リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

平成20年度保健・衛生行政業務報告(衛生行政報告例)結果の概況

最新の人工妊娠中絶件数と実施率が発表されました。

厚生労働省平成20年度保健・衛生行政業務報告(衛生行政報告例)結果の概況です。

平成20年度の中絶件数は242,292件で前年より14,380件(5.6%)減少、実施率は8.8(15〜49歳の女子人口千対)。いつも思うのだけど、他の国ではたいてい45歳までの統計を取るのに、日本はなぜか49歳まで。中絶率を低く見せかけたいという配慮が働いているのだろうか……この年齢層の実施率は0.4と非常に低いから、諸外国の統計のように45歳までに限ればもう少し上がる。

なお中絶数はこのところどんどん減っていて、それが本当ならいいことだと思うけど、報告されない中絶が増えていやしないか、ちょっと心配。

追記です。ここ最近の「結果の概況」はこちらのページにありますが、元の集計結果が出てこない。そもそも「厚生省」が「厚生労働省」になり、母体(以前は優生)保護法統計報告として独立していたものが、その他もろもろとひとくくりに扱われるようになって、ちょっと見ただけでは詳しいデータを参照できなくなっている。不便だ。そもそも、女性の健康にとって重要なこの問題が、少子化の問題の枠に入れられているのもおかしい。CEDAWからも、日本において女性の精神的・心理的健康に関する情報が不十分であることを遺憾に思うと明らかに指摘されているのに、何の対策も立てられていない。

精神的・心理的健康と、女性のエンパワーメント不足とは、切り離せない問題だと思う。女性たち自身が、自分の健康、とりわけリプロダクティヴ・ヘルス&ライツに関してエンタイトルされている(当然の権利として得られるべきもの)という意識をもてずにいることは、由々しき問題だと思う。


後日談:

こちらのサイトに平成20年度の統計データがあるのを見つけました。さっそく第63表で妊娠週数の比率を計算してみたら、以前のデータとほとんど変わりありませんでした。取り急ぎ(2010年5月18日)

63 人工妊娠中絶件数,年齢階級・妊娠週数・事由別
64 人工妊娠中絶件数,事由・都道府県別
65 人工妊娠中絶件数,年齢階級・都道府県別
66 人工妊娠中絶実施率,年齢階級・都道府県別
67 人工妊娠中絶件数,妊娠週数・都道府県別