リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

コロナ、女性の悩み深刻 経済や家庭の問題 7月以降自殺増 厚労相指定センター

2020年10月22日朝日デジタルより

 今年7月以降の女性の自殺者の数が増えているのは、新型コロナウイルスの感染拡大による経済面や家庭での悩みが影響している可能性がある、との分析結果を21日、厚生労働相の指定を受けて自殺対策の調査研究を行う「いのち支える自殺対策推進センター」が発表した。

 警察庁によると、自殺者数は7月から3カ月連続で前年同月を上回っている。8月(速報値)は前年同月より251人多い1854人だった。このうち女性は651人で約4割増加した。

 センターは7月以降、同居人がいる女性や無職の女性の自殺が増え、人口10万人あたりの「自殺死亡率」を引き上げた、と分析する。コロナ禍では多くの非正規雇用の女性が仕事を失っている。DVの相談件数や産後うつが増えているとの報告もある。「経済・生活問題や、DV被害、育児の悩みや介護疲れなどの問題の深刻化が影響した可能性がある」としている。

 8月には、中高生の自殺が2015年以降で最多の58人にのぼり、特に女子高校生が増えている。センターは、オンライン授業の進度についていけないなど、コロナ禍での自宅や学校での環境の変化が影響しているとみられる、とした。さらに、7月下旬の俳優の自殺報道の後、主に10~20代の自殺が増加したといい、「報道が大きく影響している可能性が高い」とした。

 4月から6月にかけての自殺者数は、過去5年の傾向からの予測値よりも少なかった。センターは、新型コロナの感染拡大を受けて「命を守ろう」とする意識が高まったことなどが影響した、とみている。政府の支援策である住居確保給付金、緊急小口資金、総合支援資金は一定の自殺抑止効果がみられた、としている。

 センターの清水康之代表理事は「今後は、経済・生活問題で亡くなる人が多い中高年男性もリスクが高まることが懸念される」と話した。(石川春菜)

 ■悩みのある人の相談先

 ・自殺予防いのちの電話

 フリーダイヤル0120・783・556(毎日午後4~9時、毎月10日は午前8時~翌午前8時)

 ナビダイヤル0570・783・556(午前10時~午後10時)

 ・よりそいホットライン

 フリーダイヤル0120・279・338(24時間、IP電話などからは050・3655・0279)

 ・こころのほっとチャット

 LINE、ツイッターフェイスブック@kokorohotchat(毎日正午~午後4時・受け付けは午後3時まで、午後5~9時・受け付けは午後8時まで)

しんぶん赤旗では女性の問題にスポットを当てています。

若い世代も
 ところが7月になると前年同月より25人、8月251人、9月143人と3カ月連続で増えました。このうち女性は7月88人(15・6%)、8月187人(40・3%)、9月138人(27・5%)。男性は7月に63人(5・1%)減、8月64人(5・6%)増、9月5人(0・4%)増で女性の急増が顕著です。

 厚労省の集計で年齢別の内訳を見ると、今年最も多かった8月は総数で前年比22・3%増だったのに対し、40歳未満は44・2%増と倍の多さで、特に若い世代の自死が目立ちました。うち女性は76・6%も増えています。

 「Go To トラベル」キャンペーン開始が前倒しされ、自粛やイベント制限の緩和が進んだ7月から女性の自死が増えだしたことについて、シングルマザーとその子どもたちを支援する「シンママ大阪応援団」の寺内順子代表理事は次のように話します。

仕事を失う
 「コロナ禍で仕事を失い収入が激減した不安定雇用の女性たちは、特別定額給付金など手元にお金があるうちは何とか一時的にしのげた。しかし夏以降感染が再拡大し、生活資金が尽きてしまったり、いつ収束するのか先の見えない不安が女性を追い詰めている面があると思います」

 「シンママ大阪応援団」には、経済的・精神的に不安定な状況にありながら、子どものためにギリギリ踏みとどまっているママたちからのSOSが絶えないといいます。

 「最近も『飛び降りようとベランダに足をかけたが、小さな子を残して死にきれなかった』というママがいました。単身や若年層の女性の社会的孤立も心配です。平時から弱い立場に置かれている女性に確実に届く現金支給など国が早急に具体的な支援の手を打つことが求められます」

相談窓口
 厚生労働省のホームページでは、悩みや不安を抱えて困っている時の相談先や相談方法などを紹介しています。

【こころの健康相談統一ダイヤル】

 0570(064)556(有料)

【よりそいホットライン】

 0120(279)338(無料)

 岩手、宮城、福島からかける場合

 0120(279)226(無料)

枝野代表、「女性差別撤廃条約選択議定書」の批准を求める要請を受け取る

立憲民主党の記事です

 立憲民主党枝野幸男代表と大河原雅子ジェンダー平等推進本部長は21日、「女性差別撤廃条約実現アクション」より「女性差別撤廃条約選択議定書」の批准を求める要請書を受け取り、国会内で意見交換を行いました。

 選択議定書は、女性差別撤廃条約で保障された権利を侵害された個人または集団が、国連女性差別撤廃委員会に通報して救済を申し立てることができる制度を規定しており、条約の締結国189カ国中114カ国が選択議定書を批准しています。

 実現アクションのメンバーは、「条約には、夫婦別姓も含め、女性の権利保障に必要な要素がすべて含まれている。選択議定書は、条約が確実に守られることを保障するためのもの。ぜひ選択議定書を批准して、日本における女性の権利を国際基準に引き上げていただきたい」と要請しました。

 枝野代表は、「わが党は、選択議定書の批准を打ち出している。選択的夫婦別姓は、30年前とは比較にならないくらい賛成者が増え、あと一押しだという自覚がある」と発言、今後もこの動きを加速させていく意欲を一同で確認しました。

cdp-japan.jp



次のような請願が出されています。くり返し、請願を出していく必要があるのでは。

 女性差別撤廃条約選択議定書は、一九九九年の国連総会で採択され、二○○○年一二月に発効した。選択議定書は、締約国の個人又は集団が条約に定められた権利の侵害を女性差別撤廃委員会に直接通報する権限を認め、国連が通報に基づく調査・審査を行い当事者・政府に「意見」「勧告」を送付するとしており、女性差別解消に重要な役割を果たすものと言える。日本政府は選択議定書の批准をしない理由として、他の人権救済条約と同様「司法権の独立を侵す可能性がある」という見解を示している。しかし選択議定書は国内的な救済措置が尽くされたことを前提として委員会に通報することとしており、「意見」「勧告」に法的拘束力はなく、司法権の独立が侵されるおそれはない。このことは二○○三年国連女性差別撤廃委員会でも明確に指摘され、日本政府は選択議定書の早期批准を勧告されている。女性差別撤廃条約の締約国は、女性に対する差別を撤廃する施策をすべての適当な手段により、かつ、遅滞なく追求することに合意している。日本における救済手続や機関が十分に機能していないため、救済措置を求める女性は極めて少数であり、さらに裁判の判決までに長い年月が費やされている。裁判の迅速化を図るための制度改革とともに、国連が定めた国際的な最低基準の適用を積極的に進めることが、条約締約国である日本政府の役割であることは明らかである。選択議定書の批准は女性差別撤廃の取組を強化し、男女平等社会の形成を促進するものである。
 ついては、男女平等の実現に向けた一層の努力をうたった男女共同参画社会基本法の理念に従い、次の事項について実現を図られたい。

一、女性差別撤廃条約選択議定書を速やかに批准すること。

NZ議会、史上最も多様に 半数近く女性占める、LGBTも

2020年10月21日 15時46分 (共同通信

東京新聞の記事から引用します。

 【シドニー共同】ニュージーランド議会(一院制、基本定数120)は17日の総選挙の結果、当選者の半数近くを女性が占めた。LGBTなど性的少数者や先住民マオリ、外国出身者もそれぞれ躍進し、「国内史上最も多様性に富んだ議会」(地元メディア)となる。
 ニュージーランドは世界で初めて国政レベルの女性参政権を実現した歴史があり、アーダン首相が2018年に出産し産休を取得するなど、先進性で知られる。
 総選挙の結果確定は来月だが、アーダン氏率いる労働党が9月の解散前の46議席を大幅に上回る64議席を獲得し、35議席の最大野党国民党に圧勝した。

www.tokyo-np.co.jp

日経新聞は以下のように報じています。

www.nikkei.com

日本の人工妊娠中絶ルール。性犯罪者から同意を得る: レイプ被害者にトラウマの再現を強いるルール

Asia Nikkei com:ポリティクス

英語で紹介されている日本の中絶問題
asia.nikkei.com

写真キャプション:東京での集会で「#MeToo」と書かれた署名を持つデモ参加者。法務省によると、日本では性的暴行事件の約14%しか報告されていない。 ロイター通信
NATSUKI OSHIRO, Nikkei staff writer
2020年10月20日 23:23 JST


以下、仮訳します。

福岡 -- 西日本の女性が数年前、性的暴行を受けて中絶を求めて病院を訪れた際、医師から衝撃的な回答を聞いた。"父親の同意がないと中絶できない "と。

彼女が妊娠に気づいたのは、知人からの暴行を受けてから約1カ月半後のことでした。あまりにもショックだったので、被害届を出さなかったのです。彼女は自分の状況を何度も何度も説明しましたが、医師は頑として譲らなかったのです。

「あなたは彼を知っているのだから、彼にサインをしてもらうことができるはずだ」と医師は言いました。

その女性は、より理解のある他の医療機関を探しましたが、毎回同じような対応をされました。1カ月後、彼女のような女性のためのサポートグループの勧めもあって、ようやく中絶を受けることができたのです。

その時点で、彼女のケースは第2期中絶とみなされ、リスクと費用が大幅に増加したため、死産として政府に報告する必要がありました。

彼女は、このプロセスが肉体的にも精神的にもトラウマになったと言います。「なぜ被害者が何度も何度も苦しまなければならないのか」と。


福岡の性暴力被害者のためのホットラインで電話に答える相談員。
この女性は、加害者の同意を必要とする病院から中絶を拒否された、日本中の多くの性暴力被害者の一人です。被害者の心に傷を負わせるこれらの要求を覆すために、支援団体は少しずつ前進していますが、前途は多難です。

被害者支援弁護士フォーラムは、6月末に日本医師会に対し、中絶の際に性犯罪者の同意を必要としないよう求める要望書を提出しました。この文書には、性的暴行を受けたサバイバーが、この要件のために手術を阻止された4つの事例が含まれていました。

この論争は、母体衛生法に根ざしています。母体衛生法は、中絶を行うために母親とその「配偶者」の両方からの同意を必要とします。この法律は、性的暴行の可能性があるケースでも、一部の医師に男性側の同意を求めるように仕向けていると批判されています。

多くの病院では、日本産科婦人科学会が提供するテンプレートを参考にして中絶手術の書類を作成していますが、テンプレートには「配偶者」の記入欄が設けられています。

被害者支援弁護士フォーラムのメンバーである神谷さくら弁護士は、「テンプレートが問題の大きな部分を占めている」と指摘します。「医師は、同意書の一部を空白にしたくないがために、加害者に同意を求めることがあります」。


日本産婦人科医会が提供している同意書のテンプレートには、"配偶者 "の記入欄が設けられています。
日本の法律では、レイプによる妊娠など、さまざまな理由で中絶が認められています。しかし、性的暴行があったかどうかを医師が単独で判断することはできません。日本医師会は12月に東京で開催した研修会で、中絶を希望する性的暴行の被害者に起訴状や判決文などの書類を求めるよう婦人科医に指導した。

また、加害者が被害者に暴行を加えたことを認識していないケースもあるようです。

JAOGの石渡勇副理事長は、「私たちは中絶手術を行いたいのですが、男性側から訴えられる可能性も否定できません」と語ります。

性的暴行を受けたサバイバーの多くは、当局に連絡することを躊躇しています。法務省が昨年発表した「犯罪白書」によると、過去5年間に警察に事件を持ち込んだ性的暴行被害者は約14%にとどまっている。

福岡県被害者支援センターの浦久子所長は、「病院で中絶を拒否されることは、『セカンドレイプ』と呼ばれる二次被害の可能性がある」と指摘する。

この問題への関心の高まりを受けて、厚生労働省は8月に日本医師会に対して、母体衛生法では強姦魔の中絶に同意する必要はないことを明確にする文書を送付しました。

しかし、神谷はこれでは十分ではないと考えています。現場の医師は、『同意してはいけない』と明確に言われない限り、同意を求め続ける可能性があります」。神谷さんは、日本医師会に全国的な調査を行うよう求めています。

厚生労働事務次官通知:「母体保護法の施行について」の一部改正について

厚生労働省発子1020第1号
令和2年10月20日
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
特別区区長 殿


厚生労働事務次官 (公印省略)
母体保護法の施行について」の一部改正について(通知)


 母体保護法(昭和23年法律第156号)については、「母体保護法の施行について」(平成8年9月25日厚生省発児第122号厚生事務次官通知)により、その実施に当たり留意すべき点をお示ししてきたところである。 今般、別添1の疑義照会を受けたことを踏まえ、同法第14条第1項第2号の趣旨を明らかにするため、同通知の一部を別紙の通り改正することとしたので、各都道府県、指定都市、中核市及び特別区におかれては、本改正の内容を御了知いただくとともに、都道府県におかれては、貴管内の市町村(指定都市、中核市を除く。)に対して周知いただくようお願いする。

○別紙 新旧対照表
○別添1 母体保護法に係る疑義について(照会)  
○別添2 母体保護法に係る疑義について(回答)
○別添3 改正後全文

日医受第1700号
令和2年8月24日
厚生労働省子ども家庭局母子保健課長 殿

公益社団法人日本医師会常任理事 渡辺弘司 (公印省略)

母体保護法に係る疑義について(照会)


 母体保護法第14条第1項第2号において、暴行若しくは脅迫によって妊娠したものについては、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができることとされているが、強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではないと解してよいか。


別添2
子母発0828第2号 令和2年8月28日

公益社団法人 日本医師会 母子保健担当理事 殿

厚生労働省子ども家庭局母子保健課長 ( 公 印 省 略 )
母体保護法に係る疑義について(回答)
令和2年8月24日付けで貴会母子保健担当理事から照会の標記の件については、貴見のとおりである。


別添3 (改正後全文)

厚生省発児第122号
平成8年9月25日 (一部改正 令和2年10月20日
都道府県知事
政令市市長
中核市市長
特別区区長 殿


厚生事務次官 (公印省略)

 母体保護法の施行について 優生保護法の一部を改正する法律が平成8年法律第105号をもって公布されたところであるが、母体保護法の実施に当たり、留意すべき点は以下のとおりであるので、遺漏のないよう配慮されたい。なお、本通知の実施に伴い、本職通知昭和28年6月12日厚生省発衛第150号「優生保護法の施行について」は廃止する。


第1 不妊手術について
1 一般的事項

(1)法第2条の「生殖を不能にする手術の術式」は、規則第1条各号に掲げるものに限られるものであって、これ以外の方法、例えば、放射線照射によるもの等は、許されないこと。
(2)法第28条は、健康者が経済的理由とか、単なる産児制限のためとか、又出産によって容ぼうが衰えることを防ぐため等、この法律の目的以外に利用することを防ぐため、この法律で認められている理由及びその他正当の理由がない限り生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行うことを禁止したものであること。 従って、この法律の規定による場合又は医師が医療の目的のため正当業務又は緊急避難行為として行う場合以外にこれを行えば、法第28条違反として法第34条の罰則が適用されるものであること。
不妊手術
(1)未成年者に対しては、不妊手術を行うことはできないこと。
(2)法第3条第1項第1号の「母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの」とは、当該具体的状況において医学的常識経験からみて死亡の結果が予想される場合をいうものであること。
(3)法第3条第3項の「配偶者が知れないとき」とは、民法上不在者として取り扱われる等配偶者の所在が知れないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上所在不明の場合も含むものであること。
(4)法第3条第3項の「その意思を表示することができないとき」とは、禁治産の宣告等意思能力のないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上その意思を表示することができない場合も含むものであること。しかしながら遠隔地へ出稼しているときのように配偶者の所在が判明しており、何らかの方法でその意思を表示することが可能である場合は、これに当たらないものであること。


第2 人工妊娠中絶について
1 一般的事項
 法第2条第2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満であること。
なお、妊娠週数の判断は、指定医師の医学的判断に基づいて、客観的に行うものであること。
2 指定医師 母体保護法指定医師でない者は、本法による人工妊娠中絶は行うことができないこと。ただし、母体の生命が危険にひんする場合、例えば妊娠中の者が突然子宮出血を起したり、又は子癇の発作が起って種々の危険症状を呈し、急速に胎児を母体外に出す必要がある場合に、緊急避難行為として、人工妊娠中絶を行うことはもとより差し支えないこと。
3 人工妊娠中絶の対象
(1)法第14条第1項第1号の「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」とは、妊娠を継続し、又は分娩することがその者の世帯の生活に重大な経済的支障を及ぼし、その結果母体の健康が著しく害されるおそれのある場合をいうものであること。 従って、現に生活保護法の適用を受けている者(生活扶助を受けている場合はもちろん、医療扶助だけを受けている場合を含む。以下同じ。)が妊娠した場合又は現に生活保護法の適用は受けていないが、妊娠又は分娩によって生活が著しく困窮し、生活保護法の適用を受けるに至るような場合は、通常これに当たるものであること。
(2)法第14条第1項第2号の「暴行若しくは脅迫」とは、必ずしも有形的な暴力行為による場合だけをいうものではないこと。ただし、本号に該当しない者が、この規定により安易に人工妊娠中絶を行うことがないよう留意されたいこと。 なお、本号と刑法の強制性交等罪の構成要件は、おおむねその範囲を同じくする。ただし、本号の場合は必ずしも姦淫者について強制性交等罪の成立することを必要とするものではないから、責任無能力等の理由でその者が処罰されない場合でも本号が適用される場合があること。
(3)法第14条第2項の「配偶者が知れないとき」及ないとき」とは、前記第1の2の(3)及びび「その意思を表示することができ(4)と同様に解されたいこと。

厚生労働事務次官 通知: 「母体保護法の施行について」の一部改正について

厚生労働省発子1020第1号 令和2年10月20日

都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
特別区区長 殿


厚生労働事務次官 (公印省略)


母体保護法の施行について」の一部改正について(通知)


 母体保護法(昭和23年法律第156号)については、「母体保護法の施行について」(平成8年9月25日厚生省発児第122号厚生事務次官通知)により、その実施に当たり留意すべき点をお示ししてきたところである。 今般、別添1の疑義照会を受けたことを踏まえ、同法第14条第1項第2号の趣旨を明らかにするため、同通知の一部を別紙の通り改正することとしたので、各都道府県、指定都市、中核市及び特別区におかれては、本改正の内容を御了知いただくとともに、都道府県におかれては、貴管内の市町村(指定都市、中核市を除く。)に対して周知いただくようお願いする。

○別紙 新旧対照表
○別添1 母体保護法に係る疑義について(照会)
○別添2 母体保護法に係る疑義について(回答)
○別添3 改正後全文


日医受第1700号
令和2年8月24日
厚生労働省子ども家庭局母子保健課長 殿

公益社団法人日本医師会常任理事 渡辺弘司


母体保護法に係る疑義について(照会)

 母体保護法第14条第1項第2号において、暴行若しくは脅迫によって妊娠したものについては、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができることとされているが、強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではないと解してよいか。


別添2
子母発0828第2号
令和2年8月28日
公益社団法人 日本医師会母子保健担当理事 殿

厚生労働省子ども家庭局母子保健課長

母体保護法に係る疑義について(回答)
 令和2年8月24日付けで貴会母子保健担当理事から照会の標記の件については、貴見のとおりである。


別添3 (改正後全文)
厚生省発児第122号 平成8年9月25日 (一部改正 令和2年10月20日
都道府県知事
政令市市長
中核市市長
特別区区長 殿


厚生事務次官

母体保護法の施行について 優生保護法の一部を改正する法律が平成8年法律第105号をもって公布されたところであるが、母体保護法の実施に当たり、留意すべき点は以下のとおりであるので、遺漏のないよう配慮されたい。なお、本通知の実施に伴い、本職通知昭和28年6月12日厚生省発衛第150号「優生保護法の施行について」は廃止する。



第1 不妊手術について
1 一般的事項
(1)法第2条の「生殖を不能にする手術の術式」は、規則第1条各号に掲げるものに限られるものであって、これ以外の方法、例えば、放射線照射によるもの等は、許されないこと。
(2)法第28条は、健康者が経済的理由とか、単なる産児制限のためとか、又出産によって容ぼうが衰えることを防ぐため等、この法律の目的以外に利用することを防ぐため、この法律で認められている理由及びその他正当の理由がない限り生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行うことを禁止したものであること。 従って、この法律の規定による場合又は医師が医療の目的のため正当業務又は緊急避難行為として行う場合以外にこれを行えば、法第28条違反として法第34条の罰則が適用されるものであること。 各 殿 2 不妊手術 (1)未成年者に対しては、不妊手術を行うことはできないこと。
(2)法第3条第1項第1号の「母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの」とは、当該具体的状況において医学的常識経験からみて死亡の結果が予想される場合をいうものであること。
(3)法第3条第3項の「配偶者が知れないとき」とは、民法上不在者として取り扱われる等配偶者の所在が知れないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上所在不明の場合も含むものであること。
(4)法第3条第3項の「その意思を表示することができないとき」とは、禁治産の宣告等意思能力のないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上その意思を表示することができない場合も含むものであること。しかしながら遠隔地へ出稼しているときのように配偶者の所在が判明しており、何らかの方法でその意思を表示することが可能である場合は、これに当たらないものであること。


第2 人工妊娠中絶について
1 一般的事項 法第2条第2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満であること。 なお、妊娠週数の判断は、指定医師の医学的判断に基づいて、客観的に行うものであること。
2 指定医師 母体保護法指定医師でない者は、本法による人工妊娠中絶は行うことができないこと。ただし、母体の生命が危険にひんする場合、例えば妊娠中の者が突然子宮出血を起したり、又は子癇の発作が起って種々の危険症状を呈し、急速に胎児を母体外に出す必要がある場合に、緊急避難行為として、人工妊娠中絶を行うことはもとより差し支えないこと。
3 人工妊娠中絶の対象
(1)法第14条第1項第1号の「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」とは、妊娠を継続し、又は分娩することがその者の世帯の生活に重大な経済的支障を及ぼし、その結果母体の健康が著しく害されるおそれのある場合をいうものであること。 従って、現に生活保護法の適用を受けている者(生活扶助を受けている場合はもちろん、医療扶助だけを受けている場合を含む。以下同じ。)が妊娠した場合又は現に生活保護法の適用は受けていないが、妊娠又は分娩によって生活が著しく困窮し、生活保護法の適用を受けるに至るような場合は、通常これに当たるものであること。
(2)法第14条第1項第2号の「暴行若しくは脅迫」とは、必ずしも有形的な暴力行為による場合だけをいうものではないこと。ただし、本号に該当しない者が、この規定により安易に人工妊娠中絶を行うことがないよう留意されたいこと。 なお、本号と刑法の強制性交等罪の構成要件は、おおむねその範囲を同じくする。ただし、本号の場合は必ずしも姦淫者について強制性交等罪の成立することを必要とするものではないから、責任無能力等の理由でその者が処罰されない場合でも本号が適用される場合があること。
(3)法第14条第2項の「配偶者が知れないとき」及ないとき」とは、前記第1の2の(3)及びび「その意思を表示することができ(4)と同様に解されたいこと。

産婦人科医会「アフターピル、薬局で買えるようにするのはおかしい」 改めて反対意見を表明

岩永直子 BuzzFeed News Editor, Japan 2020年10月20日

産婦人科医会「アフターピル、薬局で買えるようにするのはおかしい」 改めて反対意見を表明
医師のパターナリズムと利権の問題だ……。

日本産婦人科医会は、現在、処方箋なしでの薬局販売が議論されている緊急避妊薬について、改めて反対意見を表明しました。


 避妊の失敗や性暴力による望まぬ妊娠を防ぐために事後に飲む「緊急避妊薬(アフターピル)」。

 薬局での処方箋なしの販売が検討されているが、日本産婦人科医会(木下勝之会長)は10月21日に開かれた記者会見で、「どんな時も薬局で買えるようにするのはおかしい」と改めて反対意見を述べた。

 緊急避妊薬については、当事者の女性がより早く薬を手に入れて確実に避妊できるように、産婦人科医有志や市民団体代表が与党議員に陳情したり、署名活動を行ったりしている。

その一方で、産婦人科医の団体が強固に反対している事実が明らかになった。

日本では医師の診察の上で処方箋が必要 なぜ市販薬化されないのか?
緊急避妊薬の薬局販売については、内閣府の第5次基本計画策定専門調査会が10月8日、基本的な考え方の案で、以下の文言を入れたとして、「処方箋なしでの薬局販売検討へ」という報道が相次いだ。

 避妊をしなかった、又は、避妊手段が適切かつ十分でなかった結果、予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性の求めに応じて、緊急避妊薬に関する専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させることを条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるよう検討する。

 性暴力や避妊の失敗で望まぬ妊娠の可能性がある場合、性交から72時間以内に緊急避妊薬を服用すると、高い確率で妊娠を避けることができる。

 欧米など90か国以上で既に処方箋なしで薬局で買えるようになっているが、日本では、医師の診療を受けた上で処方箋を出されることが必要だ。

 緊急性が高いのに、アクセスが悪いことに女性たちの不満が高まり、産婦人科医の有志や市民団体が署名活動や陳情活動を続けていた。


産婦人科医会「時期として早い」
 今回の薬局販売の方針について、BuzzFeed Japan Medicalは、21日に開かれた記者懇談会の場で、日本産婦人科医会の見解を改めて質した。

 木下会長は、「マスメディアの先行でこんなことがすぐに薬局で市販されるようなことになるとは一切思っていません」とした上で、この案について、「全ての女性の意見を代表しているわけではない」と批判した。

 「緊急避妊薬はホルモン剤でいつでもいいから飲めば避妊ができると思ったら大間違いで、限られた時期に72時間以内に飲む。ホルモン的な理解が基本的にない方が次々に、いつでもいいからそこ(薬局)に行って買えばいいんだということは違う」と女性の知識不足を反対の理由に挙げた。

 そして、「本来、いつ(妊娠の)チャンスがあったかということを踏まえた上で、こちらが指導しながら飲んでもらうのが大原則であり、本来1錠だけでいいのに何錠も買うことがあり得てしまう」とリスクがあるとした。

 また、「今日の性教育が、中学生ではいわゆる性交や避妊という言葉すら使ってはいけない現状を考えると、私たちはただどんな時でも薬局で買えるということ自体がそもそもおかしい話なのではないか」と性教育の不備にも言及。

 「では、我々のところになぜ来ないのかよくわからないのですが、医者のところ、産婦人科で基本的には手に入るわけです。これからオンライン診療で他の診療科に行っても、産婦人科に来なくても希望すれば処方箋があれば出してもらう仕組みができることから、薬局で自由に買えるわけには行きませんが、以前に比べたらチャンスは増えた」と購入のチャンスが広がったことを強調した。

 その上で、「ダメだとか、規制があるわけではありませんので、なんでもかんでも自由に買えるようなものになるわけではないという視点で、私たちは(薬局販売は)まだ時期として早いと思って、基本的には賛成しておりません」と改めて薬局での処方箋なしでの販売に反対意見を述べた。


女性の性や生殖の自己決定権は?
 しかし、女性には「リプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)という性に関する自己決定権があるという考えが今は世界の常識となっている。

 WHO(世界保健機関)も「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利がある」と勧告している。

 女性自身の判断で、いつでもすぐに緊急避妊薬を手に入れる環境を整備するよう市民団体も訴え、産婦人科医有志の会のアンケートでも6割以上が処方箋なしで買えるようになることを求めていた。


薬局販売化求める産婦人科医「病院である必要はない」
 一方、こうした見解に対し、産婦人科医有志グループの一人として多くの産婦人科医が薬局での処方箋なしでの販売を求めている調査結果を出した産婦人科専門医の太田寛さんは、緊急避妊薬で大事なこととして、

  1. なるべく早めに服用すること
  2. 妊娠の確率がゼロになるわけではないため、生理が遅れたら妊娠判定検査をする必要があることを知らせること

といい、何よりも大事なのは早く服用することだと強調する。その上で、こう訴える。

 「全国の女性に対して産婦人科医だけでその環境を実現することは難しく、病院での処方と並行して薬局での販売をすることは何も問題はありません。副作用もほとんどない薬です」

 「火がついてる現場があるのに、消火器がすぐに手に入らないような状況は改善する必要があります。
私の周囲のほとんどの産婦人科医は、緊急避妊ピルの市販化に賛成しています」

 「診療するだけで手一杯なので、話を聞いて処方するだけの緊急避妊ピルについては、病院である必要はないと考えています。産婦人科医会がなぜ反対するのかわかりません。地方の産婦人科が少ないところでは、72時間以内に手に入れるなんて無理です」

 やはり産婦人科医有志グループの一人、産婦人科専門医の宋美玄さんは、こうコメントした。

 「男女共に性教育が不足している現状は私も問題視しています。ですが、そこでさらに避妊へのアクセスを制限することはリプロダクティブヘルス・ライツの重要な柱であるバースコントロールから遠ざけることとなり、最終目標が女性の健康や権利ではないのかなと感じてしまいます」

 「緊急避妊は時間との戦いなのに、地域によっては産婦人科医療機関へのアクセスが悪いところも多い。産婦人科医による処方を必須とすることが本当に女性のためになるのか総合的に考えてほしい。私たちは女性を指導する立場である前に、味方でなければならないと思います」

「母体保護法の施行について」の一部改正について(通知)

日本医師会からの以下の質問(照会)に対し、厚労省担当部署が「そのとおり」と回答したことを厚労省事務次官地方自治体に通知。

日本医師会常任理事より

母体保護法第14条第1項第2号において、暴行若しくは脅迫によって妊娠し
たものについては、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことがで
きることとされているが、強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではないと解し
てよいか。」

厚生労働省子ども家庭局母子保健課長より

令和2年8月 24 日付けで貴会母子保健担当理事から照会の標記の件について
は、貴見のとおりである。

「母体保護法の施行について」の一部改正について(通知)

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