リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

今年の金沢は5月になってもいまひとつの天気が続いている。4度目の春にして初めてのことで,「金沢は5月が美しい」ということを心の支えにしてきたので,ちょっとがっかり。おまけに娘は風邪気味で喘息を併発し,夜中の吸入騒ぎでこちらの睡眠時間がさらに削られている。名物のバラ公園の満開が遅れているのも,やはり今年の天候が良くなかった証拠。

鬱々しがちな気分を吹っ切りたくって,金沢でわたしが一番好きな場所……21世紀美術館に行って来た。展示が替わってから一度も行ってない。時間がなかったので駆け足だったけど,ともかくも新しいコレクション展と特別展の中身を確認し,いくつかはじっくり楽しむこともできて,ほっと一息。

コンテンポラリー・アートの何がいいかといえば,わけのわからない「モノ」を前に,むくむくと底からわき起こってくる自分の「感情」や「思い」に向き合う時間を過ごせることだと思う。相性もあるけれど,心が動かされるものほど,わたしにとっては優れた作品だ。今回は,前から興味をもっているヨーゼフ・ボイスの作品のひとつを見ることができた。強力な政治的メッセージのみならず,歴史や時間,文化,そして今,ここにわたしが生きていることの偶然性と実在の危うさを感じさせられる。一方,久しぶりに見た西山美なコの気恥ずかしいまでのキッチュさ。「ザ・ピんくはうす」は,娘に見せたら「かっわい〜」と喜ぶに違いないけど,砂糖と卵白とゼラチンで作られた繊細で美しい王冠の危うさ,脆さは6歳の子どもに通じるのだろうか。この美術館のお気に入りは数あれど,今回はレアンドロのプールはパスして,お気に入りのカプーアの部屋で謎の穴(?)をしばらく見つめ,瞑想のひとときを過ごしてきた。今回,光庭に展示されていたカプーアのもうひとつの作品も,my favoriteに加わりそうだ。

できるものなら半日くらいかけて回りたいけど,今のわたしにそれは贅沢。せめて,気になったいくつかの作品(特に時間のかかるビデオ作品)をもう一度か二度,ゆっくり見てきたい。コレクションのほうはいずれゆっくり見ればいい。だけどゲント美術館のコレクションのほうは今だけ。だけど,本気で楽しもうと思うなら,ドイツ語の辞書を持っていかなくちゃならないかもしれないなぁ。

ところで,思わぬことから6月はホームビジットとホームステイを各1回ずつ受け容れることになった。どうせなら,アート好きの人が来るといいな……と狙ってる。でも,どうせ行くなら日本的なものを見たいと言われてしまうかも。

(金沢って,芸術活動は人口の割に信じられないほど盛んで,その点だけは高く評価できる。ただし,芸術を堪能するためにも,もっと時間がほしいものだが……。)