リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

国際セーフアボーションデー

世界のすみずみに(日本にも)安全な中絶を!

9月28日は国際セーフアボーションデー(国際安全な中絶デー)です。

産科医の早乙女智子さん、フェミニストライターの北原みのりさん、中絶研究者のわたし塚原久美の3人で、昨日、この国際的キャンペーンの一角として、京都でトークイベントを行いました。

なくそう、アボハラ

非公式のビデオ記録はこちらにあります。

当日配信予定だったのが、技術的トラブルでシェアできなかった福田和子さんのビデオメッセージはこちらです。

2019年国際セーフアボーションデーに向けた国連のコメントはこちらです。

全世界で85カ国、400イベント、1220万人が、この国際セーフアボーションデーに対してアクションしています!

デー記念トークイベント「なくそう、アボハラ」

国際セーフアボーションデー

 2019年9月27日(金)18時30分より京都市中京区のウィングス京都にて、性と健康を考える女性専門家の会「避妊・中絶ケアプロジェクト」、ラブピースクラブの主催により、国際セーフアボーションデー記念トークイベントが開催され、有識者らが女性の権利として安全なアボーションピルでの中絶と堕胎罪廃止を求める声を表明した。

iwj.co.jp

国際セーフアボーションデー記念トークイベント「なくそう、アボハラ」

全編動画あり!

 2019年9月27日(金)18時30分より京都市中京区のウィングス京都にて、性と健康を考える女性専門家の会「避妊・中絶ケアプロジェクト」、ラブピースクラブの主催により、国際セーフアボーションデー記念トークイベントが開催され、有識者らが女性の権利として安全なアボーションピルでの中絶と堕胎罪廃止を求める声を表明した。


■全編動画


登壇 早乙女智子氏(神奈川県立汐見台病院産科副科長、「性と健康を考える女性専門家の会」会長)/塚原久美氏(フリー翻訳者、中絶問題研究者、『中絶問題とリプロダクティヴ・ライツ フェミニスト倫理の視点から』著者)/福田和子氏(なんでないのプロジェクト)/北原みのり氏(作家、ラブピースクラブ代表)/ビデオ出演 ズザーネ・クレイサ・マクマナス (Susanne Krejsa MacManus) 氏(ウィーン・避妊と中絶博物館、The Museum of Contraception and Abrotion)
日時 2019年9月27日(金)18:30〜20:30
場所 ウィングス京都(京都市中京区)
主催 性と健康を考える女性専門家の会「避妊・中絶ケアプロジェクト」/ラブピースクラブ

国際安全な中絶デー-2018年9月28日に寄せて

国連独立人権専門家グループのコメント

国際安全な中絶デー-2018年9月28日に寄せて

ジュネーブ(2018年9月27日)-
 9月28日の国際安全な中絶デーに先立ち、国連の独立人権専門家グループ は、世界中の政府に対して、人工妊娠中絶を非犯罪化することと、すべての女性や少女たちが自らの妊娠について自律的に意思決定する権利を保障するための努力をさらに推進することを要求しました。このことは、女性たちの基本的な平等権、プライバシー権、身体的及び精神的統合の権利の中核であり、他の様々な権利や自由を享受するための前提条件です。
 女性たちが生涯を通じて直面しているような、ジェンダー平等を脅かす数多くの困難の中でも、女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスの領域は、今もなお最も議論が紛糾し、女性が最大級のバックラッシュに直面している領域です。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスの領域において、女性たちの自律的判断を軽視するとともに女性や少女がもつ特有のニーズへの認識に欠けているがためになおも続いている差別は、女性たちが人生のあらゆる局面において平等な立場を主張することを全くもって妨げています。しかし、専門家グループは、これまで一部の国で女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ライツを回復するために採択されてきた重要な措置の数々が、他の国々にも反映されていくことを願っています。ごく最近の動きとしても、国民投票や立法手続きおよび司法手続きを通じて、安全な中絶への女性のアクセスを保障する様々な取り組みが行われつつあります。
 典型的な妊娠中絶に関する法的枠組みでは、刑法を適用することで女性の意思決定をコントロールするように組立てられています。多くの法的枠組みでは、人工妊娠中絶一般を禁止しする一方で、女性や少女たちが中絶を必要とする様々な状況を必ずしも網羅していない特定の事由に限って中絶を合法化しているのが一般的です。そればかりか、妊娠中絶可能期間が厳しく制限されているために、中絶が違法になってしまう女性も少なくありません。こうした法的制限が妊娠中絶を実質的に利用できなくするような障壁と結びつき、妊娠中の女性や少女たちの尊厳や幸福を損ねることもしばしばあります。
 女性たちは、人工妊娠中絶へのアクセスに対する多くの障壁に直面しています。例えば、中絶費用が高すぎること、地理に離れていたり情報が得られなかったりするために人工妊娠中絶にアクセスしにくいこと、サービスの質が低いこと、医療従事者の良心的拒否などの問題があります。特に、医療従事者の良心に基づく人工妊娠中絶の拒否は、女性たちの中絶へのアクセスを否定する理由にしてはならないもので、各国政府は中絶にアクセスできることを保障するような手続きを定める必要があります。
 さらに、もうひとつ懸念されている問題は、特に薬剤を用いる(薬による中絶の)場合に、中絶の手続きに医療が過剰に介入することです。WHO(世界保健機関)のガイドラインに従って、合併症が生じた場合には医療提供者へのアクセスを保障するのと同時に、女性たちがもっとプライベートな環境で薬剤による中絶を行えるようにすべきです。
 中絶後のケアにおいては、中絶を非難する懲罰的な法的枠組みのために数多くの非道な扱いが実践されているという、また別の憂慮すべき現実があります。国際法に違反し、多くの場合国内法や政策にさえ反しているにもかかわらず、ただ人工妊娠中絶を行ったというだけで、あまりにも多くの女性たちが身体的に不当な扱いを受け、言葉で傷つけられ、あるいは救急医療をあからさまに拒否されています。各国政府は、妊娠中絶を行った女性たちや少女たちが人道的に、なおかつ、その行為が違法であるとの判断や推定を受けることなく扱われることを保証する義務があります。
 人工妊娠中絶を通常の医療処置から切り離し、犯罪化することは、中絶に汚名を着せ、女性たちに烙印を押すことに寄与してきました。中絶は非難に値するという考えは文化的に構築されたものです。本当は、中絶は女性や少女が必要とするときにアクセスできるようにしなくてはならない安全な医療処置だとみなすべきです。妊娠中絶後のケアを求める女性がいたら、タイミングよく批難めいた態度をすることなくケアを提供し、犯罪として捜査されたり起訴されたりするリスクがないことを保障すべきです。安全でない中絶に関する懸念は、公衆衛生の問題や、該当する不適切な医療の問題、および民事法の問題として対処していく必要があります。女性しか必要としないサービスに女性たち自身がアクセスすることを拒否し、女性特有のリプロダクティブ・ヘルスのニーズに対応しないことは、本質的に差別にあたります。
 各国は、国際人権基準に従って、国内法に存する女性に対する差別を撤廃し、女性および思春期の少女のセクシュアル・リプロダクティブ・ライツを促進する政治的意思を示すべきです。この世に生を受けた人ならだれでも国際人権が付与されるということは、1948年の世界人権宣言で確立され、市民的および政治的権利に関する国際規約で支持されてきました。ただし、妊娠した女性の権利と胎児の利益はどちらも等しく保護しなければならないという危険なレトリックを広めようとしている人々もいます。しかしながら、そのような主張は国際人権法のなかには全く存在していません。
 安全でない中絶は、妊産婦死亡の主な原因の一つです。人工妊娠中絶を制限する法律が女性の命を危険にさらし、女性に困難を課していることに照らせば、中絶反対者がしばしば自らのスタンスを「プロライフ(生命肯定)」だと主張するのは語弊があります。妊娠中絶が法律によって制限されている国および/または他の理由で利用できない国では、安全な中絶は富裕層の特権であり、一方、金銭的に恵まれない女性たちは安全でない中絶提供者のもとで安全でない中絶を受ける以外に選択肢がないことが知られています。WHOのデータによれば、妊娠中絶を犯罪化しても中絶という手段に訴える女性の数が減らないことは明らかです。むしろ、中絶を犯罪化することで、闇に隠れて安全でない中絶を求める女性の数が増える可能性があります。女性たちに望まない妊娠を終わらせる権利が与えられており、正しい情報やあらゆる避妊の手段にアクセスできるような国々では、女性の中絶率は最も低いレベルを示しています。
 専門家グループは国際社会に対し、安全かつ合法的な中絶へのアクセスを保証することを含めて、ジェンダーの平等を推進することと、あらゆる後退を防ぐことを強く求めます。専門家グループは、日々奮闘している女性の人権の擁護者たちが世界的に展開している取り組みを賞賛しています。そうした擁護者たちは、家族や社会の中での女性の役割という悪しきステレオタイプを体現し、本質的に女性に対して差別的かつ抑圧的な宗教的・文化的規範に裏付けられている差別的な遺産に抵抗しています。いかなる法であっても、中絶が必要だとする女性自身の決断や中絶にアクセスすることを操作したり断念させたりする手段として、さらには中絶を理由に女性を罰する手段として悪用されるようなことがあってはなりません。科学的エビデンスを受け入れ、早急に進歩的な中絶法に改革していく必要があることを人権に基づいて議論することこそ奨励されるべきです。中絶は非犯罪化されるべきであり、女性たちは中絶を行うために、より一層の支援と自律性を与えられるべきです。ほとんどの妊娠中絶に関する法律は女性を罰するために使われていますが、これはやめるべきです。女性の生殖能力が、女性たち自身を攻撃するために使われるようなことがあってはなりません。
以上

原文:
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=23644&LangID=E

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*1 本文書を作成した4名の専門家:
Ivana Radačić、法律上及び事実上の女性に対する差別に関するワーキンググループ議長。
Dainius Pūrasすべての人にとっての達成可能な最高水準の身体的及び精神的健康を享受する権利の特別報告者。
Dubravka Simonovic、女性に対する暴力、及びその原因と結果に関する特別報告者。
Agnes Callamard、超法規的、即決・恣意的処刑に関する特別報告者

*2 編集者注:世界中で、推定2億2,500万人の女性たちが近代的な基本的な避妊法を利用できず、しばしば予期せぬ妊娠を引き起こしています。少女にとって、妊娠と出産は開発途上国で最も一般的な死因の1つであり、15歳未満の少女は5倍の危険に直面しています。安全でない中絶の結果として、毎年約47,000人の女性が死亡し、さらに500万人が一時的または永続的な障害に苦しんでいます。妊産婦死亡は、生命、健康、平等、および非差別の権利を侵害しています。人口と開発に関する国際会議(ICPD)行動計画の枠組みの中で、国家は安全でない中絶による死亡者数と罹患率を大幅に減らすことを約束しました。
2. For further information, please refer to the following documents: Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women
The Working Groups are part of what is known as the Special Procedures of the Human Rights Council. Special Procedures, the largest body of independent experts in the UN Human Rights system, is the general name of the Council’s independent fact-finding and monitoring mechanisms that address either specific country situations or thematic issues in all parts of the world. Special Procedures experts work on a voluntary basis; they are not UN staff and do not receive a salary for their work. They are independent from any government or organization and serve in their individual capacity.
For more information and media requests, please contact Hannah Wu (+ 41 22 917 9152 / hwu@ohchr.org) or Bernadette Arditi ( +41 22 917 9159 / barditi@ohchr.org)
For media inquiries related to other UN independent experts:
Jeremy Laurence – Media Unit (+ 41 22 917 9383 / jlaurence@ohchr.org) lend our voice very strongly to the demand for decriminalization as a transformative goal and take this opportunity to highlight the much neglected issue of post-abortion care.

妊娠出産の自己決定権、遅れる日本 リプロダクティブ・ライツ、強制不妊訴訟で焦点に

朝日デジタル 2019/9/23

 子どもを産むか産まないかなどを自分で決められる「リプロダクティブ・ライツ」(性と生殖に関する権利)=キーワード。憲法で保障される個人の基本的権利だと、旧優生保護法による強制不妊手術をめぐる裁判で5月、仙台地裁が認めました。ただ、「日本ではこの権利が十分に理解されていない」と専門家らは指摘します。

 ■女性の意思で使える避妊法、少なく

 「相手が避妊してくれない」「『未成年だから』と、緊急避妊薬をもらえなかった」――。

 避妊や性の情報を発信するウェブサイト「#なんでないの」(https://www.nandenaino.com/)には、望まない妊娠をした女性たちから、SOSの声が届く。

 #なんでないのプロジェクトは、避妊法の選択肢を増やすなど、主に若者の性に関する健康を守るための活動を目指している。

 「世界には安全で安価な避妊法があるのに、それを知らされずにいろんな人が困っている」と、代表の福田和子さん(24)は話す。「選択肢がないということは、産む・産まないを自分で決められないということ。リプロダクティブ・ライツを守れない」

 2年前、留学先のスウェーデンのクリニックで、驚いた経験がある。医師が低用量ピルやIUD(子宮内避妊具)など5種類の避妊法の選択肢を示し、「体に合ったものを選んで」と、それぞれのメリットとデメリットを説明してくれた。日本は遅れていると感じた福田さんは帰国後、2018年5月、同プロジェクトを立ち上げた。

 低用量ピルの承認が1999年と海外から約40年遅れた日本では、避妊法の主流は今もコンドームだ。低用量ピルは医師の処方が必要で、1カ月2千円以上と高い。

 プロジェクトが今年5月、避妊に失敗したときに服用する緊急避妊薬についてインターネット上で調査したところ、回答した女性1429人のうち約3割に服用経験があった。必要とした理由で最も多かったのは、「コンドーム失敗」(78・5%)だった。

 緊急避妊薬は、望まない妊娠を防ぐ最後の手段だ。多くの国で医師の診察なしに薬局で買えるが、日本では原則医師の処方が要り、精神的負担が大きいと指摘されている。調査では服用経験のある人の約1割が緊急避妊薬をネットを通して購入した経験があり、うち55%が「薬の質に不安があった」と回答した。

 海外では当たり前に手に入るものが、日本では難しい。その影響は、日本に住む外国人女性にも及んでいる。

 3年前に来日したベトナム人留学生の女性(25)は日本で使える避妊法が分からず、17年に妊娠して出産。そのため出席日数が足りずに、大学を除籍になった。ルームメートだったベトナム人留学生は、妊娠が分かった3日後、ネットで購入した経口の中絶薬を飲んだ。薬による中絶が海外では広く認められているが、日本では手術で高額な費用がかかるうえ、相手の同意も必要など、ハードルが高い。

 国際協力やジェンダー論が専門の田中雅子・上智大学教授によると、ベトナムのほかフィリピンやネパールでは、ピルや緊急避妊薬が保健所などで無料または安く手に入る。ホルモン剤の注射など様々な避妊法がある。「海外では女性の意思で使える避妊法が多いが、日本では男性がつけるコンドーム以外の選択肢が少ない。女性の自己決定権が制限されている現状に気づくべきだ」と語る。

 ■性教育「過激だ」、政治家らの批判が影響

 厚生労働省は7月末、地理的な要因や、対面診療が心理的に困難だと判断された女性については、例外的にオンラインでの緊急避妊薬の処方を認める通知を出した。

 ただ、この指針を決める検討会では、「(緊急避妊薬へのアクセスよりも)まず性の知識を女性に普及するほうが効率がいい」「議論は時期尚早だ」といった慎重論があり、一時は、オンライン処方を性暴力の被害者らに限る案が検討されていた。

 会議を傍聴した産婦人科医の早乙女智子さん(57)は、「リプロダクティブ・ライツの視点で考えれば、すべての女性の避妊ニーズに等しく応えるべきだ」と話す。

 リプロダクティブ・ライツをめぐる現状について、明治学院大学の柘植あづみ教授(医療人類学)は、「日本は国際社会から取り残された」と指摘する。

 なぜなのか。

 1994年、国際的にリプロダクティブ・ライツの機運が高まり、日本でも96年、旧優生保護法を改め、強制不妊手術などの項目を削除した。2000年には、国の男女共同参画基本計画にリプロダクティブ・ライツが重要な視点として盛り込まれ、性教育の充実もうたわれた。

 だが、その後、こうした動きは停滞する。

 02年、ピルや中絶について記載された中学生向けの性教育用の教材が国会で問題視され、回収、絶版になった。03年、都議会では養護学校性教育の授業が「過激だ」と批判され、性教育が縮小されたことが影響しているという。

 柘植教授は、「仙台地裁の判決を機に、リプロダクティブ・ライツとは何か、具体的な中身について改めて話し合うことが必要だ」と話す。(杉原里美、平山亜理)

 ◆キーワード

 <リプロダクティブ・ライツ> すべての個人やカップルが、子どもを持つか持たないか、いつ持つか、何人持つかを自己決定でき、そのための情報や手段を得ることができるという権利。1994年の国際人口・開発会議で提唱され、国際的に承認された。

国際安全な中絶デー

国際安全な中絶デーに国連の人権専門家たちが寄せたメッセージを紹介します。

これらはすべて「すぺーすあらいず」の鈴木史さんから提供していただいた情報です。鈴木さん、ありがとう!!

International Safe Abortion Day- Friday 28 September 2018

【仮訳】「安全な中絶」国際デー-2018年9月28日に寄せて

ジュネーブ(2018年9月27日)-9月28日の「安全な中絶」国際デーに先立ち、国連の独立人権専門家 たちは、世界中の政府に対して、人工妊娠中絶を非犯罪化し、また、すべての女性や少女たちが自分の身体に起きた妊娠について自律的な意思決定ができる権利を確実に保障できるようさらなる前進をするよう促しました。これは、平等、プライバシー、身体的及び精神的完全性に対する女性たちの基本的権利の中核であり、他の権利と自由を享受するための前提条件です。
 女性が生涯を通じて直面するジェンダー平等に対する数ある困難の中で、女性のセクシュアル・リプロダクティブヘルスの分野は依然として最も論争の対象とされやすい分野であり、女性が最大のバックラッシュに直面している分野です。自律的判断の無視と女性や少女の特定のニーズの認識の欠如によるセクシュアル・リプロダクティブヘルスの分野でのなかなか解消されない差別は、人生のあらゆる局面において平等な立場を主張する女性たちの能力を弱らせる影響を及ぼします。しかし、私たち専門家は、一部の国で女性のセクシュアル・リプロダクティブライツを取り戻すために取られてきた重要な措置が、他の国においても反響することを期待しています。ごく最近では、国民投票、立法および司法手続きを通じて、安全な中絶への女性のアクセスを確保する取り組みがなされています。
妊娠中絶の法的枠組みは通常、刑法の適用を通じて女性の意思決定をコントロールするよう設計されています。多くの法的枠組みは、人工妊娠中絶を一般的に禁止し、特定の理由がある場合でのみ中絶を合法化します。もっとも、このような中絶を合法化する特定の理由は、女性や少女が中絶を必要とする可能性のあるさまざまな状況を捉えていません。さらに、妊娠中絶の厳しい期間的制限のために、女性は人工妊娠中絶が違法になる状況に陥ることも多いのです。これらの法的制限は、妊娠中の女性と少女たちの尊厳と福利を犠牲にして、妊娠中絶をなかなか利用できないようにする実践上の障壁と結びつくこともしばしばあります。
女性たちは、人工妊娠中絶へのアクセスに対する多くの障壁に直面しています。例えば、中絶費用があまりにも高額であること、地理的及び情報上の障壁のために人工妊娠中絶へのアクセスのしにくさ、サービスの質の低さ、医療従事者の信条です。、特に、医療従事者の信条による人工妊娠中絶の拒否は、女性が中絶へのアクセスを拒否する根拠にすることはできず、各政府は中絶のアクセシビリティを確保するための手順を定める必要があります。
 さらに、特に薬剤による中絶の場合には、中絶に対する過剰な医療への取り込みが懸念される問題です。女性は、WHO(世界保健機関)のガイドラインに沿って合併症が生じた場合には医療サービス提供者にアクセスできるとともに、よりプライベートな環境で薬剤による中絶を使用できるようにする必要があります。
 中絶後のケアの課題は、中絶を非難する懲罰的な法的枠組みのせいで多くの虐待が発生することであり、これは別の憂慮すべき現実です。国際法や、多くの場合、国内法および政策に違反しているにもかかわらず、人工妊娠中絶をしたという理由だけで、非常に多くの女性たちが身体的および言葉での虐待をされ、救急医療をあからさまに拒否されました。政府は、妊娠中絶した女性と少女が、人道的に、かつ、法律違反の判断や推定なしに扱われることを保証する義務があります。
 医療処置からの人工妊娠中絶を除外して犯罪化することは、中絶を非難の対象とし、中絶サービスを利用した女性たちを標的とする役割を果たしてきました。中絶は非難に値するという考えは文化的構築物です。真実は、女性と少女が必要なときにアクセスできる安全な医療処置であるべきであるということです。妊娠中絶後のケアを求める女性は、適時に非審判的な方法で、そして犯罪捜査や訴追のリスクなしにケアを利用できるべきです。安全でない中絶に関する懸念は、公衆衛生や、関連する医療過誤、および民事法によって対処する必要があります。女性だけが必要とするサービスへのアクセスを拒否し、特定のリプロダクティブヘルスのニーズに対処しないことは、本質的に差別です。
 各国は、国際人権基準に従って、法律で女性に対する差別を撤廃し、女性および思春期の少女のセクシュアル・リプロダクティブライツを促進するという政治的意思を示す必要があります。1948年の世界人権宣言で確立され、生まれた人に国際人権が付与されることが市民的および政治的権利に関する国際規約で支持されました。しかし、妊娠した女性の権利と胎児の利益を等しく保護しなければならないという危険なレトリックを広める人もいます。しかし、国際人権法にはそのような主張はありません。
安全でない中絶は、妊産婦死亡の主要な原因の一つです。人工妊娠中絶を制限する法律は女性の命を危険にさらし、女性に困難を課します。したがって、しばしば中絶反対者が彼らのスタンスは「プロライフ」であるという主張は誤解を招きます。妊娠中絶が法律によって制限されている、および/または他の方法で利用できない国では、妊娠の安全な終了は金持ちの特権であり、一方、裕福でない女性は安全でない中絶提供者や慣行に頼るしか選択肢がないことが知られています。WHOのデータは、妊娠中絶を犯罪化しても中絶処置に訴える女性の数が減らないことを明確に示しています。むしろ、犯罪化は、秘密で安全でない手順を求める女性の数を増やす可能性があります。
 専門家たちは、国際社会に対して、安全で合法な中絶へのアクセスを保証することを含め、ジェンダーの平等を推進し、あらゆる後退を防ぐことを求めます。日々奮闘している女性の人権擁護者の世界的な取り組みを賞賛し、家族や社会における女性の役割の有害なステレオタイプを具現化し、本質的に女性を差別的かつ抑圧する宗教的および文化的規範に裏付けられた差別的な遺産に抵抗しています。妊娠中絶の必要性、または妊娠中絶へのアクセスに関する女性の意思決定を制御または削減し、そのために女性を罰する手段として、法律を誤用してはなりません。進歩的な中絶法の改革の緊急の必要性に関する証拠と人権に基づいた議論のためのオープンスペースが奨励されるべきです。中絶は非犯罪化されるべきであり、また、女性は、人工妊娠中絶をするためにより多くの支援と自律性を与えられるべきです。ほとんどの妊娠中絶に関する法律は、女性を標的とするために使用されており、これをやめなければなりません。女性の生殖能力は、女性を攻撃するために利用されるべきではありません。
以上

原文は次にあります。
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=23644&LangID=E

CEDAWの動きは次で見ることができます。
https://www.ohchr.org/en/hrbodies/cedaw/pages/cedawindex.aspx

条約締結国の報告書提出については次にあります。
https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/TBSearch.aspx?Lang=en&TreatyID=3&DocTypeID=93&DocTypeCategoryID=3

European Doctor Who Prescribes Abortion Pills To U.S. Women Online Sues FDA

npr: September 9, 201912:00 PM ET Sarah McCammon

www.npr.org

WoWの創設者で、今やAid Accessという新たな組織を作って中絶が困難になりつつあるアメリカの女性たちを支援しているレベッカRebecca Gomperts)が、アメリカの食品医薬品局(FDA)を相手取って訴訟を起こした。

記事を仮訳してみる。

 インターネットでアメリカ人女性に妊娠中絶薬を処方しているヨーロッパ人医師が、アメリカの患者に薬を提供し続けるために米国食品医薬品局を訴えている。

 月曜日にアイダホ州の連邦裁判所に提出されたこの訴訟では、米国保社会福祉省のアレックス・アザー長官を含む複数の連邦政府関係者が名指しされている。

 訴訟の中で、レベッカ・ゴンパーツ医師は、3月以降、自身の団体「エイド・アクセス」を通じて処方した中絶薬を、連邦政府が3回から10回分押収したと考えていると述べている。また、Aid Accessが一部の患者から支払いを受けるのを政府が妨害したと考えているとしている。

 ゴンパーツの弁護士であるリチャード・ハーンによると、この訴訟の目的は、FDAにこれらの行為を中止させ、ゴンパースや彼女の患者が連邦法に基づいて訴追されるのを防ぐことだという。

 ハーン弁護士は、最寄りのクリニックから遠く離れた場所に住む多くの女性にとって、オンラインで注文した中絶薬は、中絶を受ける法的権利を行使する唯一の現実的な方法であると主張している。

 ハーンはNPRとのインタビューで、「アメリカでは、ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市に住んでいる女性は徒歩で権利を行使しに行けます」と語った。「しかし、アイダホ州やその他の地方の州、特に保守的な州の女性は、その権利を行使することができません」。

 いくつかの州では、中絶を行うクリニックが1つしかなく、患者は中絶を受けるために何百マイルも車を走らせなければならない。トランプ政権下では、中絶を提供したり、患者を紹介したりする組織は、他の種類のリプロダクティブ・ヘルス・ケアを提供するための資金を得る方法に新たな制限を受けることになり、中絶手術の提供を中止する業者も出てくる可能性がある。また、多くの州では、州法で中絶手術を制限したり、クリニックに厳しい規制をかけたりしようとしている。

 2018年3月以降、米国の全50州から37,000人の女性がAid Accessに連絡してきたと訴訟では述べている。訴訟によると、オーストリアとオランダを行き来しているゴンパーツは、その間、第一期妊娠の終結を求める米国の患者7,000人以上に薬を処方していたという。

 ミフェプリストンとミソプロストールという薬は、いずれも医師の指示の下で中絶を誘発することがFDAによって承認されている。世界保健機関(WHO)は、この2つの薬を並行して服用するプロトコルを推奨している。ミフェプリストンは、米国では特に規制が厳しく、市販の薬局では入手できないため、多くの女性が入手することが困難だった。

 ゴンパーツは遠隔医療を利用してオンラインで患者さんの相談に乗り、処方箋を書き、インドの輸出業者に薬を依頼する方法を教えているとハーン弁護士は語る。その後、薬は患者の自宅に発送される。

 3月にFDAは、Aid Access社が医薬品の不当表示と不適切な流通を助長したことによる連邦法違反を告発する警告書を発行した。警告書では、"不当表示された未承認の新薬を販売することは、それらの製品を購入する消費者に固有のリスクをもたらす "と述べている。エイド・アクセス社に対し、米国内での医薬品の販売を中止しなければ、予告なしに医薬品の差し押さえなどの措置をとるよう命じた。

 弁護士によると、ゴンパーツは3月中旬から5月中旬までの約2ヶ月間、米国の患者への処方を中止し、その後再開したとのこと。

 ゴンパーツはNPRとのインタビューで、「FDAは巨大な機関であり、非常に強力で、かなり厳しい脅迫の形をとっています。イジメと言ってもいいでしょう。だから、それに立ち向かうことはとても重要だと思います」と述べた。

 ゴンパーツによると、米国の患者の場合、診察料、処方料、薬代を合わせて約90ドルに相当する金額を請求しているという。その金額を払えない患者さんには、できる範囲での支払いをお願いしているそうだ。

 ハーンによると、ゴンパーツさんは、連邦政府の役人から連絡を受け、薬を押収されたらしいという女性の話を聞いているという。

 「2人は手紙を受け取り、1人は訪問を受けたが、その薬は届いていなかった。追跡情報もあります」とハーンは言う。「薬の差し押さえで本当に怖いのは、薬を失うことではなく、薬を注文した女性がアメリカ国内で...…州または連邦政府によって起訴されることなんです」。

 ハーンが指摘するのは、今年初めに行われた別の連邦起訴で、ニューヨークの女性、ウルスラ・ウィングさんが中絶薬を違法に輸入し、流通させていたことを告発していることだ。有罪判決を受けた場合、ウィングさんは数年の懲役、連邦政府からの罰金、またはその両方を科せられる可能性があると訴訟では述べている。

 FDAの担当者は、係争中の訴訟や、ゴンパーツおよびAid Access社に対する潜在的または係争中の規制措置についてのコメントを拒否した。中絶薬を購入した患者が起訴される可能性があるかどうかを尋ねられた当局者は、NPRに電子メールで送った声明の中で、個人使用のために医薬品を輸入することは通常違法であるが、FDAはそのような行為をした個人に対して「一般的には強制措置を取らない」と述べた。

 声明では、「FDAは、インターネットやその他の違法輸入ルートで、未承認のミフェプリストンを妊娠初期の医療用に販売することを非常に懸念している。 なぜなら、これは女性の健康を守るために設計された重要なセーフガードを回避するものだからだ。」としている。

 ゴンパーツは、患者が適切な情報とサポートを得られれば、基本的に早期の流産を自分で誘発することは安全であると考えていると述べている。

 「私が非常に重要だと思うのは、女性はずっと流産と付き合ってきたということを本当に理解することです」とゴンパーツさんは言う。「そして薬による中絶、つまり錠剤による中絶は非常によく似ています」。

 テキサス大学オースティン校の公共問題担当教授であるアビゲイルエイケンは、Aid Accessとその患者について研究しています。BMJ誌に掲載された最近の研究で、エイケンは、多くの州で中絶手術に対する規制が強化されていることなど、女性がオンラインで中絶薬を求める理由を調べている。

 エイケンはNPRのインタビューで、「確かに関心はありますし、その関心はさらに高まっているようです」と述べている。

 また、クリニックに行くよりも、自宅で個人的に薬を飲むことを好む患者もいるという。また、超音波検査の必要性、長い待ち時間、コストなどの障害に直面している人もいると言う。

 「中絶クリニックに行きたくても行けない人たちがいます」とエイケンは語る。「中絶を制限する政策をとっている州では、その傾向が顕著です」。