リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

オバマ変革

本日付の毎日jpに掲載されたニュースです。

検証・オバマ100日:/下 同性婚・中絶
 ◇「リベラル化」どこまで

 キリストの復活を記念する復活祭の恒例行事「イースター・エッグハント(卵探し)」が今月13日、ホワイトハウス南庭で約3万人を招いて開かれた。この中には子供連れの同性愛「家族」100人以上が含まれていた。

 「子供たちが遊ぶ姿は、すべての家族を喜びに満たしてくれる」。バルコニーからあいさつをしたオバマ大統領にとっては、「同性愛者に寛容な大統領」という演出を狙ったものだった。同性愛者の招待は06年のブッシュ前大統領が最初だが、保守派が猛反発した。ホワイトハウスは今回、「米国の家族の重要な一員だ」と招いたという。イベントは歓迎ムードに包まれ、出席者は感謝の言葉を口にした。

 オバマ政権誕生で「米国の分裂」を象徴する社会的価値観をめぐる論争も一変した。ブッシュ前大統領は同性婚禁止の憲法改正を後押ししたが、オバマ大統領は反対だ。「変革の芽」は社会の潮流も変えつつある。

 今月7日、東部バーモント州議会が全米で初めて議会主導で同性婚を認めた。直前には保守的な中西部アイオワ州最高裁同性婚を合法化。このほかニューヨーク州など9州で州法による合法化を目指す動きがある。

 04年以降、全米26州が次々と州憲法により同性婚禁止を規定し、同性婚容認の流れは後退。その揺り戻しからリベラルな東部を中心に、オバマ政権下で一気に噴き出した形だ。

 「オバマ変革」はこれだけではない。凍結されていた中絶を支援する国際団体への連邦資金助成を再開し、制限されていた胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究助成も解禁。これには「イデオロギーではなく科学を重視した」という点で評価が高い。

 宗教観から同性婚に反対する共和党に反撃の勢いは弱く、むしろ政策転換を迫る声すら出始めている。

 「共和党が反同性愛の党という目で見られると、選挙戦でも不利になる。共和党の価値観を見直すべきだ」

 昨年の大統領選で共和党マケイン陣営の上級顧問を務めたスティーブ・シュミット氏は17日の講演でこう語り、同性婚を認めなければ共和党は「宗教に固執した政党になる危険がある」と警告した。

 世論調査によると、同性婚反対は依然過半数を占めるが、30歳未満の若年層のほぼ半数が容認。シュミット氏は大統領選で若年層の得票で大差を付けられ敗れたことを指摘した。10年の中間選挙、12年の大統領選をにらみ、共和党は流れにあらがうか、新たな支持層へとすそ野を広げるかの岐路に立っている。

 だが、オバマ大統領も決して安泰ではない。社会的価値観の「リベラル化」は、宗教層の4分の1を占め、中絶などに厳格なカトリック層の急激な離反を招いているとの調査もあり、「変革」の反動を生んでいる。

 3月の記者会見で大統領は「ES細胞も中絶も難しい問題だ。私はこうした課題と日々格闘している」と本音をのぞかせた。「オバマ変革」が米国社会で行き着く先はまだ見えてこない。【ワシントン及川正也】

誤解のないように付け加えると、「中絶を支援する国際団体」とはたとえば家族計画協会などのことであり、中絶のみを“奨励”している団体ではない(たぶん、そんな団体はどこにもないし)。ブッシュ政権は、共和党の票田であるプロライフの圧力を受けて、発展途上国における性教育や避妊具や安全な中絶の提供を進める諸機関への連邦資金助成を、「中絶反対」の一点のみですべて打ち切るGlobal Gag Ruleを敷いていたため、民主党政権になった限り、それが解除されたのは当然のことでしょう。