摘しました。
 安全な中絶は女性の権利の要で、これは世界の合意事項です。日本は一刻も早く、堕胎罪の廃止と中絶薬の導入に動くべきです。